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事業資金を調達する方法と成功するためのポイントを紹介

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 事業資金の調達方法には色々ありますが、メインとなる調達方法は多くの会社で共通しています。長期資金ならば銀行融資、短期資金ならば資産の売却を選ぶのが王道です。
 それぞれの方法について、成功のポイントを知っておくと資金繰り安定に役立ちます。本稿では、事業資金調達方法と、調達のポイントを解説します。

銀行融資

 中小企業の事業資金調達で、最も優先すべき方法は銀行融資です。あらゆる資金調達方法のうち、銀行融資が最も多くの事業資金を調達でき、調達コストも安いからです。
 したがって、銀行融資を資金繰りの軸と考え、他の資金調達方法は銀行融資の補完と考えるのがポイントです。それにより、銀行融資と他の資金調達の相乗効果も期待できます。
 例えば、銀行融資とファクタリングの場合、

  • ファクタリングで資金繰りを安定させ、有利な条件で銀行融資を引き出す
  • 銀行融資の実行に時間がかかる場合にファクタリングで資金繰りをつなぐ
  • リスケジュールによって銀行融資を受けられない期間をファクタリングでカバーする

といった相乗効果が期待できるのです。
 銀行融資は、プロパー融資や保証付融資など、様々な種類に分けることができます。

プロパー融資

 プロパー融資とは、銀行が独自に融資することです。保証協会の保証をつけたり、他の金融機関と協力して融資するものではなく、あくまでも一行が独自に融資します。
 このため、融資先が倒産した場合、貸倒損失の100%を負担する必要があり、銀行にとってリスクの高い融資形態です。逆に言えば、銀行がそれだけのリスクを背負っても融資したい中小企業であれば、プロパー融資を出すことも十分にあり得ます。
 具体的には、

  • 業績や財務が良好であり、貸し倒れリスクが低い中小企業(利息収入をしっかり稼げる)
  • 着実に成長を続けており、資金需要が高い中小企業(長期的に融資額が増え、利息収入も増えていくと期待できる)

などです。このような魅力がある中小企業には、多くの銀行が積極的に支援します。どの銀行も「他行より自行で借りてほしい」「他行より融資シェアを伸ばしたい」と考えるため、融資条件も有利になる傾向があります。
 多くの中小企業は、このような魅力を持っていないため、プロパー融資を引き出すのは難しいです。しかし、プロパー融資を受けること自体は可能ですから、プロパー融資を目指して経営や銀行交渉に取り組んでいくべきです。

保証付融資

 中小企業の多くは業績が不安定であり、財務基盤も脆弱です。経済的に大きな変動があった場合にはその煽りを受けやすく、資金繰りコントロールが難しいのも事実です。
 したがって、貸し倒れリスクが高いと見なされる傾向があり、銀行はプロパー融資を出すことも難しいと考えます。
 プロパー融資を受けられない中小企業は、信用不足を補う必要があります。銀行にとっての「信用」とは、「貸付金がしっかり返済されて、貸倒損失が発生しない」という信用です。この信用を補うには、保全を提供するほかありません。
 例えば、不動産担保や信用保証協会の保証です。中小企業の多くはそれほど多くの不動産を持っていないため、信用保証協会の保証付融資が役に立ちます。
 ただし、保証付融資の保証枠は、無担保の場合には8,000万円、有担保の場合には2億8,000万円が上限です。
 中小企業の多くは、無担保8,000万円の枠によって大抵の資金需要をカバーできるはずです。しかし、8,000万円の枠はあくまでも「上限」であり、8,000万円の枠の中で5,000万円の保証枠を設定する、といったケースもあります。
 また保証付融資では、銀行に支払う金利のだけではなく、信用保証協会に支払う保証料がかかるため、調達コストが割高になります。
 このように、保証付融資やプロパー融資よりも条件が悪いため、あくまでもプロパー融資の代替手段と考えるべきです。
成長過程にある中小企業では、将来的に資金需要が高まり、8,000万円の枠では足りなくなる可能性が高いです。保証付融資で対応できるうちにプロパー融資を開拓していくことを心がけましょう。

その他の融資

 銀行融資を受けられない中小企業は、その他の融資を検討してみましょう。まず検討したいのが日本政策金融公庫の融資、最終手段はノンバンクです。

日本政策金融公庫

 日本政策金融公庫は、政府が100%出資している公的金融機関です。民間金融機関の補完を目的としているため、銀行融資を受けられない中小企業にとって心強い存在です。
 民間金融機関の補完が目的ですから、民間金融機関で融資を受けられる会社は、基本的に融資を受けられないのも特徴です。したがって、プロパー融資を受けられず、保証付融資でも調達できなかった場合に、日本政策金融公庫を検討することとなります。
 具体的なケースとしては、

  • 1.業績が年々落ち込んでおり、銀行融資を受けられなくなった
  • 2.経済の急激な変動によって業績が急激に落ち込み、銀行融資を受けられなくなった
  • 3.創業期であるため銀行融資を受けられない

などが考えられます。
 1.のケースでは、「一般貸付」がおすすめです。運転資金ならば4,800万円、設備資金ならば7,200万円までの融資を受けられます。
 2.のような場合、日本政策金融公庫は特に使いやすいです。例えば、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業は、融資限度額8,000万円の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が利用できます。金利も「基準金利-0.9%」であり、調達コストも安いです。
 3.のケースでは、「新創業融資制度」がおすすめです。運転資金ならば1,500万円、設備資金ならば3,000万円までの融資を受けられます。

ノンバンク

 民間金融機関からの融資、日本政策金融公庫からの融資のいずれも受けられない場合、残る借入先はノンバンクだけです。
 ノンバンクは、基本的に利用を避けるべきです。なぜならば、金利があまりにも高いからです。ノンバンクの金利の高さは、他の融資と比較するとよく分かります。

  • プロパー融資:年1.0%程度
  • 保証付融資:年2.0~3.0%(+保証料)
  • 日本政策金融公庫:年1.0~2.0%前後
  • ノンバンク:15~20%

 このように比較すると、ノンバンクの金利は非常に高いです。
 そもそも、金利は貸し倒れリスクに応じて設定されます。貸し倒れリスクが低ければ、低金利でも確実に稼げるため金利を低く設定できます。しかし、貸し倒れリスクが高い場合、そもそも融資しないか、高金利に設定することが必要です。
 ノンバンクに申し込んでくる会社は、ほとんどが銀行や日本政策金融公庫の融資を受けられなかった会社です。貸し倒れリスクが高いために融資を断られているのですから、ノンバンクでは貸し倒れリスクが高いことを前提に金利を設定し、融資せざるを得ません。
 だからこそ、ノンバンクはこのような高金利設定になっているのです。
 したがって、中小企業が融資によって事業資金を調達する場合、ノンバンクは最終手段になります。スピーディに調達できるからといって、銀行や日本政策金融公庫より優先することは絶対に避けるべきです。
 逆に、銀行や日本政策金融公庫が利用できないことが明らかな場合、例えばリスケジュールの最中などであれば、ノンバンクは有効な資金調達方法といえます。

