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ベンチャーキャピタルってなんだ?基礎知識、出資の流れ、メリット、デメリットを徹底解説!

創業してからそれほど期間が経っていない会社の資金調達方法として選ばれることが多いのがベンチャーキャピタルです。

返済が不要な資金調達方法として多くの経営者が興味を持っています。

しかしベンチャーキャピタルについて詳しく知っているでしょうか?

多くの方が【なんとなく】といったイメージしか持っていません。

こちらではベンチャーキャピタルとはどういったものであるかを解説します。

ベンチャーキャピタルによる資金調達を考えている経営者は必見です。

ベンチャーキャピタルの基礎知識

 
まずは、ベンチャーキャピタルの基本について解説します。

出資とは?

 
企業の資金調達方法は色々あります。
大別すると、融資・出資・資産売却・知人からの調達の4つです。
それぞれ、資金の調達先や調達の根拠が異なるため、自社の状況に合わせて、最適な資金調達方法を選ぶことが重要です。
この記事のテーマである出資は、企業に資金を提供し、経営に参加することをいいます。
融資が「資金の貸付け」であるのに対し、出資はあくまでも「資金の提供」であり、会社の一部を買うようなものです。
したがって、出資には返済義務がありません。
これが、出資の最大の特徴といえます。

ベンチャーキャピタルとは?

 
後述の通り、出資者は複数ありますが、中でもよく知られているのがベンチャーキャピタルです。
ベンチャーキャピタルは、主にベンチャー企業に対して出資を行う投資機関です。
ベンチャーキャピタルの出資方法はいくつかあります。
詳しくは後述しますが、企業が新規に発行する株式、あるいはワラント債や転換社債などをベンチャーキャピタルが引き受け、資金を提供します。
このうち、ベンチャーキャピタルの出資形態として、最も一般的なのは株式による出資です。
企業の資金調達方法のうち、外部資金調達といえば融資や出資が代表的ですが、出資の担い手のひとつがベンチャーキャピタルと考えてください。

将来への先行投資を行うのがベンチャーキャピタル

 

ベンチャーキャピタルのことを理解するためには、投資先として選ばれる企業の傾向を知ることが重要です。

ベンチャーキャピタルの投資先

 
ベンチャーキャピタルに投資される企業ですが

・まだ株式上場をしていない
・今後大きな成長が見込める

以上の2つの条件をクリアしていなければなりません。
ベンチャーキャピタルは主にベンチャー企業に投資しています。
ベンチャー企業は、株式上場をしておらず、今後大きな成長が見込めるケースも比較的多いため、ベンチャーキャピタルの目的に適うのです。
もちろん、ベンチャーキャピタルの出資先は、ベンチャー企業に限定しているわけではありません。
この二つの条件を満たす企業であれば、ベンチャー企業でなくとも出資を検討します。

株式上場が大前提

 
基本的に、ベンチャーキャピタルから出資を受ければ、経営者の意思に関係なく、株式上場を目指すことになります。
非上場企業の株式は市場で自由に売買できず、上場して初めてキャピタルゲインを得ることができます。
もちろん、キャピタルゲインだけではなく、インカムゲイン(配当益)を狙うベンチャーキャピタルも多いです。
継続的な配当益は、ベンチャーキャピタルにとって無視できない収益源になります。
しかしながら、ベンチャーキャピタルが上場による値上がり益を目指すことに変わりはなく、インカムゲインはあくまでも「上場するまでの利益」と考えていることがほとんどです。
企業育成の観点から、インカムゲインだけを狙って投資する機関もありますが、それはもはやベンチャーキャピタルとはいえません。
このほか、出資の形として、事業取引の深耕を目的とした出資があります。
一種の資本提携であり、仕入先や商社、金融機関などが出資することがほとんどですから、これもベンチャーキャピタルの領分ではありません。

ベンチャーキャピタルは、今後企業として大きく成長し、株式上場してくれることを狙っているのです。

すぐに資金が回収できることを望んでいるのではありません。

将来への先行投資をするのがベンチャーキャピタルです。

なぜベンチャーキャピタルは将来への先行投資を行うのか?

