カテゴリー: 助成金・社内制度

2025年、助成金はどう変わる?変更内容をまとめて解説

企業にとってメリットが大きい助成金。
新規雇用や処遇改善、業務改善など、様々な取り組みが対象となるため、活用を考えている会社も多いことでしょう。
しかし、実際に助成金を活用するのは簡単ではありません。
特に、助成金の支給要件や支給金額が度々変更されるのが厄介です。
2025年度も、多くの助成金が見直され、変更が予定されています。
助成金をしっかり活用していくには、変更点を事前に把握し、イメージを具体化しておくことが大切です。
この記事では、2025年度に変更が予定されている助成金について詳しく解説します。

助成金とは?

 
資金調達が必要になった際、真っ先に借入れを考える人がほとんどだと思います。
確かに、銀行融資は軸となる資金調達方法です。
しかし、資金調達方法は融資以外にも色々あります。
この記事のテーマである助成金もそのひとつです。

助成金は事後的な資金調達

 
一般的に、資金調達といえば、不足資金を補うために外部から資金を調達したり、あるいは内部から資金を調達することを指します。
つまり、資金を調達してから事業に投入するという事前的な資金調達です。
助成金は、このような資金調達とは大きく異なります。
助成金を支給するのは厚生労働省
厚生労働省の役割は、厚生労働省設置法において、
「国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ること」
と定められています。
当然ながら、助成金もこの目的に沿って実施されています。
雇用の増進や労働環境の改善、生産性の向上など、厚生労働省の目的に適う取り組みを実施した企業を評価し、負担軽減のために支給されるのが助成金です。
この「企業の取り組みを評価して助成金を支給する」というのが、助成金の特徴です。
一定の取り組みが前提となることから、助成金は事後的な資金調達といえます。

助成金のメリットと注意点

 
助成金には色々なメリットがありますが、特に大きなメリットは返済が不要なことです。
上記の通り、助成金は企業に対する報奨金のような側面があります。
したがって、厚生労働省が助成金を支給するのと、その他の資金調達(銀行が利息収入を目的に融資を行う、ベンチャーキャピタルが株式の売却益を狙って出資するなど)では根本的に異なります。
取り組みの成果として受給した助成金は返済の必要がなく、もちろん利息や保証料、手数料の類も一切不要です。
新規雇用や人材教育、待遇改善、業務改善などの取り組みは、企業にとって長期的なメリットをもたらします。
それに伴うコスト負担を軽減でき、しかも返済不要なのですから、助成金を利用しない手はないでしょう。
もっとも、助成金を不正受給した場合、返還しなければなりません。
というのも、助成金の財源は雇用保険料、つまり税金です。
不正に受給すれば返還を求められるだけではなく、一定期間にわたって助成金を利用できなくなったり、企業名を公表されたりと、様々なペナルティが課せられます。
これは、税金を財源とする助成金ならではのペナルティです。
とはいえ、助成金制度の利用は納税者の当然の権利であり、正しく利用する限り問題ありません。
このほか、定員がないことも助成金のメリットといえます。
混同されやすい制度に補助金がありますが、補助金は定員があるため、要件を満たしたからといって受給できるとは限りません。
しかし、助成金は要件を満たした企業に漏れなく支給されます。
逆にいえば、要件を満たさない限り助成金は受給できません。
例えば、ある取り組みに対して「半分まで達成したから助成金の半額を受給」ということは認められないのです。
コスト負担が先行するため、必要資金をしっかり確保しておかなければ、取り組みが頓挫して助成金を受給できなくなります。
また、取り組み自体に問題がなくても、手続きの不備によって受給できないケースもしばしばです。
助成金を活用するには、資金繰りに余裕をもって取り組むこと、助成金に強い社労士の協力を得ることが重要です。