資産の売却

 銀行融資に合わせて、中小企業の事業資金調達に役立つのが資産売却です。銀行融資と資産売却の相乗効果が期待できる、上手な使い分け・組み合わせは「長期資金は銀行融資で調達、緊急的な資金需要を含む短期資金は資産売却で」です。
 このように考えると、資産売却による資金調達のなかでも、

  • 手形割引
  • ファクタリング
  • リースバック

が特におすすめです。

手形割引

 手形割引とは、将来的に支払いを受けられる受取手形を、銀行や手形割引業者に買い取ってもらい、事業資金を調達する方法です。
 手形取引が多い中小企業では、手元に受取手形を保有しています。中には、額面の大きい手形もあるでしょう。しかし、額面の大きい受取手形を持っていても、支払い期日までは現金が入ってこないのですから、それまでに資金繰りがショートすれば黒字倒産になります。
 受取手形は、裏書譲渡によって支払いに活用できるほか、手形割引も可能です。現金を調達するためには手形割引を積極的に活用すべきです。
 手形割引には、手形の振出人の信用力や、支払いまでの期間に応じて割引料がかかります。それでも、早期資金化のメリットは大きいでしょう。
 ただし、

  • 売却した手形が不渡りになった場合には買い戻す必要がある
  • 政府は手形廃止を目指しており、将来的には利用できなくなる可能性が高い

といった問題点もあります。手形割引への依存度が高い中小企業では、徐々にファクタリングに切り替えていくことをおすすめします。

ファクタリング

 手形割引と類似の方法でありながら、手形割引よりも優れた方法として、近年ファクタリングの人気が高まっています。ファクタリングとは、売掛金を売却することで早期資金化する方法です。
 手形割引で資金化するのは受取手形です。これに対し、ファクタリングは売掛金を資金化する点で異なります。政府の方針により、今後も手形取引は減少していくでしょう。相対的に信用取引が増加し、売掛金を保有する企業が多くなってくると考えられるため、ファクタリングは早いうちから事業資金調達に活用していきたい方法といえます。
 手形割引に比べてファクタリングが優れているのは、資金調達までのスピード感と、買い戻しの有無です。
 手形割引も、資金調達方法の中ではスピーディとされます。しかし、ファクタリングはそれ以上にスピーディな資金調達が可能であり、No.1をはじめとする優良ファクタリング会社では即日対応を基本としています。
 また、手形割引では、割り引いた手形が不渡りになると買い戻しを請求されますが、ファクタリングは償還請求権なし(ノンリコース)の契約であるため、売掛先が倒産しても買い戻す必要がありません。
このため、ファクタリングは単に事業資金調達だけではなく、貸し倒れリスクの移転にも役立ちます。ファクタリングによって売掛金をファクタリング会社に売却・譲渡しておけば、売掛先が倒産して回収不能に陥るリスクをあらかじめ回避できるのです。
 唯一欠点といえるのが、売掛先への通知の有無です。手形割引では、手形の振出人に通知することなく売却できるのに対し、ファクタリングでは売掛先への通知が必要となるケースがあります。
 もっとも、通知が必要となるのは自社・ファクタリング会社・売掛先の三社間で行う「三社間ファクタリング」に限られ、自社とファクタリング会社の二社間で行う「二社間ファクタリング」であれば通知の必要はなく、売掛先に知られることなく売掛金を売却できます。
 ファクタリングの活用にあたっては、業者選びが重要です。No.1のファクタリングサービスは、

  • 最短即日で資金調達可能
  • 償還請求権なしでリスクマネジメントにも使える
  • 二社間ファクタリングと三社間ファクタリングのいずれも対応
  • 債権譲渡登記の留保可能
  • ファクタリング手数料は二社間ファクタリング5~15%、三社間ファクタリングならば1~5%
  • ファクタリング活用や資金繰り全般に対するコンサルティングに対応

というように、活用しやすいファクタリングの仕組みを構築しつつ、資金繰り改善を見据えたサポートも可能です。
 No.1などの優良業者を利用すれば、ファクタリングは事業資金調達に大変役立ちます。
No.1のファクタリングについての詳しい説明はこちら

リースバック

 資産売却による資金調達で忘れてはならないのが、リースバックです。
 資産を売却して資金を調達したいものの、事業を続けるためには欠かせない資産が多く、資金調達に悩む会社が少なくありません。事業に欠かせない資産とは、製造業者ならば製造設備、運送業者ならばトラックなどです。これらの資産には価値があり、売却すればまとまった事業資金を調達できるのですが、事業が継続できなくなるため売却できません。
 そこで役立つのがリースバックです。リースバックでは、資産をリース会社に売却した後、リース契約を結びます。これにより、売却資金を調達しつつ、以降はリース代金を支払いながら使用を続けることができ、事業に支障をきたしません。
 また、リース会社に売却するため、買い手を探す時間と手間もかかりません。ファクタリングや手形割引には劣りますが、それなりにスピーディな事業資金調達が可能です。
 売掛金や手形の売却に合わせ、リースバックもうまく活用していきましょう。

事業資金の融資を徹底解説

 
事業資金の調達方法を色々紹介しましたが、中でも軸とすべきは銀行融資です。
銀行融資を中心として事業資金を調達し、その他の方法で補完するのが基本となります。
したがって、事業資金を安定的に調達するためには、「銀行融資について正しく理解しているかどうか」が非常に重要です。
ここからは、事業資金の融資を受けるための知識を詳しく解説します。

事業資金の融資は4種類

 
事業資金の融資には4つの方法があります。
事業資金の性質に応じて正しく使い分けることが重要です。

証書貸付

 
事業資金の融資のひとつに、証書貸付があります。
証書貸付とは、金銭消費貸借契約に基づいて事業資金の融資を受けるものです。
契約書には融資条件(融資額、貸付金利、返済期間、返済方法)などを記載しており、自社の署名捺印(連帯保証人をつける場合にはその署名と捺印)を行うことで融資を受けます。
事業資金のうち、比較的融資額が大きく、長期借入(返済期間が1年を超える融資)で使われる方法です。

手形貸付

 
手形貸付は、手形を用いて事業資金を借り入れるものです。
借入れ用の手形を銀行に差し入れることで、事業資金の融資を受けます。
証書貸付が事業資金の長期借入に使われるのに対し、手形貸付は主に短期借入(返済期間が1年以内の融資)に用いられるのが違いです。
具体的には、以下のような事業資金では手形貸付が使われます。

