カテゴリー: ファクタリング
手形割引とファクタリングの違い6つ!自社に有利な資金調達方法は?
ファクタリングとは、売掛債権(売掛金)に対して手数料やリスクテイキング費用を割り引いて、早期に資金化する手法です。
このように聞くと、「手形割引とどこが違うの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。
確かに、手形割引とファクタリングには「売掛債権(売掛金)を早期に資金化する手法」という大きな共通点がありますが、「貸し倒れリスク」や「審査の難易度」などは全く異なっています。
そこで今回は、手形割引とファクタリングの違いについて6つの項目で比較してみました。
手形割引とは?
割引とは、取引の売上代金として現金の代わりに受け取った「受取手形」を、支払期日前に金融機関または手形割引業者などに買い取ってもらい、資金化する資金調達方法です。
手形の支払期日前に資金化するわけですから、手形の支払期日までの金利を割引料として支払うことになります。
割引された手形は、支払期日に支払地の金融機関へ取り立てにより決済され、資金が回収されるのです。
都市銀行や信用金庫などの一般的な金融機関を利用できるため、お互いに信用し合った企業同士の取引として、非常に活発に用いられています。
ただし、割引された手形の不渡りが発生した場合、該当手形の金額を割引依頼人が弁済しなくてはなりません。
そのため、最近では支払期日の短い取引の増加も相まって、割引手形を使う機会は減少している傾向が見られます。
手形の種類と特徴
有価証券の一種である手形は「商業手形」とも呼ばれており、下記の2種類に分けられます。
▼手形の種類
- 約束手形:2社間の取引用で、国内で発行される手形の90%以上に相当
- 為替手形:3社間の取引用で、2企業+1金融機関が一般的
どちらも、「印字された金額を特定日までに支払いますよ!」と約束した証明書で、債務者から受け取った時点で受取手形として扱われます。
ちなみに、普及率の高さから一般的には「手形=約束手形」と認知されているのが実情です。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、売掛債権(売掛金)に対して手数料やリスクテイキングのための料金を割り引いて、早期に資金化する新しいタイプの資金調達方法です。
銀行融資や増資よりも資金化までのスピードが速いうえ、銀行の融資履歴に残らないため負債あつかいにならないなど、特に中小企業や個人事業主様にとって魅力的なメリットが揃っています。
より詳しい種類やメリット・デメリット、利用事例については「ファクタリングとは?」を参照して下さい。
手形割引とファクタリングの共通点
資金繰りの安定化を目指す事業主様にとって、何かと混同されがちな「手形割引」と「ファクタリング」。
その理由は、手形割引とファクタリングには下記の共通点があるからでしょう。
▼手形割引とファクタリングの共通点
- 手形割引に必要な「受取手形」とファクタリングに必要な「売掛金」は、掛取引で発生した「売掛債権」の一種
- 売掛債権を譲渡することで現金が得られる、資金化の手段
- 早期の資金化が可能
売掛債権(売上債権)とは?
商品の販売やサービス提供を行った相手に対し、支払いを請求できる権利のことを「債権」と言います。
つまり、「売掛債権」とは掛取引(信用取引)で発生した売上代金の支払いを請求できる権利のことを指しているのです。
ちなみに、売掛債権は「売上債権」とも呼ばれています。
譲渡対象の違い
手形割引とファクタリングの最も大きな違いは、「譲渡する対象」が異なるという点です。
- 手形割引:契約書や請求書などを基に、帳簿上の「売掛金」を譲渡する
- ファクタリング:現物の有価証券である「受取手形」を譲渡する
確かに、受取手形も売掛金も「売掛債権の一種」という点は共通していますが、手形割引やファクタリングが売掛債権の種類を問わず利用できるという訳ではありません。
受取手形を資金化する時には手形割引が、売掛金を資金化する時にはファクタリングが、といった具合に売掛債権の種類と資金調達方法には相性があるのです。
貸し倒れリスクの違い
割引手形であろうとファクタリングであろうと、資金調達をする時には必ずリスクを考えなければなりません。
たとえば、融資による資金調達であれば必ず返済義務が生じます。
返済ができなくなると会社としての信用が損なわれるのはもちろん、新たな資金調達も難しくなってしまうでしょう。
そこでこの段落では、企業の資金調達方法である手形割引とファクタリングの「貸し倒れリスク」について比較してみました。
仮に資金調達に利用していた売掛債権が貸し倒れてしまったら、どうなってしまうのでしょうか?
手形割引の貸し倒れリスクとは?
