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銀行借入を成功させるポイントは?銀行との付き合い方から決算対策まで徹底解説!

会社の資金調達方法は色々ですが、最もポピュラーであり、資金調達の軸になるのが銀行借入です。
銀行借入に成功するかどうかで、経営は大きく変わってきます。
しかしながら、銀行借入は難易度が高く、簡単には成功しません。
銀行借入に成功するためには、相応の取り組みが必要なのです。
この記事では、銀行借入を成功させるポイントとして、銀行との具体的な付き合い方、銀行借入を成功に導く決算対策などを詳しく解説します。

銀行借入を成功させるための基礎知識

 
銀行借入を成功させるために一番重要なのは、銀行を知ることです。
よくある勘違いが、
「銀行借入に成功するには、経営者や会社を良く見せることが重要」
「銀行借入は決算書さえよければ成功する」
といった考え方。
このような対策も確かに重要ですから、自社をよく知り、対策しなければなりません。
しかし、相手を知ることは一層重要です。
孫子の言葉にも、「彼を知り己を知れば百戦して殆(あやう)からず、彼を知らずして己を知れば一勝一敗す、彼を知らず己を知らざれば戦うごとに必ず敗れる」とあります。
己を知っただけ、自社を知っただけの対策では、いくらやっても銀行借入に成功したり失敗したりを繰り返すでしょう。
借入先である銀行を知ることが最も重要なのです。
まずは、銀行借入を成功させるための基礎知識として、銀行を知ることに努めましょう。

銀行借入の申し込み先は?

 
銀行借入の際、初めにぶつかるのが「どこに銀行借入を申し込むか」ということです。
これを軽く考えてしまうと、銀行借入に成功できません。
なぜならば、資金を調達する会社によって、適切な申し込み先が変わるためです。
銀行借入の申し込み先は、大きく分けて民間金融機関と公的金融機関があります。
民間金融機関はメガバンク、地方銀行、信用金庫・信用組合、ノンバンクなど。
公的金融機関には日本政策金融公庫(さらに国民生活事業・中小企業事業の小分類)と商工組合中央金庫があります。
本稿のテーマは「銀行借入の成功」ですから、ノンバンク(銀行以外の貸金業者)は除外します。
純粋な銀行借入を成功させるには、多くの書類を提出し、融資担当者との面接も必須です。
また、審査機関が長いことも特徴のひとつ。
したがって、資金調達の際、安易にノンバンクを選ぶ人も少なくありません。
しかし、それは資金調達の方法として間違いです。
ノンバンクは、あくまでも銀行借入に成功できない場合に限って利用すべきものです。
借入に成功しやすく、資金調達スピードにも優れていますが、調達できる金額は小さく、金利の高さや銀行の評価悪化も避けられません。
銀行借入の成功を目指すならば、ノンバンクの利用はできるだけ控えるべきです。
ノンバンクを除いても、銀行借入には民間金融機関・公的金融機関と色々な種類があります。
この使い分けを知っておくかどうかで、銀行借入に成功しやすくなります。

銀行借入とメガバンク

 
銀行借入の申し込み先のうち、最も有名なのはメガバンクです。

メガバンクの特徴

 
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の三行をメガバンクといいます。
特定の地域を中心に営業するのではなく、全国で広く営業しており、海外にも展開している大きな銀行です。
当然、地方銀行以下とは規模が異なり、資金力にも大変な差があります。
メガバンクで銀行借入に成功できるのは、少なくとも年商10億円以上の会社だけです。
それ以下の小さな会社は、メガバンクは相手にしません。
小さな会社は資金需要も小さいものです。
資金力が豊富なメガバンクは、目標とする貸付高も大きいため、小さな会社の銀行借入を一件一件検討するのはあまりにも非効率です。
銀行借入に成功するどころか、大抵はまともに相手にされず失敗に終わります。
民間金融機関の場合、銀行借入の使い分けは、年商10億円がひとつの基準と考えてください。

メガバンクの問題点

 
もちろん、年商10億円以下の会社でも、銀行借入の希望額が大きければ(数千万円~数億円以上)、メガバンクから融資を受けられることがあります。
とはいえ、小さな会社に多額を貸し付ける(=貸倒れリスクが大きい)のですから、銀行借入に成功するのは至難といえるでしょう。
また、メガバンクは優良な貸付先を多数抱えており、大企業などによる巨額の銀行借入にも対応しています。
簡単にいえば、貸付先に困っていません。
だからこそ、業績が悪化した時の対応は厳しいです。
いきなり銀行借入を打ち切ることも多いため、「借入先がメガバンクのみ」というのは極めて危険な状況といえます。

銀行借入と地方銀行・信用金庫・信用組合

 
年商10億円以下の会社が検討したいのは、地方銀行・信用金庫・信用組合です。
これらの銀行は、数千万円~数億円の銀行借入にも対応しており、運転資金や設備投資の調達に使えます。
メガバンクのように、少額の銀行借入を嫌うこともありません。

地銀・信金・信組で銀行借入に成功する

 
地方銀行は、各都道府県や地方を中心に展開しています。
信用金庫・信用組合は、各都道府県の中でさらに小さな単位を基盤としています。
地域の金融機関として、単に銀行借入に応じるだけではなく、地域企業と共存共栄のスタンスです。
地域密着という意味では、地方銀行よりも信用金庫・信用組合のほうが密着度が高く、きめ細かな対応が期待できます。
メガバンクのように、業容が小さいというだけで銀行借入を断ったり、業績が悪化したからといって、いきなり銀行借入を打ち切ったりすることは少ないものです。
地方銀行・信用金庫・信用組合は「各都道府県に一行ずつ」というものではなく、複数の銀行がしのぎを削っています。
銀行借入を成功させるには、複数の中からどれを選ぶかが重要です。
銀行借入の際、真っ先に頭に浮かぶのは、その地域で最もシェアが大きい銀行です。
シェアが大きい銀行は、銀行借入の申し込み先として無難といえるでしょう。
しかし、最適とは限りません。
シェアが大きい銀行はたくさんの融資先を抱えており、銀行借入の対応を引き締めることも比較的容易です。
本部の方針が消極化した場合、シェアが大きい銀行では銀行借入に成功しにくくなります。
その場合、シェアが低い銀行に銀行借入を申し込むのも一つの手です。
シェアが低い銀行は、シェアを伸ばすことを常に考えており、銀行借入を積極的に検討してくれます。