助成金の情報収集を

 
もうひとつ、助成金の活用に欠かせないのが情報収集
一口に助成金といっても、助成金には色々な制度があります。
全ての助成金を把握し、活用することは容易ではありません。
さらに、助成金は毎年のように何らかの改定が行われます。
社会の様相を鑑み、新たな助成金を新設する、助成金の一部を廃止する、助成金の名称を変更する、重要性の高い助成金を拡充(要件の緩和、支給額の引き上げなど)する、重要性の低い助成金を縮小するなど、様々な変更が加えられるのです。
社労士でさえ、助成金を専門にしているのは少数派といわれます。
ましてや企業の経営者が、変更点を含めて助成金を詳細に把握するのは、現実的に不可能でしょう。
とはいえ、どのような場合に助成金を利用できるか、自社の取り組みに対応する助成金があるか、その助成金に変更点があるかなど、大まかに把握しておくことは重要です。
大まかに把握してこそ、助成金の活用をイメージでき、資金繰りや経営計画に織り込んでいくこともできます。
情報収集は、助成金活用の第一歩といえるでしょう。

2025年度、助成金はどう変わる?

 
では、2025年度、助成金はどう変わるのでしょうか。
2024年12月現在、詳細な変更については公表されていません。
2025年度の助成金が明示されるのは、2025年の3月ごろです。
しかし、今年8月に厚生労働省が公表した「令和7年度厚生労働省予算概算要求」から、2025年度の助成金をうかがうことができます。
厚生労働省の発表をみると、2025年度の助成金では賃上げ支援に力を入れるようです。
企業にとって賃上げは容易ではありません。
帝国データバンクが2024年8月に発表した「新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査」によると、コロナ関連融資の返済における懸念材料として、最も多かったのは「人件費の高騰」です。
収益が低下・横ばい、あるいは微増といった状況で人件費が高騰すれば、企業の経営を圧迫することは間違いないでしょう。
しかし、もはや賃上げは社会全体の流れであり、賃金を据え置いたままでは経営は成り立ちません。
そこで厚生労働省は、「賃上げ支援助成金パッケージ」として、以下の3つの支援を打ち出しています。

    1. 生産性向上(設備・人への投資等)への支援
    2. 正規・非正規の格差是正への支援
    3. より高い処遇への労働移動等への支援

この記事では、上記3つについて、支援や拡充の内容や予算を詳しく解説します。

生産性向上(設備・人への投資等)への支援

 
これは、企業の生産性向上を支援するものです。
2025年度の助成金の最大のテーマは「賃上げ支援」ですが、そもそも賃上げを実施するには収益性の改善が前提となります。
収益性が変わらないまま、人件費だけが上がれば経営は悪化し、ゆくゆくはリストラ、最悪の場合には倒産ということも有り得ます。
厚生労働省は雇用の促進・改善を目指しているわけですが、賃上げの結果、雇用が悪化すれば本末転倒です。
企業が、社会の流れに即して賃上げを実施、その後も持続的に賃上げを行っていくには、生産性の向上が欠かせません。
生産性を向上し、収益を改善してこそ、はじめて賃上げの余地が生まれるのです。
生産性を高めるには、設備や人への投資が不可欠となります。
助成金によって設備投資や人材育成を支援し、企業の生産性や競争力を高めようとするのが厚生労働省の狙いです。
そのために、厚生労働省が特に力を入れる助成金は以下の4つです。

  • 業務改善助成金【22億円】
  • 働き方改革推進支援助成金【70億円】
  • 人材開発支援助成金【620億円】
  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)【4億円】

これらの助成金は、全て2025年度に拡充が予定されています。
拡充の内容を含めて、具体的にみていきましょう。

業務改善助成金

 
業務改善助成金は、数ある助成金の中でもポピュラーなものです。
事業所内最低賃金(事業所内で最も低い時間給)を一定額以上引き上げ、生産性向上のための設備投資等を行った場合に、その設備投資の費用の一部を助成します。
ただし、業務改善助成金の対象となるのは、事業所内最低賃金と、地域別最低賃金の差が50円以上の場合に限られるため注意が必要です。
2025年度、業務改善助成金の概算要求は22億円となっています。
前年度は8.2億円でしたから、大幅な増額です。
賃上げに対する政府の意欲がうかがえます。
設備投資の内容にもよりますが、生産性を引き上げることを目的とするならば、それなりの資金がかかるでしょう。
その一部を助成金でカバーできるのですから、業務改善を目指す企業にはメリットの大きい助成金です。
2025年度、業務改善助成金は「地域間格差に配慮した助成率区分等の再編」「支援時期等の見直し重点化」の2点で拡充が予定されています。