結論から言うと、手形割引には貸し倒れリスクが常につきまといます。
そもそも手形割引は法律的には「手形の売買」と考えられていますが、実質的には手形を担保にした「融資」と位置づけられているのです。
手形を担保に入れることによってお金を借りる、と言った方がイメージしやすいかもしれません。
▼売却と融資の違い
- 売却:「売却後に債権がどうなっても知らない」と主張できる
- 融資:あくまで手形は担保なので、融資後も弁済責任が残る
仮に手形割引を利用している最中に対象の手形が貸し倒れた場合、自社(割引依頼人)が支払わなければなりません。
なぜなら、金融機関には「手形の買戻請求権」が認められているからです。
手形の買戻請求権とは?
通常、手形割引は金融機関が手形の支払期日に支払人から取り立てを行うことで、回収される仕組みになっています。
しかし、回収される前に不渡りが起きてしまうと、法律上は「手形割引=手形の売買」という解釈が成り立っているため、該当の手形は「事故扱い(延滞融資)」と見なされるのです。
つまり、手形割引が不渡りになった場合、その手形の金額を割引依頼人が弁済しなければなりません。
言い換えれば、「手形の売買」が成立した時点で取引が終了する訳ではなく、契約が成立した後も金融機関には手形の買戻しを要求する権利、つまり「手形の買戻請求権」が留保されているのです。
なお、金融機関が割引依頼人に対して「手形を買い戻して下さい!」と要求できる代表的なケースとして、下記の3例が挙げられます。
▼手形の買戻請求権が主張できるケース
- 手形に不渡りが生じた時
- 手形の信用性に問題がある時
- 割引依頼人の信用性に問題がある時
手形割引の貸し倒れスタディケース
たとえば500万円の手形を手数料率10%で手形割引を行ったとします。
入金される額は450万円ですが、貸し倒れが発生したら金融機関または業者側に対して500万円を自社(割引依頼人)が支払わなければなりません。
さらに、割引依頼人は売掛先に対する回収業務も行わなければならないのです。
手形割引の貸し倒れ率は高いのか?
確かに手形割引は貸し倒れリスクが伴う資金調達方法ですが、だからと言って「手形の貸し倒れ率」が極端に高いという訳ではありません。
手形の支払いができなくなることを「不渡り」といい、6カ月以内に2回以上の不渡りが出ると銀行から取引停止の処分を受けます。
つまり、企業の業績が悪化して手形の支払いができなくなるのは本当に最後の最後、事実上の倒産に陥った時なのです。
したがって融資扱いの手形割引であっても、売掛先の経営状態がよほど悪化しない限り貸し倒れにはなりません。
ファクタリングの貸し倒れリスクは?
ノンリコースファクタリングの場合、貸し倒れリスクは一切ありません。
実質的に融資あつかいの手形割引とは異なり、ファクタリングの場合は100%「債権の売却」です。
自社の売掛債権(売掛金)をファクタリング業者に売却してしまうので融資ではありません。
だからこそ、仮に売掛先が倒産したとしても全てのリスクは「償還請求権」を持っていないファクタリング業者が背負うことになります。
償還請求権とは、支払えなくなった売掛先の代わりにファクタリングを依頼した企業へ補償を請求できる権利のことです。
ただし、ファクタリングは償還請求権の有無によって下記の2種類に分けられます。
- リコース(ウィズリコース):償還請求権があり、貸し倒れリスクは依頼企業が負う
- ノンリコース:償還請求権がなく、貸し倒れリスクはファクタリング業者が負う
償還請求権なしの「ノンリコース」であれば、取引先の状況に影響を受けることなく資金調達ができるので、「不安定な資金調達はしたくない」といった企業に向いています。
また、「2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2つの取引方法があるけど、どちらにも貸し倒れリスクはないの?」といった疑問を持っている方もいるでしょう。
「償還請求権なし」のファクタリングであれば、2社間ファクタリングであろうと3社間ファクタリングであろうと貸し倒れリスクはありません。
つまり、ノンリコースファクタリングの場合は、たとえ売掛先が倒産したとしてもファクタリング業者に請求されることはないのです。
このように、貸し倒れリスクだけをみると手形割引よりもファクタリングの方が圧倒的に有利となります。
実際に売掛債権(売掛金)の貸し倒れリスクを引き下げるためにファクタリングを利用している企業もあるほどです。
怪しい取引先の売掛債権(売掛金)をお持ちなら、ファクタリングによるリスクヘッジを検討してみてはいかがでしょうか。
コスト(手数料)の違い
手形割引とファクタリングの違いについて、最も意識しておきたいのはやはり手数料の大きさでしょう。
ここからは、手形割引とファクタリングそれぞれの手数料相場について解説します。
手形割引のコスト(手数料)は?