銀行借入に成功しやすいパターン①

 
地方銀行・信用金庫・信用組合のうち、特に銀行借入に成功しやすいパターンが三つあります。
一つ目は、新規出店の支店です。
中でも、これまで出店していなかったエリアに支店を出す場合は狙い目といえます。
この場合、そのエリアにおけるシェアは低く、これから顧客を開拓していかなければなりません。
もちろん、そのエリアの会社は、すでに特定の支店と取引しているわけですから、シェアを奪う必要があります。
既存顧客の深耕や、新規顧客の獲得に比べて、顧客を奪うのは難しいものです。
新規出店の支店は、「取引を開始できるかどうか」が大きなハードルになります。
そのような支店に対し、自社の方から取引を持ち掛ければ、銀行は必ず好意的に捉えるでしょう。
例えば、口座の開設を申し込むだけで、すぐに付き合いを始めることができます。
これが近い将来、銀行借入の成功につながるかもしれません。
また、このような難しいエリアに出店するのですから、本部は腕利きの支店長を据えるのが普通です。
銀行の支店は、支店長の方針に大きく左右されます。
多少無理な案件も通し、シェアを伸ばしていくような剛腕の支店長であれば、銀行借入は成功しやすいはずです。

銀行借入に成功しやすいパターン②

 
銀行借入に成功しやすいパターンの二つ目は、支店長の交代
既存の支店で、支店長が交代することがあります。
この場合も、支店長の方針によって銀行借入の対応が変化するものです。
銀行の内側はみえづらいものですが、支店長交代の理由について、それなりに推測できることもあります。
例えば、成績の悪い支店であれば、本部は成績を伸ばすために支店長を変えます。
貸付高が伸びない支店は、その方面で腕利きの支店長を選ぶでしょう。
この場合、支店長交代を機に銀行借入を持ち掛けてみましょう。
以前の支店長は銀行借入に慎重で、なかなか成功しなかった可能性があります。
しかし、今回の支店長は積極的に検討してくれるかもしれません。
もちろん、逆のパターンもあります。
銀行借入に積極対応の支店長から、慎重な支店長に交代することもあるのです。
実際に、積極対応によって多額の貸倒損失や貸倒引当金が発生すれば、支店長は左遷されます。
入れ代わりで入ってくる支店長は、これまでの銀行借入を見直すところから着手します。
当然、銀行借入の対応は慎重となり、容易には成功しなくなります。
支店長の交代から、銀行借入の成功を引き出すためには、「なぜ交代したか」「交代によって銀行借入がどう変わるか」を推測することがポイントです。

銀行借入に成功しやすいパターン③

 
銀行借入に成功しやすいパターンの三つ目は、他の都道府県からの進出
地銀と信金・信組は、異なる法律に基づいて営業しています。
信金・信組は、定められたエリアだけで営業しており、他のエリアに進出することはありません。
他のエリアには、銀行借入はもとより口座開設さえも対応していません。
しかし地方銀行は別です。
ある県を地盤とする地方銀行が、隣の都道府県に進出したり、地方全体へと営業網を広げていくことがあります。
この傾向は、規模の大きい地方銀行ほど顕著です。
他県への進出は、銀行借入を成功させるうえで、パターン①よりもインパクトがあります。
特に、隣県で1店舗目を出店するとなれば、シェアはほぼゼロの状態です。
さらに「よそ者」であることが障害となります。
同じ県内で新規出店するならば、よそ者とみられることはなく、横のつながりも多いため、比較的スムーズに展開できます。
しかしよそ者であれば、横のつながりは少なく、顧客開拓のきっかけをつかみにくいのです。
口座開設などを通して、そのきっかけを提供してあげることで、銀行借入の成功につながります。
ポイントは、できるだけ早い段階で付き合いを始めることです。
そうすれば、たった数年の付き合いで「古くからのお客様」と評価され、銀行借入に有利にはたらくかもしれません。
銀行業界の動向には常に注意を払っておくことです。
それにより、地方銀行の合併や他県からの進出などを素早くキャッチし、銀行借入の成功率が高めることができます。

銀行借入に備えて担当者を付けてもらう

 
ちなみに、地方銀行・信用金庫・信用組合は、自社が依頼すれば銀行が担当者を付けてくれます。
銀行員が毎月訪問してくることを、面倒に感じる人も多いでしょう。
しかし、銀行借入を成功させる上で、案外これがプラスになります。
「銀行員が毎月訪問してくる」というプレッシャーがあれば、下手なことはできません。
いつ銀行員に見られてもいいように、社内の風紀に気を付けたり、整理整頓を心がけたりすれば、業務効率にも少なからぬ影響があります。
せっかく銀行員が来て、ヒアリングしてくれるのです。
月々の試算表を作ることを習慣づけ、毎月欠かさず報告しておけば、銀行は必ずプラスに評価します。
これまで資金繰り表を作ってこなかった会社も、それを機に資金繰り表を作ることで、計画的な資金繰りが可能となります。
銀行借入の予定を聞かれた際、資金繰り表で将来的な(数ヶ月先の)資金不足を示しておくとよいでしょう。
銀行借入の予定について、事前に把握しているのと、いきなり申し込まれるのとでは、銀行員の対応が大きく変わってきます。
事前に把握した銀行員は、それに合わせて資料をチェック・整理などするものです。
その結果、銀行借入に成功しやすく、融資実行までの流れも円滑になります。

公的金融機関

 
民間金融機関では銀行借入に成功しない場合、公的金融機関での調達を考えます。

公的金融機関の特徴

 
公的金融機関のうち、中小企業が銀行借入に利用できるのは日本政策金融公庫と商工組合中央金庫です。
いずれも政府の100%出資によって成り立ち、民間金融機関の補完を目的としています。
「民間金融機関の補完」ということが、公的金融機関の最大の特徴です。
民間金融機関は営利を重視するため、営利に適う会社でなければ銀行借入に成功しません。
業績悪化が続く会社、赤字の会社、債務超過の会社、累積赤字がある会社は、返済能力が低いとみなされ審査に落ちます。
反社会的な会社や、業歴が短すぎる会社など、信用に値しない会社も同様です。
これらの会社は、民間金融機関から貸倒れリスクが高い(=営利的に問題あり)とみなされるため、銀行借入に成功する確率は低いです。
しかしながら、公的金融機関は営利を目的としていません。
国の政策に基づき、経済の維持や雇用の創出などに貢献できる会社に融資します。
日本の会社のほとんどは中小企業であり、経営基盤は脆弱です。
多くの会社が何らかの問題を抱えており、景気の悪化局面では容易に経営が悪化します。
開業後間もない会社はなおさらです。
民間金融機関で銀行借入に成功することは難しく、だからといって何の支援もしなければ、中小企業の倒産が相次ぎ、経済が急激に悪化するでしょう。
また、起業を促進しなければ、長期的な経済の発展は見込めません。
そこで、公的金融機関の出番です。
営利を目的としない公的金融機関は、現在経営に問題を抱えている会社や、信用に乏しい会社も、将来的な見通し次第で銀行借入に成功できます。
強いて言えば、国家的な営利を求めて、民間金融機関が対応できない銀行借入を補完しているわけです。
なお、「民間金融機関の補完」「非営利」という建前があるため、民間金融機関の利益を損なう活動は禁じられています。
したがって、民間金融機関で銀行借入に成功できる限り、公的金融機関の対象外です。

