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問題点も多く活用が難しい廻し手形。ファクタリングとの違いを徹底解説!
皆さんは「廻し手形」をご存じでしょうか。
日常的に手形を取り扱っている人は、ピンとくると思います。
「廻し手形」とは、裏書譲渡に用いる手形のことです。
支払先に対して、現金ではなく手元の受取手形で決済できるため、うまく活用すれば資金繰りに大きな効果があります。
ただし、廻し手形には問題点も多いです。
この記事では、廻し手形の基礎知識と問題点を解説し、廻し手形よりも優れた方法として注目されているファクタリングとの徹底比較も行います。
廻し手形とは?
近年、手形の交換高は大幅な減少傾向にあります。
しかし、手形は明治時代から続く方法であり、根強い人気を誇ります。
現在でも手形によって取引している会社は少なくありません。
基本的な手形
一般的に、手形取引では約束手形または為替手形を用います。
約束手形とは、手形の振出人(代金を支払う人、債務者)と受取人(代金を受け取る人、債権者)の2者間で取引するものです。
為替手形は、振出人・受取人・支払人の3者間で取引し、手形を振り出す人と代金を支払う人が異なる場合に利用します。
このほか、「約束手形」「為替手形」以外にも、いくつか「〇〇手形」という単語を聞いたことがあるでしょう。
中でも、「廻し手形」はよく用いられる手形です。
裏書譲渡に用いる廻し手形
受取手形(売掛先から受け取った約束手形)は、後日支払いを受けるためのものであり、額面金額相当の価値があります。
したがって、この手形を他社に回す(譲渡する)ことにより、支払いに充てることも法律で認められています。
受取手形を他社に譲渡して支払いに充てる際、手形の裏面に会社名、住所、代表者名などの記入が必要です。
裏面に記入して譲渡することから、これを「裏書譲渡」といいます。
「廻し手形」とは、その名の通り「自社が所有している約束手形のうち、他社への支払いに回す手形(裏書譲渡に用いる手形)」のことです。
裏書譲渡に用いる手形のことを「裏書手形」と呼ぶこともありますが、「廻し手形」と「裏書手形」は同じ意味です。
廻し手形の問題点
廻し手形は資金繰りに活用できますが、問題点も少なくありません。
「廻し手形=裏書手形」ですから、「廻し手形の問題点=裏書譲渡の問題点」といえます。
廻し手形の問題点は以下の3つです。
不渡りの際には買い戻す必要がある
廻し手形の最大の問題点は、不渡りの際に買い戻す必要があることです。
裏書譲渡は、償還請求権付きの取引であるため、手形の振出人が支払い不能に陥った場合、譲渡先から廻し手形の買い戻しを求められます。
もし、手元資金が潤沢であれば、わざわざ廻し手形を利用せず、現金で支払っていたはずです。
廻し手形によって支払っていたということは、おそらく手元資金が不足しており、やむを得ず廻し手形で決済したのでしょう。
実際に、廻し手形は資金繰りが苦しい状況で利用されることが多いです。
一般的に、手形サイト(手形が決済されるまでの期間)は長めに設定されますが、それでも数ヶ月後には支払期日を迎えます。
支払期日に廻し手形が不渡りになった場合、それまでの短期間で資金繰りが改善しているとは考えにくく、廻し手形を買い戻すだけの余裕がないかもしれません。
この場合、支払先に買い戻しを待ってもらう必要があり、悪条件で資金を調達したり、支払先の信用を損なったりするリスクがあります。
振出人の承諾が必要となる
廻し手形で決済するには、支払先の承諾が必要です。
支払先が廻し手形での支払いを拒否すれば、自社は廻し手形以外の方法で決済しなければなりません。
これは、振出人の信用力や手形サイトが、支払先の資金繰りに影響するためです。
振出人の経営に問題があり、不渡りになる可能性があれば、支払先は廻し手形を拒否するでしょう。
また、一般的に手形サイトは長めです。
手形サイトが長い廻し手形で決済する場合、支払先は回収に時間がかかり、資金繰りが悪化する危険があります。
例えば、2ヶ月後に支払う条件で、取引先Aから商品を仕入れたとしましょう。
2ヶ月後の支払日、自社に手元資金がなかったため、手形サイト2ヶ月の廻し手形で決済を申し入れました。
この場合、取引先Aは自社に対して2ヶ月間、廻し手形の回収に2ヶ月間、合計4ヶ月間にわたって代金を回収できず、大きな負担を強いられます。
取引先Aの資金繰りに余裕がなければ、このような条件は受け入れがたいでしょう。
もちろん、「資金繰りが苦しく、廻し手形でなければ決済できない」などと頼み込めば、取引先Aも「回収できないよりはマシ…」と考えて受け入れてくれるかもしれません。
しかし、取引先Aからの信用を失う可能性が高いです。
分割譲渡ができない
このほか、分割譲渡できないことにも注意しましょう。
電子手形(電子記録を用いた手形)は分割できますが、従来の約束手形は分割できません。
このため、額面金額を分割して、一部を廻し手形として使うことは不可能です。
例えば、300万円の支払いに廻し手形を用いる場合、廻し手形の額面金額が500万円であれば支払額を200万円超過します。
このような場合でも、500万円全てを譲渡する必要があります。
仮に分割が可能ならば、必要額の300万円だけを廻し手形にし、200万円は取っておくことで別の支払いに充てることも可能です。
それができないだけに、廻し手形には不便な一面もあります。
手形割引との違いは?