手形割引は銀行とノンバンクで行われており、どちらを選ぶかで手数料が大きく異なっています。
▼手数料率の比較
- 都市銀行や地方銀行:1~3%程度
- 信用金庫や信用組合:3~5%程度
- ノンバンク:3~15%程度
上記の通り、手形割引の手数料率は銀行の方が圧倒的に抑えられています。
だからといって、必ずしも銀行がおすすめとは限りません。
そもそも手形割引は、手数料率の高低によって「審査の難易度」が大きく異なっているからです。
手数料率が低いほど審査が厳しく、資金化までの時間も長くなります。
手形割引の手数料スタディケース
では、実際の手形割引ではどの程度の手数料が差し引かれるのでしょうか?
例題として、額面300万円の受取手形の手数料を算出してみましょう。
手数料率が10%の場合、手数料は300万円×10%=「30万円」です。
よって実際の受取額は、額面300万円-手数料30万円=「270万円」という結果になります。
ファクタリングのコスト(手数料)は?
ファクタリングの手数料率は、2社間か3社間かによって相場が異なっています。
▼取引方法による手数料相場の違い
- 2社間ファクタリングの手数料率:10~20%程度
- 3社間ファクタリングの手数料率:1~5%程度
どちらも手数料率の幅が広いのが特徴ですが、基本的に2社間よりもファクタリング取引に売掛先を含めた3社間の方が有利に設定されています。
3社間の場合、直接ファクタリング業者自体に売掛債権(売掛金)が振り込まれるので、ファクタリング業者としてはリスクが低いと判断し、手数料率を低く設定しているのです。
一方、2社間ファクタリングの契約には「ファクタリング業者」と「申し込み企業」しか関わりません。
売掛債権(売掛金)の受け取りも通常通りに申し込み企業が行い、申し込み企業からファクタリング業者へ振り込まれます。
よって2社間取引はファクタリング業者からみるとリスクが高いと判断され、結果として手数料が高くなってしまうのです。
リスクテイキングはできますが、確実に回収できるお金は目減りしてしまうというのが、ファクタリングの弱点でもあります。
なお、手数料の詳細や2社間・3社間の違いについては下記の記事を参照して下さい。
業者の安全性の違い
手形割引とファクタリングは相対的に審査難易度が低いので、融資の審査に落ちてしまった事業者様でも利用できる可能性があります。
だからといって、すべての業者が安全とは限りません。
そこでこの段落では、手形割引業者とファクタリング業者の安全性について比較してみました。
どちらの方が、より安心して利用できるのでしょうか?
手形割引業者の安全性は?
結論から言うと、手形割引業者の安全性は非常に高く評価されています。
その裏付けとなっているのが「貸金業法」の存在です。
貸金業法とは、銀行だけでなくノンバンクや消費者金融なども厳守しなければならない法律です。
様々な取り決めがあり、「お金を貸す」という行為に対して厳しい規制が設けられています。
そもそも手形割引の法律上の解釈は「手形を担保に入れた融資」です。
したがって、すべての手形割引業者は規模の大小にかかわらず「貸金業」に該当し、貸金業法を守らなければなりません。
第2条(定義)
この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は当該方法によってする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。引用:貸金業法第1章総則
手形割引業者が貸金業法を守らなかった場合、業務停止はもちろん貸金業の登録取消という重い処分が下されるケースもあるため、安全性は比較的高いと判断できます。
手形割引業者の安全性は100%とは言えない
ただし、貸金業法による規制があるからといって、すべての手形割引業者が安全とは言えません。
消費者金融業者も貸金業法によって規制を受けていますが、それでもヤミ金は存在しています。
ではどうやって業者の安全性を見極めれば良いのか、その目安となるのが「貸金業登録」です。
▼貸金業登録の有無による傾向
- 貸金業登録をしている業者:貸金業法を守っている
- 貸金業登録をしていない業者:貸金業法を守っていない
貸金業登録をせずに手形割引を含めた融資を実施している業者は「ヤミ金」である可能性が濃厚です。
よって、手形割引を利用する場合には、必ず業者の貸金業登録を確認してください。
貸金業登録に関しては金融庁のホームページから簡単に確認できます。
業者名からでも検索できるので、すでに利用を検討している業者が決まっている場合は、あらかじめチェックしておきましょう。
ファクタリング業者の安全性は?
