カテゴリー: 資金調達情報

運転資金とは?運転資金の計算方法と運転資金が不足した場合の資金調達方法

スピード査定依頼フォーム

運転資金は、会社が運転し続けるために必要な資金であり、運転資金が不足すると資金繰りはショートします。これを避けるためにも、運転資金を正しく理解し、資金調達に取り組むことが大切です。
 本稿では、運転資金の計算方法や調達方法、ファクタリングの活用などを解説します。

運転資金とは?

営業活動には、どの会社でも大体共通する営業循環があります。この営業循環を簡単に示すと、

  • 1、商品を仕入れる。買掛金が発生する。
  • 2、仕入れた商品は在庫となる。
  • 3、在庫を販売し、売上が発生する。
  • 4、買掛金を支払う。
  • 5、売掛金を回収する。
  • 6、回収した売掛金で商品を仕入れる。買掛金が発生する。
  • 7、仕入れた商品は在庫となる。

という流れです。買掛金の支払いや売掛金の回収が前後することはあるでしょうが、おおむねこのような循環を無限に繰り返すのが営業活動というものです。

運転資金=常時必要な資金

 営業循環を考えると、あることに気が付きます。それは、売上の入金以前に支払いが必要になるということです。
 営業活動のためには、販売するための商品を仕入れることが欠かせません。もちろん、製造業ならば原材料なども仕入れる必要があるでしょう。これらの在庫は、いずれ現金化される資産ですが、現金化されるには時間がかかります。
 その結果、売掛金の回収よりも買掛金の支払いが先行します。お金が入ってくるよりも、お金が出ていくタイミングの方が早いのですから、入金までの資金が必要です。
 つまり、営業活動のためには、まとまった立替資金が常時必要となります。これを運転資金といいます。

運転資金の計算方法

 運転資金は常時必要な資金であり、これが足りなくなると営業活動がうまくいかなくなります。営業活動の縮小によって必要運転資金を減らすなどの措置を取らなければなりません。
 しかし、それはやむを得ない場合の対処です。営業活動を縮小すれば売上や利益は減少します。設備の維持費や人件費の負担に耐えられず、解雇など想定外の事業縮小に迫られる可能性もあります。運転資金の不足はジリ貧を招くのです。
 したがって、運転資金を正しく計算し、必要な資金をしっかりと調達することが重要です。

運転資金の計算方法

 運転資金の計算方法を、具体的な例でみていきましょう。
 例えば、次のような会社(以下、A社)があるとします。

  • 平均月商:1,000万円
  • 回収サイト:2ヶ月
  • 仕入原価:600万円
  • 支払サイト:1.5ヶ月

 A社の平均月商は1,000万円です。売掛金の回収に平均2ヶ月かかるため、A社が流動資産として常時保有している売掛金は2,000万円となります。
 また、A社の仕入原価は600万円です。売掛金の回収に2ヶ月かかるため、在庫も常時2ヶ月分を保有しておくのが普通です。これにより、次回の売掛金によって次回の在庫を確保できる流れを作ることができます。したがって、A社が流動資産に計上する在庫は1,200万円です。
 在庫を常時2ヶ月分保有しておくには、それに見合う仕入れが必要であり、仕入金の支払いは1.5ヶ月後です。このため、A社の流動負債には900万円が計上されていることになります。
 運転資金は、以下の計算式で算出します。

運転資金=売掛債権(売掛金、受取手形)+在庫-買掛債務(買掛金、支払手形)

 以上の数値をあてはめると、A社の運転資金は以下のようになります。

A社の運転資金=2,000万円+1,200万円-900万円=2,300万円

 A社が営業活動を続けるには、常に2,300万円の運転資金を確保しておかなければなりません。

運転資金が足りない!原因と対策

 
運転資金は、事業を回すために経常的に必要となる資金です。
運転資金が不足すれば事業は回らなくなり、最悪の場合には黒字倒産に陥ります。
それを避けるためには、運転資金が不足する原因と対策を知っておくことが大切です。

運転資金が不足する原因

 
まず、運転資金が不足する原因から考えていきましょう。
上記の通り、運転資金は「売掛債権+在庫-買掛債務」で計算します。
事業の内容や売上・コストが大きく変わらなければ、基本的に運転資金は一定です。
それでも運転資金が足りなくなるのは、手元の資金にいつも余裕がなく、予想外の支出や収入源に対応できなくなるためです。
つまり、リスクが運転資金の不足をもたらします。
事前にリスクを想定し、リスクに応じて運転資金の不足にどう対処するかを検討しておくことが重要です。
具体的には、運転資金が不足するリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。
いくつか見ていきましょう。

与信管理の問題

 
運転資金が不足する原因のひとつに、与信管理の問題が挙げられます。
与信管理とは、取引先の経営や信用の変化に合わせて取引を最適化するものです。
これにより、売掛金の回収不能リスクを軽減するのが与信管理の主な目的です。
もし、与信管理がずさんであれば運転資金の増加につながります。
仮に、ほとんど与信管理をせずに、売上を伸ばすことに注力したとしましょう。
営業マンは契約を取ること重視し、多少無理な契約も受け入れます。
当然、取引先に有利な契約となり、回収サイトの長期化は必至です。
また、営業成績を伸ばすために大型の契約を積極的に取れば、多額の売掛債権が発生することになります。
運転資金の計算式をみればわかる通り、売掛債権の増加は運転資金の増加に直結します。
このように奔放な営業活動を行う以上、在庫も多めに確保することになるでしょう。
しかし、仕入条件が良くなるわけではありません。
その結果、「買掛債務の増加>売掛債権・在庫の増加率」となれば、運転資金の大幅な増加は避けられません。
手元資金に余裕がなければ、運転資金の増加分は調達する必要があります。
経営に問題がなければ、銀行融資などで対応できることも多いですが、銀行融資は資金調達方法の中で最も審査が厳しく、調達に失敗する会社も多いです。
運転資金を調達できなければ、「資金ショート→黒字倒産」ということも十分にあり得ます。

