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歯科医院で活用が広がるファクタリング。仕組み、メリット、注意点などを徹底解説

医療機関のなかでも、特に経営が厳しいといわれるのが歯科医院です。
歯科医院は増加の一途をたどっており、競争が激化しています。
売上の低下と資金繰り悪化に苦しむ歯科医院も少なくありません。
そんな中、歯科医院の間で人気が高まっているのがファクタリングです。
ファクタリングを利用することで、歯科医院は診療報酬を早期資金化でき、資金繰り改善に役立ちます。
この記事では、歯科医院におけるファクタリングの仕組み、利用の流れ、メリットや注意点などを詳しく解説します。

歯科医院の資金繰りのためのファクタリング活用

最新とされる2017年1月に実施された厚生労働省の調査によると、全国の歯科医院の件数は6万8872軒といわれています。

これは全国のコンビニエンスストアの件数5万5322軒(日本フランチャイズチェーン協会調査2017年12月調べ)を超えるものになっているのです。

また新規に開業する歯科医院は首都圏をはじめとする人口の多い都市部に集中しているといわれています。

このため最寄り駅から自宅までの間に多数の歯科医院があるような状況にもなっているのではないでしょうか。

しかしすべての歯科医院が開業後、安定して経営できている状況ではありません。

中にはせっかく開業しても資金繰りに窮して廃業に追い込まれるケースもあるのです。

歯科医院を開業・運営するのにいくらかかるのか?

まず資金繰りを考えていく上で、新規に歯科医院を開業して維持していくために、いったいいくらかかるのか見てみましょう。

まず必要なのが敷金・家賃などの不動産にかかる費用です。

特に都市部ではビルにテナントとして入ることが多いので、毎月の家賃に敷金・礼金・仲介手数料が必要となります。

これに内装工事費、レントゲンやコンプレッサー、滅菌器といった医療機器の購入も必要となります。

さらには毎月のように歯科衛生士や歯科助手の人件費や歯科材料・消耗品の購入、水道光熱費の支払など1年分ほどの運転資金も必要です。

これらを考えると歯科医院の新規開業には最低でも約5000万円程度かかるといわれています。

また先に述べたように歯科医院の競争が激化していますから、新規開院時の広告宣伝費や院内のインテリアにお金をかけるケースも多いので、実際にはこれ以上の費用がかかるといえるでしょう。

歯科医院の資金繰りのポイント

このように多額の費用をかけて歯科医院を開業しても、毎月の資金繰りに苦労するケースも多いようです。

初期投資については自己資金と金融機関からの融資で調達できたとしても毎月の運転資金は患者様から診療報酬をいただく以外は、原則として収入を得る方法はありません。

歯科医院の診療報酬は健康保険から7割が支払われる保険診療とインプラントなど全て患者様の自己負担となる自由診療になりますが、新規開業の歯科医院が自由診療で多額の報酬を得ることはかなり難しく、多くは虫歯などの保険診療を皮切りに地道に患者様を獲得していくしかないのです。

しかし診療時に患者様から支払ってもらえるのは全体の3割だけで、あとは毎月末で保険点数を計算して社会保険や国民健康保険などに請求した上、約2ヶ月後に支払われる仕組みなのです。

歯科医院を円滑に維持していくための資金繰りのポイントは、この保険請求の支払サイトを上手く考えていくことではないでしょうか?

歯科医院とファクタリング

そこで近年、歯科医院の資金繰りに活用されているのがファクタリングです。
歯科医院のファクタリング活用を知るためにも、まずはファクタリングの基本から解説します。

ファクタリングとは?

歯科医院に限らず、企業の多くは信用取引を行っています。
信用取引を行った際に発生するのが売掛金です。
売掛金は売掛債権の一種であり、後日売掛先から代金を受け取る権利です。
売掛金の難点は、支払期日まで代金を回収できない点にあります。
とはいえ、売掛金は近い将来現金に変わるのですから、売掛先の支払い能力に問題がない限り、額面金額に近い価値を持っています。
もちろん、価値相応に売却することも可能です。
ファクタリングは、会社が所有している売掛金をファクタリング会社に売却し、早期資金化できるサービスです。
ただし、法的には「売掛金の売却」というよりも「売掛金の譲渡」といった方が正確であり、金融庁もファクタリングを以下のように定義しています。