  • つなぎ資金…材料費や外注費などのコストが先行し、売掛金の入金が遅れる場合に資金繰りをつなぐための事業資金
  • 季節資金…季節によって需給が変動し、在庫の備蓄時期と販売時期・売掛金回収時期が異なる場合、その間の資金繰りをつなぐための事業資金
  • 賞与資金…賞与を支払うための事業資金
  • 納税資金…税金を支払うための事業資金

以上のような事業資金は、今後数ヶ月間で必要となる事業資金です。
返済も数ヶ月後(3ヶ月返済や6ヶ月返済)になるため、手形貸付を利用します。
証書貸付で事業資金を調達する場合、印鑑証明書の取得や連帯保証人の署名などに手間がかかり、事業資金の調達に時間がかかります。
これに対し、手形貸付は手形に署名捺印を行うだけで事業資金を調達できるため、手間がかかりません。
これが、短期性の事業資金に手形貸付がよく使われる理由です。

当座貸越

 
当座貸越も、事業資金の調達に利用されます。
証書貸付や手形貸付は、必要額の事業資金をきっちりと借り入れます。
これに対し、当座貸越はあらかじめ融資限度額(極度額)を設定し、その範囲内で自由に事業資金を借入れ、返済できる仕組みです。
当座貸越で事業資金の融資を受ける場合、専用当座貸越と一般当座貸越のいずれかを利用します。
専用当座貸越は、一定の極度額の中で融資と返済を行うものです。
例えば、極度額を1000万円に設定する場合、その中から事業資金として500万円を借りる、売掛金を回収に合わせて500万円を返済、といった使い方をします。
一般当座貸越は、当座預金と当座貸越が連動する仕組みです。
当座預金が足りない場合、当座預金残高をマイナスの形にすることで貸し越しの状態となります。
例えば、一般当座貸越の極度額が2000万円、当座預金残高が500万円のとき、事業資金として1000万円を支払ったとしましょう。
この場合、当座預金の500万円だけでは足りない部分が貸し越しとなり、当座預金は△500万円となります。
その後も、当座預金が△2000万円となるまでは、事業資金として借入可能です。

手形割引

 
手形割引については、すでに解説しました。
取引先から振り出された手形を銀行で割り引いてもらい、早期資金化するものです。
手形割引の特徴は、借入金にならないことです。
証書貸付・手形貸付・当座貸越で事業資金を調達する場合、貸借対照表の借入金として計上されます。
他人資本が増加するわけですから、自己資本比率の低下、延いては財務の悪化につながります。
しかし手形割引で調達した事業資金は、貸借対照表の借入金になりません。
したがって、財務の維持・改善効果があります。
また、割り引いた手形は、支払期日に銀行が取り立てを行うことで決済されるため、自社が改めて返済する必要はありません。

6つの審査項目

 
銀行から事業資金を調達する場合、審査のポイントは大きく分けて以下の6つです。

  • 背景…事業資金を調達する自社と、その代表者の背景。業種、業歴、代表者の経歴、反社会的勢力との関係など。
  • 決算書…自社の決算内容。業績・財務を審査するためのもの。
  • 資金使途…事業資金の使い道。
  • 書類…事業資金の融資にあたり、銀行が求める提出書類。アピールのために自社の方から積極的に提出する場合もある。
  • 日常取引…融資以外の日常的な銀行取引。
  • 経営計画…今後1~10年間の経営計画。

事業資金の融資を受けられるかどうかは、以上の6項目にかかっています。
ただし、自社の状況によって、各項目の重要度は変化します。

通常の事業資金融資

 
通常の(経営に何ら問題がない場合の)事業資金融資であれば、重要度は「背景>決算書>資金使途>書類>日常取引>経営計画」となるでしょう。
背景に問題があれば、銀行は事業資金の融資を拒否します。
銀行は信用を重視するため、背景に問題がある(信用できない)会社には融資しません。
次に重要なのが決算書です。
銀行は返済力によって融資の可否・条件を判断します。
すなわち、

  • 返済力に問題がなければ事業資金の融資は可能
  • 返済力に問題があれば事業資金の融資は不可、または担保・保証付きで融資

という判断です。
資金使途は、背景や決算書ほど重要ではありませんが、やはり資金使途が不透明であれば融資は受けられません。
一口に「事業資金」といっても、それが運転資金なのか、つなぎ資金なのか、投資資金なのか、赤字補填資金なのかによって審査結果は変わります。
もちろん、調達希望額と資金使途の整合性も重要です。
6項目のうち、その他書類・日常取引・経営計画はさほど重視されません。
これらは、いわば銀行が融資すべき理由を補足するためのものです。
問題がない会社への事業資金融資であれば、背景・決算書・資金使途で決まることが多く、その他書類・日常取引・経営計画によって審査が覆ることは考えにくいです。

それ以外の事業資金融資

 
何らかの問題がある場合の事業資金融資は、審査項目の重要度が大きく変わります。
ここでいう「何らかの問題」とは、例えば財務や業績の悪化であり、事業資金の融資を受けにくい状況です。
その場合、審査項目の影響度は「背景>資金使途>書類>経営計画>決算書>日常取引」と考えてください。
やはり背景は重要です。
何らかの問題をかかえており、なおかつ背景に問題があれば事業資金の融資は受けられません。
逆に、背景が良好であれば、経営に問題がある会社でも、事業資金を融資する余地があるといえます。
次に重要なのが資金使途です。
決算書に問題があることはすでに織り込み済みですから、その上で事業資金をどのように活用するのかを見ます。
この場合、赤字補填や経営改善のための事業資金を必要とする会社も多いでしょう。
抜本的改革を目指し、思い切った投資に踏み切る会社もあるかもしれません。
それらの資金使途が、銀行からみて納得できるかどうかが審査に大きく影響します。
だからこそ、資金使途を裏付ける書類も重視されるというわけです。
長期を見据えて取り組む場合、計画に基づいた事業資金の調達・活用が重要ですから、経営計画も精査されます。
日常取引と決算書はあまり重視されません。
決算書の問題はすでに明らかであり、そのような会社には日常取引の拡大はあまり期待できないためです。