銀行借入のメインは国民生活事業

 
公的金融機関の銀行借入に成功する上でも、使い分けが重要です。
一口に銀行借入といっても、日本政策金融公庫の事業には国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業の三つがあります。
多くの会社は、国民生活事業と中小企業事業のいずれかを利用することになるでしょう。
銀行借入の申し込み先として、特に利用されているのは国民生活事業です。
ただし、国民生活事業には限度額があり、多額の銀行借入を国民生活事業だけで成功させるのは難しいといえます。
多額の銀行借入に成功するには、民間金融機関で足りない部分を国民生活事業で補完するのが現実的です。
年商が大きい(5億円以上)会社は、日本政策金融公庫の中小企業事業や、商工組合中央金庫を利用することで、多額の銀行借入に成功できるかもしれません。

銀行借入に成功できるケース

 
公的金融機関で銀行借入に成功できるケースを、いくつか挙げてみましょう。

  • 連続赤字のため、民間金融機関から融資を受けられない。しかし、業績改善の方策は立っており、計画的に取り組むことができる。公的金融機関で銀行借入に成功すれば、数年後には黒字にできる。
  • 開業前で経営実績がない。信用はゼロに等しく、民間金融機関から開業資金を借り入れることは不可能。しかし、創業計画はしっかり立てており、開業後の見通しは明るい。創業融資の借入れに成功すれば、数年で事業を軌道に乗せる自信がある。
  • 開業数年目、経済の急変により創業計画が破綻した。民間金融機関に相談したが、銀行借入はできそうもない。このままでは倒産するが、修正計画によって来年の黒字化を見込んでいる。
  • 新規事業展開のために、多額の銀行借入を必要としている。事業計画は万全だが、売上に対して借入希望額が過大であり、銀行借入に成功しても必要額に達しない。公的金融機関で不足分の銀行借入に成功すれば、業績を大きく伸ばせるだろう。

以上のように、「民間金融機関では銀行借入に成功しない」「将来性を計画書で示せる」というのが、銀行借入に成功するポイントです。

メインバンクはどうする?

 
「銀行借入の成功」といえば、「ともかく必要額の調達に成功すればよい」と考える人が少なくありません。
しかし、どこで銀行借入に成功するかが重要です。
特に、メインバンクの選び方は、将来的な銀行借入に大きくかかわってきます。
一時的には銀行借入に成功しても、メインバンクの選び方を誤れば、後々の銀行借入の成功に響くかもしれません。

メインバンクとは

 
メインバンクとは、自社が取引している銀行のうち、最も利用頻度が高い銀行のことです。
基本的には、銀行借入の頻度が高く、借入金の割合が最も大きい銀行と考えればよいでしょう。
もっとも、「借入額が最も大きい→銀行借入に成功しやすい→長期的に積極支援が期待できる」とは限りません。
なぜならば、銀行借入の対応(支援の姿勢)は金融機関によって異なるためです。
一時的に多額の銀行借入に成功すると、そこがメインバンクになることもあります。
しかし、その銀行が「経営が順調ならいくらでも融資するが、ちょっとでも問題があれば支援を打ち切る」という方針であれば、メインバンクとしては不適切です。
逆に、経営が少々悪化したくらいでは見放さず、支援を続けてくれる銀行は、メインバンクにふさわしいといえます。
様々なシーンで銀行借入に成功でき、心強いパートナーになってくれる銀行をメインバンクとすべきです。

メインバンクが銀行借入を左右する

 
メインバンクで銀行借入に成功できるかどうかは、会社の資金調達そのものに影響します。
メインバンクの判断は、サブバンク(メインバンク以外の借入先)の判断を左右するのです。
メインバンクは、他の銀行よりも積極的に支援すべき理由があります。
例えば、銀行借入の金額が、メインバンクから3000万円、サブバンクAから2000万円、サブバンクBから1000万円であったとしましょう。
融資先の会社が返済できなくなった場合、最も大きな損失を被るのはメインバンクです。
したがって、支援の積極度は「メインバンク>サブバンクA>サブバンクB」となります。
その会社を倒産させないように、メインバンクが支援を続ける限り、サブバンクの姿勢が極端に悪化することはありません。
ところが、メインバンクが早々に支援を打ち切ってしまえば、サブバンクも支援を打ち切る可能性が高いです。
最も積極的に支援すべきメインバンクが見放した以上、サブバンクがあえて支援する理由はありません。
銀行借入の少ないサブバンクが、真っ先に切り捨てることも多いです。
このように、メインバンクの判断は、銀行借入全体に大きな影響を及ぼします。
銀行借入の際、メインバンクが先頭に立って支援してくれるような関係を構築できれば、サブバンクでも銀行借入に成功しやすくなります。