一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。

出典:出典:金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」

診療報酬でもファクタリングが利用できる

歯科医院が歯科診療によって得る報酬を歯科診療報酬といいます。
歯科診療報酬は一部(1~3割)を患者が自己負担し、残りの部分を保険者が支払います。
歯科医院は保険者に対して売掛金を所有するわけですが、これは歯科診療報酬と呼ばれる特殊なものです。
歯科診療報酬も、ファクタリングによって早期資金化できます。
ただし、売掛金と売掛先(保険者)が特殊であることから、歯科医院が利用できるファクタリングは、「診療報酬ファクタリング」といわれるものに限ります。
通常の売掛金よりも取り扱いが難しいことから、銀行系またはノンバンク系のファクタリング会社、診療報酬に特化したファクタリング会社、No.1をはじめとする一部の優良ファクタリング会社しか提供していません。
とはいえ、後述の通り多くのメリットがあるため、いまや多くの歯科医院が活用しています。

診療報酬ファクタリングは、債権を譲渡する歯科医院とファクタリング会社、そして本来この債権を支払う社会保険や国民健康保険といった3社間で合意した「債権譲渡取引」です。

この取引は歯科医院がファクタリングを行うことを社会保険や国民健康保険も知った上で行い、かつ支払う相手先が倒産することがないことからリスクも少ないため、手数料も安く設定されていることが一般的です。

またファクタリングを利用したことにより、その社会保険や国民健康保険からその歯科医院の信用が落ちたり、ましてや保険医の資格を取り消されたりする心配はありません。

診療報酬ファクタリングの法的根拠

初めてファクタリングを利用する歯科医院にとって、気になるのが診療報酬ファクタリングの合法性です。
日本でファクタリングが普及し始めたのはここ数年のことです。
急速に普及しているとはいえ、銀行融資やビジネスローンといった伝統的な資金調達方法に比べると、まだまだマイナーな方法といえます。
とりわけ診療報酬ファクタリングとなると、さほど身近に感じられない歯科医院も多いことでしょう。
そんな中、悪質業者が摘発される事例も少なくないため、ファクタリングを違法と考える歯科医院も少なくありません。
しかしながら、ファクタリングは100%合法的な資金調達方法です。
法的根拠は、金融庁の定義にもある「法的には債権の売買(債権譲渡)契約」という点にあります。
以下のように、債権譲渡は民法で明らかに認められている取引です。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

出典:出典:e-Gov法令検索「第四節 債権の譲渡」
ファクタリングをはじめとする債権譲渡取引は、この法律によって全て合法となります。
歯科医院が歯科診療報酬を譲渡(ファクタリング)することも合法です。
当然ながら、診療報酬ファクタリングを提供している業者も、合法的に営業しています。
注意すべきは「ファクタリングを装った違法・悪質行為」であって、ファクタリングそのものには何ら違法性はないのです。
初めてファクタリングを利用する歯科医院でも、安心して利用できます。

歯科医院のファクタリングの利用方法

歯科医院における診療行為は、一部の例外を除いて保険診療となります。
したがって、歯科医院であれば必ず歯科診療報酬を所有しているものです。
診療報酬ファクタリングを利用すれば、歯科医院の資金調達がスムーズになり、資金繰りに役立ちます。
ただし、歯科医院のファクタリングは、通常の(一般の企業間における売掛金の)ファクタリングとはやや異なります。
特に異なるのは、ファクタリングの方式と流れです。

歯科医院のファクタリング方式

ファクタリングには、大きく分けて以下の2つの方式があります。

  • 2社間ファクタリング:利用会社とファクタリング会社の2社間で取引する方式
  • 3社間ファクタリング:利用会社、ファクタリング会社、売掛先の3社間で取引する方式

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの最大の違いは、売掛先が関与するかどうかです。
この点を踏まえて、ファクタリング方式の違いをみていきましょう。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングは、売掛先が一切関与しない方式です。
あくまでも、債権者である利用会社とファクタリング会社の2社間で取引し、債務者である売掛先は一切関与しません。
診療報酬ファクタリングの場合、歯科診療報酬の債権者である歯科医院と、歯科診療報酬を買い取るファクタリング会社の2社間だけで取引し、売掛先にあたる保険者(社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会)は関与しない形です。
売掛先が関与しないことから、簡単な手続きでスピーディに資金調達でき、売掛先に知られないことも大きなメリットとなります。
その反面、手数料が高いこと、悪質業者のリスクがあることなどがデメリットです。

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングには売掛先が関与します。
診療報酬ファクタリングの場合、債権者である歯科医院、歯科診療報酬を買い取るファクタリング会社、債務者である国保や社保などが3社間で連携して行います。
「3社間の連携でファクタリングする」ということは、「3社間の連携が取れなければファクタリングできない」ということです。
実際、通常のファクタリングでは、売掛先が債権譲渡を拒否するなどして3社間ファクタリングが成立しないことがよくあります。
また、手続きが煩雑であること、資金調達にやや時間がかかることなども難点です。
その反面、手数料が安く、安全性に優れている方式でもあります。