地域間格差に配慮した助成率区分等の再編

 
業務改善助成金の拡充の一つ目は、地域間の格差に配慮することが目的です。
これまで、業務改善助成金では、事業所内最低賃金と助成率を以下の3つに区分していました。

  • 900円未満:助成率は10分の9
  • 900円以上950円未満:助成率は5分の4(生産性要件を満たした場合には助成率を10分の9に増額)
  • 950円以上:助成率は4分の3(生産性要件を満たした場合には助成率を15分の4に増額)

2024年度、全国平均の最低賃金は1055円になりました。
この全国平均に水準を合わせ、なおかつ地域間格差に配慮した結果、2025年度以降、業務改善助成金の助成率区分は以下のように変更されます。

  • 1000円未満:助成率は5分の4
  • 1000円以上:助成率は4分の3

このように、1000円を基準に助成率を区分する予定です。
また、生産性要件を廃止したことも大きな変更点といえます。
なお、助成上限額に変更はありません。

支援時期等の見直し重点化

 
2025年度の業務改善助成金の拡充では「夏秋における賃上げ・募集時期の重点化」と「特定時期の追加募集枠の設置」が予定されています。
2024年度、同一事業場で業務改善助成金を申請できるのは年1回まででした。
2025年度の拡充案は、これを踏まえたものと思います。
具体的な内容は未発表のため、あくまでも推測に過ぎませんが、「夏秋の賃上げ・募集時期(特定時期)に焦点を合わせ、通常枠(年1回)とは別枠を設置する」といった拡充が予想されます。
年1回しか申請できなかった業務改善助成金が、仮に年2回以上申請できるようになれば、賃上げを迫られる企業にとってメリットは大きいでしょう。

働き方改革推進支援助成金

 
近年、政府は働き方改革に力を入れてきました。
それに合わせて新設され、今も続いている助成金が「働き方改革推進支援助成金」です。
働き方改革推進支援助成金は、働き方改革の一般的なイメージに即した助成金です。
例えば、労働時間の短縮や勤務間インターバル制度の導入など、働き方改革を推進した場合に助成金を受給できます。
働き方改革の推進に当たっては、環境整備が欠かせません。
設備や機器の導入による労働能率の増進は、環境整備の最たるものです。
また、環境整備は外部専門家の支援によって行う場合も多々あります。
働き方改革推進支援助成金は、このような環境整備を実施し、改善の成果を上げた企業に助成金を支給します。
働き方改革推進支援助成金の2025年度の概算要求額は70億円。
前年度の71億円から1億円の減額です。
減額されていることからも分かる通り、働き方改革推進支援助成金の一部では拡充、一部では縮小という形になります。
働き方改革推進支援助成金で見直されるのは、以下の3点です。

業種別課題対応コース

 
働き方改革推進支援助成金は4種のコースによって構成されています。
2025年度、拡充されるのは業種別課題対応コースです。
業種別課題対応コースは、長時間労働などの問題を抱える特定の業種の支援を目的としています。
助成金の対象となる業種・業務は、建設事業・自動車運転業務・医業に従事する医師・砂糖製造業・その他長時間労働が認められる業種です。
また、複数の成果目標が設定されており、業種と成果目標によって助成金の上限額が異なります。
従来の制度では、「建設事業と砂糖製造業」が「勤務間インターバル制度を新規導入」した場合、上限120万円の助成金を受給できました。
2025年度の見直しにより、「建設事業・砂糖製造業・その他長時間労働が認められる業種」が「勤務間インターバル制度を新規導入」した場合、助成金の上限額は150万に増額されます。
さらに、砂糖製造業に限り、成果目標として新たに「勤務割表の整備」が追加され、これを達成した企業は最大350万円の助成金を受給できます。