メインバンクの選び方

 
メインバンクの役割と影響がわかると、メインバンクの選び方もおのずとみえてきます。
メインバンクに期待する役割は様々ですが、最も重要なのは「最後まで面倒をみてくれること」です。
サブバンクが手を引くような状況でも、メインバンクとして支援を続けてくれるならば、「最後まで面倒をみてくれる」といえるでしょう。
例えば、2期連続で赤字決算の会社が、サブバンクに赤字補填資金の融資を依頼しても、銀行借入の成功はおぼつきません。
このような時、メインバンクならば赤字補填資金を出してくれることがあります。
とはいえ、メインバンクも永久に支援を続けるわけにはいきません。
毎期のように赤字補填資金を融資し、今後も黒字回復の見通しが立たなければ、メインバンクの貸付額はどこまでも膨らんでいきます。
貸倒れリスクが高まる一方ですから、メインバンクもどこかで支援を打ち切らなければなりません。
その判断は銀行ごとに異なります。
どこまで支援してくれるかは、実際に経営悪化が続いてみなければ分かりません。
苦しい時も銀行借入に成功できると信じていたメインバンクが、早い段階で支援を打ち切ることもあり得ます。
とはいえ、サブバンクに比べて、メインバンクが親身になってくれることは間違いありません。
少なくとも、メインバンクがはっきりしない状況は避けるべきです。
複数で銀行借入に成功しても、それぞれの付き合い(借入額やその他の取引の規模)が同程度であれば、どこがメインバンクともいえません。
銀行としても、メインバンクとしての自覚は芽生えず、積極性も生まれてこないのです。
普段の付き合いを通して、より親身になってくれる銀行を見極め、メインバンクを作っておきましょう。

年商でメインバンクが変わる

 
もっとも、メインバンクの選び方には一定の基準があります。
それは、自社の年商です。
年商によって、理想的なメインバンクは変わります。

年商10億円以上のメインバンク

 
年商10億円以上の会社は、メガバンクまたは地方銀行が理想的です。
信用金庫・信用組合も、メインバンクにすること自体は可能ですが、理想的とはいえません。
年商10億円の会社は資金需要も大きいため、経営悪化が長期化した場合、多額の支援が必要となります。
ところが、信用金庫・信用組合はメガバンクや地方銀行に比べて資金量が少なく、長期・多額の支援は困難です。
たとえメインバンクであっても、早い段階で支援を打ち切られる恐れがあります。
「最後まで面倒をみてくれる」「長期・多額の銀行借入に成功しやすい」という意味では、メガバンクか地方銀行を選ぶべきです。

年商1~10億円のメインバンク

 
年商が1~10億円の会社は、地方銀行または信用金庫・信用組合をメインバンクとしましょう。
年商数億円もあれば、メガバンクがメインバンクになることもあります。
しかし、いかんせん年商が小さいため、あまり親身になってくれないことが多いです。
ただメインバンクというだけでは、メガバンクに「他より銀行借入に成功しやすい」「最後まで支援してくれる」といったことは期待できません。
メガバンクがメインバンクになるケースとしてよくあるのが、担保・保証付きで多額の銀行借入に成功するパターンです。
典型例をみてみましょう。

    1. メインバンクが決まらない段階でメガバンクから熱心に融資提案を受けた。ただし、提案内容は有担保または有保証であった。
    2. 資金量が豊富なメガバンクをメインバンクにできれば心強いと考え、有担保・有保証で銀行借入の成功を重ねた。
    3. サブバンクとの取引が育たないうちに、メガバンクがメインバンクになった。
    4. 担保・保証が底を尽きると、メガバンクからの融資提案はなくなり、放置されるようになった。
    5. こちらから追加融資を依頼しても、無担保・無保証では全く対応してくれない。
    6. 他の銀行を頼ったが、関係は浅く、担保・保証もなく、メインバンクからも放置されているため、銀行借入の成功は見込めない。
    7. やむを得ず、公的金融機関やノンバンクで銀行借入の成功を目指す。

このような失敗は珍しくありません。
メガバンクから好条件で融資提案を受け、無担保・無保証で銀行借入に成功できるならば別ですが、極めて稀なケースです。
年商1~10億円のメインバンクは、地方銀行・信用金庫・信用組合を選びましょう。

年商1億円以下のメインバンク

 
年商が1億円以下も、地方銀行か信用金庫・信用組合がメインバンクになります。
メガバンクがメインバンクになることはあり得ません。
担保・保証の有無に関係なく、メガバンクはこのような小さな会社には見向きもしないからです。
しかし、地方銀行・信用金庫・信用組合は、地域金融の担い手として、小さな会社にも親身になってくれます。
もちろん、地方銀行と信用金庫・信用組合にも使い分けがあります。
年商1億円に近い会社や、急激に成長している会社には地方銀行がおすすめです。
このような会社は、いずれ年商1億円を超え、その後も売上が伸びていくことがあります。
資金力が小さい信用金庫・信用組合では、やがてメインバンクとして適さなくなるかもしれません。
成長する会社では、設備資金や増加運転資金などの需要が旺盛ですが、そのような銀行借入をスムーズに成功させるには、地方銀行のほうが適しています。
一方、開業後間もない会社や、個人事業主から法人成りして間もない会社などは、地方銀行よりも信用金庫・信用組合がよいでしょう。
今後成長していくとしても、年商が1億円を超えるには時間がかかります。
その間、親身に相談に乗ってくれるか、銀行借入に成功できるかが重要です。
狭い地域で営業する信用金庫・信用組合は、地域の小さな会社も大切にしてくれるため、メインバンクに適しています。

公的金融機関はNG

 
なお、公的金融機関はメインバンクの対象外です。
公的金融機関は、民間金融機関が対応できない銀行借入にも対応してくれるため、「最後まで面倒をみてくれる」ようにも思えます。
創業期の会社であれば、借入れは公的金融機関の創業融資のみ(民間金融機関からの借入れはゼロ)ということも多く、借入額は公的金融機関がトップになります。
それでも、公的金融機関がメインバンクにはできません。
公的金融機関の性質上、メインバンクにはなれないのです。
公的金融機関で銀行借入に成功したということは、将来性が認められたということです。
将来的には赤字が黒字になり、あるいは創業期から成長期に移行すれば、民間金融機関でも銀行借入に成功できようになります。
そうなれば、銀行借入は公的金融機関から民間金融機関に移行します。
自社が公的金融機関をメインバンクと考えていても、メインバンクとしての働きは期待できなくなるのです。
メインの調達先が公的金融機関であっても、メインバンクは民間金融機関と考えてください。