歯科医院は3社間ファクタリングのみ

ファクタリング方式は、業者によって取り扱いが異なります。
銀行系やノンバンク系のファクタリング会社では「3社間ファクタリングのみ」が一般的であり、独立系のファクタリング会社では「2社間ファクタリングのみ」の対応も珍しくありません。
No.1など、一部の優良ファクタリング会社では「2社間・3社間の両方に対応」とするケースもあります。
したがって、通常のファクタリングでは、利用会社の目的や状況に応じて2社間ファクタリングと3社間ファクタリングのいずれかを選ぶことができます。
ただし、歯科医院がファクタリングする場合、3社間ファクタリングの一択です。
診療報酬ファクタリングの際、利用できるのは3社間ファクタリングのみとなります。
同様に、歯科医院が歯科診療報酬をファクタリングする場合も、必ず3社間ファクタリングと考えてください。

歯科医院でファクタリングする流れ

上記の通り、歯科医院のファクタリングは必ず3社間で取引します。
この点に留意しつつ、歯科医院でファクタリングする流れをみていきましょう。
ここでは、歯科医院で歯科診療報酬が発生し、診療報酬ファクタリングによって資金化するまでの流れを紹介します。

    1. 歯科医院に受診した患者は、全額自己負担の診療行為を除き、治療費の一部を窓口で支払う。
    2. 後日、歯科医院は審査支払機関に対して、患者の自己負担を除く部分を請求する。当月分のレセプト(診療報酬明細書)を翌月10日までに作成し、請求するのが一般的。
    3. 歯科医院のレセプトに問題がなければ、審査支払機関は保険者に歯科診療報酬の請求を行う。
    4. 保険者でも請求内容を審査し、審査に通れば診療報酬債権が発生する。これにより、債権者は歯科医院、債務者は保険者(国保や社保)という関係が成立する。
    5. 歯科医院からファクタリング会社に対し、診療報酬ファクタリングを申し込む。
    6. 歯科医院が提出した書類をもとに、ファクタリング会社は審査を行う。審査後、ファクタリングの可否と条件(手数料率や掛け目など)を歯科医院に通知する。
    7. 条件に問題がなければ、歯科医院とファクタリング会社の間で債権譲渡契約を結ぶ。この契約により、歯科診療報酬の債権者が歯科医院からファクタリング会社に変化する。
    8. 契約締結後、保険者に対して債権譲渡通知を行う。債権譲渡通知は、「歯科医院から直接通知」「歯科医院とファクタリング会社の連名で通知」など業者によってさまざま。
    9. 通知後、ファクタリング会社は歯科医院に買取代金を入金する。

歯科医院でファクタリングするメリット

診療報酬ファクタリングは、歯科医院に多くのメリットをもたらします。
ここでは、代表的なメリットを紹介します。

融資よりも資金調達しやすい

診療報酬ファクタリングを利用する動機について、多くの歯科医院が挙げるのは「銀行融資よりも資金調達しやすい」ということです。

銀行融資は歯科医院を基準に審査

銀行融資は、様々な資金調達方法の中でも特にハードルが高い資金調達方法です。
銀行融資では、融資先の歯科医院を基準に審査します。
業績に問題がある歯科医院は、返済力が乏しい(=貸倒れリスクが高い)と判断され、審査に落ちる可能性が高いです。
歯科医院は全国的にみて非常に数が多く、業績悪化に苦しむ歯科医院も少なくありません。
そのような歯科医院が銀行融資を受けるのは困難でしょう。

ファクタリングは売掛先を基準に審査

一方、ファクタリングでは売掛先を基準に審査します。
ファクタリングの利用会社である歯科医院の経営は重視されません。
これは、ファクタリングのビジネスモデルを考えるとよくわかります。
ファクタリングは、額面金額よりも割安に売掛金を買い取り、支払期日に満額回収することで差額を儲けるビジネスです。
儲けをもたらすのは利用会社ではなく売掛先ですから、「売掛先の支払い能力」こそファクタリング審査の要といえます。
したがって、利用会社の経営に問題があっても、売掛先に支払い能力に問題がなければ審査に通ります。
逆に、利用会社の経営がどれだけ良好でも、売掛先の支払い能力に問題があれば審査に落ちる可能性が高いです。