事業資金の融資と背景

 
ここからは、以上の6つの審査項目を個別にみていきましょう。
まずは、事業資金の融資をうける会社・代表者の背景です。

会社の背景

 
会社の背景で重要なのは、事業資金の融資を出せる業種か、反社会的勢力との関わりがないか、社会的な問題を起こしていないか、といった点です。
業種によっては、事業資金を融資できません。
例えば、信用保証協会の保証付きで事業資金を融資する場合、農業・林業・漁業、金融業、風俗業、宗教法人などは保証の対象外であり、事業資金の融資も不可能です。
したがって、農業や林業・漁業の会社は、日本政策金融公庫や農業協同組合などから事業資金を調達することになります。
その他の業種(金融業、風俗業、宗教法人など)は、保証の有無に関係なく、銀行融資は受けられないと考えてください(プロパー融資や担保付融資も不可)。
つまり、業種によっては事業資金の融資を受けられないということです。
次に、銀行は反社会的勢力(暴力団、暴力団関連企業、総会屋など)には決して事業資金を融資しません。
直接・間接を問わず、関係を持つこと自体NGです。
また、実際に関係がないとしても、関係を疑われた時点で事業資金の融資は受けられません。
社会的な問題を起こしている場合も、事業資金の融資に大きな悪影響となります。
銀行は独自に情報収集を行っており、社会的問題を起こしている会社は慎重に対応します。
よくあるのが、労働問題や公害などです。
近年、労働環境に関する規制が強まっており、労働者が会社を訴える例も増えています。
そのような問題によって、事業資金の融資を受けられなくなる会社も少なくありません。
会社の背景に以上のような問題があれば、事業資金の融資は難しいと考えましょう。
逆にいえば、クリーンな経営を心がけている会社ほど、事業資金を調達しやすいといえます。

代表者の背景

 
代表者の背景も、事業資金の融資を左右します。
これによって事業資金の融資を受けられなくなる場合、よくあるのは以下のようなケースです。

  • 代表者が過去に経営していた会社が貸し倒れを起こしている
  • 代表者が反社会的勢力に関わっている
  • 裏の経営者がいる

1のケースでは、過去に信用保証協会の代位弁済を受けていたり、日本政策金融公庫で貸し倒れを起こしていることがあります。
その場合、新しい会社で信用保証協会の保証を受けることは困難であり、日本政策金融公庫でも融資不可となるのが普通です。
当然ながら、過去に貸し倒れを起こした銀行から、積極的な対応を受けることはできません。
事業資金の融資を受けられるとすれば、新規取引銀行のプロパー融資だけです。
2の場合、直接・間接を問わず、代表者が反社会的勢力と関わっていれば、事業資金の融資は受けられません。
代表者個人に犯罪歴があり、銀行に把握された場合も同様です。
3のように、表の代表者の裏に真の経営者がいる場合、銀行の判断に影響します。
事業資金の融資審査にあたり、代表者は銀行員(融資担当者や支店長)と面談しなければなりません。
面談の目的の一つは、代表者が真の経営者であるかどうかを見極めるためです。
もし、裏に真の経営者がいるとなれば、銀行は「なぜ表の経営者を立てているのか?」を気にします。
よくあるのが、真の経営者が過去に貸し倒れを起こし、事業資金の融資を受けにくいため、配偶者や知人を表の代表者に就けているケースです。
その場合、表の代表者がクリーンであっても、事業資金の融資は受けられなくなります。

事業資金の融資と決算書

 
次に、事業資金の融資と決算書の関係をみていきましょう。
会社・代表者の背景を除けば、事業資金の融資審査で最も重視されるのは決算書です。
決算書の内容が悪ければ、それだけで「融資不可」と判断されることも珍しくありません。
「融資対策≒決算書対策」とする専門家が多いのはそのためです。
事業資金の融資を受けやすくするためにも、日ごろから財務体質の改善に取り組み、決算書の作り方を工夫することが重要となります。
決算書を構成するのは、貸借対照表と損益計算書の二つです。
一般的に、銀行員は決算書を以下のように見ます。

    1. 貸借対照表の純資産をみて、自己資本比率を計算する
    2. 貸借対照表の借入金総額をみて、借入金月商倍率を計算する
    3. 損益計算書の営業利益と経常利益をみて、売上高利益率を計算する

この流れに基づき、事業資金の融資対策を考えてみましょう。

貸借対照表①純資産

 
貸借対照表で最も重要となるのは、右下に記載されている純資産です。
純資産は総資産から総負債を差し引いた金額であり、純資産がマイナスの状態を債務超過といいます。
債務超過とは、会社の資産を全て売却しても負債が残る状態にほかなりません。
債務超過に陥っている会社は、事業資金の融資を受けるのが困難です。
また、数値としては純資産がプラスになっていても、実質的にはマイナスということがあります。
例えば、売掛金が資産として計上されていても、それが回収困難な売掛金であれば価値は限りなくゼロに近いです。
各資産を実際の価値に基づいて計算し直した時、純資産がマイナスになること実質債務超過といいます。
実質債務超過も、事業資金の融資審査に大きく不利となります。
純資産がプラスであることは、事業資金の融資を受けるための大前提といえるでしょう。
純資産を厚くする方法の一つに、増資があります。
増資は、会社に資金を入れるか、借り換え金を振り返ることによって行います。
分かりやすい例では、経営者個人の預金を会社に入れ、資本金を増加させるものです。
過去に、経営者が会社に貸し付ける形で事業資金を調達している場合、この借入金を資本金に振り替えることでも増資できます。
債務超過の会社は、事業資金の融資を受けられないため、増資などによって速やかに債務超過を解消しましょう。

貸借対照表②自己資本比率

 
純資産が大きいほど、事業資金の融資を有利に進めることができます。
なぜならば、純資産が大きいほど財務体質が健全とみられるためです。
このことは、自己資本比率を考えるとよくわかります。
自己資本比率は、総資産における純資産の割合のことです。
純資産は返済の必要がない自己資本であり、借入金などの負債は返済しなければならない他人資本です。
自己資本比率が高いということは、相対的に他人資本の比率が低いことを意味します。
これは、返済による負担が少ないこと、調達先からの影響を受けにくいことにほかなりません。
したがって、事業資金の融資対策では、純資産がプラスであることに加えて、自己資本比率のチェックも重要です。
自己資本比率が高いほど、事業資金の融資審査は有利になります。
事業資金の融資を受けるために、理想的な自己資本比率は20%以上、最低でも10%以上と考えてください。
自己資本比率を高めるには、純資産を厚くするか、負債を減らす必要があります。
増資によって純資産を厚くすれば、自己資本比率もおのずと高まります。

貸借対照表③借入金月商倍率

 
事業資金の融資審査において、純資産の次に重要なのは借入金の総額です。
貸借対照表の「負債の部」の短期借入金と長期借入金を合計したものが、借入金の総額となります。
そして、借入総額の月商倍率を「借入金月商倍率」といいます。
例えば、月商が1000万円、借入総額が3000万円の場合、借入金月商倍率は3ヶ月です。
借入金月商倍率は、銀行が融資先の借入金の水準をみるための指標です。
事業資金の融資でも、銀行は必ず借入金月商倍率を計算し、以下のように判断します。