資金繰りが苦しい時、現金ではなく廻し手形によって支払うことで、資金ショートを回避できることも多いです。
このため、「手形を現金のように使え(=廻し手形を活用して資金繰りを回せ)」などともいわれます。
手形割引とは
手形を資金繰りに活用すると聞けば、手形割引を思い浮かべる人も多いでしょう。
手形割引とは、支払期日前の受取手形を銀行や手形割引業者に買い取ってもらうものです。
振出人の信用力や、手形サイトなどに応じて割引料を支払うことで、手形を現金化できます。
支払期日を待たずに手形を早期資金化できるため、手形取引が多い会社に古くから重宝されている資金調達方法です。
手形割引に用いた受取手形を、特に「割引手形」と呼びます。
廻し手形と同じように、割引手形にも償還請求権があるため、手形が不渡りになれば買い戻さなければなりません。
とはいえ、一般的な銀行融資に比べて審査のハードルが低く、調達コストも安いため、優秀な資金調達方法といえます。
廻し手形と割引手形の違い
廻し手形と割引手形の大きな違いは、目的にあります。
ここまでも解説してきた通り、廻し手形は支払いに充てることが目的です。
これに対して、割引手形は手形の早期資金化を目的としています。
支払いを目的に手形を割り引く場合、調達したお金を支払いに充てるのですから、廻し手形となんら変わらないように思えるでしょう。
しかし、割引手形で調達して現金で支払えば、支払先から拒否されるリスクや、支払先の信用を損なうリスクがありません。
もちろん割引手形にも、審査によって手形の割引を拒否される、割引料を支払う必要があるなどの問題点があります。
自社が置かれている状況によって、廻し手形と割引手形を使い分けることが重要です。
廻し手形(裏書譲渡)とファクタリングを徹底比較
廻し手形(裏書譲渡)にも手形割引にも一長一短あり、利便性に欠ける面があります。
また近年、手形取引は大幅に減少傾向にあり、政府も手形取引の廃止を目指しているため、廻し手形や手形割引の利便性は徐々に損なわれる可能性が高いです。
手形による資金調達は、いずれ利用できなくなるかもしれません。
これまで廻し手形による資金繰りに頼ってきた会社は、できるだけ早く手形取引からの脱却を図るべきでしょう。
手形ではなく売掛金によって取引すれば、ファクタリングによる資金調達も可能です。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、自社の所有している売掛金をファクタリング会社に売却する資金調達方法です。
ファクタリングの方式には、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2つがあり、それぞれ以下のように取引します。
- 2社間ファクタリング:利用会社とファクタリング会社の2社間で取引する方式
- 3社間ファクタリング:利用会社、ファクタリング会社、売掛先の3社間で取引する方式
ファクタリングも廻し手形も、支払期日前の売掛債権によって支払いをカバーできる点では同じです。
しかし、売掛金を売却するか、手形を支払いに回すかの違いによって、資金繰りへの効果は大きく変わります。
ファクタリングと廻し手形(裏書譲渡)の違いを簡単にまとめると、以下の通りです。
ファクタリング | 廻し手形(裏書譲渡) | |
対象債権 | 売掛金 | 受取手形 |
資金調達スピード | 2社間ファクタリング:最短数時間~即日 3社間ファクタリング:数日 |
数日 |
信用リスク | 2社間ファクタリング:なし 3社間ファクタリング:あり |
あり |
資金調達コスト | 2社間ファクタリング:額面金額の10~30% 3社間ファクタリング:額面金額の1~10% |
実質的に無料 |
分割譲渡 | 可能 | 不可能 |
償還請求権 | なし | あり |
それぞれの違いについてみていきましょう。
対象債権
表の通り、ファクタリングと廻し手形では対象となる売掛債権が異なります。
廻し手形の場合
廻し手形は、受取手形を用いた方法です。
売掛先から振り出された手形が手元にあることが前提となります。
ファクタリングの場合
基本的に、ファクタリングの対象債権は、請求内容が確定した売掛金(確定債権)です。
具体的には、
- 自社から売掛先に対し、商品の納入やサービスの提供が完了し、
- 契約に基づいて請求書を発行・送付し、
- 売掛先が請求を受理し、
- 請求内容が確定した売掛債権
が買取対象となります。