歯科医院のファクタリング審査はほぼ100%通過

歯科医院がファクタリングする場合、売掛金は国保や社保です。
国保や社保は公的保険制度をもとに運営されている公的機関であり、支払い能力は極めて安定しています。
保険制度が破綻しない限り、回収不能リスクはゼロといっても過言ではないでしょう。
つまり、歯科診療報酬債権を買い取りさえすれば、ファクタリング会社はほぼノーリスクで利益を得られるのです。
したがって、歯科医院の提出書類に問題がなければ、ほぼ100%審査に通ります。
業績悪化、赤字決算、債務超過、リスケジュールなどによって銀行の融資審査に通らない歯科医院でも、診療報酬ファクタリングならば問題なく資金調達できます。

業歴を問わず利用できる

診療報酬ファクタリングは、業歴を問わず利用できます。
上記の通り、ファクタリングで重要となるのは売掛先の信用力です。
その点、歯科医院の売掛先は国保や社保といった公的機関のため、全く問題ありません。
国保や社保の信用力は、歯科医院の業歴に左右されるものではありません。
開業後数年の歯科医院でも、数十年の歴史を持つ歯科医院でも、歯科医院である限り保有する売掛金は歯科診療報酬です。
どちらの歯科医院から買い取っても、売掛先が国保・社保である以上、ファクタリング会社の回収不能リスクはほぼゼロといえます。
だからこそ、診療報酬ファクタリングは歯科医院の業歴を問いません。
銀行融資ならば、業歴をある程度重視します。
業歴が長い歯科医院は、長く経営を続けてきたという実績があり、集客力もあるでしょう。
つまり、収益の安定性と返済力の高さを見込んで、融資しやすいのです。
逆に、業歴が短い歯科医院に対しては、過去の実績から収益力を裏付けることができず、将来性にも負担があるため、審査のハードルが上がります。
したがって、業歴が短い歯科医院は、銀行融資よりも診療報酬ファクタリングでの調達がおすすめです。
ただし、業歴1年未満の歯科医院は、業者によっては利用できない場合があります。
下記の通り、診療報酬ファクタリングの際にはいくつかの書類を求められますが、業歴1年未満の歯科医院は必要な書類を提出できず、利用を拒否されるのです。
もちろんNo.1のように、業歴1年未満の歯科医院に対応している業者もあります。

無担保・無保証で利用できる

診療報酬ファクタリングは、原則的に無担保・無保証で利用できます。
これも、歯科医院にとって嬉しいメリットです。

銀行融資は担保・保証を重視

銀行融資は、債権譲渡契約ではなく金銭消費貸借契約ですから、返済義務を伴います。
それに伴い、返済できなくなった場合の備えとして、不動産担保や信用保証協会の保証によって保全を図るのです。
無担保・無保証で融資を受けられる企業は、全体の1割程度に過ぎません。
歯科医院の経営は厳しいため、銀行から無担保・無保証で融資を受けることは困難といってよいでしょう。
業績や財務に問題がある歯科医院はもちろんのこと、大きな問題がない歯科医院でも、担保・保証を求められる可能性が高いです。
逆に言えば、担保・保証が不足している歯科医院は、銀行から融資を受けることができません。

診療報酬ファクタリングは無担保・無保証

担保・保証の不足に悩んでいる歯科医院は、診療報酬ファクタリングを利用してください。
診療報酬ファクタリングは債権譲渡取引であり、返済義務がありません。
返済義務がない以上、担保・保証を求める余地もなく、無担保・無保証で利用できるというわけです。
ただし、業者によっては「無担保(担保資産は不要)」「無保証(機関保証は不要)」としつつも、「ただし代表者による個人保証が必要」とするケースもみられます。
これが、診療報酬ファクタリングの妨げになる可能性があります。
例えば、歯科医院の代表者の個人信用情報に問題がある場合、保証能力がないとみなされ、診療報酬ファクタリングを拒否されるかもしれません。
もっとも、その場合には代表者保証を求められないファクタリング会社を選べばよいだけです。
診療報酬ファクタリングを利用する際には、担保・保証の設定について直接尋ねることをおすすめします。

手軽に資金調達できる

手軽に資金調達できることも、診療報酬ファクタリングの大きなメリットです。

歯科医院の人手不足

人手不足が深刻な社会問題になっている昨今、歯科医院の人手不足は特に深刻です。
その理由はいくつかあります。
一つは、歯科医院が増加率に対して歯科衛生士の増加率が追い付いていないこと。
歯科衛生士の数が圧倒的に不足していることは、2021年度の新卒歯科衛生士の有効求人倍率が22.6倍であったことからもよくわかります。
このほか、歯科衛生士の転職率は非常に高いため、人材が定着せずに悩んでいる歯科医院も少なくありません。