  • 2ヶ月以内→適正水準(事業資金の融資に積極的に対応できる)
  • 2~4ヶ月→やや多い(事業資金の融資を検討できる)
  • 4ヶ月以上→多い(事業資金の融資は難しい)

事業資金を安定的に借り入れるには、借入金月商倍率を少なくとも4ヶ月以内に保っておくべきです。

損益計算書①利益

 
事業資金の融資審査では、損益計算書も重視されます。
銀行員がまず見るのは、営業利益と経常利益です。
このほかに純利益がありますが、純利益は期によって大きく変動することがあり、その場合には特別利益・特別損失の影響が大きいため、収益性の判断にはあまり役に立ちません。
営業利益と経常利益をみてこそ、稼ぐ力を把握し、事業資金の融資を判断できるのです。
営業利益は、その会社が事業(本業の営業活動)によって稼ぐ力をみます。
一方、経常利益は継続的に(経常的に)稼ぐ力をみるものです。
事業資金の融資を受けるには、営業利益と経常利益のどちらもプラスであることが重要です。
いずれか一方でもマイナスになった場合、返済力に問題ありとみなされます。
銀行が返済原資としてみなすのは利益だけです。
利益がマイナスであれば、銀行はきちんと返済してもらえるかどうか、見通しが立ちません。
したがって、事業資金の融資を受けるのは困難です。
営業利益と経常利益は大きければ大きいほど、事業資金の融資で有利になります。
利益が大きいほど収益力が高く、返済力も高いとみなされるためです。
もっとも、利益がマイナスであれば、事業資金の融資は100%NGというわけではありません。
事業資金のひとつに「赤字補填資金」というものがあります。
これは、利益がマイナスになった際に借り入れるものですから、これだけでも「利益がマイナスになっても事業資金の融資は受けられる」ことが分かります。
問題なのは、利益がマイナスであることにより、銀行が「返済の見通しが立たない」「貸倒れリスクが高い」と考えることです。
利益がマイナスでも、その原因が一過性のものであり、なおかつ黒字回復の見通しが明確であれば、事業資金の融資を受けられる可能性があります。

損益計算書②利益率

 
営業利益と経常利益のほかに、銀行が重視するのは利益率です。
売上に対する利益率をみることでも収益力が分かります。
営業利益を売上高で割ったものが「売上高営業利益率」、経常利益を売上高で割ったものが「売上高経常利益率」です。
利益がマイナスの場合、利益率もマイナスになるため事業資金の融資を受けにくくなります。
また、利益率がプラスであっても、あまりにも低ければ事業資金の融資審査に悪影響です。
利益率は高いほど好ましく、事業資金の融資をスムーズに受けるには、売上高営業利益率は5%以上、売上高経常利益率は3%以上が理想と考えてください。

利益と利益率を改善するには、経費を削減したり、利益率が高い商品・事業に注力したりするのが基本です。
また、ちょっとした工夫によっても改善できます。
まずは損失の内訳をみて、特別損失として計上できるものがないかを調べてみましょう。
特別損失は、通常の事業活動以外の特別な要因で、一時的に発生した損失のことです。
利益が悪い会社では、特別損失を通常の損失として計上しているケースが少なくありません。
売上原価や営業外費用、販管費として計上していた部分を、一部でも特別損失にできれば、利益は良くなります。
特別利益についても、売上や営業外収益に計上することで改善につながります。

事業資金の融資と資金使途

 
一口に事業資金といっても、性質は様々です。
資金使途も、事業資金の融資審査で重視されます。

資金使途とは

 
資金使途とは、借り入れた事業資金を何に使うかということです。
事業資金の融資を受ける際には、必ず資金使途を聞かれます。
言うまでもなく、事業資金は事業に使うものであり、その他の目的に流用すべきではありません。
もちろん、運転資金に使うのか、設備資金に使うのか、納税資金に使うのかなど、事業資金にも色々あります。
資金使途に沿って使ってこそ、はじめて事業資金が活き、事業を継続したり、設備投資を行ったり、新規事業に進出したり、成果も出てきます。
銀行は、その成果によって貸付金を回収していくのですから、資金使途が不明であったり、明確でも不適切であったりすれば、事業資金は融資できないのです。
経営者によっては、事業資金として借りたものを、個人の趣味や借金返済に充てることがあります。
そうなれば、いくら事業資金を貸し付けたところで成果は得られず、銀行の貸倒れリスクは高まるばかりです。
したがって、事業資金の融資審査では、資金使途もかなり影響します。
背景や決算が良いことが前提ですが、いくら決算内容が良好でも、銀行が資金使途に納得できなければ、事業資金の融資は受けられません。

運転資金と設備資金

 
事業資金を資金使途によって大別すると、運転資金と設備資金に分けられます。
運転資金は、事業を継続するために必要な資金のことです。
在庫を確保し、販売を行い、売上を回収するまでには時間がかかります。
その間は自社が立て替えておく形になり、現金が不足するため事業資金(運転資金)が必要になるのです。
設備資金は、機械設備を導入する、工場や店舗などを建てるなど、設備投資を行うための事業資金です。
事業資金の中でも、運転資金や設備資金は融資に頼ることが多くなります。
運転資金や設備資金がなぜ必要なのか、金額はどれくらい必要なのかをしっかり説明することで、融資審査に通りやすくなるでしょう。

経常運転資金

 
事業資金のうち、運転資金は資金使途によって細かく分類されています。
まず知っておきたいのが経常運転資金です。
その名の通り、経常的に必要となる運転資金と考えてください。
普通「運転資金」という場合、経常運転資金を指すことが多いです。
経常運転資金は、分割返済がない手形貸付、長期返済の証書貸付、手形割引などで融資します。

増加運転資金

 
会社によっては、経常運転資金だけでは足りなくなることがあります。
売上の増加や、回収サイトの長期化などが主な理由です。
その場合、不足部分を「増加運転資金」として調達しなければなりません。
増加運転資金として事業資金を調達する場合、具体的なシミュレーションと数値によって、運転資金の増加を説明するのがポイントです。

つなぎ資金

 
つなぎ資金は、一時的に事業をつなぐための事業資金です。
例えば、一時的に仕入れが増えた場合、必要な事業資金も一時的に増えます。
月末にはまとまった入金があるものの、それまでの期間は運転資金が不足する状態です。
その期間の資金繰りをつなぐための事業資金が、つなぎ資金です。
つなぎ資金の需要は一時的ですから、数週間~数ヶ月の短期融資が基本となります。
資金使途を説明するには、収支が一時的に変動することを、資料によって示しましょう。
契約書や注文書、請求書の控えなどがあれば、事業資金の融資はスムーズです。