メインバンクの作り方

 
ところで、メインバンクはどのように作るのでしょうか。
銀行借入の成功率を高める、メインバンクの作り方をお教えしましょう。
普通、借入れが最も大きい銀行がメインバンクといえますが、これはあくまでも結果です。
銀行借入に成功・失敗を繰り返す中で、徐々に借入額に差が生じ、メインバンクとサブバンクの区別ができます。
もちろん、銀行借入だけが取引ではありません。
預金、決済、為替取引、従業員の給与振込など様々な取引があります。
しかし、銀行の収益に最も影響するのは銀行借入ですが、その他の取引も重要です。
金利政策の影響を受けることから、利息収入には不安定な側面があります。
その点、手数料などの収入は安定性が高いため、重視する銀行が多いのです。
実際、銀行借入に成功し、借入額が大きくなるにつれて、銀行員からその他の取引を持ち掛けられることが増えてきます。
資金繰りのメイン口座として使ってほしいと頼まれることもあるでしょう。
担保があれば、「融資を出すので、うちに担保を入れてほしい」といわれることも多いです。
つまり、借入額が大きくなればその他取引も増え、関係が一層深まった結果、自社はメインバンクとみなし、銀行もメインバンクの立場を自覚し、他の銀行はサブバンクであることを自覚し、自他ともに明らかになるわけです。
したがって、「メインバンク候補を選び、銀行借入の成功を重ね、その他の取引も集中させる」ことが、メインバンクの作り方といえます。
メインバンクを作ったものの、銀行借入に成功しにくいと感じたならば、メインバンクを乗り換える必要があります。
この場合も同様に、「乗り換え先の選定→乗り換え先で銀行借入の成功を重ねる→その他取引も移行する→既存のメインバンクのシェアを超える」という流れです。
どこで銀行借入を成功するか、その他取引をどのように振り分けるか。
これを意識してメインバンクを作り、銀行借入の成功率を高めていきましょう。

銀行借入に成功するカギは複数行取引にあり

 
以上のように、メインバンクを正しく選び、関係を深耕することによって、銀行借入に成功する確率は大きくアップします。
もっとも、これは複数の銀行から融資を受けていることが前提です。
一行取引では、メインバンクがあまり役に立ちません。
複数の銀行から借り入れており、なおかつ特定の銀行と深い関係にあって、初めてメインバンクが銀行借入の成功に役立ちます。

一行取引では銀行借入に成功しない

 
一行取引とは、銀行借入が特定の一行に限られる状態を指します。
銀行借入のシェアが最も大きく、付き合いが深い銀行がメインバンクです。
一行取引の場合、ひとつの銀行が100%のシェアを占めることになります。
その意味では確かにメインバンクといえるのですが、銀行借入の成功率を上げる上ではほとんど無意味です。
年商が小さい会社は、資金繰りがコンパクトですから、銀行借入の機会がさほど多くありません。
一行取引を続けている会社の中には、あえて複数行取引を避けている場合もあります。
例えば以下のようなケースです。
「一行取引で間に合っているのに、わざわざ複数行と取引するのは面倒だ」
「一行取引だが、却ってメインバンクと親密な関係にある。他行で銀行借入に成功すれば、メインバンクとの関係に水を差すのでは?」
「新たに取引をはじめ、ゼロの状態から銀行借入に成功するまでの道のりは長い。それよりも一行取引で機動的に調達したほうがいい」
しかしながら、一行取引は多くの点で複数行取引に劣ります。
一行取引のメリットといえば、せいぜい気楽であることくらいでしょう。
少なくとも、一行取引のほうが銀行借入に成功しやすいということはあり得ません。
一行取引では銀行借入に成功しにくい理由は二つあります。
ひとつは、銀行借入の選択肢が限られること。
もうひとつは銀行間の競争が起きないことです。

一行取引では資金調達に行き詰まる

 
一行取引の会社は、銀行借入の依頼先がひとつだけです。
銀行借入に成功できるうちは良いのですが、いつも成功するとは限りません。
一行取引で銀行借入に失敗すれば、他に借入先がなくなってしまいます。
「銀行借入に失敗してから考える」「他の銀行に新規融資を依頼すれば大丈夫」と考えるのは間違いです。
大抵は銀行借入に成功するどころか、全くの手詰まりになってしまいます。
これは、銀行の立場で考えるとよくわかります。
どのような会社でも、新規の銀行借入は厳しいものです。
銀行の資金は無尽蔵ではなく、限られた資金をいかに効率よく運用し、利益につなげていくかを考えます。
低金利で貸し付けるため、貸し倒れは何としても避けなければなりません。
取引実績がない新規の会社は、貸倒れリスクが未知数です。
そのような会社にあえて貸し付けるよりも、既に取引しており、返済実績のある会社の方が融資を出しやすいのは当然でしょう。
信用がゼロの状態から取引をはじめ、信用が高まるにつれて銀行借入の成功も見えてきます。
新規に銀行借入を依頼して、すぐに成功できるものではありません。
「ほかに借入先がない」という理由で新規取引を始めるのは、一層困難です。
この場合、新規融資を依頼した時点で、この会社はメインバンクから見放されているわけです。
もちろん、銀行はメインバンクが見放した理由を探ります。
業績悪化が深刻なのではないか、不祥事によって社会的信用が低下したのではないか、粉飾決算がバレたのではないか…
銀行は、慎重に検討せざるを得ません。
また実際に、メインバンクが見放しただけの問題を抱えていることも多いです。
このように考えると、一行取引が銀行借入で不利になることがわかるでしょう。
一行取引で行き詰まり、新規の銀行借入を相談したところ門前払いされ、資金繰りが続かずに倒産するケース少なくないのです。

複数行取引で銀行借入の成功率がアップ

 
複数の銀行から融資を受けている場合、このようなリスクが大幅に下がります。
複数の銀行借入に成功し、それぞれで返済実績を作っておけば、一行で断られても選択肢が残っています。
サブバンクで銀行借入を受けられずとも、メインバンクで銀行借入に成功することはよくあるのです。
取引する銀行の数は、銀行借入の総額によって変わります。
目安は以下の通りです。

  • 銀行借入の総額が3000万円未満の会社は、2行以上
  • 銀行借入の総額が3000万円~1億円の会社は、3行以上
  • 銀行借入の総額が1億円超の会社は、4行以上

なお、公的金融機関は複数行取引の対象外です。
繰り返しになりますが、公的金融機関は民間金融機関の補完を目的としています。
民間金融機関で調達できる会社は利用できないため、借入先が「日本政策金融公庫と信用金庫」の2行であれば、実質的には一行取引と変わりません。
基本的には、取引する銀行は多ければ多いほど良いと考えてください。
銀行借入があまり必要ない会社が複数行で融資を受けた場合、一行当たりの借入額があまりにも小さくなることがあり得ます。
それでも、「借入額が小さい→重要な融資先とみなされない→銀行借入の成功に影響しない」とは限りません。
重要なのは、「すでに銀行借入に成功している」という事実です。
「新規取引の銀行」と「少額を借り入れている銀行」では、銀行借入の成功率に雲泥の差が生じます。
メインバンクとの関係を深める一方で、できるだけ多くの銀行と付き合いを持ち、銀行借入の成功率を高めてください。