歯科医院にとって銀行融資は負担が大きい

人材が不足している歯科医院では、資金調達に費やせる労力もおのずと限られてきます。
銀行からスムーズに融資を受けるには、銀行員とコンタクトを取ったり、定期的に書類を提出したり、普段からの根回しが重要です。
実際に融資を依頼する際にも、融資担当者や支店長と面談し、様々な書類を提出しなければなりません。
歯科医院にとって特に負担となるのが書類の作成です。
銀行に融資を決断させるための書類ですから、念入りに作成する必要があります。
多忙な歯科医院では、書類の不備によってスムーズに資金を調達できなかったり、手間をかけて書類を作成しても審査に落ちたりすることがしばしばです。

ファクタリングは負担が少ない

できるだけ手間をかけずに資金を調達したい歯科医院には、ファクタリングがおすすめです。
診療報酬ファクタリングは、メールや電話、公式HPの申し込みフォームなどから簡単に申し込むことができます。
また、提出書類の負担も軽微です。
具体的な必要書類はファクタリング会社によって異なりますが、歯科医院が提出する基本書類は以下の通りです。

  • 歯科診療報酬入金口座の通帳コピー
  • 社保・国保の支払額決定通知書
  • 決算書
  • 納税証明書

ただし、ファクタリングを初めて利用する歯科医院は、初回に限り以下の証明書を求められます。

  • 保険医療機関指定通知書
  • 歯科医院長の歯科医師免許証
  • 歯科医院長の保険医登録表
  • 履歴事項全部証明書
  • 歯科医院の法人代表者の本人確認書類

初めてファクタリングする歯科医院では提出書類がやや増えますが、銀行融資に比べて負担はかなり少ないと考えてよいでしょう。
継続してファクタリングする場合、2回目以降は支払額決定通知書などのわずかな書類だけで利用できるケースも多いです。

手数料が安い

診療報酬ファクタリングは、通常のファクタリングと比べても、他の資金調達方法と比べても安い手数料で利用できます。
資金繰りが苦しい歯科医院にとって、これも大きなメリットになるでしょう。

通常のファクタリングよりも安い

ファクタリングに関する法規制が不十分な現在、貸金業における法定金利のように、ファクタリング手数料を規制する法律がありません。
買い取る売掛金に応じて、ファクタリング会社が自由に手数料を設定できるため、業者によって手数料が大きく異なる場合があります。
2社間ファクタリングならば額面金額の10~30%、3社間ファクタリングならば額面金額の1~10%という、大まかな目安があるだけです。
もちろん、相場を越える手数料を請求しても違法にはならないため、想定外の負担を強いられることもあります。
これが、「ファクタリングは手数料が高い」といわれる理由です。
しかしながら、歯科医院が診療報酬ファクタリングを利用する場合、この相場はほとんどあてになりません。
なぜならば、歯科医院の保有する歯科診療報酬は信用に優れており、相場よりを大きく下回る手数料率でファクタリングできるからです。
すでに解説した通り、歯科医院の売掛先は国保や社保といった公的機関であり、回収不能リスクがほぼゼロであるため、手数料を抑えても十分にビジネスとして成り立ちます。
大きく見積もっても1~5%といった低い手数料率でファクタリングでき、1%以下に設定するケースもみられます。
業者によって設定は様々で、支払期日に応じて手数料率が変動する(来月回収の歯科診療報酬は手数料率0.2%、再来月回収の歯科診療報酬は手数料率0.4%など)場合もあるため、利用の際にはファクタリング会社に直接尋ねてみるとよいでしょう。

他の資金調達方法よりも安い

歯科医院の資金調達方法は色々ですが、診療報酬ファクタリングは他の資金調達方法と比べても安い水準です。
例えば、来月回収予定の歯科診療報酬を手数料率1%でファクタリングする場合、年利換算では12%となります。
銀行融資の金利(年2~3%程度)に比べると高いものの、ビジネスローンの金利(年15%程度)に比べると安いことがわかります。
実際のコスト負担を比較すると、診療報酬ファクタリングは銀行融資より安くなることも多いです。
歯科医院が1000万円を調達する場合を想定して、銀行融資、ビジネスローン、診療報酬ファクタリングの調達コストを簡単に比較してみましょう。

  • 銀行融資:年利2.5%、3年返済の場合、調達コスト(完済までに支払う利息)の総額は39万104円
  • ビジネスローン:年利15%、3年返済の場合、調達コスト(完済までに支払う利息)の総額は247万9508円
  • 診療報酬ファクタリング:額面金額1010万円の歯科診療報酬を手数料率1%でファクタリングする場合、調達コスト(売却時に支払う手数料)の総額は約10万円