請求漏れ

 
与信管理がずさんな会社では、請求漏れの発生率が高いです。
信用取引の基本的な流れは、商品の納入後に請求書を発行し、売掛先が請求書を受理することではじめて売掛債権が確定します。
つまり、自社が請求しない限り売掛債権は確定せず、未確定である以上、代金の支払いも受けられません。
未請求の場合、帳簿の上では売掛債権も計上されず、運転資金にも影響しないように思えます。
しかし、実際に取引を行っており、それに伴い様々なコストを負担していることは事実です。
帳簿上の数字に関係なく、運転資金の需要は確実に発生します。
自社が把握している収入と支出のズレ(=自社が想定する運転資金)よりも大きなズレ(=実際の運転資金)が発生している状態であり、運転資金不足のリスクも極めて高い状況です。
請求漏れに気付かない限り、自社には見えない売掛債権が滞留し続け、運転資金の調達や圧縮など、様々な局面で頭を悩ませることになります。

見込み違いによる過剰在庫

 
運転資金が不足する原因として、在庫の増加も無視できません。
運転資金の計算式からも分かるように、在庫も運転資金を左右します。
在庫が増えるほど運転資金も大きくなるのです。
実際に運転資金が不足する会社の資金繰りをみてみると、過剰在庫を抱えているケースがよくみられます。
例えば、
「売れ行き好調のため、商品を大量に仕入れておいたところ、競合商品が表れてマーケットシェアが減って売上が減った」
「需要の増加を見込んで多めに仕入れておいたところ、見込みが外れてしまった」
といった場合、在庫を過剰に抱えることになります。
当然ながら、在庫は売ったり処分したりしない限り減ることはありません。
在庫がなかなか減らなければ、いつまでも運転資金は小さくならず、運転資金不足のリスクも高いままです。

運転資金不足への対処法

 
運転資金が不足する原因をいくつか挙げてみました。
では、運転資金の不足にはどのように対策すればよいのでしょうか。
運転資金不足の原因をみればわかるように、多くの場合、原因は社内の体質にあります。
会社内部で体質改善を図ることで、運転資金が不足しにくい状況を作ることができます。
具体的な対策を部門別にみていきましょう。

経理部門での対策

 
最も肝心なのは、何と言っても経理部門です。
経理部門は、売掛債権やコスト、買掛債務などを計算し、与信管理も行います。
売掛先の信用情報を逐一把握し、与信限度額を適切に設定することができれば、売掛債権の増加を適度に抑えることができ、運転資金の急増を防ぐことができます。
また、請求を行うのも経理部門の仕事です。
売掛先への請求を確実に行い、支払いが遅れた際の催促・督促・法的手続きにあたっても、経理部門が果たす役割は大きいといえます。
運転資金が不足する会社では、経理部門と営業部門の連携が取れていないケースが目立ちます。
よくあるのが、営業部門が暴走し、経理部門の与信管理が意味を為さなくなるパターンです。
そうならないためには、営業部門と経理部門の連携を強化し、経理部門が営業活動を制御し、運転資金の増加を抑える必要があります。

営業部門での対策

 
営業部門は、運転資金の増加を直接的にもたらす立場ですから、対策が欠かせません。
売上拡大そのものは、必ずしも悪いものではありません。
売上が伸びて利益が増えていけば、手元資金で運転資金をまかなうこともできます。
問題は、ずさんな営業活動によって売上が急速に伸びることです。
売上が伸びると運転資金は増加します。
その増加が大きすぎる場合、運転資金が不足するリスクが高まるのです。
売上が増やしつつ、運転資金の不足を回避するには、できるだけ自社に有利な契約を結ぶことです。
特に、有利な支払条件を結ぶことができれば、売掛債権を早期に回収できます。
手元の売掛債権がスムーズに現金に変われば、売上は伸びても運転資金の増加は軽微にとどまり、運転資金の不足も起きにくいというわけです。
他部門との連携では、上記の通り経理部門との連携により、与信管理の強化につながります。
このほか、製造部門との連携も重要です。
営業部門と製造部門の連携が密であれば、作りすぎなどの無駄を排除できます。
作りすぎることがなければ、確保すべき原材料を圧縮でき、運転資金を減らすことも可能です。

製造部門での対策

 
製造部門も、運転資金に大きく関係しています。
運転資金不足を避けるために、製造部門がまず心がけたいのが見込生産をやめることです。
製造業者では、見込生産を行うことがよくあります。
それによって、稼ぐチャンスを逃さないメリットはありますが、運転資金不足のリスクを増大させます。
見込生産とは、売上の増加を見込んで余分に生産しておくことです。
見込分の生産にも原材料は必要ですから、在庫を多めに仕入れることとなり、運転資金の増加を招きます。
もちろん、見込みが外れて製品が売れなければ、製品としての在庫を抱えること。
見込生産をやめて、確実に売れる分だけを生産すれば、在庫の圧縮につながり、運転資金も減ります。
また、経理や営業と連携して、売れるものだけを選択的に生産することも重要です。
これは、在庫を減らし運転資金を減らすだけではなく、コストダウンと利益の向上にもつながります。
利益が増えれば手元資金は厚くなり、運転資金の不足に悩まされることも減るでしょう。