残念ながら、ファクタリング業界には少なからず危ない業者が紛れ込んでいます。
本来ファクタリングは、売掛債権(売掛金)を売却することによって現金を得る資金調達法です。
今まで多くの企業を救ってきました。
その反面、ファクタリングの名を語った単なる担保融資のケースも数多く報告されています。
▼危険なファクタリング業者の手口
- 100万円の売掛金を担保として受け取り、50万円を渡す
- 期日になったら売掛金額の100万円を請求してくる
上記のケースで換算すると、なんと手数料率は100%にものぼります。
このように法外な手数料率を平気で設定してくるヤミ金も紛れ込んでいるので、ファクタリング会社の選定には注意が必要です。
特に下記のようなケースは典型的なヤミ金の手口ですから、ファクタリング会社を選ぶ際の参考にして下さい。
▼避けるべきファクタリング業者の特徴
- 担保や保証人を要求される
- 契約書がない、契約書の控えをもらえない
- 連絡は固定回線ではなく携帯電話を使用
- 公正証書の作成を要求される
- 事務所の所在が不明
- 自社の株式譲渡を要求される
なぜファクタリング業界には危ない業者が紛れ込んでくるのか?
最大の理由は、ファクタリングが「貸金業法」の対象外だからでしょう。
貸金業法の対象外であることを逆手に取り、ヤミ金のような法外な手数料を徴収しようとする業者が紛れ込んでくるのです。
なお、資金調達のパートナー選定に迷った場合は「失敗しないファクタリング会社の選び方」ご一読ください。
審査難易度の違い
資金調達をするためには、審査を突破しなければならないものがほとんどです。
融資であれば必ず審査を受け、業者側の基準をクリアしなければなりません。
ここからは、手形を担保に入れた実質的な融資である「手形割引」と売掛債権(売掛金)の売却である「ファクタリング」の審査難易度を比較してみます。
手形割引の審査難易度は?
手形割引の審査難易度はファクタリングよりも格段に高く、時間がかかるのが特徴です。
▼手形割引の審査内容
- 「売掛先」の経営状態や信用度
- 「手形を持ってきた人物や会社組織」の経営状態や信用度
- 担保である「受取手形」の質
ファクタリングよりも審査難易度が高い最大の理由は、「自社の返済能力が審査で問われる」からです。
手形割引には「不渡り買戻し」という仕組みがあるため、売掛先だけでなく手形割引の申し込み者(割引依頼人)に対する審査もしっかり行います。
そもそも、手形割引はあくまで手形を担保に入れた実質的な「融資」なので、返済能力の審査は避けられません。
「業況」「担保の質」なども詳細に審査されるため、金融機関とのパイプが太く安定した企業であれば、すぐにでも資金化できるでしょう。
一方、まだまだ信用が薄かったり、経営不振によってキャッシュフローが悪化したりしていた場合は、手形割引を断られてしまう可能性も十分にあるのです。
割引手形は資金化で完了ではない!
「とりあえず手形割引が資金化されればOK」と思われる方も多いでしょう。
しかし、手形割引によって資金化に成功した後に貸し倒れ状態になってしまったら、結局は自社(割引依頼人)で弁済しなければなりません。
手形割引業者としては、手形が資金化されようがされなかろうが関係なく、「事故(不渡り)が起これば返済はしっかりとしてもらう!」といった考え方なのです。
もちろん、貸し倒れたからといって返済を猶予してくれることもありません。
手形割引の審査に通りにくいケース
手形割引の審査は、振出人の会社の信用だけで100%決まる訳ではありません。
手形割引業者の審査では、最も重要な振出人の会社の信用状況だけでなく、あらゆる要素を多角的に判断して可否を決定します。
大手企業であれば、公式ホームページに掲載されているIR情報や決算情報などもチェックされるのです。
一方、中小企業であれば「東京商工リサーチ」や「帝国データバンク」などの企業情報を参考にします。
また、手形割引業者が利用できる信用情報機関に照会して振出人の手形の振出状況や決済状況を確認し、売上規模に見合った手形振出し残高なのかもチェックされるのです。
手形の裏書人がいる場合には、裏書人との関係性だけでなく裏書人の信用度まで審査対象に含んでいる手形割引業者も少なくありません。
場合によっては、振出人の信用よりも裏書人の信用で可否を審査することもあるのです。
ちなみに、銀行などの大手金融機関で手形割引を行う場合、自社が以下のような状態であると審査は突破しづらくなります。
▼手形割引の審査に通りにくいケース
- 創業したばかりである
- 税金未納状態である
- 債務超過状態である
- 赤字決算が続いている
つまり、自社(割引依頼人)の返済能力が低いと判断されるような状況ほど、審査のハードルは高くなるのです。
創業したばかりであると、取引先が確立されていないかもしれません。
売上も不透明ですよね。
税金未納であれば、「すでに資金がショートしているのでは?」と疑われるでしょう。
経営が行き詰まっている可能性が見つかれば、金融機関が警戒するのも当然です。
債務超過の場合は、「月々の返済が滞っていそうだから返済能力が低いかも…」と推察されるでしょう。
ちなみに、赤字決算については「直前の1期のみ」であれば、手形割引の審査にほとんど影響を与えません。
しかし2期以上続いて赤字決算になっている場合には、審査でかなり不利になってしまいます。
ファクタリングの審査難易度は?