銀行間の競争から成功を引き出す

 
銀行業界でも、銀行同士の争いがあります。
この争いにどう絡むかによって、銀行借入の成功率は大きく変化します。
銀行の基幹業務は融資です。
商品は「お金」といえますが、どの銀行で借りても商品自体は何ら変わりません。
性能や希少価値で差別化することができないため、銀行は条件面で差別化を図ります。
無担保や無保証で対応する、金利を安くする、返済期間を柔軟に設定するなど、差別化の方法は様々です。
銀行が融資を出したい会社であれば、銀行側から融資提案を受けることもあります。
銀行間で競争が起こり、それぞれが好条件を提示してくることも多いです。
なにしろ「銀行借入をお任せいただければ、××の条件で対応できます」と提案してくるのですから、融資を出せることが前提となっています。
融資提案を受けた時点で、ほぼほぼ銀行借入は成功といってよいでしょう。
一度出すといった融資を出さなければ、銀行は信用を失います。
銀行は、融資すると明言した以上は必ず融資し、懸念があれば明言を避けるものです。

好条件で銀行借入に成功する

 
うまく銀行を競争させることができれば、単に銀行借入に成功するだけでなく、好条件で調達できます。
特に、金利を下げるのに効果的です。
金利が下がれば調達コストを抑えることができ、資金繰りの負担は軽くなります。
複数行取引を心がけ、できるだけ低金利で銀行借入に成功するのが理想です。
一行取引の場合、銀行借入に成功しにくく、条件面も悪化しやすくなります。
なにしろ、その一行は競争相手がいないのですから、好条件を提示する必要はありません。
自社としては、銀行借入に成功できなければ困ります。
そこに付け込まれ、条件が悪化するというわけです。
融資稟議の仕組みを考えても、一行取引ほど条件が悪化することはほぼ間違いありません。
一行取引の場合、銀行員は以下のように稟議を進めます。

    1. 会社から銀行借入を依頼される。
    2. 依頼内容に沿って5000万円、4年返済、金利2%の条件で稟議書を作成する。
    3. 銀行内の審査に通った。銀行員は会社を訪問し、審査に通ったことを伝える。
    4. この時、条件は5000万円、4年返済、金利2.5%として伝え、融資を実行する。

このような金利の操作は、一行取引ではごく一般的です。
稟議書の条件で「融資可」と判断したのですから、それよりも金利を上げることは何ら問題ありません。
銀行は、高い金利で融資できるに越したことはないのです。
稟議よりも高い金利で融資できた場合、その引き上げ分(上記の例であれば0.5%)は銀行員の成果となります。
稟議の内容は会社に知らされず、金利がどう動いているかは一切分かりません。
また、一行取引の会社は、他の銀行から融資を受けていないため金利の相場に疎いため、高い金利を吹っ掛けられることも多々あります。
これが一行取引の稟議の実態です。
銀行借入の成功を喜びたいところですが、条件は確実に悪化します。
複数行取引でなければ、好条件での銀行借入に成功することは難しいです。
複数の銀行と取引していれば、銀行間の競争によって金利が下がります。
もちろん、自社がさほど魅力的でなければ、競争は起きにくいでしょう。
しかし、複数の銀行で金利を見ているため、条件の良し悪しはある程度判断できます。
A銀行が吹っ掛けてくれば、「B銀行の方が安いから、そちらで借ります」といえるのです。
このような感覚がある社長は、銀行員から吹っ掛けられることは少なく、むしろ資金繰りのセンスを評価され、銀行借入に成功しやすくなります。

銀行借入を成功させるポイント~定性的側面~

 
銀行借入を行う場合、ポイントとなるのは融資担当者を始めとする銀行との信頼関係です。
銀行借入を成功させるうえで重要となるのは、業績や財務、資金繰りだけではありません。
決算書や経営計画書などの数字に表れる情報を分析することを「定量分析」といいます。
銀行借入の際、定量分析が重視されるのはもちろんですが、数字に表れない側面、すなわち定性的な側面は一層重要といってよいでしょう。
銀行との信頼関係も数値化できるものではなく、定性的側面に含まれます。
つまり、銀行は相手次第で態度や考え方を変えるもので、いくら事業内容や収支見込などの資料が立派で書類上は整っていたとしても、会社そのものや経営者、経理担当者の姿勢や考え方に問題がある場合、融資を実行してもらうことは難しいのです。

では、どのような姿勢・行動で望めば融資をしてもらいやすいのでしょうか。

銀行借入を成功させるための銀行との付き合い方に関するポイントを見ていきましょう。

自社の財務状況を合理的に説明する

 
銀行から借入れを行う場合、創業時の融資を除いて決算書の提出が求められます。

そして銀行は、その決算書を自身の視点からしっかりチェックして融資できるかどうかを判断しているのです。

特に以下の3つの視点が重要で、これらをクリアできれば融資をしてもらいやすい決算書であるといえるでしょう。

まず銀行担当者は、経常利益の数字を確認します。

つまり経常利益がプラスということは融資の返済ができる可能性が高いと判断するのです。

逆に経常利益がマイナスである場合、返済することが難しくなる危険信号となりうるのです。

そして当然ながら、純資産に対して負債が多い債務超過の状態や、在庫や売掛金の残高、自行だけでなく他の金融機関からの借入金残高もチェックされるのです。

これらに問題がある場合は、資金繰り表や試算表、事業計画などを追加で提示し、経営者自身が銀行に対して現状の決算内容や今後の改善見込み、計画などを正しく説明することが重要なのです。

またこのことを経営者自身が銀行に説明することも重要です。

ですから自社の財務状況については、税理士任せなどにするのではなく経営者自身が正しく把握したうえで、銀行に説明することが重要だといえるでしょう。

融資が必要な理由と金額、返済見込を明確にする

 
設備資金、運転資金ともに、銀行に希望金額とその用途を明確に示すことが重要です。

例えば設備投資であれば、その見積書なども提示するとともに、その投資によって売上や利益を、どのぐらいの期間でいくら獲得し、借り入れた金額の返済が確実にできることを銀行に納得してもらう必要があるのです。