長期目線で運転資金に備える

 
運転資金は短期的なものですから、あまり長期目線で考えない人も多いです。
普通、資金繰り計画は半年先を見据えて作ります。
しかし、半年以内の資金繰りが安定しており、運転資金も不足しないというだけでは不十分です。
目先の運転資金に問題がなくても、さらに将来を考えると不安という会社も多いことでしょう。
事業を長く継続していくには、5年先、10年先まで見据えて、運転資金の不足(いわゆる先行き資金不足)まで想定しておくことが重要です。
ポイントは、多少オーバーなくらいにリスクを織り込んで備えておくことです。
そうすれば、大抵のリスクには対処可能となり、中長期での運転資金不足を防ぐことができます。

運転資金の調達方法

 
運転資金を調達するには、どのような方法があるのでしょうか。
ここでは、運転資金の一般的な調達方法を解説します。

プロパー融資を狙ってみる

 
運転資金の調達方法として、最もスタンダードなものは銀行融資です。
しかし、銀行融資にも色々な種類があり、運転資金の調達に適したものと、そうでないものとがあります。
まず考えたいのがプロパー融資です。
プロパー融資は、信用保証協会などの保証を付けずに、銀行が独自に融資するものです。
無保証ですから、貸倒れリスクは全て銀行が負わなければなりません。
したがって、一般的にプロパー融資は審査が厳しく、利用できない会社も多いです。
特に、業績悪化や赤字決算など、業績に問題を抱えている会社は、プロパー融資では運転資金は調達できないでしょう。
業績が悪化していても、あるいは赤字でも、売上があれば売掛債権は発生し、在庫や買掛債務もあるわけですから、運転資金の需要は出てくるわけです。
しかし、業績悪い会社は、銀行から返済力が低いとみなされるため、プロパー融資は受けられません。
逆にいえば、経営に大きな問題がなければプロパー融資を受けられる可能性があります。
経営に問題がなく、なおかつ経常的に運転資金が発生しているということは、簡単に言えば「事業が健全に回っており、運転資金の需要も安定している」ということです。
この場合、運転資金が発生する原因である売掛債権と紐づける、つまり本業の利益を安定した返済原資とみなせるため、銀行は前向きに検討できます。
もし、業績が好調であれば、積極的にアプローチするのが良いでしょう。
経営に問題がなく、運転資金が増加しているということは、「業績が好調であり、売上が伸びたことで運転資金の需要が増加している」といえます。
銀行は、業績が好調な会社を好みます。
業績が好調であれば利益も多くなり、返済力も高まるためです。
さらに、成長力が旺盛とみなされれば、今後の取引拡大(多額の貸付けや融資外取引の獲得)を狙い、積極的に対応してくれる銀行も出てきます。
以上のように、色々ある資金使途の中でも、運転資金は比較的審査に通りやすいです。
プロパー融資の実績を作るためにも、運転資金はプロパー融資を狙いましょう。

信用保証協会の保証を受ける

 
もちろん、プロパー融資では運転資金を調達できない会社も多いです。
そのような会社は、信用保証協会の保証を受けることで運転資金を調達しやすくなります。
運転資金を調達する際、銀行の方から保証付融資をすすめられることもあるかもしれません。
なぜ、信用保証協会を利用すれば運転資金を借りやすくなるのでしょうか。
信用保証協会保証付融資は、信用保証協会が債務を保証する融資制度です。
運転資金の借り入れ後、万が一返済できなくなった場合には、信用保証協会が原則8割を弁済します。
つまり、銀行にとって絶大な保険効果があるのです。
例えば、1000万円の運転資金をプロパー融資で貸し付けたとしましょう。
それから数ヶ月後に融資先が倒産した場合、ほとんど全額が貸し倒れになります。
しかし、信用保証協会の保証があれば、最悪の場合でも損失は元金の20%です。
運転資金1000万円の融資であれば、せいぜい195万円程度の損失で済むわけです。
銀行にとって大変好都合な仕組みですから、多くの銀行では融資担当者に対して、信用保証協会の利用を奨励しています。
実際に、保証付融資の実績は銀行員の査定にも反映されるようです。
このように考えると、運転資金を調達する際に、銀行から保証付融資をすすめられたり、「プロパー融資は無理でも保証付融資なら・・・」といった対応が増えるのも納得がいくでしょう。
保証付融資で運転資金を調達する場合、保証限度額は無担保で8000万円、有担保で2億8000万円が上限です。
ただし、保証枠いっぱいに保証を受けられるわけではありません。
まず、保証枠は月商の3ヶ月分が目安となります。
例えば、年商1億2000万円の会社は単純計算で月商1000万円ですから、保証枠は3000万円が目安です。
さらに、月商倍率の影響も無視できません。
月商倍率とは、既存の借入れに対する月商の割合です。
この会社が既に2000万円の融資を受けている場合、月商倍率は2ヶ月(2000万円÷1000万円=2)となります。
業種や資金使途によって判断基準に差がありますが、運転資金であれば、調達可能額は借入月商倍率の3~4ヶ月までと考えてください。
年商1億2000万円の会社が、プロパー融資や担保付融資で既に4000万円以上(月商4ヶ月分以上)の融資を受けている場合、信用保証協会の保証枠が残っていても保証は受けられないのが普通です。
保証付融資で運転資金を調達する際には、まずは自社の保証枠や月商倍率を計算してみましょう。