一方、ファクタリングの場合は審査の対象が「売掛先企業」に注力されているため、難易度が低く時間もかかりません。
まずは、手形割引とファクタリングの審査対象の違いを見てみましょう。
▼審査対象の違い
- 手形割引の審査対象:振出人+手形持込会社(自社)
- ファクタリングの審査対象:売掛先
ファクタリングでも自社は一定の審査を受けますが、そもそも売掛債権(売掛金)を支払うのは売掛先です。
よって、審査対象のメインは売掛先となります。
ファクタリングについては、自社が創業間もなかったとしても税金未納であったとしても、赤字が2期以上続いていたとしても利用できたケースは枚挙に暇がありません。
債務超過でもファクタリングなら利用できるチャンスがあるのです。
詳しくは、「ファクタリングのメリット8つ」を参照して下さい。
資金調達スピードの違い
ファクタリングと手形割引では、資金調達スピードも大きく異なります。
緊急の場合はもちろん、どんな資金調達でもスピードは気になるもの。
それぞれの資金調達スピードを比較してみましょう。
手形割引の資金調達スピードは?
手形割引の資金調達スピードは、ファクタリングに比べて遅いです。
手形割引業者で割り引く場合、最短即日で資金調達できることもありますが、多くの場合には条件が揃わないため、基本的には数日を要します。
銀行で手形割引するならば、それ以上の日数を要するものと考えてください。
これは、手形割引の手続きが特殊だからです。
手形割引は、受取手形を売却することで資金を調達しますが、厳密には「銀行や手形割引業者に受取手形を譲渡し、資金を調達する」という点に注意が必要です。
受取手形を譲渡する際には、手形割引でも裏書譲渡でも、手形の現物に裏書して譲渡する必要があります。
現金が振り込まれるのは、あくまでも手形の受領が完了した後です。
つまり、銀行や手形割引業者に対して手形の現物を受け渡さなければ成り立ちません。
このため、手形割引では、
- 業者を直接訪問し、受取手形に裏書して譲渡する
- 業者の裏書した受取手形を郵送して譲渡する
- 業者から自社を訪問してもらい、受取手形に裏書して譲渡する
といったやり取りを必ず行います(銀行で手形割引する場合、1が一般的)。
最もスピーディなのは、近所の手形割引業者に受取手形を持ち込み、現金の手渡しを受けることです。
しかし、手形割引業者の営業所が遠方であれば、そう簡単には訪問できません。
2か3の方法で手形を受け渡すことになります。
郵送を選ぶ場合、配達に数日を要します。
手形割引業者から訪問を受けるにしても、遠方であれば業者側の都合もありますから、数日後になることも多いです。
このような理由により、手形割引の資金調達には時間がかかります。
ファクタリングの資金調達スピードは?
ファクタリングの資金調達スピードは、色々な資金調達方法がある中でもダントツにスピーディです。
これまで、スピーディな資金調達方法といえばノンバンクからの借入や手形割引が一般的でしたが、ファクタリングはそれを上回ります。
ファクタリングの資金調達スピードは方式によって異なり、目安は以下の通りです。
- 2社間ファクタリング:最短即日
- 3社間ファクタリング:最短1週間
- オンラインファクタリング:最短数時間
これらの方式のうち、最も普及しているのは2社間ファクタリングです。
2社間ファクタリングを提供しているファクタリング会社の多くは、最短即日対応を売りにしています。
ただし、大手になると2社間ファクタリングでも「最短2営業日」「初回利用は最短5営業日」といったケースがあるため注意してください。
3社間ファクタリングの場合、手形割引と同様の理由によって、最短でも1週間はかかります。
3社間ファクタリングでは、売掛先に債権譲渡通知書を送付したり、売掛先から債権譲渡承諾書を受け取ったりする必要があるため、郵送に1週間程度を見積もっておくべきです。
このほか、最近徐々に普及しつつあるオンラインファクタリングは、最短数時間で対応するサービスが増えています。
申し込みから契約まで全てオンラインで手続きするため、従来の方式に比べて圧倒的にスピーディです。
No.1のオンラインファクタリングサービスも、最短60分での入金実績が多数あります。
スピーディに資金調達したい場合には、手形割引ではなくファクタリングを選びましょう。
手軽さの違い
手軽さの違いにも注目です。
手形割引もファクタリングも、手軽に利用できる方法として知られています。
しかし、依頼先や仕組みの違いによって、手軽さにも差が出てきます。
基本的なイメージは以下の通りです。
オンラインファクタリング≫2社間ファクタリング≧手形割引業者の手形割引≧3社間ファクタリング≫銀行の手形割引
具体的な手続きの流れから、手軽さを比較してみます。
手形割引の手軽さは?