労働時間短縮・年休促進支援コース

 
働き方改革推進支援助成金のうち、労働時間短縮・年休促進支援コースも見直されるようです。
労働時間短縮・年休促進支援コースは、労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進に向けて、環境整備に取り組んだ中小企業に助成金を支給しています。
注意したいのは、拡充ではなく縮小が予定されている点です。
労働時間短縮・年休促進支援コースの成果目標のひとつに、「36協定の月の時間外・休日労働時間数の削減」があります。
従来の制度では、時間外労働時間数を月80時間超から月60時間以下に削減することで、最大200万円の助成金を受給できました。
しかし2025年度からは、時間外労働時間数の削減(月80時間超から月60時間以下に削減)によって受給できる助成金は、最大150万円に減額となります。
取り組みの内容が変わらず、受給できる助成金が減っているのですから、これは縮小といえるでしょう。
なお、労働時間短縮・年休促進支援コースの2024年度の申請は、2024年11月29日で終了しています。
今後は、見直し後の条件(上限150万円)が適用されると考えてください。

賃上げ加算制度

 
働き方改革推進支援助成金は、団体推進コースを除いて賃上げ加算制度が設けられています。
これは、各コースの助成対象となる取り組みを実施し、なおかつ賃上げを行った場合に助成金の上限額を加算する制度です。
賃上げ加算制度については、一部で縮小、一部で拡充が検討されています。
従来の賃上げ加算制度は、以下のように設定されていました。

  • 賃金を3%以上増額→助成金の支給上限を15万円~150万円加算
  • 賃金を5%以上増額→助成金の支給上限を24万円~240万円加算

これが、2025年度の見直しにより、以下のように変更されます。

  • 賃金を3%以上増額→助成金の支給上限を6万円~60万円加算
  • 賃金を5%以上増額→助成金の支給上限を24万円~240万円加算
  • 賃金を7%以上増額→助成金の支給上限を36万円~360万円加算

なお、上記の金額は常時雇用する労働者数が30人超の場合であり、30人以下の場合には加算額が2倍となります。
変更点をまとめると、3%以上の増額については減額(助成金の縮小)、5%以上の増額は据え置き、新たに7%以上の増額を新設(助成金の拡充)ということです。

以上の通り、働き方改革推進支援助成金の見直しの内容はやや複雑です。
とはいえ、働き方改革は今後も推進されるでしょう。
資金面の問題から、対応できない中小企業も少なくありませんが、先延ばしには限界があります。
2025年度の見直しを機に、働き方改革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

人材開発支援助成金

 
人材開発支援助成金も、代表的な助成金のひとつです。
2025年度の概算要求額は623億円。
前年度の645億円から22億円の減額です。
とはいえ、予算の大きさから人気のほどがうかがえます。
なぜ人材開発支援助成金が人気かといえば、生産性向上に着実な効果が期待でき、またどのような企業にとっても利用しやすいためです。
生産性向上のためには人への投資、すなわち職業訓練も重要な取り組みです。
従業員を教育し、職務に関連する専門的な知識・技能を習得させることで、生産性の向上が期待できます。
当然ながら、職業訓練にはコストがかかり、訓練期間中にも賃金は発生します。
人材開発支援助成金は、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。
人材開発支援助成金には、人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキング支援コースの4つがあります。
2025年度、人材開発支援助成金で見直されるのは、人材育成支援コースの助成率と助成金額、また一部の要件です。

経費助成の見直し

 
まず、人材育成支援コースで人材育成訓練を行った場合の経費助成についてです。
2025年度の見直しにより、非正規雇用に対する助成率が60%から70%に引き上げとなります。
有期実習型訓練は、助成率が引き上げられると同時に要件が厳しくなっています。
従来の制度では、有期実習型訓練の助成率は「有期契約は60%、有期契約から正規雇用への転換で70%」というものでした。
これが、2025年度の見直しにより、「助成率を75%に引き上げ、ただし正社員化が必須」となります。