不動産があれば担保付融資を

 
不動産を所有している会社は、不動産の担保活用によって運転資金を調達できます。
近年、担保資産の多様化が進んでいますが、不動産は未だに担保の王様です。
特に、土地は担保評価がしやすく、経年劣化による価値の減少も起こりません。
したがって、不動産担保があるかどうかによって、運転資金の調達環境は大きく変わります。
土地を担保とする場合、銀行は時価の70%程度で評価することが多いです。
土地の時価が5000万円であれば、その不動産を担保として、運転資金を3500万円まで調達できます。
運転資金の融資後、融資先が倒産した場合には、銀行は担保物件を処分することで回収できるため貸倒れリスクをほとんど負いません。
不動産担保があれば、経営や信用に大きな問題を抱えていない限り、運転資金の調達に困ることはないでしょう。
ただし、不動産を所有していても、すでに担保に利用している場合には、運転資金の追加融資が難しくなります。
というのも、借入先の抵当権がついているため、他の銀行では担保として活用できないのです。
この場合、ノンバンクの不動産担保ローンを検討してみてください。
不動産担保を専門とするノンバンクでは、時価の90~100%で評価してくれることがあります。
時価5000万円の土地について90%で評価する場合、融資上限は4500万円です。
時価70%(3500万円)の部分に銀行の抵当権がついている土地でも、後順位でノンバンクの抵当権とつけることで、運転資金1000万円を調達できる可能性があります。
また、銀行は不動産の担保価値よりも決算書を重視するのに対し、ノンバンクは不動産の価値を重視してくれるのも特徴です。
銀行の評価が低い会社は、不動産を担保に運転資金を調達しましょう。

売掛債権を担保にする

 
プロパー融資では運転資金を調達できない、信用保証協会の保証も不可能、不動産担保も持っていない…
そのような会社が運転資金を調達するには、売掛債権の担保活用も一つの方法です。
担保といえば不動産が王道ですが、近年では担保資産の多様化が進んでいます。
特に、政府が売掛債権の活用促進に取り組んだことで、売掛債権担保付融資も徐々に浸透してきました。
売掛債権担保融資は、その名の通り売掛債権を担保とする融資制度です。
売掛債権担保融資は、運転資金の調達に適しています。
運転資金の計算式は、「売掛債権+在庫-買掛債務」でした。
つまり、運転資金が必要ということは、手元に売掛債権があるということです。
売掛金や手形などの売掛債権は、不動産よりも担保評価が高く、中間値は85%程度が目安となります。
売掛債権が2000万円、在庫が1500万円、買掛債務が1000万円の場合、必要な運転資金は2500万円です。
このとき、手元の売掛債権2000万円を担保にすれば、1700万円程度の資金を調達できます。
売掛債権担保融資によって、必要運転資金2500万円のうち7割程度を調達できるわけです。
実際の計算からも分かる通り、運転資金の性質上、売掛債権担保付融資だけでは運転資金を全額調達することは困難です。
しかし、不足部分(800万円)は他の方法で調達すれば問題ありません。
例えば、月商倍率がネックになって保証付融資を利用できない場合、2500万円は無理でも、800万円ならば保証を受けられる可能性があります。
運転資金の調達において、複数の資金調達方法をうまく組み合わせる視点は重要です。
その組み合わせの一つとして、売掛債権担保融資も活用していきましょう。

運転資金の折り返しを

 
ここまでに解説した運転資金の調達方法は、全て銀行融資に含まれます。
銀行から運転資金を調達する際、ぜひとも意識したいのが「折り返し」です。
折り返しとは、運転資金の借入れと返済を繰り返すことです。
例えば、売掛債権の回収サイトが2ヶ月、買掛債務の支払サイトが1ヶ月であれば、月商1ヶ月分の運転資金が経常的に必要となります(ここでは簡素化のために在庫を省いて考えています)。
銀行融資によって、月商1ヶ月分の運転資金を短期借入で調達しました。
回収した売掛債権から借入金を返済していき、1年後に完済。
しかし、回収サイトと支払サイトに変化がない限り、月商1ヶ月分の運転資金が必要な状態は変わりません。
そこで、再び月商1ヶ月分の運転資金を借りなおします。
このように、運転資金の借入れと返済を継続することで、運転資金が不足せず、事業は安定します。
売上の増加によって発生した運転資金は新たに借り入れますが、経常的な運転資金は折り返し続けるものと考えてください。
実際に、資金繰りが安定している会社ほど、運転資金を安定的・継続的に折り返しているものです。
銀行の信用は、返済実績を積むことで高まります。
経営が悪化していなければ、折り返すたびに信用が高まり、やがて運転資金以外の目的で融資を受けたり、折り返し資金を担保・保証付きからプロパー融資に切り替えたりすることも考えられます。
もちろん、折り返しと折り返しの間に改善に取り組み、運転資金を減らすことが重要です(詳しくは後述します)。
運転資金が軽くなれば、折り返しで借り入れる金額も減り、返済負担は軽く、資金繰りがスムーズになります。