手形割引を銀行に依頼する場合、あまり手軽とはいえません。
ここでは、手形割引業者に依頼した場合の手軽さを考えていきます。
手形割引の流れは以下の通りです。
- 手形割引業者に手形割引を申し込む。
- 手形割引業者の求めに応じて、必要な情報を提供する。
- 手形割引業者が審査を実施し、手形割引の可否と条件が決まる。
- 手形割引業者は利用会社に手形割引の見積額を提示し、問題なければ合意する。
- 対面取引もしくは郵送によって手形を受け渡す。
- 手形の受領後、現金が振り込まれる。
この流れを見ても分かる通り、手形割引の手続きは大して複雑ではありません。
特に、最近ではスマホアプリなどを提供する手形割引業者もあり、アプリ内で見積もり・申し込み・書類の提出などが完了することも増えてきました。
ただし、「資金調達スピードの違い」でも解説した通り、手形割引は対面あるいは郵送で手形を受け渡す必要があります。
遠方の会社にとって、手形割引は必ずしも手軽とはいえません。
手形割引業者の営業所が近所にあれば、それなりに手軽に利用できるはずです。
ファクタリングの手軽さは?
ファクタリングの流れは、ファクタリング方式によって異なります。
2社間・3社間の流れから、手軽さを見ていきましょう。
2社間ファクタリングの場合
2社間ファクタリングの流れは以下の通りです。
- 利用会社からファクタリング会社に、2社間ファクタリングを申し込む。
- 利用会社は審査に必要な情報(書類)を提供する。
- ファクタリング会社は審査を実施し、ファクタリングの可否と条件を決定する。
- 条件に問題がなければファクタリング契約を結ぶ。
- 契約締結後、現金が振り込まれる。
ファクタリングも、見積もり・申し込み・書類提出などをオンラインで簡単にできます。
また、一般的な2社間ファクタリングは対面で契約するため、この点でも手形割引とよく似ています。
したがって、2社間ファクタリングと手形割引の手軽さはさほど変わりません。
ただし、オンラインファクタリングを利用する場合は別です。
4で契約を結ぶ際、オンラインファクタリングはオンライン上で契約を結びます。
対面取引の必要がありませんから、手続きの負担を大幅に軽減できます。
手軽に資金調達したい場合、オンラインファクタリングがおすすめです。
3社間ファクタリングの場合
3社間ファクタリングの流れは、2社間ファクタリングに比べて複雑です。
- 利用会社から売掛先に対し、事前にファクタリングの利用を相談し、内諾を得ておく。
- 利用会社からファクタリング会社に、3社間ファクタリングを申し込む。
- 利用会社は審査に必要な情報(書類)を提供する。
- ファクタリング会社は審査を実施し、ファクタリングの可否と条件を決定する。
- 条件に問題がなければ、まずは利用会社とファクタリング会社の2社間でファクタリング契約を結ぶ。
- 契約締結後、利用会社から売掛先に債権譲渡通知書を送付する。
- 売掛先が債権譲渡承諾書にサインし、ファクタリング会社に返送する。
- 手続きに不備がなければ、3社間での取引が成立する。
- 現金が振り込まれる。
3社間ファクタリングには売掛先が絡みますから、ファクタリングの利用を相談したり、債権譲渡通知書を送ったり、債権譲渡承諾書を受け取ったり、色々な手続きが発生します。
もちろん、このような手続きの分だけ手軽さが損なわれます。
資金調達後の流れの違い
手形割引もファクタリングも、資金調達の後にいくつかの手続きが必要です。
仕組みの違いを理解する参考になりますから、それぞれ比較してみましょう。
手形割引の資金調達後の流れは?
受取手形の回収は、売掛金の回収とは異なります。
手形の代金を回収する際には、取引銀行に受取手形を持ち込んで代金を取り立てる必要があり、ただ手形を持っているだけではお金が入ってくることはありません。
手形割引を利用した場合はどうでしょうか?