賃金助成の見直し

 
人材開発支援助成金の賃金助成はもれなく拡充です。
賃金の助成金額はコースと取り組みによって異なり、従来の助成金額は従業員1人・1時間あたり760円(大企業は380円)、もしくは960円(大企業は480円)でした。
2025年度の拡充により、助成金額は760円から800円(大企業は380円から400円)、もしくは960円から1000円(大企業は480円から500円)に増額となります。

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

 
人材確保等支援助成金は、その名の通り人材確保を支援するための助成金です。
人材開発支援助成金の2025年度概算要求額は20億円。
前年度の35億円から15億円の減額となっています。
人材確保の方法は、新規雇用だけではありません。
むしろ離職率を下げ、既存の従業員によって安定的な労働力を確保するほうが重要です。
離職率が高ければ、新規雇用を繰り返さなければなりません。
そのたびに人材募集にコストがかかり、雇用後の教育にもコストがかかります。
苦労して人材を確保しても、短期間で離職すれば元の木阿弥です。
離職率を下げるには、雇用管理制度の整備が効果的です。
適切な雇用管理を実施すれば、従業員の満足度が高まり、働き甲斐も生まれます。
職場の魅力が高まるにつれて離職率が下がり、人材確保に悩まなくなるというわけです。
人材確保等支援助成金には9種類のコースがあります。
2025年度、厚生労働省が見直すのは、人材確保等支援助成金のうち「雇用管理制度助成コース」です。
雇用管理制度助成コースは、雇用管理改善につながる制度を導入し、離職率の低下を実現した企業に助成金を支給します。
実のところ、雇用管理制度助成コースは2022年4月から新規の申請受付を停止していました。
2025年度以降、雇用管理制度助成コースの受付を再開するのが、人材確保等支援助成金の拡充の目玉です。
また、助成対象となる取り組みと、助成金の支給方法についても見直しが予定されています。

雇用管理制度の見直し

 
従来、雇用管理制度助成コースでは、諸手当制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間制社員制度(保育事業者のみ)の導入・実施を対象としていました。
2025年度以降、助成対象となる制度は「賃金規定・諸手当制度、人事評価制度、職場活性化制度など」へ大幅な変更となります。
また、人材確保等支援助成金で2024年度まで実施されていた「人事評価改善等助成コース」は、2025年度から雇用管理制度助成コースの人事評価制度に統合される予定です。

支給方法の見直し

 
次に、支給方法も変更されます。
従来、雇用管理制度助成コースでは、目標達成を条件に一律57万円の助成金を支給しており、賃上げによる支給額の上乗せはありませんでした。
2025年度からは、「一律支給」から「1制度の導入につき支給」へ変更され、賃上げ要件による上乗せも実施されます。
制度別の助成金額は、賃金規定・諸手当制度の導入は40万円、人事評価制度の導入は40万円、職場活性化制度の導入は20万円です(ただし、支給上限額は80万円)。
さらに、賃上げ要件(5%増額)を満たした場合には、各支給額の25%を上乗せします。
使い方にもよりますが、従来の制度と比べておおむね増額となり、拡充といってよいでしょう。

正規・非正規の格差是正への支援

 
厚生労働省の賃上げ支援助成金パッケージの二つ目は、正規・非正規の格差是正への支援です。
正規労働者と非正規労働者の格差はやむを得ず、ある程度の格差はあってしかるべきでしょう。
とはいえ、格差が開きすぎることは問題であり、現在の社会では格差の是正が求められています。
そのために必要なのは、非正規労働者の賃金の引上げや待遇改善を促進し、労働条件を平準化することです。
これによって恩恵を受けるのは、非正規労働者だけではありません。
人材確保や労働者のモチベーション向上につながるため、企業としてもメリットが期待できます。
そこで、2025年度に見直しが予定されているのがキャリアアップ助成金です。
キャリアアップ助成金は、雇用関連の助成金の中で最もポピュラーな助成金です。
令和5年度、キャリアアップ助成金の利用は65598件に上ります。
利用実績が多いのは、キャリアアップ助成金がどのような企業にも取り組みやすく、助成内容も充実しているためです。
キャリアアップ助成金には複数のコースがあり、そのうち「正社員化コース」と「賃金規定等改定コース」が見直しの対象となります。

