カテゴリー: ファクタリングについて
国際ファクタリングとは?仕組み・流れ・メリット・デメリットを解説
ファクタリングには様々な種類がありますが、その一つが「国際ファクタリング」です。
あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、貿易に携わっている企業にとっては優れたリスクヘッジ手法として注目されています。
そこで本記事では、国際ファクタリングの仕組みや流れを踏まえたうえで、信用状(L/C)取引との違いやメリット・デメリットについて取り上げてみました。
国際ファクタリングとは?
国際ファクタリングとは、貿易取引を行っている日本の輸出企業が商品を輸出する際、海外の輸入企業に対して発生した売掛債権(売掛金)を日本のファクタリング会社に売却し、確実に代金を回収するためのシステムです。
注目すべきは、通常のファクタリングと国際ファクタリングとでは利用する目的が異なるという点でしょう。
▼主な目的の違い
- 通常のファクタリング:資金調達
- 国際ファクタリング:海外企業から売上代金を確実に回収
輸出企業の貿易リスクとは?
国際ファクタリングが誕生した理由は、貿易取引のリスクが高く広範囲にわたっているからでしょう。
中でも、輸出企業にとって大きな不安材料となるのが取引相手である海外企業の「与信調査」と「未回収」リスクです。
取引先が国内企業であれば、信用情報を入手することも未回収になった際の対処も可能ですが、海外企業が相手ではそう簡単にはいきません。
▼海外企業との貿易リスク
- そもそも日本語が通じない
- 正確な信用情報が入手できない
- 未回収リスクが把握しにくい
- 海外に拠点がなく、緊急時に素早く対応できない
- 支払いが滞っても催促する方法が分からない
- 訴訟はハードルが高い
つまり、上記のような「貿易取引のリスクを回避したい!」という輸出企業に活用されているのが、リスクヘッジを備えた国際ファクタリングなのです。
国際ファクタリングの特徴4つ
国際ファクタリングには、貿易業務に特化した仕組みが備わっています。
ここからは、国際ファクタリングならではの4つの特徴について見ていきましょう。
国際ファクタリングは「買取型」のみ
通常のファクタリングには「保証型」と「買取型」の2種類があります。
一方、国際ファクタリングは売掛債権(売掛金)の「買取」専門なので保証型はありません。
なぜなら、国際ファクタリングを利用する目的は資金調達ではなく、あくまで「確実に代金を回収するため」だからです。
4社間ファクタリング
通常のファクタリングは2社間または3社間で行います。
一方、国際ファクタリングでは「海外のファクタリング会社」を加えた下記の4社間で行うのが基本です。
▼4社間の内訳と役割
- 日本国内の輸出企業:ファクタリングの利用者
- 海外の輸入企業:代金の支払い
- 日本国内のファクタリング会社:売掛債権(売掛金)の買取り
- 海外のファクタリング会社:輸入企業の信用調査など
ちなみに、国際ファクタリングの主導権を持っているのは日本国内の輸出企業です。
信用調査は現地のファクタリング会社が行う
国際ファクタリング契約には、日本国内の輸出企業にとって最も気がかりな「海外企業の信用調査」も含まれています。
とはいえ、国内のファクタリング会社が実施する訳ではありません。
より海外の事情に精通した、現地のファクタリング会社によって行われます。
つまり、国際ファクタリングが利用できるということは「その海外企業には一定の信用がある」と判断できるのです。
ただし、海外の輸入企業に対する信用調査で発生した費用は輸出企業が負担しなければなりません。
係争事由などは担保されない
貿易業務を行っていると、海外の情勢が悪化して取引が滞るケースも珍しくありません。
戦争はもちろん、相手企業のストライキや暴動といった不測の事態、突然マーケットクレームなどが発生する可能性もあります。
上記のような個人や一企業では避けられない事件が起こった場合は、たとえ国際ファクタリング契約を結んでいたとしても担保されません。
国際ファクタリングの仕組みと流れ
国際ファクタリングの仕組みを理解するには、取引の流れを把握するのが一番の近道です。
下記の通り、一般的には12ステップのプロセスで完了します。
- 1.「日本の輸出企業」と「海外の輸入企業」が売買契約を締結する
- 2.「輸出企業」が「輸入企業」へ国際ファクタリングの利用を通知し、承諾を得る
- 3.「輸出企業」から「日本国内のファクタリング会社」へ引受を依頼する
- 4.「国内のファクタリング会社」から「海外のファクタリング会社」へ引受を依頼する
- 5.「海外のファクタリング会社」が輸入企業の信用調査を行う
- 6. 輸入企業の信用調査で問題がなければ、「海外のファクタリング会社」が「国内のファクタリング会社」へ信用保証の引受受領を伝える
- 7.「国内のファクタリング会社」から「輸出企業」へ引受受領を伝える
- 8. 「輸出企業」は契約通りに商品を船積みする
- 9.「輸出企業」は契約通りに商品を船積みしたと証明する書類「B/L等」を提出し、「国内のファクタリング会社」へファクタリングを依頼する
- 10.「輸入企業」から「海外のファクタリング会社」へ代金が支払われる
- 11.「海外のファクタリング会社」から「国内のファクタリング会社」へ支払い
- 12.「国内のファクタリング会社」から「輸出企業」へ支払い
信用状(L/C)取引との違いとは?