 
なぜ、ベンチャーキャピタルはベンチャー企業に投資するのでしょうか。
それは、ハイリターンを狙っているからです。

ベンチャーキャピタルは無償で投資をしているわけではありません。

企業に対して出資をするわけですが、一定の株式を受け取ることになります。

ベンチャーキャピタルはその株式を将来的に高額で売却することを狙っているのです。
ベンチャーキャピタルが出資したくなるのは、株式公開によってキャピタルゲインをもたらしてくれそうな企業です。
出資の検討にあたって、ベンチャーキャピタルは以下の点を重視します。

  • 経営者の資質
  • IPOに対する経営者の意思
  • 経営戦略や事業計画の具体性
  • 市場規模や将来性
  • 市場における競争優位性
  • 組織体制・管理体制
  • 投資収益性

ベンチャーキャピタルは、これらを総合的に判断し、出資の可否を決めています。
そこで出てくるのが大きな成長です。

企業として大きくなってもらわなければ、株式の価値は上昇しませんよね。

よって企業が大きくなるように、様々な経営的なアドバイスを行います。

そして企業が大きくなったら株式上場をしてもらうのです。

株式上場ともなると株価も大きく高まる可能性があり、結果として高く売却できます。

ベンチャーキャピタルとして大きな儲けが得られる可能性が出てくることになるのです。

ただし将来についてはどうなるかは誰しも分かりませんよね。

実はベンチャーキャピタルの投資は9割程度失敗に終わる、とされています。

要は成功した10%で元をとっているのです。

まさにハイリスク・ハイリターンな投資を行っているわけです。

出資者にも色々

 
出資者はベンチャーキャピタルだけではありません。
企業の資金調達方法として出資を挙げる場合、よく「ベンチャーキャピタルもしくは個人投資家(エンジェル投資家)」と分類します。
このため、「投資機関=ベンチャーキャピタル」とイメージしがちですが、出資者にも色々です。
出資者を大きく分けると、ベンチャーキャピタルのほかに企業再生ファンドや事業会社があります。

企業再生ファンド

 
企業再生ファンドは、業績不振の企業に資金を投入し、再生を支援する投資機関です。
ベンチャーキャピタルが上場益で儲けるのに対し、企業再生ファンドは再生を通じて利益を確保するのが大きな違いです。
ベンチャーキャピタルは上場後に株式を売却しますが、企業再生ファンドは上場前に他のファンドや企業に転売することも少なくありません。
当然ながら、出資対象は再生の余地がある企業に限られます。
企業再生にあたり、ファンドが主導権を握るためには、一定以上の株式を取得し、発言権を強める必要があります。
そのため、ベンチャーキャピタルと同様に株式での出資が一般的です。
また、出資比率はベンチャーキャピタルよりも高いです。
このことは、企業再生ファンドが役員・人員を常勤で派遣することからもよくわかります。
その後の事業展開に合わせて融資という形で資金を出すこともあります。
後述の通り、ベンチャーキャピタルの最大のデメリットは、持ち株比率の変化に伴う経営自由度の低下ですが、企業再生ファンドにも同じことがいえるでしょう。
このほか、ベンチャーキャピタルの出資が長期目線であるのに対し、企業再生ファンドは比較的短期目線で支援します。

事業会社

 
投資機関ではなく、事業会社が出資の担い手になることも。
事業会社の出資は、ベンチャーキャピタルや企業再生ファンドとは大きく異なります。
ベンチャーキャピタルや企業再生ファンドは、株式の保有期間や支配度は異なるものの、いずれは出ていきます。
一方、事業会社は原則として出ていきません。
というのも、事業会社は事業戦略の一環として出資するためです。
主な出資者は、同業のライバル会社、取引先(売掛先・買掛先)など。
もちろん、経営多角化のために、他の業種から出資を受けることもあります。
ベンチャーキャピタルの場合、「出資→上場益」という流れを想定していますが、事業会社は「出資=事業戦略の遂行」です。
事業会社自身の事業戦略を遂行するため、再生ファンド以上に支配権を求めます。
出資比率は「ベンチャー企業<再生ファンド<事業戦略」といったイメージです。
したがって、子会社化という形で支援するのが一般的です。
事業会社は、事業戦略に必要であればいつまでも株式を保有し続けます。
役員や人員の派遣も、再生ファンドより積極的です。
近年、企業戦略としてのM&Aの存在感が高まっていることから、事業会社が出資する事例も増えてきました。
今後、M&Aはますます活発になり、事業会社を検討する機会も増えてくるでしょう。
しかしながら、事業会社から出資を受けた場合、かなり長期にわたって、自由な経営はできなくなると考えてください。
出資を受けつつ、経営の自由を確保したければ、事業会社ではなくベンチャーキャピタルを選ぶべきです。