正社員化コース

 
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、正社員への転換に取り組む企業を支援する助成金です。
有期雇用労働者や無期雇用労働者を正社員に転換し、なおかつ賃金を3%以上増額することで助成金を受給できます。
正社員化コースの助成金額は、2025年度も変わりません。
助成金額は、有期雇用から正規雇用への転換で80万円、無期雇用から正規雇用への転換で40万円です。
ただし、この支給額は2期分の合計です。
例えば、有期雇用から正社雇用に転換した場合、転換後6ヶ月の継続雇用で1期目40万円の受給、その後さらに6ヶ月の継続雇用で2期目40万円の受給、合計80万円の助成金を受給できます。
従来は、6ヶ月×2回の継続雇用さえクリアすれば、例外なく2期分の助成金を受給できました。
しかし、2025年度からは、転換の対象が以下の条件に当てはまらない場合は1期分のみ(半額)の支給となります。

  • 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
  • 雇入れから3年未満の有期雇用労働者であり、不安定雇用が継続している者
  • 人材開発支援助成金の対象訓練を受けた者、派遣労働者、母子家庭の母等

また、加算措置も縮小となります。
従前の正社員化コースでは、以下の場合に助成金の加算が受けられました。

  • 派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合、有期雇用・無期雇用いずれも28万5000円の増額
  • 対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父等の場合、有期雇用は9万5000円、無期雇用は4万7500円の増額
  • 人材開発支援助成金の訓練終了後に正社員化した場合、有期雇用は9万5000円、無期雇用は4万7500円の増額
  • 正社員転換制度を新たに規定し転換した場合、有期雇用・無期雇用いずれも20万円の増額
  • 多様な正社員制度(勤務地指定・職務限定・短時間正社員いずれか1つ以上)に転換した場合、有期雇用・無期雇用いずれも40万円の増額

これが大幅に見直され、2025年度以降の加算措置は4、5の2つのみとなります(加算額には変更なし)。
1~3は2期分の助成金を受給できるものの、加算措置は受けられなくなると考えてください。

賃金規定等改定コース

 
次に、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースです。
賃金規定等改定コースは、非正規労働者の基本給を定める賃金規定を3%以上増額改定し、なおかつ規定を適用した場合に助成金を受給できます。
2025年度以降、賃金の引き上げ率の区分が変更されるほか、加算措置が新たに新設されます。
従前の賃金規定等改定コースは、賃金の引き上げ率が3%以上5%未満の場合には1人当たり5万円、賃金引き上げ率が5%以上の場合には1人当たり6万5000円の助成金を支給していました。
これが、2025年度からは助成金額が以下のように変更されます。

  • 3%以上4%未満:1人当たり4万円
  • 4%以上5%未満:1人当たり5万円
  • 5%以上6%未満:1人当たり6.5万円
  • 6%以上:1人当たり7万円

このように、賃金引き上げ率の区分が細分化されたこと、6%以上引き上げることで以前よりも助成金を多く受給できることがポイントです。
また、従来の加算措置は「職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合に20万円」というものでした。
2025年度から、これに加えて「昇給制度を新たに設けた場合」に、助成金が20万円増額されます。

キャリアアップ助成金は、正社員化コースでは縮小、賃金規定等改定コースでは拡充というイメージです。
とはいえ、キャリアアップ助成金が利用しやすく、助成金額が大きい点は2025年度も変わりません。
積極的に活用していきましょう。