日本政策金融公庫

 
では、銀行融資そのものを利用できない場合にはどうすればよいのでしょうか。
その場合には公的融資を活用しましょう。
銀行から運転資金を調達したくても、どうしても審査に通らないことがあるものです。
分かりやすいのが、業歴が短い会社です。
銀行は業歴を重視するため、業歴が短いほど審査に通りにくくなります。
起業後間もない会社であれば、銀行融資はかなり厳しいと考えてください。
プロパー融資を受けられないのはもちろん、保証付融資や担保付融資も難しいです。
信用保証協会は、業歴に関係なく保証を受けることができます。
しかし、上記の通り保証枠は月商によって決まるため、開業したばかりで売上が少ない会社は、保証枠が低くなりがちです。
保証付融資では運転資金を満足に調達できないというケースも少なくありません。
担保付融資の場合、起業したばかりの会社がたくさんの不動産担保を持っているとは考えにくく、手元の売掛債権だけでは必要運転資金に満たないことが多いです。
とはいえ、業歴が短い会社でも運転資金の調達は欠かせません。
創業期から成長期に移る局面では、売上の伸びに応じて増加運転資金が発生し、資金繰りは一層忙しくなります。
そんな時に頼れるのが、日本政策金融公庫です。
日本政策金融公庫は、政府の100%出資によって運営されている公的金融機関です。
民間金融機関の補完を目的としており、「業歴が短いため銀行から運転資金を調達できない」という場合、日本政策金融公庫の目的に適います。
創業期のため実績が乏しい、業績が不安定、財務が脆弱など、様々な問題を抱えていても、日本政策金融公庫ならば運転資金の融資を検討してくれます。
日本政策金融公庫の特徴は、将来性を考慮してくれることです。
銀行の場合、現状に問題があれば運転資金を融資しません。
「業歴が短い」ということも、現状における問題のひとつです。
いくら将来性があっても、明るい将来を迎える前に倒産すれば元も子もないわけですから、銀行は運転資金の融資を渋ります。
その点、日本政策金融公庫は将来性を含めて検討します。
起業したばかりの会社でも、創業計画に納得すれば運転資金を融資するのです。
もちろん、業歴以外の問題を抱えている会社も同様です。
現状の業績が悪くとも、経営改善の計画・見通しがしっかりしており、「経営改善のために目先の運転資金がぜひとも必要」というならば、日本政策金融公庫は前向きに検討してくれるでしょう。
なお、日本政策金融公庫の一般的な融資制度では、運転資金の融資上限額は4800万円です。
融資額が2000万円以下であれば支店決済で対応できるため、少額の運転資金の調達に適しています。

自治体の制度融資

 
日本政策金融公庫以外にも、公的融資には制度融資というものがあります。
制度融資は、自治体が独自に取り組む融資制度であり、運転資金の調達も可能です。
制度融資の特徴は、自治体・信用保証協会・銀行の三者が協同している点です。
簡単に言えば、自治体が貸付金を出し、銀行が窓口となり、信用保証協会の保証付きで運転資金を融資します。
これをみれば分かる通り、制度融資は銀行がリスクを負わない仕組みです。
貸付金は自治体が出すため、銀行自身の貸付準備金を拠出する必要はありません。
したがって、銀行の融資審査に落ちた会社でも、制度融資ならば運転資金を調達できる可能性があります。
制度融資は信用保証協会の保証付きが前提ですから、保証審査に通らなければ運転資金は調達できません。
とはいえ、自治体のあっせんがあることにより、通常の保証付融資よりも保証審査に通りやすいといえるでしょう。
さらに、制度融資は自治体の補助が受けられることも魅力です。
制度融資は、自治体が地域企業の資金繰りを支援することが目的ですから、できるだけ負担を軽減するためにも、様々な補助制度を設けています。
よくあるのが、保証料や金利の補助です。
信用保証協会の保証を受けるには、借入総額の1.5%程度の保証料を支払わなければなりません。
このほか、銀行に対する利息の支払いも発生します。
それらのコストを自治体の補助でカバーできれば、資金繰りへのメリットは大きいといえます。
自治体によって、対応している業種や資金使途、補助の内容などが異なるため、まずは自治体の制度を調べてみましょう。

おすすめできないビジネスローン

 
銀行融資・公的融資を問わず、運転資金を調達できない会社もあります。
例えばリスケジュール中の会社です。
リスケジュールとは、返済計画の見直しを意味します。
元金の返済を一時的に中止し、利息だけを支払うのが一般的です。
これは、返済に充てていた部分を経営立て直しに充て、貸し倒れを防ぐことが目的です。
これにより、リスケ期間中はあらゆる金融機関から運転資金を調達できなくなります。
どこかの銀行が追加融資を行うと、リスケ計画が破綻する可能性が高いためです。
日本政策金融公庫や制度融資も同じです。
日本政策金融公庫などは、表面的にはリスケ中の融資にも対応しています。
しかし、日本政策金融公庫が融資を出すことでリスケ計画が破綻し、民間の銀行に損失を与える恐れがあることから、実際には融資しないケースがほとんどです。
そのような会社も、ビジネスローンならば運転資金を調達できます。
ビジネスローンは、銀行やノンバンクが取り扱っている、事業者向けの融資商品です。
資金使途にあまりこだわらない場合が多く、運転資金の調達に役立ちます。
もちろん、リスケ中の会社だけではなく、経営悪化によって銀行融資を受けられない会社、業歴が短い会社、銀行の借入金を滞納している会社など、幅広く対応しています。

金利が高い

 
ただし、ビジネスローンで運転資金を調達する際には、いくつかの点に注意が必要です。
第一に注意したいのは、金利の高さです。
基本的に、ビジネスローンの金利は、銀行融資や公的融資の金利よりも、はるかに高く設定されています。
銀行融資・公的融資の借入金利は、年2%程度が目安です。
これに対し、ビジネスローンは年利10%以上の設定が普通であり、法定上限水準(借入総額に対して年15~20%)になることも珍しくありません。
ビジネスローンで運転資金を調達できても、返済利息が資金繰りの負担になれば、再び運転資金が不足したり、返済に困ったりする恐れがあります。
特に、利益率が低い会社は、手元にほとんど利益が残らなくなり、運転資金不足のリスクが高まります。