ベンチャーキャピタルから出資を受ける流れ

 
実際にベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、どのような手順になるのでしょうか。
資金調達のプロセスを大まかに示すと以下の通りです。

    1. 出資検討先の現状調査
    2. 出資条件の検討・交渉
    3. 出資契約・払い込み
    4. 出資後の体制整備

出資検討先の現状調査

 
ベンチャーキャピタルの出資は、現状の調査から始まります。
これを「デューデリジェンス」といいます。
ベンチャーキャピタルは、ハイリスクハイリターンのビジネスです。
リスクを最小化し、リターンを最大化するためにも調査が欠かせません。
財務状況、事業構造、法的リスクなどを把握・整理しなければ、ベンチャーキャピタルは出資を検討できないのです。
デューデリジェンスは、主に以下の4つに関して行われます。

  • 出資検討先の財務諸表から、財務状況を把握する。財務内容の良し悪しよりも正確性を重視。
  • 出資検討先が取り扱っている商品や取引先から収益性を把握し、将来的な利益を見積もる。
  • 将来的な法律的リスク(訴訟などのトラブルが発生するリスク)を把握する。リスクが高い場合、それに伴う支出を見積もる。
  • その他の状況(人事制度、情報システム、保有資産の時価など)を把握する。

ベンチャーキャピタルのデューデリジェンスは、書類の分析だけで行う場合もあれば、出資先と対面で行う場合もあります。
ベンチャーキャピタルの意向によって決まるため、自社はそれを受け入れるだけです。
ベンチャーキャピタルからスムーズに出資を受けるためにも、デューデリジェンスの要請に柔軟・迅速に応じることが重要です。

出資条件の検討・交渉

 
現状調査の結果、ベンチャーキャピタルが出資してもよいと判断すれば、出資条件の検討・交渉に移ります。
ベンチャーキャピタルと交渉するのは、おおむね以下の項目です。

  • 出資金額
  • 出資スキーム
  • 株式の保有比率
  • 出資の前提条件(リストラや資産売却など)
  • 出資後の役員・従業員の処遇

出資条件の交渉は、ベンチャーキャピタルと出資先の経営陣が顔を合わせて行います。
専門性の高い交渉には、弁護士、会計士、証券会社などの専門家がアドバイザーとして関与します。

出資契約・払い込み

 
交渉がまとまれば、契約の締結です。
出資の調印式といえば、双方が対面し、契約書にサインして握手…といった華々しいイメージがありますが、実際には顔も合わせず契約書類のやり取りだけで終わることも多いです。
契約締結後、出資額が支払われます。

出資後の体制整備

 
ベンチャーキャピタルからの資金調達が完了すると、ベンチャーキャピタルの意向を踏まえて、出資先の体制を整備していきます。
企業再生ファンドや事業会社から出資を受ける場合、経営権を渡すことが多く、経営陣や組織体制が大きく変化するケースが大半です。
しかし、多くのベンチャーキャピタルは「出資はするが支配権までは求めない」というスタンスですから、出資前後の変化はさほど大きくありません。
ベンチャーキャピタルがどのような形で経営に参画してくるかは、出資条件によって決まります。
経営の自由を確保したければ、交渉時に強く求めておくべきでしょう。

以上が、ベンチャーキャピタルの出資の流れです。
支援の根拠が「資本」であり、ベンチャーキャピタルが収益性を重視しているだけに、銀行融資よりもハードルが高いことが分かるでしょう。
ベンチャーキャピタルごとのデューデリジェンスの違い、交渉の内容に応じて、資金調達のスピード感も変わってきます。
さらに、企業再生ファンドや事業会社よりマシとはいえ、ベンチャーキャピタルが経営に関与してくることも事実。
ベンチャーキャピタルの出資の流れ・特徴をよく理解し、適切な支援者を探すことが重要です。

ベンチャーキャピタルのメリット

 
ベンチャーキャピタルから出資を受けるメリットをみていきましょう。

返済義務がない

 
ベンチャーキャピタルの大きなメリットのひとつは、返済義務がないこと。
もっとも、これはベンチャーキャピタルに限らず、全ての出資に共通するメリットです。
ベンチャーキャピタルのデメリットとして詳しく述べますが、ベンチャーキャピタルからの資金調達は簡単ではありません。
率直にいえば、ハードルはかなり高いです。
しかし、返済義務がないことによって、ベンチャーキャピタルは銀行よりも調達しやすい場合があります。