季節資金

 
業種によっては、在庫の備蓄や仕入れが増える(支払いが多い)時期と、販売や売上回収が増える(入金が多い)時期がはっきりと分かれます
季節によって事業資金の需要が変わることから、このような事業資金を「季節資金」といいます。
季節資金の場合、資金使途は計画書によって説明するのが良いでしょう。
在庫備蓄計画と販売計画を作り、それを根拠に資金繰り表を作れば、事業資金が不足する時期と金額が分かります。
その時期に合わせて事業資金の融資を受け、さらに収入が多くなる時期に返済できることを示せば、資金使途を問題視されることはないでしょう。

納税資金

 
納税資金も、事業資金のうち重要なものです。
納税資金は、事業資金の中でも特に審査に通りやすいといえます。
そもそも、利益が出ているからこそ納税を求められているのです。
きちんと利益が出ていれば、それだけで事業資金の融資は有利に進みます。
ただし、事業資金を安定的に調達するには、納税義務を果たすことが大前提です。
利益が大きい会社は事業資金の融資を受けやすいのですが、納税額も大きくなります。
税金を納めていない会社は、いくら決算内容が良くても、事業資金の融資は受けられません。
したがって、納税時期に合わせて確実に調達し、未納を避けてください。
なお、納付額は決算を迎えるまで分からないことも多いです。
事業資金の融資を受ける際には、税理士におおよその納税額を計算してもらい、それを根拠に融資を交渉するのが基本となります。

賞与資金

 
従業員に賞与を支払うと、手元の事業資金が大幅に減少します。
そこで、手元資金にある程度余裕がある場合も、賞与資金を調達するのが賢明です。
賞与資金は、時期と金額の根拠が明確なため、資金使途も説明しやすいでしょう。
なお、賞与のために事業資金を借り入れる場合、次の賞与の時期までに返済するのが基本です(賞与が年1回ならば1年返済、年2回ならば6ヶ月返済)。

ハネ資金

 
事業資金のひとつにハネ資金があります。
あまり聞きなれない事業資金ですが、それもそのはず、資金使途として表向きには認められていないのです。
ハネ資金は、銀行が「暗黙の了解」によって融資している事業資金といえます。
事業資金の融資を受けた後、経営悪化によって手元資金がどんどん目減りし、このままでは現金が底をつく(返済不能になる)ということがあります。
銀行としても、貸し倒れは避けたいところです。
そこで、現金残高を回復させるためにあえて追加で融資する事業資金を「ハネ資金」といいます。
ハネ資金として融資できるかどうかは、融資先のキャッシュフロー次第です。
「年間のキャッシュフロー>年間の分割返済額」であれば、理論上はキャッシュフローだけで返済をまかなえます。
しかし、ハネ資金の融資を受けるくらいですから、キャッシュフローが悪化しているのが普通です。
そこで、「年間のキャッシュフロー<年間の分割返済額」であっても、他の銀行から事業資金の融資を受けられるならば、実質的に返済力ありとみなし、ハネ資金を融資するケースが多いです。
経営が悪化していても、ハネ資金を受けられるうちは事業資金を調達できます。
逆に、ハネ資金を受けられなくなれば、銀行から見放された可能性が高いです。
ハネ資金を調達できる間に、速やかに経営を改善しましょう。
ハネ資金を調達するには、経営計画書によって将来のキャッシュフローが増えることをアピールしたり、他の銀行が事業資金の融資に積極的であることをアピールするのがポイントです。

後ろ向き資金

 
事業資金には、資金使途によって「後ろ向き資金」と呼ばれるものがあります。
後ろ向き資金は、事業資金の中でも最も審査に通りにくいものです。
代表的な後ろ向き資金に、赤字補填資金があります。
これは、赤字を穴埋めするための事業資金です。
赤字であることが前提ですから、銀行も慎重にならざるを得ません。
ほかには、過剰在庫によって必要となる事業資金、売掛金の回収不能によって必要となる事業資金など、総じて「穴埋め」に必要な事業資金は後ろ向き資金と考えてください。
後ろ向き資金が審査に通りにくいのは、返済の見通しがつかないためです。
赤字補填資金の場合、そもそも利益が出ていないのですから、返済原資も見えません。
過剰在庫や売掛金の回収不能は損失を伴うため、そこから利益を回復するには時間がかかり、先行きは不透明です。
したがって、後ろ向き資金の融資を受けるには、担保・保証を付けるのが基本となります。
資金使途については、資金が必要になった理由を述べ、経営計画書によって利益が上がっていく見通しを示す必要があります。

事業資金の融資と書類

 
事業資金の融資を受けるには、銀行に様々な書類を提出しなければなりません。
書類の内容と影響についてみていきましょう。

決算書

 
決算書は、事業資金の融資をうけるための必須書類です。
決算報告書、確定申告書、別表、勘定科目内訳書なども全て要求されます。
電子申告の場合、税務署が受け付けたメールを提出しなければなりません。
事業資金の融資で気を付けたいのが、税理士の署名です。
法人税確定申告書の右下には、税理士の署名押印欄があります。
ここに顧問税理士等の名前がなければ、事業資金の融資に大きく不利になります。
「税理士が作った決算書かどうか」は、銀行にとって極めて重要です。
税理士の署名がない決算書は、信ぴょう性が一気に下がります。
それだけで事業資金の融資審査に落ちることも珍しくありません。
また、頻繁に税理士が変わっている会社も注意が必要です。
この場合、事業資金の融資対策と称して、税理士に粉飾決算を要求し、拒否した税理士を頻繁に変えるケースがあります。
銀行としても、決算内容に疑いの目を向けなければなりません。
正当な理由によって税理士が変わっているならば、それを銀行に説明できるよう準備しておきましょう。

試算表

 
決算書は1年間の損益を表すものです。
これに対し、損益の途中経過を示すものを「試算表」といいます。
試算表を毎月作成することによって、自社の状況を正確に把握でき、経営判断に役立ちます。
事業資金の融資を受けるかどうかに関係なく、本来は毎月試算表を作っておくべきです。
銀行が試算表の提出を求めるのも、融資先の経営状況を把握するためです。
普段から作成していない場合、税理士に慌てて作成を依頼することになります。
そのような試算表は、銀行員には見抜かれるものです。
試算表の内容が良くても、普段から作成していないことによりイメージが悪化し、今後の事業資金融資に悪影響をもたらします。
逆に、普段からきちんと作成しておけば、銀行に試算表の提出を求められてもスムーズに提出でき、銀行員からの印象も良くなります。
今期の業績が好調であれば、試算表を積極的に提出するとよいでしょう。
前期の決算は良好、今期の途中経過も好調であれば、銀行はスムーズに事業資金を融資できます。
また、前期の決算が悪い場合、今期の途中経過によって業績の回復状況をアピールすれば、事業資金の融資を受けやすくなるでしょう。