小口融資が基本

 
第二の注意点は、借入可能額が小さいことです。
ビジネスローンは小口融資を基本としています。
ビジネスローンの主要な融資先は、金融機関から融資を受けられない会社です。
何らかの問題を抱えている会社に融資するため、リスクの分散が欠かせません。
そこで、一社当たりの融資額を低く設定するわけです。
大手消費者金融系のビジネスローンであれば、融資上限額を1000万円以上に設定していることもあります。
だからといって、運転資金を1000万円調達できるわけではありません。
ビジネスローンを初めて利用する場合、複数社から借り入れて300万円程度が上限です。
実際に、自社の必要とする運転資金を計算してみればわかると思いますが、300万円ではとても足りないという会社が多いと思います。
売上が大きい会社であれば、ビジネスローンはほとんど役に立たないでしょう。
その場合、ビジネスローンは補完的な利用にとどまります。

銀行の評価が悪化する

 
ただし、補完としてであっても、ビジネスローンで運転資金を調達するのはおすすめできません。
というのも、ビジネスローンは銀行評価の悪化につながるからです。
これが第三の注意点です。
銀行はビジネスローンの利用を嫌うため、ビジネスローンから借りている会社は審査に通りにくくなります。
運転資金の調達先は銀行が最も適しており、運転資金の借入れと返済を繰り返す(折り返し)のが理想です。
ビジネスローンはその妨げになるため、できるだけ利用は避けたいものです。
銀行融資や公的融資を利用できない会社は、すぐにビジネスローンを利用するのではなく、以下に紹介する方法で運転資金を調達しましょう。
それでもなお足りない場合に限り、ビジネスローンでの補完が活きてきます。

手形の活用(裏書譲渡・手形割引)

 
手形取引を行っている会社は、取引先から手形を受け取ります。
手形は売掛金に比べて回収サイトが長く、支払いが3~4ヶ月後になることも珍しくありません。
もちろん、手形取引の割合が高い会社は、運転資金も増大しやすくなります。
簡単に計算してみましょう。
売掛金の回収サイトは1ヶ月程度ですから、信用取引のみの場合、月商1000万円であれば手元の売掛債権は1000万円です。
これに対し、手形の回収サイトを3ヶ月と仮定すると、月商1000万円であれば手元の売掛債権は3000万円となります。
それぞれ、在庫を1.5ヶ月分(1500万円)、買掛債務を1ヶ月分(1000万円)とすれば、前者の運転資金は1500万円、後者の運転資金は3500万円です。
このように、手形取引が多い会社は運転資金が膨らみ、運転資金調達のハードルも高くなります。
手形取引が多い場合、運転資金調達のポイントは「手形の活用」です。
手形の活用方法は主に二つ。
一つは裏書譲渡であり、手形を支払いに充てることです。
裏書した分だけ手元の売掛債権は減るため、運転資金自体を圧縮できます。
もう一つは手形割引です。
手形割引は、銀行や手形割引専門業者に手形を売却する資金調達方法です。
これにより、支払期日を待たずに手形を資金化できます。
例えば、売掛債権(受取手形)3000万円、在庫1500万円、買掛債務1000万円の場合、必要な運転資金は3500万円。
手元には3000万円分の手形があり、それを割り引けば運転資金は調達できるわけです。
ただし、手形取引が減らない限り、経常的な運転資金が減ることはありません。
手形取引が多い会社は、手形割引で運転資金を調達しつつ、手形取引を減らす努力が必要です。

法人カードで支払いを先送り

 
運転資金の調達方法として、業種によっては法人カードの活用がおすすめです。
法人カードは、信販会社などが法人向けに発行するクレジットカードであり、様々な経費の支払いに利用できます。
現金払いが多い会社や、買掛債務の支払サイトが短い会社は、法人カードを活用することで運転資金を減らすことでき、実質的には運転資金の調達を同等の効果を得られます。
少し極端な例で考えてみましょう。
経費を全て現金で支払っている会社は、掛買いを一切していないわけですから、買掛債務はゼロです。
売掛債権が2000万円、在庫が1000万円であれば、運転資金は3000万円になります。
この会社が法人カードを導入し、今まで現金払いしていた経費の一部を法人カードで支払ったしたとしましょう。
法人カードの支払いサイクルは業者ごとに異なりますが、仮に「月末締め、翌月末払い」であれば、支払サイト1ヶ月の買掛債務と何ら変わりません。
したがって、法人カードを使った分だけ運転資金が減り、実質的には同額の運転資金を調達したことと同じです。
法人カードは、銀行や貸金業者から運転資金を借り入れるわけではなく、資金調達としての実感があまりありません。
そのため、運転資金の調達方法として見落とされがちですが、積極的に活用したいものです。
もっとも、大抵は「売掛債権>買掛債務」という関係ですから、法人カードだけでは運転資金をまかなうことはできません。
法人カードで必要運転資金を圧縮し、足りない部分を他の資金調達方法で調達するのがよいでしょう。