銀行融資のハードル

 
そもそも、なぜベンチャーキャピタルの出資を検討するのかといえば、大抵は「銀行融資を受けられないから」です。
銀行融資もハードルの高い資金調達方法です。
融資を受けられずに資金繰りが破綻し、倒産する企業も少なくありません。
これは、銀行融資には返済義務があり、返済力を重視するためです。
返済力の乏しい企業にどんどん融資すれば、多くの不良債権を抱えることとなり、銀行の経営は破綻します。
ましてや低金利時代の昨今、貸付額に対して銀行が得られる利息はわずかです。
それだけに、元金の一部分でも回収不能になれば、銀行は赤字を抱えてしまいます。
したがって、銀行は返済力に問題がある企業には一切融資しません。
赤字決算、債務超過、繰越損失などは、融資審査には致命的です。
担保・保証があれば融資できるケースも多いですが、逆にいえば「返済力に問題あり」「担保・保証が不足」という企業は、銀行融資での調達は極めて困難といえます。
銀行だけではなく、貸金業者も返済力を重視します。
経営に大きな問題を抱えているならば、銀行融資でも、ノンバンクのビジネスローンでも調達できず、どこからも借りられないということがあり得るのです。
このように、返済義務があることが、融資の大きなハードルとなっています。

ベンチャーキャピタルのハードル

 
ベンチャーキャピタルの出資もハードルが高いですが、銀行融資と決定的に違うのは「返済義務がない」ということです。
例外的なケースを除いて、ベンチャーキャピタルは返済を求めません。
出資先が倒産したり、いつまでも上場できずに撤退したりする場合、ベンチャーキャピタルは損失を被ります。
いわば、株式投資における損切りと同じ考え方です。
経営が悪化しており、どこからも融資を受けられない状況であっても、将来性があればベンチャーキャピタルは出資します。
逆に、将来性がない企業に対して、ベンチャーキャピタルが出資することはありません。
「現状の経営が悪く、将来性もない」企業はもちろんのこと、「現状の経営は良好、しかし将来性は不明」という企業も、ベンチャーキャピタルの出資対象外です。
とはいえ、将来性がある企業にとって、ベンチャーキャピタルは銀行よりも調達しやすいといえるでしょう。
また、ベンチャーキャピタルの出資は、資金繰りの安定にも効果的です。
返済義務がなければ、返済を織り込んで資金繰りを回す必要もありません。
融資の返済負担を考えると、その負担がないベンチャーキャピタルは、資金繰りメリットが大きいといえます。

ベンチャー企業の資金調達に役立つ

 
その名の通り、ベンチャーキャピタルは主にベンチャー企業に対して出資しています。
というのも、ベンチャー企業は資金調達方法が限られるためです。
一般的に、ベンチャー企業の資産内容は乏しく、担保を保有していません。
したがって、金融機関に担保を提供した融資を受けることが難しく、設備資金や研究開発資金の調達に苦労します。
民間金融機関だけではなく、公的支援制度による調達も容易ではありません。
ベンチャー企業が公的支援を受けるには、事業内容や技術の革新性・成長性を厳しく評価されるため、仮に調達できるとしても機動性に問題を抱えています。
資金繰りに余裕がないベンチャー企業にとって、公的支援は役に立たない場合も多いです。
ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業特有の事情を踏まえて、直接投資によって機動的に資金を供給してくれます。

ベンチャーキャピタルのデメリット

 
ベンチャーキャピタルの出資には返済義務がなく、一見、融資よりも優れた資金調達方法にみえます。
しかし、ベンチャーキャピタルもメリットばかりではありません。
ここからは、ベンチャーキャピタルのデメリットをお伝えします。

経営の自由度が下がる

 
経営の自由度が下がることが、ベンチャーキャピタルの最大のデメリットといえます。

資本政策の重要性

 
ベンチャーキャピタルで資金調達する際、特に重要なのが資本政策ビジネスローンです。
資金調達には間接調達と直接調達があります。
借入は間接調達、ベンチャーキャピタルの出資は直接調達です。
資本による資金調達を検討・計画することを資本政策といいます。
ベンチャーキャピタルを利用するにあたり、なぜ資本政策が重要なのでしょうか。
それは、ベンチャーキャピタルの出資を受けると、株主構成が変化ビジネスローンするためです。
株主構成が変われば、経営権への変化は避けられません。
新たにベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、ベンチャーキャピタルは新規の株主となります。
既存株主だけではなく、第三者に増資することを第三者割当増資といいますが、これもベンチャーキャピタルの出資の一形態です。
ベンチャーキャピタルに対して第三者割当増資を繰り返せば、理論上はいくらでも資金を調達できます。
しかし実際には、様々な障害を伴います。
第三者割当増資を繰り返すたびに、ベンチャーキャピタルの持ち株比率が高くなり、オーナー経営者の株主比率は相対的に低下していくビジネスローンのです。