月次資金繰り表

 
今後6ヶ月~1年間の、月次の資金繰り予定を「月次資金繰り表」といいます。
経営計画を作ることで、将来的な損益の計画が立ちます。
それによって入出金を予測すれば、1ヶ月ごとの資金繰り表も作成可能です。
資金繰り表は経常収支、設備収支、財務収支によって構成されます。
経常収支は、事業自体の資金繰りを表します。
設備収支は、設備の購入や売却による現金の動きです。
財務収支は、銀行などから事業資金を調達したり、借入金を返済したりすることによる動きを表します。
事業資金を借り入れた月は財務収支が大きくプラスになり、それ以外の月(返済だけの月)はマイナスになるのが普通です。
以上のうち、事業資金の融資に最も影響するのが経常収支です。
経常収支がマイナスの場合、事業を続けることで現金が流出していることを意味します。
経常収支がマイナス、財務収支がプラスであれば、銀行から事業資金を借り入れることで補っている状態です。
事業資金の融資にも悪影響ですから、経常収支をプラスにしなければなりません。
理想的なのは、経常収支がプラスであり、その範囲内で財務収支のマイナスを補っている状態です。
これは、本業からの利益で借入金を返済していることを意味します。
銀行は資金繰りが良好とみなされ、事業資金の融資にも積極的に対応してくれることでしょう。

会社案内やパンフレット

 
会社案内やパンフレットは、事業資金の融資を受けるための補足資料です。
同じ銀行員でも、融資先を訪問する営業担当者と、支店内で勤務する融資担当者では、情報量や認識が全く異なります。
営業担当者は、現場や商品をみていますから、会社のこともそれなりに知ってくれているでしょう。
しかし融資担当者は、融資先を生で見ることは少なく、あまり詳しく把握していないことが多いです。
また、事業資金の調達額が一定以上になると、支店内だけでは決済できないため本部で審査されます。
本部の担当者は、支店の融資係以上に会社のことを知りません。
そこで、会社案内やパンフレットが重要となります。
事業資金の融資を依頼する際、提出書類に会社案内やパンフレットを添えておくことで、稟議書に添付してくれます。
これにより、融資係・支店長・本部担当者などに会社の内容を知ってもらえるというわけです。
あくまでも補足資料ですから、それによって事業資金の融資判断が覆ることはありません。
しかし、「事業内容をほとんど知らない会社」と「事業内容をそれなりに知っている会社」であれば、後者の方が積極的に検討しやすいのは事実です。
必須書類に沿えるだけで事業資金の融資にプラスになるのですから、提出するに越したことはないでしょう。

事業資金の融資と日常取引

 
融資は銀行の基幹業務であり、事業資金を融資することで得られる利息収入は、銀行にとって一番の収入源です。
しかし、銀行の収入源はそれだけではなく、日常取引も重要です。

日常取引とは

 
日常取引とは、融資以外の日常的な取引を指します。
事業資金の融資を受ける際、日常取引の影響度はさほど高くありません。
背景や決算、資金使途に問題があれば、事業資金の融資は難しいでしょう。
日常取引は、「最後の一押し」として効きます。
例えば、既存の取引銀行から事業資金の融資を受ける際、
「事業資金の融資自体は可能であるものの、積極的に支援すべき理由もない。その他のうまみがあれば積極的に検討できる」
といった場合があります。
このとき、日常取引を交渉のカードにするのです。
例えば、事業資金の融資をきっかけに、振込手続きの一部をその銀行で行うとしましょう。
それにより、銀行は振込手数料を稼ぐことができ、融資担当者としても、
「今回の事業資金融資により、振込手数料を月〇万円程度確保。取引深耕を図るべく、本件融資を行いたい」
などと稟議書に記載できるのです。
このような日常取引が多いほど、事業資金の融資にプラスとなります。
何らかの事情により、事業資金の融資が難しい会社も、日常取引が多ければ審査に通るかもしれません。
銀行が「融資を謝絶し、日常取引を失うのは惜しい」と考えるならば、事業資金の融資を出す可能性は大いにあります。

日常取引①預金

 
事業資金の融資にプラスになる日常取引は色々あります。
自社が銀行に預けている預金もそのひとつです。
事業資金の融資を受けている銀行から、「預金額の残高を平均〇万円以上に保ってください」などと言われたことがあるかもしれません。
銀行にとって、預金の獲得は重要です。
そもそも、銀行が貸し付ける事業資金は、預金を原資としています。
銀行の預金金利の低さは、皆さんもご存知の通りでしょう。
低い金利で預かったお金を原資として、高い金利で事業資金を貸し付けることで利ザヤを得ているのです。
したがって、銀行にとって預金を集めることは重要であり、預金も日常取引のひとつとみなします。
基本的に、預金額が多いほど、事業資金の融資も有利になると考えてください。
実際に、銀行は融資額と預金額、融資金利と預金金利によって取引採算をみており、事業資金の融資の判断材料としています。
取引採算を図る方法のうち、もっとも基本的な方法は実効金利です。
実効金利は、「(融資額×融資利率-預金額×預金利率)÷(融資額-預金額)」によって計算します。
実効金利は、事業資金の融資によって得られる実質的な利息収入が分かります。
例えば、事業資金を3000万円・年利2%の条件で借り入れるとしましょう。
この会社が1500万円・年利0.1%の条件で預金している場合、実効金利は3.9%です。
貸付金利は2%のところ、預金があることによって、実質3.9%の利息収入を得ていることになります。
実効金利は、あくまでも簡易的な指標であり、これだけでは具体的なところ(融資と預金からそれぞれいくら儲かったか)が分かりません。
そこで、実際の事業資金の融資においては、本支店方式という考え方を用いるのが一般的です。
ここでは割愛しますが、少なくとも預金という日常取引が、銀行の収益に影響していることは分かるでしょう。
預金が多いほど取引採算は高まり、銀行は事業資金の融資を検討しやすくなります。

日常取引②手数料

 
銀行の一番の収入源は利息収入ですが、二番目は手数料収入です。
会社は銀行に様々な手数料を支払っています。
例えば、振込手数料、手形取引手数料、外国為替手数料、インターネットバンキング手数料などがあります。
1件当たりの手数料はごくわずかであり、個人の利用であれば大した取引にはみえません。
しかし、会社は手数料を支払う機会が多いだけに、月単位、年単位で考えると大きな収入となります。
振込手数料を1件300円として、年間1000件の振込を行う会社であれば、年間30万円の手数料収入が得られるのです。
銀行が手数料収入を重視していることは、事業資金融資の現場をみてもよくわかります。
銀行は、融資先ごとに情報をファイルにまとめていますが、その中には月々の手数料収入がきちんと記録されています。
いくら事業資金を融資しても、手数料収入が伸びない会社は、印象が良くありません。
逆に、事業資金の融資をきっかけに、振込や手形取立を増やしてくれる会社は印象が良くなります。
融資は、「銀行が会社に事業資金を貸す」あるいは「会社が銀行から事業資金を借りる」という一方的な取引ではなく、双方向の取引であるべきです。
事業資金を借りることで会社の経営が安定し、日常取引の増加によって銀行も儲かるというWin-winの関係が理想的です。
そのような理想的な関係にあるならば、融資先の経営が多少悪化しても、銀行は総合的な取引採算をみて融資しやすくなります。