手形割引は裏書譲渡の一種であり、本来ならば自社が取り立てるはずだった受取手形を、銀行や手形割引業者に譲渡しています。
支払期日になると、受取手形の譲渡を受けた銀行や手形割引業者が取り立てを行うため、手形割引を依頼した会社は、特に回収実務をこなす必要はありません。
もし、割り引いた手形が不渡りになれば、依頼した会社は買い戻しを請求されますが、無事に回収できた場合にはその時点で手形割引の取引は完了となります。
手形割引は「受取手形を担保にした融資の一種」とも言えますが、依頼した会社は手形の取り立てを行わず、返済する必要もないのです。
ファクタリングの資金調達後の流れは?
ファクタリングの資金調達後の流れは、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングで異なります。
2社間ファクタリングの場合
2社間ファクタリングでは売掛先が関与しないため、売掛先はファクタリングを利用した事実を知りません。
ファクタリングによって、債権者(売掛金の所有者)が利用会社からファクタリング会社に変わりますが、売掛先はそれを知らないのです。
そこで、支払期日になると、売掛先はファクタリング会社ではなく利用会社に代金を支払います。
利用会社は、売掛先から受け取った代金をそのままファクタリング会社に振り込み、2社間ファクタリングが完了します。
売掛金回収の流れは「売掛先→利用会社→ファクタリング会社」となるわけです。
利用会社が、売掛先の回収を仲介・代行している形になります。
この流れに備えて、ファクタリング契約の際には債権譲渡契約だけではなく、売掛金回収代行委託契約も結びます。
3社間ファクタリングの場合
3社間ファクタリングは、2社間ファクタリングに比べてシンプルです。
というのも、手続きの流れの中で、売掛先に債権譲渡承諾を取り付けているからです。
売掛先は譲渡承諾書の中で、利用会社がファクタリング会社に対して、売掛金を譲渡することを承諾します。
これは、債権者がファクタリング会社に変わるのを認めることにほかなりません。
同時に、代金の支払先が利用会社からファクタリング会社に変わることも認めるため、支払期日になると、売掛先は利用会社に支払うのではなく、ファクタリング会社に直接支払います。
このため3社間ファクタリングでは、利用会社が回収を代行する必要もなくなり、資金調達後にすべきことは特にありません。
資金繰りへの影響の違い
資金調達方法は色々あり、利用することによって資金繰りにプラスになる方法もあれば、マイナスになる方法もあります。
会社の置かれている状況やニーズ、あるいは計画性などによっても、資金繰りへの影響が変わってきます。
手形割引とファクタリングを利用する際にも、資金繰りへの影響と根拠を理解し、なるべくプラスになることを目指しましょう。
手形割引の資金繰りへの影響は?
手形割引では、会社が所有している手形を使って資金を調達します。
この「手形を利用する」というところに、手形割引の資金繰り改善効果があります。
手形は、売掛金に比べて回収サイトが長いのが問題です。
回収サイトが短い場合には30日程度になることもありますが、60日以上に設定するのが一般的であり、90日・120日などの設定も珍しくありません。
支払企業にとっては、支払期日を売掛金よりも先延ばしにできるのが、手形で決済するメリットでもあります。
売り手企業から見れば、回収サイトの長期化は資金繰りの大きな負担になります。
手形割引を利用することにより、90日サイトや120日サイトの手形も早期に回収できるのですから、資金繰り改善効果は大きいといえるでしょう。
ファクタリングの資金繰りへの影響は?
ファクタリングの資金繰り改善効果は、手形割引とは別の考え方をします。
というのも、売掛金の回収サイトは1ヶ月程度が一般的であり、長くても2ヶ月以内に回収できるからです。
もちろん、たとえ1~2ヶ月程度であっても、それを待たずに早期回収できるメリットは大きいでしょう。
しかし、ファクタリングはそれ以外にも資金繰りに役立つメリットがあるのです。
上記の通り、ファクタリングは償還請求権なしの契約です。
これにより、貸し倒れ損失を回避して資金繰りの安定性を高めたり、与信管理コストをカットして負担を軽減したりすることにつながります。
このほか、スピーディに資金調達できることも、資金繰りにとってプラスです。
緊急の資金需要が発生した場合、手形割引では資金調達に間に合わないことがあります。
その場合、スピーディに融資してくれるノンバンクを利用するのが普通です。
ノンバンクの借入は高金利のため、資金繰りの負担になります。
また、ノンバンクからの借入は信用情報機関に記録され、会社の信用を大きく損なう原因にもなります。
ノンバンクから借り入れた事実があるだけで、銀行が融資を断ることも珍しくありません。
ある銀行から融資を断られると、他の銀行も一斉に手を引くのはよくあることです。
その結果、銀行融資が利用できなくなり、資金繰りが行き詰る可能性もあります。
スピーディに調達できるファクタリングを活用すれば、このような流れに陥ることもなく、資金繰りを維持できます。
財務への影響の違い
手形割引とファクタリングは、それぞれ財務にどのような影響を与えるのでしょうか?