このように、診療報酬ファクタリングの調達コストは銀行融資よりも低コストで調達できます。
もちろん、銀行融資も条件次第でコストを抑えることができますが、1000万円を金利2.5%で調達し、1年後に一括返済した場合でさえ、支払利息は13万5932円です。
銀行から融資を受けられる状況の歯科医院も、一度ファクタリングの見積もりを取ってみるとよいでしょう。
銀行融資よりも低コストで資金調達できるかもしれません。

スピーディに調達できる

資金調達を急いでいる歯科医院は、ぜひ診療報酬ファクタリングを検討してみてください。
診療報酬ファクタリングならば、スピーディに資金調達できます。
ただし、通常のファクタリングほどスピーディではありません。
ファクタリングの資金調達スピードについて、よく「最短即日」といわれますが、診療報酬ファクタリングは例外です。
即日でファクタリングできるのは2社間ファクタリングに限られます。
歯科医院のファクタリングは3社間が基本ですから、即日での資金調達は不可能です。
3社間ファクタリングに時間がかかる理由は、「歯科医院でファクタリングする流れ」を考えるとわかります。
3社間ファクタリングの手続きでは、歯科医院から社保・国保に対する債権譲渡通知が必須となります。
債権譲渡通知書は内容証明郵便で送付するため、郵送にかかる日数だけでも即日ファクタリングは不可能なのです。
それでも、数日~1週間程度で資金調達できることが多く、銀行融資(融資実行までに数週間~1ヶ月程度かかる)に比べるとかなりスピーディといえます。
ただし、歯科医院のファクタリングは、初回利用に限り時間がかかる場合が多いです。
中には、申し込みから初回の資金化まで1ヶ月程度かかる業者もあります。
したがって、現時点ではファクタリングの必要がない歯科医院も、緊急の場合に備えて何度か利用し、いつでもファクタリングできる状況を整えておくのがおすすめです。

資金繰りを改善できる

診療報酬ファクタリングは資金調達に役立つだけではなく、資金繰り改善にも効果的です。
資金繰りに悩んでいる歯科医院は、診療報酬ファクタリングによって速やかに資金繰りを改善できます。

歯科医院の資金繰りが苦しい理由

歯科医院の資金繰りが悪化しやすい原因は、歯科診療報酬の回収サイト(支払いサイクル)にあります。
歯科医院に診療報酬が支払われるのは、診療行為を行った月の翌々月の20日頃です。
例えば、1月分の診療報酬を2月初めに請求し、3月20日頃に回収する流れです。
歯科診療報酬の発生から起算しても、回収に1.5ヶ月程度を要します。
歯科医院の手元には、常時1~2ヶ月分の売掛金が滞留している状況です。
これが、歯科医院の資金繰りに大きな負担となります。
資金繰りの原則は、「手元の売掛金が増加すると資金繰りが悪化する」「手元の売掛金が減少すると資金繰りが改善する」というものです。
そもそも、売掛金には立替金としての性質があります。
売掛先が支払うべき代金を、自社が一時的に(支払期日までの間)立て替えていることにほかなりません。
売掛金の回収サイトが1ヶ月であれば立替負担は1000万円、回収サイトが2ヶ月ならば立替負担は2000万円です。
回収サイトが長いほど資金繰り負担が大きくなり、資金繰りが悪化することが分かります。
全業種平均でみた場合、回収サイトの平均は1ヶ月程度です。
歯科医院の回収サイトは1.5ヶ月ですから、資金繰り負担も他の業種の1.5倍と考えてよいでしょう。
だからこそ、歯科医院は資金繰りが苦しいのです。
診療報酬ファクタリングを利用すれば、歯科医院の資金繰りは簡単に改善できます。
ファクタリングは債権譲渡取引であり、歯科医院は歯科診療報酬を手放すことによって資金を調達します。
ファクタリングした分だけ手元の歯科診療報酬が減少し、結果的に資金繰りが改善するというわけです。

歯科医院の資金繰り改善はファクタリングのみ

以上のように、歯科医院はファクタリングによって資金繰りを改善できますが、逆に言えば、ファクタリングは歯科医院が資金繰りを改善するための唯一の方法といえます。
なぜならば、歯科医院の支払い条件は交渉の余地がないからです。
一般的な企業間取引ならば、売掛先に支払いサイクルの見直しを求めることで回収サイトを短縮し、資金繰りを改善することもできます。
また、現金取引の割合を増やす(全て信用取引の状況から一部現金取引へ変更するなど)ことによっても、資金繰りの改善が可能です。
しかし、歯科医院の売掛先は社保や国保といった公的機関であり、支払い条件は診療報酬制度によって定められています。
したがって、

  • 国保や社保が歯科医院の個別の交渉を受け付けることは、実務負担があまりにも大きく、現実的に不可能
  • 支払いサイクルは法律によって決まり、短縮は認められない
  • 患者の負担率は法律によって決まり、現金取引の比率を高めることはできない