日常取引③付随する取引

 
日常取引のメインは預金と手数料ですが、付随する取引によっても収益が得られます。
付随する取引とは、事業資金の融資に付随する様々な取引です。
例えば、振替口座への指定
公共料金や保険料、各種会費などの支払いには、引落手数料が発生しています。
売掛金や買掛金決済など、事業に伴う振込手数料に比べるとわずかなものですが、それでも銀行の収益になることは間違いありません。
もちろん、振替口座には一定の預金を保っておく必要があるため、口座振替が多いほど預金量も増え、銀行の取引採算は高まります。
会社単位ではなく、従業員個人との紐づけも効果的です。
従業員の給与口座に指定すれば、銀行は従業員の預金を確保でき、個人的な振込手数料も得られます。
従業員の自動車ローンや住宅ローンにつなげていけば、個人が大きな収益源になります。
このほか、銀行の経営者組織への入会も付随する取引です。
これによって関係が深まれば、銀行の収益機会も増えていきます。
実際、関係が深まった会社は、銀行の関連会社を利用する機会も増えていくものです。
例えば、リース会社や証券会社、保険代理店を利用してもらうことで、銀行グループ全体の取引採算は増えていきます。
以上のように、付随する取引には色々ありますが、ひとつひとつの取引が目立たないだけに、複数行に無意味に分散していることも多いです。
その場合、付随取引を特定の銀行にまとめることで、事業資金の融資にプラスにはたらきます。

事業資金の融資と経営計画書

 
経営計画書も、事業資金の融資に影響する場合があります。
経営に問題がない会社であれば、経営計画書が大きくプラスになることはありません。
しかし、経営に問題があり、事業資金の融資を出しづらい会社であれば、経営計画書はかなり重視されると考えてください。

返済原資の重要性

 
ここまでも述べてきたように、銀行は本業で稼ぐ利益を返済原資とみなします。
それを簡易的にみるために、銀行は「当期純利益+減価償却費」でキャッシュフローを計算します。
利益が大きいほどキャッシュフローは大きくなり、返済原資も大きくみることができるため、事業資金を融資しやすいです。
逆に、赤字であれば返済原資はみることができず、事業資金の融資も困難となります。
返済原資がなければ返済はできず、貸し倒れになることは明らかです。
この状況で事業資金を調達するには、「現在は返済原資がないものの、将来的には利益が上がって返済原資も得られる」ということを示し、貸し倒れにならないことを説得しなければなりません。
経営に問題があり、なおかつ経営計画書を作成していない、あるいは計画がずさんという場合、事業資金の調達は不可能でしょう。
経営計画書を提出することによって、はじめて事業資金を調達できる可能性が出てきます。
経営内容が悪い会社にとって、経営計画書は必須といえます。

経営計画書の影響

 
経営計画書を構成するのは、年次損益計画、月次損益計画、アクションプランの3つです。
この3つを提出しておくだけでも、事業資金の融資にプラスとなります。
経営計画書を提出するタイミングは、いつでもかまいません。
もっとも、事業資金の融資を受けるタイミングで提出するより、事前に提出しておくのがよいでしょう。
経営計画書の提出を受けると、銀行は企業ごとのファイルに保存します。
事業資金の融資審査時に参考にするわけですが、銀行員にある程度の心構えがあるのと、ないのでは大違いです。
また、銀行の要求を待たずに経営計画書を提出することで、銀行の印象も大きく変わってきます。
普段から経営計画書を作っているということは、常に今後を見据えて経営しているということです。
自社の財務体質や利益体質を把握し、改善を探っているからこそ、それが経営計画書という形になるのです。
つまり、経営者が真剣に考え、理解していなければ、経営計画書を作ることはできません。
真剣に取り組む経営者を、銀行は好意的に評価します。
重要なのは、経営者が真剣に取り組んでいる姿勢を、経営計画書によって示すことです。
それが見えてこない経営計画書は意味がありません。
代表的な例として、税理士やコンサルタントに丸投げするのは禁物です。
そのような経営計画書は、銀行員はすぐに見抜いてしまいます。
経営者の熱意は伝わらず、事業資金の融資にもなんらプラスにはなりません。
経営者自身が作成していないだけに、面談時に経営計画書について質問されても、うまく受け答えできないことがよくあります。
その場合、経営計画書を提出したことで銀行の印象が悪化し、事業資金の融資に悪影響になるかもしれません。

基本は融資、ファクタリングで補完

 以上の内容をまとめると、事業資金調達は「基本的には銀行融資を軸としつつ、ファクタリングで補完する」といったイメージがよいでしょう。
 設備投資や新規事業展開など、多額の資金需要が発生する場合には、銀行融資以外での資金調達は困難です。したがって、銀行融資によってまとまった資金を調達し、長期間にわたって返済していくのがベストです。
 しかし、銀行融資には時間がかかります。業績や財務が悪化し、融資を受けられなくなることも考えられます。そのような場合にファクタリングを活用するのです。
 ファクタリングはスピーディに資金を調達できるため、銀行融資では間に合わないシーンで非常に役立ちます。
 また、緊急的な資金調達に限らず、少額の資金需要であればファクタリングを積極的に利用すべきです。銀行融資では、借入れごとに返済が発生します。このため、少額の資金を度々借り入れていると、毎月の支払いが大きくなる可能性が高いです。かといって、借り換えによる一本化も簡単ではありません。そこで、少額の資金需要はファクタリングでの調達を心がけ、借入れ件数を増やさないことが大切です。
このほか、リスケジュールなどによって銀行融資を受けられない期間が生じた場合にも、ファクタリングで細かく事業資金を調達することで、資金繰りの維持が可能です。

まとめ:事業資金の調達はNo.1にご相談ください

 本稿では、事業資金調達方法と、方法別のポイントを解説しました。本稿で述べたポイントを押さえて取り組めば、どの方法も資金繰りに役立つことでしょう。
 短期資金の調達方法のうち、最も優れているのはファクタリングです。今後、手形取引が廃止に向かっていくことを考えても、ファクタリングの需要は高まっていくと考えられます。
 事業資金調達の多様化には、ファクタリングをおすすめします。まずは、No.1にご相談ください。

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