国際ファクタリングの類似システムとして「信用状(L/C)取引」が挙げられます。
信用状(L/C)とは、「日本の銀行」と「海外の銀行」がそれぞれ自国の企業に信用状を発行して支払いを保証するシステムです。
一見、国際ファクタリングと同じ印象を受けますが、取引内容はかなり異なります。
▼輸入企業の同意
- 信用状(L/C)取引:不要(輸出企業への通知のみ)
- 国際ファクタリング:必要
▼審査の対象
- 信用状(L/C)取引:「輸出企業の与信枠」を基に「信用状開設」が必要
- 国際ファクタリング:「輸入企業の与信枠」を審査
信用状(L/C)の発行を「信用状開設」と言い、国際ファクタリングの場合は必要ありません。
▼ディスクレのリスク
- 国際ファクタリング:書類のやり取りが多く、ディスクレが起こりやすい
- 信用状(L/C)取引:必要書類が少ないので起こらない
なお、ディスクレとはディスクレパンシー(discrepancy)の略称で、「書類内容の不一致」を表す単語です。
特に貿易に関わる「船積書類」や「信用状」は厳しくチェックされるため、わずかなミスでも遅延や未払いの原因になってしまいます。
信用状(L/C)取引のメリット
▼輸出企業のメリット
- 代金を確実に回収できる
- 商品の船積み後、すぐに代金を回収できる
▼輸入企業のメリット
- 前払いをする必要がない
- 輸出企業は契約通りの船積みをしなければ代金が得られないため、契約違反を抑制できる
信用状(L/C)取引のデメリット
▼共通するデメリット
- L/C開設など、取引までに時間がかかる
- L/C開設の審査が通るとは限らない
- L/C発行手数料が発生する
- 船積書類(B/L)などが銀行経由なので、書類が到着するまで時間がかかる
- 書類に一つでも条件不一致があると、銀行の保証が得られず入金されない
国際ファクタリングのメリット4つ
国際ファクタリングは、輸出企業のリスクヘッジという役目を担っています。
つまり、貿易に関するさまざまなトラブルを回避する仕組みが備わっているのです。
▼代表的なメリット
- 輸出企業が独自に海外企業の信用調査を行う必要がない
- 取引先が倒産しても、100%確実に売掛債権(売掛金)が回収できる
- 売掛債権(売掛金)の回収も、海外のファクタリング会社にアウトソーシングできる
- 信用状開設が不要
- 書類送付による遅延が起きない
国際ファクタリングで書類送付による遅延が起きないのは、輸出企業から輸入企業へ直接送付するからです。
信用状(L/C)のようにチェックの厳しい銀行を介さない分、素早いやり取りができます。
また、出荷を証明する書類(B/L等)と税関に申告する際に必要なインボイスのコピーが揃っていれば、基本的にファクタリングの支払いを受けられるため、そもそも必要書類が少ないのです。
国際ファクタリングのデメリット2つ
何かとメリットばかりが注目される国際ファクタリングですが、少なからずデメリットもあります。
あらかじめデメリットも把握しておきましょう。
▼代表的なデメリット
- 取り扱っている会社が少ない
- 手数料が発生する
なお、より詳しく知りたいという方は「国際ファクタリングのメリット・デメリット」をご一読下さい。
国際ファクタリングがおすすめな企業
現地に拠点がなく公用語が話せるスタッフもいない…という場合はもちろんですが、特に下記のような企業は国際ファクタリングの検討をおすすめします。
与信調査を現地のファクタリング会社に依頼したい
たとえ言葉が通じる相手でも、精度の高い「与信調査」が行えるとは限りません。
掛取引のトラブルは国内の企業同士であっても起こるのですから、状況が掴みにくい海外の輸入企業が相手なら尚更です。
そもそも掛取引は企業同士の「与信」が基礎になければ成立しませんし、情報収集さえ満足にできなければ与信調査どころではありません。
中でも下記のようなケースでは、現地の事情に精通している海外のファクタリング会社に与信調査をアウトソーシングした方が安心かつ効率的です。
▼海外のファクタリング会社へ与信調査を委託すべきケース
- 海外の取引先が増えた
- 新規開拓で海外の取引先を増やしたい
- 世界数カ国で取引している
上記のようなケースではファクタリング手数料を支払ったとしても、結果的にコスト削減に繋がるはずです。
海外の輸入企業が信用状(L/C)取引に応じない
確かに、厳格なルールに沿ってチェック体制が機能している信用状(L/C)取引なら、規模の大きい取引でも安心して臨めるでしょう。
しかし、几帳面な日本人にとっては苦にならない書類の準備も、海外の輸入企業にとっては大きな負担になります。
ちょっとしたディスクレによって「荷物は届いているのに書類が届かない」、「信用状開設が面倒」といった理由から信用状(L/C)取引に応じてくれないケースも珍しくありません。
だからと言って、直接取引ではリスクヘッジなしで危険を冒すようなモノ。
その点、国際ファクタリングなら確実に売掛債権(売掛金)が回収できるので、検討してみる価値は十分にあるでしょう。
まとめ
国際ファクタリングは、輸出企業にとって非常に便利でリスクヘッジに役立つ優れたシステムです。
現状では大手メガバンク系のファクタリング会社しか選択肢はないものの、信用状(L/C)取引よりも仕組みがシンプルで手間もかかりません。
手軽に貿易リスクを回避したいという場合は、国際ファクタリングを検討してみてはいかがでしょうか。
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