リースバック

 
運転資金を調達する際、資産の売却を考える人も多いと思います。
しかし、事業に関係のない遊休資産があればよいのですが、そうでなければ困ったことになります。
事業に必要な資産を売るわけにはいかないのです。
ただし、リースバックを使うならば別です。
リースバックは、リース会社などに資産を売却した後、リース契約を結ぶことで使い続けることができます。
もっとも、なんでも売却できるというのではなく、不動産や車両、機械などが一般的です。
そのような資産を持っている会社は、リースバックで運転資金を調達できます。
運転資金の調達にリースバックがよく利用されているのは、例えば運送業です。
運送業はトラックなどの車両を所有していますから、それをリースバックすることでまとまった運転資金を調達できます。
同様に、タクシー会社などでもリースバックが人気です。
また、リースバックは法人向けばかりでなく、個人向けのサービスもあります。
個人向けのリースバックでは、持ち家を対象とするものが多いです。
もちろん、持ち家を売却した後も、リース料を支払うことで住み続けることができます。
したがって、経営者の自宅やセカンドハウスをリースバックし、売却資金を会社の運転資金に充てることも可能です。

在庫の処分

 
最後に、在庫の処分です。
自社の売上に対し、過不足なく在庫を確保しているならば、この方法は利用できません。
しかし、在庫を多めに確保している会社、とりわけ過剰在庫に陥っている会社は、在庫の処分が効果的です。
在庫を処分すれば、運転資金を調達すると同時に、運転資金の圧縮にもつながります。
例えば、在庫の適正水準が月商の1ヶ月分であるにもかかわらず、販売の増加を見越して2ヶ月分を確保したとしましょう。
月商2000万円であれば、4000万円の在庫を抱えている状態です。
このとき、売掛債権が4000万円、買掛債務が2000万円であるとすれば、必要な運転資金は6000万円。
運転資金が月商の3倍となると、融資での調達はかなり厳しいといえます。
実際、信用保証協会の保証枠は月商3ヶ月分が基本ですから、保証枠が真っ新でなければ必要運転資金に足りないことになります。
この場合、運転資金の圧縮が急務となり、そこで在庫の処分が活きてくるわけです。
適正水準の1ヶ月分だけを残し、過剰分の在庫を処分すれば、運転資金は4000万円まで圧縮できます。
在庫そのものに問題(売れない理由)がある場合、大幅なディスカウントもやむを得ません。
ともかく在庫が減れば運転資金は小さくなり、ディスカウントしたにせよ売却代金は得られるのです。
仮に半額で処分すれば、1000万円の資金が得られます。
調達すべき運転資金は3000万円となり、当初の運転資金(6000万円)に比べると格段に調達しやすいはずです。
ここまで様々な資金調達方法を紹介しましたが、在庫に問題がある会社は、真っ先に在庫の処分を検討してください。
それにより、必要運転資金が減少するため、その後の運転資金の調達がスムーズになります。

業歴と業容から考える運転資金調達のポイント

 上記の通り、運転資金の調達方法には色々ありますが、基本的には金融機関からの融資によって調達することとなります。
 ただし、一口に金融機関といっても様々であり、業歴や業容によって利用すべき金融機関は異なります。
 条件別に、推奨される金融機関を見ていきましょう。

条件① 業歴が短く業容も小規模(創業後間もない会社)

 中小企業のうち業歴が短い会社、すなわち創業後間もない会社(創業後間もないため業容も小規模と仮定)では、取引先が少なく、営業循環そのものが小さいため、常時必要となる運転資金も小さいです。
 とはいえ、小さいながらも運転資金が発生している以上、融資によって確保しておく必要があります。
融資を受けられる金融機関が限られます。 残念ながら、民間金融機関からの借り入れはほとんど期待できません。民間金融機関は営利企業であり、貸し倒れリスクを極端に嫌うため、業歴が短く信用の乏しい会社には基本的に融資しないのです。
 したがって、このような会社では公的金融機関を利用することとなります。公的金融機関には、日本政策金融公庫があります。日本政策金融公庫は、政府が100%出資している金融機関であり、民間金融機関では対応できない資金需要をカバーすることを目的としています。
 創業後間もない会社は、まず日本政策金融公庫からの資金調達を検討しましょう。

条件② 業歴が長く業容が小規模

 業歴がそれなりに長く、業容が小さい会社はどうでしょうか。
 業歴が長ければ、複数の金融機関と取引している会社も多いことでしょう。その中で信用を築いているならば、民間金融機関からの借入れが可能です。
 業容が小さい会社の資金繰りはコンパクトであり、必要運転資金も少額です。小規模な会社の小規模な資金需要に最もよく応えてくれるのは、地元の信用金庫です。信金は地域への密着性が非常に高く、地域の顧客によって成り立っているため、小規模事業者を大切なお得意先と考えています。
 したがって、業歴が長く業容が小さい会社は、信金からの資金調達がおすすめです。

条件③ 業歴が長く業容が中規模

 年商1億円以上になると小規模事業者とはいえず、調達先も変わってきます。年商が2億円、3億円と大きくなるにつれて、地方銀行からの資金調達が重要になってきます。
 年商1億円以上であれば、運転資金も数千万円規模で発生します。これ調達する場合、ある程度までは信金でも対応できますが、資金需要が大きくなるほど、資金力のある地銀からの調達が欠かせません。
 したがって、年商10億円くらいまでであれば、地銀をメインバンクとし、他の地銀や信金をサブバンクとしながら、運転資金を調達していくことが大切です。

条件④ 業歴が長く業容が大規模

 中小企業の中でも業容が特に大きく、年商が10億円以上になってくると、メガバンクからの調達も考えられます。例えば、

  • 年商:12億円
  • 平均月商:1億円
  • 回収サイト:2ヶ月
  • 仕入原価:6,000万円
  • 支払サイト:1.5ヶ月

の会社では、常時2億3,000万円の運転資金が必要となるため、年商数億円の中小企業とは調達額が桁違いになってきます。また、ここからさらなる成長を目指す会社も多いでしょうから、将来的に資金需要が高まることを想定し、メガバンクとの付き合いを深めていくことも必要です。
 もちろん、年商10億円前後で安定推移を目指す場合には、引き続き地銀から調達することも考えられます。

運転資金を減らすには?