より高い処遇への労働移動等への支援

 
厚生労働省の賃上げ支援助成金パッケージの第三は、より高い処遇への労働移動等への支援です。
賃上げの形は色々ですが、同じ場所で賃上げを図るのではなく、労働者の適性に合わせて移動を促し、その結果として処遇改善・賃上げという形がより自然といえます。
例えば、スキルアップやキャリアチェンジなどが円滑に行われ、処遇改善、賃上げ、延いては労働市場の活性化という好循環が生まれるのが理想的です。
2025年度以降も、厚生労働省はこの支援に力を入れるようです。
それに伴い、厚生労働省は特に以下の3つを挙げています。

  • 早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース、中途採用拡大コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)
  • 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)

もっとも、これらの助成金は拡充を前提としておらず、2025年度も助成金の支給要件や支給額などについて、特に変更は見られません。
注目に値する変化としては、特定求職者雇用開発助成金のうち、就職氷河期世代安定実現コースの廃止、中高年者安定雇用支援コースの新設が挙げられます。
とはいえ、「中高年者安定雇用支援コース」というのも仮称であり、現段階では「新たなコースが新設される」といった認識で問題ないでしょう。
なお、特定求職者雇用開発助成金の成長分野等人材確保・育成コースは、2024年10月1日から要件が緩和されています。
2025年度も同じ要件が適用されるため、ぜひ把握しておくべきでしょう。
改正されたのは就労経験の捉え方と、訓練の時間についてです。

「就労経験がない」の定義

 
特定求職者雇用開発助成金の成長分野等人材確保・育成コースには、成長分野メニューと人材育成メニューがあります。
このうち、人材育成育成メニューでは、「就労経験のない職業に就くことを希望する就職困難者を雇い入れる」ことが要件の一つです。
ここでいう「就労経験がない」について、従前の制度では「過去に通算1年以上の就労経験がないこと」と定義していました。
過去の全部について、通算1年以上の就労経験がないことが要件となります。
改正により、この定義が「過去5年以内に通算1年以上の就労経験がないこと」へ変更されました。
就労経験の有無は過去5年以内に限られます。
例えば、6年以上前に通算1年以上の就労経験がある場合でも、助成金を受給できる可能性があるということです。
また、従来は「パート・アルバイトでの就労も経験に含む」としていたものを、改正後は「パート・アルバイトでの就労は経験に含まない」としています。
以前であれば、「パート・アルバイトをはじめ、過去に通算1年以上の就労経験がないこと」が求められたため、要件はかなり厳しかったといえます。
しかし、改正後は「過去5年以内に通算1年以上の就労経験がないこと(ただしパート・アルバイトを除く)」となったため、受給要件は大幅に緩和されたといえるでしょう。
2025年度以降も、緩和された要件が適用されると考えてください。

人材育成メニューの訓練時間

 
従来、成長分野等人材確保・育成コースの人材育成メニューでは、50時間以上の訓練が要件とされていました。
改正後も基本的には同じですが、「教育訓練給付対象の指定講座かつ公的職業資格の取得を目的とする訓練」に限って、50時間未満も助成対象となっています。
極めて限られた範囲での改正ですから、影響を受けない企業がほとんどでしょう。

まとめ:2025年度も助成金の活用を

この記事では、2025年度の助成金について、主な変更点をお伝えしました。
厚生労働省は助成金による賃上げ支援に力を入れるようです。
助成金によって拡充の内容は異なるものの、従前の制度に比べて助成金の受給額が増えたり、受給要件が緩和されたり、利用しやすくなる助成金も少なくありません。
これまで助成金を活用してこなかった企業も、2025年度の拡充を機に、受給を目指してはいかがでしょうか。
ただし、助成金は成果に対して支払われるものであり、コスト負担が先行します。
十分な資金を確保した上で取り組む、あるいは取り組みの最中で安定的に資金を供給できる状況を整えることが重要です。
ファクタリングを活用すれば、取り組み前に資金を確保でき、取り組みの最中も必要に応じて資金を調達できます。
ファクタリングをご利用の際には、No.1までお気軽にご相談ください。

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