ベンチャーキャピタルは口を出す

 
ベンチャーキャピタルは「経営アイデアはあるけどお金がない」といった企業を助けるために資金を提供しています。

資金が提供された企業は経営に生かせる資金が得られるので、大きく羽ばたくチャンスが与えられることに。

ベンチャーキャピタルの役割は資金提供だけではありません。

もう一つ重要なのが、経営アドバイスです。

そもそもベンチャーキャピタルは、多くの起業に携わっており、その方面で豊富な経験がある方たちが行っています。

経営ノウハウを持っているので、投資が成功するためにも様々なアドバイスを実施するのです。

実はこのアドバイスがメリットになることもあればデメリットになることもあります。

お金を出すことになるので口を出したくもなりますよね。

結果として、経営に口を出しすぎて経営者の意向が事業に反映されない、といったこともあります。

ベンチャーキャピタルと会社の折り合いが悪くなってしまうような事例もあるほどです。
ベンチャーキャピタルは、出資によってお金を出しますが、同時に口も出します。
ベンチャーキャピタルが経営方針に口出しすれば、オーナーの経営目標は大きくブレるでしょう。
更に怖いのが、後戻りが許されないことです。
ベンチャーキャピタルの出資に依存し、経営の自由度が下がったからといって、出資を取りやめることはできません。

ベンチャーキャピタルの持ち株比率が高まると…

 
たった1株でも持てば株主です。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、多額の調達になることがほとんどでしょう。
少額の調達ならば、その他の資金調達でも十分間に合います。
多額の資金を必要としており、融資では不都合があるからこそ、ベンチャーキャピタルの出資を検討しているわけです。
したがって、ベンチャーキャピタルから出資を受ける際、持ち株比率が大きく変化します。
ベンチャーキャピタルの持ち株比率が高くなるにつれて、経営の自由度は低下します。
以下のように、持ち株比率によって株主の権利は変わってくるのです。

  • 持ち株比率1%以上…特定の事柄を株主総会の議題とするよう、取締役に請求する権利(株主提案権)
  • 持ち株比率3%以上…株主総会の招集請求権
  • 持ち株比率1/3超…株主総会で特別決議を拒否する権利
  • 持ち株比率1/2超…株主総会の普通決議の権利(取締役の選任・解任、計算書類承認など)
  • 持ち株比率2/3超…株主総会の特別決議の権利(第三者割当増資の有利発行、株式交換、株式移転、会社分割など)

これをみれば、持ち株比率の影響がよくわかります。
ベンチャーキャピタルから出資を受けたばかりに、経営の自由がほとんどなくなることもあるのです。
そのような事態を避けるためにも、ベンチャーキャピタルから安易に出資を受けてはなりません。

コスト面にも要注意

 
ベンチャーキャピタルの出資には返済義務がなく、利息の支払いもないのが特徴です。
ここでありがちな勘違いが、「ベンチャーキャピタルの出資は調達コストがゼロ」というもの。
しかし、ベンチャーキャピタルを出資にもコストはかかると考えてください。

ベンチャーキャピタルと調達コスト

 
まず、融資における利息に相当する支払いが、ベンチャーキャピタルに対しても生じます。
多くの場合、ベンチャーキャピタルは株主として配当金を求めてくるでしょう。
配当金は、株価に対して一定の割合でかかるものです。
出資の際に無配とすることも可能ですが、ベンチャーキャピタルの出資がなければ資金繰りが立ち行かない企業は、ある程度の配当金を受け入れるのが普通です。
当初は無配であっても、ベンチャーキャピタルの持ち株比率が高まり、発言権が大きくなれば、株主総会で配当金を出すよう迫られることも十分にあり得ます。
会社が儲けている以上、株主の権利として、ベンチャーキャピタルが配当を求めるのは当然です。
また、ベンチャーキャピタルは上場益を目的としているため、その出資を受け入れた会社は、経営者の意思とは関係なく上場を目指すことになります。
したがって、上場に伴うコストも考えなければなりません。
上場を果たせば、株式市場からいつでも資金を調達できるようになりますが、そこに至るまでのハードルは高いものです。
上場企業には様々な義務が課せられ、その義務は年々増大しています。
投資家保護の観点から、これは致し方ないことです。
上場の準備にあたり、内部統制制度、四半期決算開示といった体制を整えるだけでもコストがかかります。
そればかりか、上場後も維持コストがかかるのです。
ベンチャーキャピタルから資金を調達する場合、上場に関するコストは「上場準備時」「上場時」「上場後」の3パターンをよく考えておく必要があります。