もっとも、ファクタリングの普及に伴い、最近では確定債権以外も買取対象とするファクタリング会社が出てきました。
将来債権のファクタリングがその一例です。
将来債権とは、現時点では請求内容が確定していないものの、将来的に確定が見込まれる売掛債権のことです。
例えば、一定期間にわたって継続的に取引し、毎月確定債権が発生している場合、将来発生する売掛金を将来債権とみなし、早期資金化にも利用できます。
売掛金を対象とすることにより、ファクタリングは廻し手形よりも活用の幅が広いです。
資金調達スピード
資金調達スピードも大きく異なります。
廻し手形の場合
廻し手形の資金調達スピードは、ファクタリングに比べて劣ります。
なぜならば、支払先と交渉する必要があるからです。
当然ながら、支払先は現金での回収を予定しています。
その日に現金が入ってくることを見込んで、資金繰り計画を立てている可能性も高いです。
廻し手形で決済すれば、支払先の資金繰り計画が崩れます。
さらに、廻し手形が決済されるまで、現金が入ってこない期間が続くため、支払先の資金繰りに負担を強いることとなります。
したがって、廻し手形での決済を支払先が渋り、想像以上に時間がかかることも珍しくありません。
ファクタリングの場合
ファクタリングは、色々ある資金調達方法の中でも、特にスピーディな方法として有名です。
2社間ファクタリングの場合、売掛先が関与しないため、自社とファクタリング会社の間でスムーズに手続きが進んだ場合、最短即日での資金調達も可能です。
実際、2社間ファクタリングを提供しているファクタリング会社の多くが「最短即日対応」を売りにしています。
また、最近では全ての手続きがオンラインで完結するオンラインファクタリングも普及してきました。
オンラインファクタリングならば対面取引も一切不要ですから、最短数時間で完了するケースもあります。
信用リスク
信用リスクとは、売掛先、仕入れ先、金融機関など、自社の経営に関わる会社の信用を損なうリスクのことです。
廻し手形とファクタリングでは、信用リスクの表れ方が異なります。
廻し手形の場合
廻し手形を利用する場合、売掛先(手形の振出人)への通知は不要です。
このため、売掛先に裏書譲渡を知られ、資金繰り悪化を疑われることもありません。
ただし、支払先に対する信用リスクがあります。
上記の通り、廻し手形を利用すると支払先の資金繰りに負担をかけてしまいます。
支払先が廻し手形に慣れていれば、受け取った廻し手形をさらに裏書譲渡することで資金繰りに活用できるため、信用リスクは軽いでしょう。
それでも、支払先に負担をかけていることには変わりありません。
支払先から現金での支払い能力を疑われ、取引規模の縮小を迫られるなどのリスクも考えられます。
ファクタリングの場合
ファクタリングは、方式によって信用リスクが変わります。
2社間ファクタリングの場合、売掛先が関与しないため売掛先からの信用を損なうリスクはありません。
ファクタリングで調達した資金を支払いに充てることで、支払先の信用も維持できます。
これに対し、3社間ファクタリングは信用リスクが高い方法です。
売掛先を含めた3社間で取引するため、売掛先に対する債権譲渡通知が必須であり、売掛先とファクタリング会社の間でも契約が必要です。
このため、売掛先にファクタリングの利用を必ず知られます。
これにより、売掛先が自社の資金繰り悪化を疑い、取引縮小などを検討するリスクがあるのです。
資金調達コスト
次に、資金調達コストをみてみましょう。
資金調達コストとは、手数料や金利など、資金調達に伴うコストのことです。
廻し手形の場合
表の通り、廻し手形は基本的にコストがかかりません。
将来的に支払いを受ける予定の受取手形をそのまま裏書譲渡し、額面金額を手数料ゼロで決済に回せます。
廻し手形として決済することで、その手形の管理コストや取立コストもいらなくなるため、むしろプラスの効果が期待できます。
ファクタリングの場合
これに対し、ファクタリングは額面金額に対して1~30%の手数料が必要です。
ファクタリングを利用する中小企業の多くは、売掛先の信用リスクに備えて2社間ファクタリングを選ぶため、10~30%の手数料を負担していることになります。
オンラインファクタリングならば、2社間ファクタリングでありながら10%以下の手数料で資金調達できることも増えています。
しかし、他の資金調達方法に比べて資金調達コストが高いことは否めません。
このため、ファクタリングを利用する際には、できるだけ手数料を抑えることや、計画的に利用することが重要です。