という3つの意味で、歯科医院は資金繰りの改善が困難なのです。
診療報酬ファクタリングは、これらの問題を全てクリアできる唯一の方法といえます。

多額の資金調達も可能

診療報酬ファクタリングは、多額の資金調達にも対応しています。
このため、投資資金を調達したい歯科医院にもおすすめです。
歯科医院を経営するには、歯科用の機材や装置、診療台などの設備に投資しなければなりません。
また、近年の歯科業界ではM&Aが活発化しています。
医院の増加によって競争が激化している昨今、患者の減少によって廃業を余儀なくされる歯科医院が少なくありません。
さらに、高齢化社会の現代においては、経営者の高齢化によって事業継続が困難となり、廃業する歯科医院も増えています。
これが、歯科医院のM&Aが増加している理由です。
経営悪化によって廃業の危機にある歯科医院は、資金力がある歯科医院のM&Aを受け入れることで、資金面での不安なく経営を継続できます。
高齢化によって廃業の危機にある歯科医院も、M&Aを受け入れることで事業承継が叶うというわけです。
買収する側としても、新たに歯科医院を開業するよりも、既存の歯科医院を買収した方が設備投資や顧客開拓の負担を軽減でき、効率的に展開できます。
歯科医院のM&Aで重要となるのは、資金力と機動性です。
歯科医院の買収価格は2000~4000万円といわれ、相手側の歯科医院が売却を急いでいることも少なくありません。
したがって、歯科医院のM&Aを成功させるには、大きな資金を速やかに調達し、スピーディにM&Aをまとめる必要があります。
歯科医院が銀行から数千万円の資金を調達することは難しく、調達できるとしても時間がかかります。
買収資金を工面している間に、他の歯科医院に先を越されてしまう例もしばしばです。
そんな時、診療報酬ファクタリングが役立ちます。
診療報酬ファクタリングの調達可能額は、歯科医院が保有する売掛金の総額とイコールです。
月間の診療報酬が3000万円、回収サイト1.5ヶ月の歯科医院であれば、手元の売掛金総額は平均で4500万円程度。
この売掛金を手数料率1%でファクタリングすれば、4455万円の資金を調達できます。
このように、診療報酬ファクタリングは歯科医院のM&Aや設備投資など、多額の資金を要する活動に役立ちます。

歯科医院でファクタリングする際の注意点

ここまで解説してきた通り、診療報酬ファクタリングは歯科医院にとって多くのメリットがあります。
ただし、必ずしもメリットばかりとは限りません。
歯科医院がファクタリングのメリットを享受するために、いくつか注意すべき点があります。

利用は計画的に

まず、診療報酬ファクタリングは計画的に利用すべきです。
診療報酬ファクタリングは、歯科医院にとってたくさんのメリットがあります。
それだけに、診療報酬ファクタリングに依存してしまう歯科医院も多いのです。
後述の通り、一定期間の継続利用を前提とするファクタリング会社も少なくありません。
長期にわたって診療報酬ファクタリングを使い続けると、資金繰りに対する代表者のマインドが「ファクタリングありき」になってしまうおそれがあります。
このようなマインドに陥ってしまうと、計画的なファクタリングは困難です。
そもそも、計画的なファクタリングのためには、資金繰り計画を立てることが前提となります。
歯科医院の現状や変化を踏まえて資金繰り計画を立て、資金不足をあらかじめ予測してこそ、最適なタイミングで最適な方法によって資金を調達できるのです。
診療報酬ファクタリングは、資金調達の選択肢の一つに過ぎません。
計画性と柔軟性はセットで考えるべきであり、柔軟性を失うと計画的なファクタリングはできなくなります。
「ファクタリングありき」になると、複数の資金調達方法を比較検討することができず、柔軟性を失います。
その結果、無計画なファクタリングを繰り返し、徐々に資金繰りの悪化していくのです。
手数料が安いとはいえ、ファクタリングのたびに利益が目減りすることは避けられません。
利益率が低い歯科医院が、ファクタリングによってさらなる利益率の低下を招くと、銀行融資を受けられなくなる可能性が高いです。
この場合、資金繰りと同時に資金調達環境も悪化するのですから、一層深刻なファクタリング依存に陥るでしょう。
したがって、歯科医院が診療報酬ファクタリングを活用するには、計画的な利用を心がけてください。
計画性に自信がない歯科医院には、コンサルティングを行っているファクタリング会社がおすすめです。
No.1でも、資金繰り・資金調達に精通したコンサルタントが複数在籍しています。
お客様のご希望や状況に合わせて、最適なファクタリングプランをご提案します。