上場準備にかかるコスト

 
上場の準備には多くのコストがかかります。
大まかには以下の通りです。

  • 人件費(上場準備のために新規採用する従業員の人件費)
  • 監査報酬(年間1000~2000万円程度)
  • 証券会社引受指導料(年間500万円程度)
  • コンサルティング料(委託範囲によって年間500~1000万円程度)
  • 内部統制システムの整備費用(2000~5000万円程度)

このうち、内部統制システム整備費用以外の費用は、上場準備の期間中、継続的に発生します。
ベンチャーキャピタルの出資後、事業が計画通りに進まず、上場までの期間が長引けば、それだけ準備コストは増大していくのです。
実際に、上場準備コストは1億円超といわれています。

上場時にかかるコスト

 
多くのコストをかけて上場準備を終えると、いよいよ上場です。
上場時にも多くのコストがかかります。
上場時のコストを大まかに挙げると、以下の通りです。

  • 上場審査費用(500~1000万円程度)
  • 上場申請書類の印刷費用(500万円程度)
  • 有価証券届出書・目論見書などの印刷費用(500万円程度)
  • 広告費用(100~500万円程度)
  • 証券会社引受手数料(スプレッド方式)
  • IR関連費用(内容により変動)

上記のうち、印刷費用は参考程度に考えてください。
最近は、上場関連資料をオンラインで発行することが多くなっており、印刷費用は下がっています。
一昔前は株券の印刷費用に数百万円かかっていましたが、今は紙の株券というものがなくなりました。
なお、証券会社引受手数料の「スプレッド方式」とは、上場を引き受けた証券会社が、利ザヤとして手数料を徴収する方式です。
「公募価格×引受手数料(5~8%程度)×公募株数」として計算します。
この手数料は入金時に差し引かれるため、実際にキャッシュアウトが生じることはありません。
とはいえ、上場時にも数千万円単位のコストが発生します。

上場後にかかるコスト

 
上場準備と上場時に多額のコストを支払っても、コストはかかり続けます。
上場を維持するためには、継続的にコストが発生するのです。
上場維持コストを大まかにみていきましょう。

  • 証券取引所への支払手数料(年間50~200万円程度)
  • 有価証券報告書等の印刷費用(年間500万円程度)
  • 監査費用(年間1000~2000万円程度)
  • 証券代行(株主名簿の書き換え業務など)に伴う手数料(年間300万円程度)
  • 事業報告書・アニュアルレポート等の作成費用(年間500~1000万円程度)
  • IRイベント実施費用(年間500万円程度)
  • 内部統制システムの運用費用

有価証券報告書の発行もオンライン化が進んでいますが、未だに紙媒体での郵送が一般的です。
その他の費用も含めると、上場している限り毎年数千万円のコストがかかります。
ベンチャーキャピタルの出資を受け入れるということは、上場準備・上場時・上場後のコストも受け入れるということです。
したがって、ベンチャーキャピタルの出資を検討する際には、これらの調達コストに見合うだけのリターンが得られるかどうかを真っ先に考えなければなりません。

資金調達のハードルが高い

 
ベンチャーキャピタルのメリットとして、返済義務がないため融資よりもハードルが低い場合があると述べました。
しかしながら、ベンチャーキャピタルの調達は簡単ではありません。
むしろ、ベンチャーキャピタルの出資は、数ある資金調達方法の中でもハードルが高いといえます。
ベンチャーキャピタルにアプローチすることさえ、容易ではないのです。
ベンチャーキャピタルへのアプローチ方法は、主に三つあります。