コンサルタントが所属しているファクタリング会社を利用し、自社に最適なファクタリングを提案してもらうことをおすすめします。
分割譲渡
分割譲渡の可否にも注目です。
廻し手形の場合
既に解説した通り、約束手形は分割譲渡できません。
このため、廻し手形も額面金額をそのまま利用する必要があり、利便性に欠けます。
ファクタリングの場合
ファクタリングは、ファクタリング会社によって対応が異なります。
分割譲渡を認めているファクタリング会社も少なくありません。
そのようなファクタリング会社を利用すれば、柔軟に資金繰りできます。
例えば、
- 取引先Aに支払うため、額面金額1000万円のうち200万円だけファクタリングし、800万円を手元に残す
- 後日、取引先Bに支払うために、残った800万円のうち300万円をファクタリングし、500万円を手元に残す
といった利用も可能です。
買い戻しのリスク
売掛先が支払い不能に陥った場合、リスクに雲泥の差が表れます。
廻し手形の場合
廻し手形の問題点で解説した通り、廻し手形が不渡りになった場合には買い戻す必要があります。
廻し手形によって資金繰りを回すことができても、回収不能リスクまで譲渡できるわけではありません。
振出人の経営状況が悪く、支払い能力に問題がある場合、買い戻しの可能性が常につきまといます。
買い戻しを求められ、資金繰りが急激に悪化する可能性もあります。
ファクタリングの場合
ファクタリングは、償還請求権無しの条件が原則です。
償還請求権有りの場合、それはファクタリングではなく貸金業とみなされます。
多くのファクタリング会社は、金融庁の貸金業登録を受けていません。
もし、償還請求権有りのファクタリング契約を結ぶと、貸金業とみなされて貸金業法違反(無登録営業)の罪に問われます。
そのようなトラブルを避けるために、ファクタリング会社は償還請求権無しの条件で契約を結びます。
償還請求権がなければ、売掛金の買い戻しを求めることはできません。
売掛先が経営悪化などによって支払い不能に陥った場合、その損失は全てファクタリング会社が負担します。
このため、売掛金の回収不能リスクを避けるために、ファクタリングを活用する会社も多いです。
ファクタリングならNo.1におまかせ!
廻し手形は、手元にある受取手形を支払いに充てることができ、コストもかかりません。
このため、廻し手形には廻し手形の良さがあります。
しかし、廻し手形とファクタリングを比較すると、資金調達スピード、信用リスク、買い戻しのリスク、利便性・柔軟性など、多くの点でファクタリングに軍配が上がります。
また、手形取引廃止の流れにより、廻し手形をはじめとする手形取引は、今後徐々に活用が難しくなっていくでしょう。
したがって、現在手形取引を行っている会社は、徐々に売掛金による信用取引の比率を高め、「廻し手形による資金繰り」から「ファクタリングによる資金繰り」へと切り替えることをおすすめします。
ファクタリングを活用する際には、ファクタリング会社選びが重要です。
ファクタリング会社ごとに優劣があり、得意分野も様々です。
ファクタリングは廻し手形より優れた方法ですが、自社に適したファクタリング会社を選ばなければ、却って資金繰りが悪化する危険もあります。
廻し手形からファクタリングに切り替える際には、ぜひNo.1にご相談ください。
No.1は、ファクタリングだけではなくコンサルティングも手掛けており、資金繰り専門のコンサルタントが複数在籍しています。
ファクタリングを十分に活用していただくために、コンサルタントが丁寧にヒアリングを行い、最適なファクタリングをご提案いたします。
まとめ:廻し手形を活用しつつファクタリングへのシフトを!
手形には手形の良さがあります。
特に、手形は売掛金に比べて支払サイトが長いため、売掛先の資金繰りには有利です。
したがって、長期にわたって手形で取引してきた売掛先は、今後も手形での取引を望むはずです。
手形での取引が避けられない場合には、必要に応じて廻し手形を利用し、受取手形を資金繰りに役立てましょう。
同時に、売掛先と時間をかけて交渉し、売掛金による信用取引の割合を徐々に高めていけば、ファクタリングを活用できる余地も大きくなっていきます。
時代の流れに対応するためにも、廻し手形とファクタリングの併用をおすすめします。
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