掛け目を設定する業者も

歯科医院のファクタリングは、掛け目に注意してください。

掛け目とは

一般的に、掛け目は銀行融資で用いられる概念です。
銀行が担保付きで融資する際には、担保価値に一定の率(掛け目率)を掛けた額を上限とします。
例えば、不動産担保の掛け目は70%程度が中間値です。
1億円の不動産と担保とする場合、掛け目率70%ならば融資限度額は7000万円です。
掛け目によって3000万円の余裕を見積もることで、資産価値の下落に備えることができます。
また、融資先が債務不履行に陥り、いざ競売という流れになった場合も、本来の担保価値より割安に売り出すことでスピーディに処分できます。
つまり、掛け目は安全性を確保するための仕組みです。
通常のファクタリングでは、掛け目を設定しない業者もたくさんあります。
これに対し、診療報酬ファクタリングは掛け目を設定するケースが多いです。
歯科診療報酬は、ファクタリング後にレセプトの問題が発覚し、支払額が減額されることがあります。
掛け目をとっておけば、大幅な減額でない限り買取価格を割り込むことはなく、ファクタリング会社は危険を回避できます。

掛け目の具体例

診療報酬ファクタリングの掛け目は85%程度が目安です。
1000万円の歯科診療報酬を掛け目率85%でファクタリングする場合、買額面金額のうち850万円が買取対象となり、150万円の部分は掛け目となります。
手数料率が1%であれば、買取部分の850万円から1%の手数料を差し引き、841万5000円が入金されます。
このように、掛け目があることによって資金調達に利用できる部分が減少し、調達効率が低下するのです。
なお、歯科診療報酬が無事に回収できれば、掛け目部分の150万円は歯科医院に返還され、ます。

歯科医院の掛け目の考え方

基本的に、売掛金を効率的に利用したい歯科医院にとって、掛け目は望ましくありません。
とはいえ、掛け目を設定しない業者では、何らかの対策を講じている場合が多いです。
例えば、掛け目を設定しない代わりに、買取上限を数百万円に抑えるケースがあります。
その場合、仮に歯科診療報酬が減額になったとしても、買取額が少額であるため、業者側の損失も軽微です。
小規模な歯科医院ならばこのような診療報酬ファクタリングでも役に立ちますが、それなりに規模が大きい歯科医院や、まとまった資金を調達したい歯科医院には使い勝手が悪いでしょう。
したがって、歯科医院のファクタリングでは掛け目をある程度受け入れ、できるだけ掛け目の設定が有利なファクタリング会社を選ぶのがポイントです。

契約期間に注意

ファクタリングには、資金調達が必要なときに単発で利用する場合と、継続的に利用を続ける場合とがあります。
通常のファクタリングは、単発利用が好まれる傾向があります。
ファクタリング会社の方でも、特に契約期間を設けていないことが多いです。
しかし、診療報酬ファクタリングは契約期間を定めるケースが多いため注意してください。
契約期間は1年間が一般的ですが、具体的な条件は業者によって様々です。
「1年間の契約期間中、毎月一定額を必ずファクタリングしなければならない」という契約もあれば、「1年間の契約期間中、必要に応じて自由にファクタリングできる(利用の金額やペースに縛りがない)」という契約もあります。
契約期間中、毎月必ずファクタリングしなければならない契約は、他の条件(手数料など)がよほど良くない限りおすすめできません。
資金調達が必要ないタイミングでも、契約に沿ってファクタリングする必要があり、無駄な手数料負担が発生するためです。
さらに、このような不利な条件を設定している業者では、解約にも制限を課しているケースがみられます。
例えば、「中途解約のためには3ヶ月前に告知が必要」とする業者がありますが、これは「ファクタリングが不要になってから、少なくとも3ヶ月間はファクタリングを続け、無駄なコストを負担しなければならない」ということです。
また、中途解約によって違約金が発生する契約も珍しくありません。
初めてファクタリングを利用する歯科医院は、契約期間についてしっかり理解することが大切です。
契約期間について不安なお客様は、No.1までお気軽にご相談ください。

まとめ:治療技術の向上とともに資金繰りを上手くできることが歯科医院経営成功のポイント

いまや歯科医院は都市部を中心に競争が激化しています。

この競争に打ち勝って歯科医院を継続して経営していくためには、日々研鑽して治療技術を向上させることはもちろんのこと、優秀なスタッフを確保し、広告宣伝やインテリアなどに工夫を凝らし自院の価値を上げることが重要です。

そのためには必要な運転資金を確実に確保していく必要があります。

その方法の1つとしてファクタリングも有効な手段の1つではないでしょうか。

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