一方で運転資金の場合でも、事業計画書と資金繰り表を使って、きっちりと資金繰りを行なっても、「借入れ希望額の融資が必要不可欠である」ということ、そして今後「収益をあげて返済できる見込みがある」ことを、銀行にきっちりと証明することが必要なのです。

この両方に共通することは「融資したお金は、明確な事業計画のもと将来の成長のために使われる」ことを明示することです。

ですから融資申込み時に、「いくらまで借入れ出来ますか?」という質問をするようなことはタブーであることを認識しておきましょう。

銀行の融資担当者に信用してもらう

 
銀行からの借入れを確実に行うためには、銀行との継続的な信頼関係を築くことが重要です。

例えば税金や社会保険料の滞納など、法人として、国民として当たり前の義務を果たさないことは、銀行として信用できない融資先と見なされてしまうのです。

また銀行も一部を除いては「営利を追求する民間企業」であるということを認識しておきましょう。

ですから、銀行で働く審査担当者にももちろん生活があり、貸付件数とその回収が彼らの成績であるということも忘れてはいけません。

ですから書類の提出や面談の約束を守るなど相手の立場も考えた行動・態度も重要です。

銀行はその相手次第で、態度や考え方を変えるものです。

また常に銀行自体のリスクを考えて行動するともいえます。

ですから、銀行側にとって「リスクが低い」と思ってもらうための数値的な根拠に加えて、借入れを申し込む側の行動、態度にも注意することも銀行からの借入れを成功させるポイントだといえるでしょう。

銀行借入を成功させるポイント~定量的側面~

 
銀行借入を成功させるには、定性・定量の両面で信用を得る必要があります。
定量的な部分で問題がないということは、「収益原資が得られ(収益があがり)、貸し倒れになることはないだろう」という信用です。
定性的に問題がないということは、「(定量的に問題がないという)融資実行の判断を裏切ることはないだろう」という信用を指します。
したがって、いくら定性的に良好な会社であっても、それだけで銀行借入に成功することはありません。
具体的にはどこが重視されるのでしょうか。
定量的側面から、銀行借入の成功を探っていきましょう。

何が銀行借入の成功に影響する?

 
銀行借入の審査は多岐にわたります。
提出を求められる書類も多いです。
銀行借入に成功するには、審査項目の影響度を知り、より影響度の高いものから優先的に取り組むことが重要です。
融資審査で重視されるものに、決算書、資金使途、その他書類、日常取引、経営計画があります。
通常の融資審査であれば、影響度は「決算書>資金使途>その他書類>日常取引>経営計画」と考えてください。
影響度が最も高いのは決算書です。
決算書は、貸借対照表と損益計算書が中心であり、それをみれば会社の業績や財務が分かります。
業績・財務が分かれば返済力も分かり、貸倒れリスクの判断も可能です。
決算書に問題があるということは、返済力に問題があることにほかなりません。
決算書の内容が悪ければ、銀行借入に成功するのは困難です。
したがって、銀行借入を成功に導くカギは「決算書の対策」にあります。
最も影響度が高い決算書に対策せず、最も影響度が低い経営計画に力を入れても、銀行借入は成功しません。
これは、「決算は悪かったのですが、将来性をみて融資してください」とお願いするようなものです。
公的金融機関ならばいざ知らず、民間金融機関には通用しません。
銀行借入に成功するには、どのように対策すればよいのでしょうか。
ここでは、特に効果的な対策として「債務超過の解消」「自己資本比率の改善」を解説します。

債務超過と銀行借入

 
貸借対照表には様々な数字が記載されていますが、銀行借入に成功する上で最も重要なのは「純資産」です。
純資産は、貸借対照表の右下に記載されています。
銀行員が貸借対照表を見る際、真っ先にチェックするのも純資産です。
純資産は、総資産から総負債を差し引いたものです。
「純資産がプラスになっているかどうか」が、銀行借入の成功・失敗を大きく分けます。
純資産がマイナスであれば、総負債が総資産を上回っていることを意味します。
会社の資産を全て売却しても負債が残る状態、すなわち「債務超過」です。
純資産がプラスでなければ、銀行借入の成功はあり得ないと考えてください。
ほんの少しのマイナスでも、大きく不利になります。
さらに、純資産がプラスでも安心はできません。
表面的にはプラスになっていても、実質的にはマイナスということがあり得ます。
自社の資産を、実際の価値より高く見積もって計算することで、純資産をプラスにすることも可能です。
例えば、支払期日を過ぎている不良債権を、額面金額のまま計上すれば、資産を簡単に増やすことができます。
しかし、これはあくまでも表面的にプラスというだけで、実態の総資産に引き直して計算すればやはりマイナスです。
このような「実質債務超過」は、銀行が厳しく審査すればすぐに分かります。
その場合、単に銀行借入に成功しないばかりか、致命的な信用悪化を招く恐れがあります。
本来マイナスになるはずの数値が、プラスになるよう操作されているのです。
大きなマイナスを強引にプラスにしたとなれば、粉飾とみなされることもあり得ます。
純資産以外の数値も信用できなくなり、その時点で「融資謝絶」となるかもしれません。
疑いの感情は一時的なものではなく、将来的な銀行借入に大きな禍根を残します。

自己資本比率と銀行借入

 
純資産を総資産で割った比率が「自己資本比率」です。
「純資産÷総資産=自己資本比率」という計算式をみても、純資産の重要性がよくわかるでしょう。
総資産に対して純資産が小さいほど自己資本比率は低くなり、銀行借入の成功率は下がります。
自己資本比率が低いということは、相対的に他人資本比率が高いということです。
他人資本は返済義務があり、利息などのコストもかかります。
「自己資本比率が低い→他人資本が大きい→経営の負担も大きい」となれば、銀行借入の成功にも悪影響です。
純資産がマイナスであれば、自己資本比率もマイナスになります。
債務超過であることからも、自己資本比率がマイナスの状態では銀行借入の成功は絶望的です。
逆に、純資産の絶対額が大きいほど自己資本比率は高まり、財務的に健全とみられます。
一般的に、自己資本比率が20%以上であれば銀行借入に成功しやすいとされます。
自己資本比率がマイナスの状態は論外として、銀行借入に成功するには10%がギリギリのラインでしょう。
自己資本比率は、純資産を増やしたり、総負債を減らしたりすることで改善できます。
逆に、負債の増加は自己資本比率を低下させます。
銀行借入の成功は喜ばしいことですが、自己資本比率の低下に留意しておくべきです。