 以上のように、運転資金の調達額は業容によって大きく変わるため、それに合わせた金融機関の選定が重要です。運転資金を金融機関から調達することで、資金繰りは問題なく回っていきます。
 ただし、これが「資金繰りが良い状態か?」と考えると、そうとは言い切れません。運転資金が大きいほど、必要な調達額は大きくなり、調達できない可能性・調達できなかった場合のリスクも高まります。また、経営者は資金調達に奔走しなければならず、本業に力を入れることが難しくなるでしょう。
 逆に、運転資金が小さくなれば、調達額も小さくなります。これが、資金繰りの安定に非常に重要です。なぜならば、
「資金調達額が大きい⇒多額の調達ができる銀行融資に依存する」という状況から、
「資金調達額が小さい⇒銀行融資以外の方法によって、少額の資金調達でもカバーできる」
という状況にシフトできるからです。もちろん、資金調達に傾ける労力も少なく、本業にも集中できるでしょう。

具体的な方法

運転資金を減らす考え方は簡単です。上記の通り、運転資金は、

運転資金=売掛債権+在庫-買掛債務

として計算します。この計算式から、運転資金を減らす方法が分かります。すなわち、

  • 売掛債権を減らす
  • 在庫を減らす
  • 買掛債務を増やす

という方法です。
 具体的に考えてみましょう。上記のA社では、運転資金を減らすために以下のように取り組みました。

  • 既存の売掛先に対し、売掛金の支払期間を短縮してもらうように交渉した。新規の売掛先には、支払期間ができるだけ短くなるように契約条件を設定した。その結果、平均回収サイトを1.5ヶ月に短縮した。
  • これにより、常時確保しておく在庫も1.5ヶ月分に減らすことができた。
  • 仕入先にも交渉し、買掛金の支払期間を延長してもらうように交渉した。応じてもらえない場合には仕入先を変更し、支払期間が長くしてくれる会社から仕入れるようにした。その結果、平均支払サイトを2ヶ月に延長できた。

 この結果、A社の運転資金は以下のように圧縮されました。

A社の運転資金=1,500万円+900万円-1,200万円=1,200万円

 従来の条件では2,300万円の運転資金が必要であったものが、1,200万円へと減っていることが分かります。これにより、資金繰りの負担が大幅に軽減されることは間違いありません。

ファクタリングでもカバーできる

運転資金を大幅に圧縮できれば、必要な調達額が小さくなるため、資金繰りショートのリスクも低くなります。これは、

  • 少額であるほど、銀行融資を引き出しやすくなる
  • 少額であるほど、銀行融資以外の資金調達方法で対応しやすくなる

という2つの理由によります。
 注目すべきは、銀行からの資金調達が絶対ではなくなることです。特に、資金繰り改善後のA社のように「売掛金>運転資金」の状態になっていれば、ファクタリングでも資金繰りが回るようになります。
 ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に売却することにより、早期資金化する資金調達方法です。ファクタリングには手数料がかかりますが、早期資金化のメリットは非常に大きいです。
 まず、資金繰り改善後のA社のように「売掛金>運転資金」であれば、売掛金の売却によって運転資金を全てカバーすることも可能です。
 例えば、手数料率10%でファクタリングした場合、A社の保有する売掛金1,500万円により、1,350万円の資金を調達できます。これだけあれば、必要運転資金1,200万円を十分にカバーできます。
 つまり、運転資金の圧縮に努めることによって、運転資金の調達を銀行融資に頼ることなく、ファクタリングでも資金繰りが回るようになるのです。
 このほか、

  • 銀行から融資を受けられなくなった場合にも、資金繰りがショートする危険がなくなる
  • 借り入れ条件が悪い場合にはファクタリングで対応し、良い条件に限って融資を受ける。これにより、低金利での借り入れ、信用保証協会の保証枠の温存などが可能となる

といったメリットも期待でき、資金調達環境が良くなります。資金繰り改善にも大きな効果が期待できるでしょう。

まとめ:運転資金の調達はNo.1にお任せください

 本稿では、運転資金の計算方法と資金調達方法について解説しました。
 運転資金は、経営を継続するために必ず必要な資金であり、不足分は計画的に調達しておくことが大切です。銀行融資によって調達するならば、自社にふさわしい金融機関選びも重要となります。
 また、必要運転資金の圧縮に取り組めば、銀行融資以外の資金調達方法でも運転資金を確保できるようになります。その場合、特に役立つのがファクタリングです。
運転資金とは入金と支払いのギャップによるものであり、運転資金には必ず売掛金の裏付けがあるものです。これによって運転資金を調達する際には、No.1へご相談ください。
スピード査定依頼フォーム

総合フリーダイヤル0120-700-339

名古屋支店直通052-414-4107

福岡支社092-419-2433

受付時間 平日 9:00 ~ 20:00( 土日祝休 )

   

お知らせ

   

お知らせ 一覧へ

DX認定

株式会社No.1は「DXマーク認証付与事業者」として認められました。

to top