貸借対照表に表れる動きから、その違いを比較してみましょう。
手形割引の財務への影響は?
売掛先から手形を受け取った場合、その受取手形は貸借対照表に流動資産として計上します。
流動資産とは、その名の通り「流動性の高い資産」のことであり、具体的には「1年以内に現金として利用できる資産」のことです。
例えば、以下のような資産が流動資産に含まれます。
- すぐにでも利用できる「現金・預金」
- 1ヶ月程度で回収予定の「売掛金」
- 数ヶ月以内に回収予定の「受取手形」
- 数ヶ月以内に販売し、その後さらに数ヶ月以内に代金を回収する「棚卸資産(商品や原材料)」
手形割引では、受取手形を銀行や手形割引業者に売却(譲渡)するため、割り引いた手形を流動資産から差し引く必要があります。
同時に、調達した金額を流動資産の「現金・預金」に計上し、また同額を負債の部に「割引手形」として計上しなければなりません。
負債の部に計上する理由は、手形割引には「手形を担保にした融資」という側面があるからです。
割引手形は、割り引いた手形の支払期日まで計上しておきます。
つまり、手形割引を利用した場合、貸借対照表の資産の部では「増加(現金・預金)」と「減少(受取手形)」の動きが、負債の部では「増加(割引手形)」の動きが生じるのです。
これが、財務的には悪影響となります。
例えば、手形割引前の負債が500万円、純資産が500万円の場合、自己資本比率は50%です。
この会社が手形割引で100万円調達すると、手形割引後の負債が600万円になるため、自己資本比率は45%に低下します。
手形割引では、それほど大きな金額を調達するわけではなく、財務的な影響は軽微です。
とはいえ、いくらかの悪影響は避けられません。
ファクタリングの財務への影響は?
手形割引と同じ考え方で、ファクタリングの影響も見ていきましょう。
ファクタリングで売却する売掛金も、受取手形と同じく流動資産に含まれます。
ファクタリングを利用した際には、売却した売掛金の金額を流動資産から差し引きます。
手形割引との大きな違いは、負債が増加しないことです。
ファクタリングは償還請求権なしの取引であり、売掛金を担保に融資を受けるものではありません。
あくまでも資産の売却ですから、割引手形のように負債の部に計上する必要がなく、ただ流動資産の「現金・預金」として、調達したお金を計上するだけです。
以上のことをまとめると、ファクタリングを利用した際には、貸借対照表の資産の部で「増加(現金・預金)」と「減少(売掛金)」の動きが生じ、負債の部はそのままです。
負債が増加しないのですから、財務的な悪影響もありません。
財務内容の改善を目指すならば、手形割引よりもファクタリングを利用しましょう。
まとめ
最後に、手形割引とファクタリングの違いを一覧表にまとめてみました。
手形割引 | ファクタリング | |
---|---|---|
譲渡対象 | 受取手形 | 売掛金 |
貸し倒れリスク | 有り | 無し |
手数料 | 1~15%程度 | 2社間ファクタリング:1~20% 3社間ファクタリング:1~10% |
業者の安全性 | 高い | 危険な業者も存在する |
審査の難易度 | 厳しい | 厳しくない |
資金調達スピード | 時間がかかる | 2社間ファクタリング:最短即日 3社間ファクタリング:最短1週間以上 |
手軽さ | 手軽に利用しにくい | 2社間ファクタリング:手軽に利用できる 3社間ファクタリング:手軽に利用しにくい |
資金調達後の流れ | 不渡りにならなければ特に手続きなし | 2社間ファクタリング:売掛金の回収を代行する 3社間ファクタリング:特に手続きの必要なし |
資金繰りへの影響 | 回収サイトを短縮できる | 回収サイトを短縮できる 与信管理コストを軽減できる 貸し倒れによる資金繰り悪化を防止できる |
財務への影響 | 自己資本比率が悪化する | 自己資本比率が悪化しない |
手形割引とファクタリングの違いは、まさに仕組みや性格そのものの違いと言えるでしょう。
あらかじめ手形割引とファクタリングの特徴をしっかりと把握し、資金調達手段としてどちらも使えるようにしておくことで、より柔軟で安定した経営が目指せます。
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