銀行借入に成功するための対策

 
債務超過を解消し、自己資本比率を改善していくことで、銀行借入の成功率は確実に高まります。
すでに純資産がマイナスの会社は、銀行借入に成功できる見込みがないため、債務超過の解消が急務です。
純資産がプラスになってこそ、銀行借入の成功も見えてきます。
現時点で純資産がプラス、あるはマイナスを解消した会社は、自己資本比率の改善に取り組みましょう。
ポイントは、純資産を増やすことです。
純資産を増やすことで、債務超過を解消でき、自己資本比率も改善できます。
特に、自己資本比率は純資産が大きいほど高まり、銀行借入の成功に効果的です。
したがって、「マイナスからプラスへ→プラスを大きく」というのが、銀行借入を成功に導くセオリーといえます。
もちろん粉飾は厳禁。
純資産を厚くする方法は主に二つあります。
改善を急ぐならば増資、日常的な取り組みには利益の留保と考えてください。

対策①資金を入れる

 
純資産のマイナスであれば、スピーディな解消が求められます。
資本金を増やし、意図的・積極的に純資産を厚くするためにも、増資がおすすめです。
増資の方法として、会社に資金を入れる方法があります。
よくあるのが、経営者個人の預金を会社に入れ、資本金を増やす方法です。
純資産のマイナスに応じて資金を入れることで、債務超過を確実に解消できます。
増資も銀行借入も、外部から資金を供給するという意味では、外部資金調達です。
決定的な違いは、増資は負債にならず、銀行借入は負債になるということ。
例えば、総資産が500万円、総負債が700万円であれば、純資産は200万円のマイナスです。
この時、会社に資金を入れて200万円の増資を行えば、総資産は700万円に増加し、総負債は変わらず700万円ですから、債務超過は解消されました。
とはいえ、これでは銀行借入に成功することは難しいでしょう。
純資産がゼロということは、自己資本比率はゼロということです。
この場合、総資産700万円に対して総負債が700万円ですから、他人資本が100%を占めています。
理想的な自己資本比率に近づけ、銀行借入の成功率を高めるには、資金を入れて純資産を厚くすることが重要です。
引き続き200万円の資金を入れると、総資産は900万円、純資産は200万円となり、自己資本比率は22%に上昇。
自己資本比率の理想とされる20%を超えることができました。
銀行借入での場合、増資のようにはいきません。
総資産は変わらず、資本金は増えず、なおかつ総負債が増加すれば純資産のマイナスは大きくなり、自己資本比率も下がります。
これでは、銀行借入の成功は更に遠のいてしまいます。
総負債は変わらずに総資産が増えるところに増資のメリットがあり、銀行借入の成功率も高まるというわけです。

対策②借入金を振り替える

 
会社に資金を入れることが難しい場合、借入金を振り替えることを考えます。
経営者が会社に貸し付けている場合、その借入金を資本金に振り替えるのです。
対策①と同じ例で考えてみましょう。
総資産が500万円、総負債が700万円であれば、純資産は-200万円、自己資本比率は-40%です。
ただし、総負債の中には経営者からの借入金が200万円含まれています。
この借入金200万円を資本金に振り替えると、総資産は700万円に増加し、総負債は500万円に減少。
増資額は200万円ですが、純資産は-200万円から+200万円へ、差引400万円の増加です。
これに伴い、自己資本比率も29%に上昇します。
同じ増資額でありながら、対策①に比べて効果が大きいことが分かるでしょう。
借入金を振り替える増資は「総資産の増加」と「総負債の減少」が同時に起こるため、効果も高いのです。
もちろん、銀行借入を成功させるには、ただ資金を入れるよりも、借入金を振り替えた方が効果的といえます。

債務超過の解消はスピードが命

 
債務超過の解消は、銀行借入を成功させる上で欠かせません。
現時点で債務超過に陥っている会社は、早急に解消を図りましょう。
特に決算期が迫っている場合は急いでください。
借入金の中に振り替え可能なものがあれば、迷わず振り替えるべきです。
債務超過のまま決算期を迎え、新しい決算書ができてしまうと、それが「直近1年間の決算書」となります。
今後1年間、債務超過の決算書で審査されることとなり、銀行借入の成功が難しくなります。
また、増資の際には司法書士や税理士に相談するのが基本です。
せっかく債務超過を解消しても、税法上の問題で引っかかり、結局審査に落ちるケースもあります。
専門家への相談も含めて、早めの対策を心がけてください。

日常的な対策を

 
増資はスピーディな改善に適していますが、一定のハードルがあります。
会社に入れる資金や、資本金に振り替えられる借入金がなければ、上で紹介した増資はできません。
また、無限に増資できるわけではないのです。
したがって、日常的な対策が欠かせません。
増資によって債務超過を解消し、自己資本比率もある程度改善したならば、それを維持することが重要です。
これは、銀行借入に成功しやすい状態を維持することでもあります。
もちろん、日常的な取り組みによってさらなる改善を目指し、銀行借入の成功率を高めることも可能です。
日常的な対策は、事業の中で無理のないよう取り組みます。
なんといっても、本業でしっかり稼ぐことです。
売上を伸ばし、利益率の維持・改善を図るならば、利益は上がるでしょう。
しかし、せっかく利益を上げても、配当や役員賞与によって流出すれば、純資産は増えません。
利益の流出を防ぎ、内部留保として残すならば、純資産は着実に増えていきます。
銀行は、しっかり稼いでいる会社を高く評価します。
収益力が高ければ返済力も高いため、安心して融資できるのです。
そのように評価されれば、銀行借入の成功は間違いないでしょう。

まとめ:銀行借入に成功できず困ったら…

この記事では、銀行借入を成功させる方法を解説しました。
数ある資金調達方法の中でも、銀行借入は特にハードルが高いものです。
とはいえ、銀行もビジネスとして融資しているのですから、貸せる相手にはいくらでも貸します。
銀行が貸しやすい状況を作ることで、銀行借入の成功率は高まるのです。
メインバンクを適切に選ぶ、複数の銀行と取引する、銀行と信頼関係を築く、財務改善を図るなど、方法は様々です。
ただし、それでも成功しにくいのが銀行借入であり、ほとんど取り組みの余地がない会社もあるでしょう。
そのような会社は、銀行借入以外の方法で資金を調達しましょう。
銀行借入に成功できずとも、他の方法で資金繰りを回すことができれば、それも立派な成功です。
銀行借入でお困りの方は、No.1までお気軽にご相談ください。

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