    1. 経営者自らベンチャーキャピタルにアプローチする
    2. 第三者の仲介によってアプローチする
    3. スタートアップ企業向けの交流会に参加する

1の場合、経営者がベンチャーキャピタルとつながっていることが前提となります。
経営を始めたばかりのベンチャー企業は、ベンチャーキャピタルとのつながりを持っていないことも多いです。
それなりに経営実績がある人でも、ベンチャーキャピタルとつながっている人の方が少数派でしょう。
何のつながりもない経営者は、ベンチャーキャピタルの公式HPなどからアプローチすることもできます。
しかし、そのようなアプローチで出資に至ることは少ないです
自社と同様に、ベンチャーキャピタルとコネクションがない経営者は多いのです。
ベンチャーキャピタルの連絡窓口には、そのような経営者からの連絡が多数寄せられており、競争率は非常に高くなっています。
このアプローチは簡単ではあるものの、効果はあまり期待できません。
ベンチャーキャピタルから出資を受けるには、第三者の仲介がカギとなります。
知り合いの経営者やコンサルタントに仲介してもらうのが一番です。
機会を見つけて、交流会に参加するのも良いでしょう。
ベンチャーキャピタルは、有望な出資先を常に探しており、このような交流会にはよく参加しています。
交流会でアプローチできれば、ベンチャーキャピタルが興味を持ってくれるかもしれません。
いずれの方法にせよ、ベンチャーキャピタルの出資はハードルが高いです。
知り合うことが難しく、知り合っても実際の出資にこぎつけるのは至難といえます。
ただ知り合うだけでは意味がなく、出資を検討してもらうことが重要です。
詳細な事業計画を立てておかなければ、ベンチャーキャピタルは見向きもしないと考えてください。

出資が失敗した際のリスク

 
ベンチャーキャピタルが投資に失敗した場合、基本的には株式を手放すことになります。

要は株式を売却して少しでも資金を回収しようとするのです。

出資の条件にもよりますが、株式の売却先としては投資先になる可能性もあります。

簡単に言えば、株式の買い戻しを迫ってくるのです。

これは、ベンチャーキャピタルならではのデメリットです。
基本的に、個人投資家、企業再生ファンド、事業会社などから出資を受ける場合、代表者個人が出資金の連帯保証人になることはありません。
代表者個人に保証のリスクがなく、事業に打ち込めることはむしろメリットといえます。
しかしベンチャーキャピタルは、契約によりけりです。
出資先の代表者に対し、事業がうまくいかずに上場できない場合や、株式を売却できない場合に、出資先の代表者に株式の買い戻しを求めるケースがあります。
契約的には「買取請求権」という形になっていますが、融資の際に代表者個人が連帯保証人になることと何ら変わりません。
買取請求権付きの投資契約を結んだ場合、代表者は出資額で株式を買い戻す必要があります。

ベンチャーキャピタルとしてもビジネスですから、回収の見込みがなくなってきたら、回収ができるうちに株式を手放そうとしてきます。
そのリスクを避けるためにも、ベンチャーキャピタルと交渉する際には、「買取請求権なし」を目指すのが賢明です。
ベンチャーキャピタルは利益を求めて出資するわけですから、出資先の事業が順調なうちに買い戻しを求められることはありません。
買い戻しを求められるということは、ベンチャーキャピタルから見放されたということです。
ベンチャーキャピタルの期待通りに事業が成長せず、損切りに踏み切ったともいえます。
したがって、買い戻しを求められた企業は、経営が悪化していることが大半です。
そのような状況でベンチャーキャピタルの株を買い戻せば、経営者個人としても大きなダメージを受け、再起不能になるかもしれません。
ベンチャーキャピタルによる資金調達はメリットだけではありません。

デメリットにも目を向けて利用するかを判断しましょう。

まとめ:ベンチャーキャピタルも含めた資金調達の多様化を

この記事では、ベンチャーキャピタルについて詳しく解説しました。
ベンチャーキャピタルから出資を受けるのは簡単ではありません。
しかし、返済義務がないこと、ベンチャー企業でも調達しやすいことなど、融資にはないメリットがあることも事実です。
現状に問題を抱えている企業も、将来性さえあればベンチャーキャピタルから調達できる可能性があります。
もちろん、出資者はベンチャーキャピタル以外にも色々ありますし、資金調達方法も融資・出資だけではありません。
自社の状況に応じて、最適な資金調達方法を選ぶことが重要です。
ベンチャーキャピタルも、あくまでも選択肢のひとつと考え、多様な方法で調達することを心がけてください。
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