【2026年施行】取適法(旧下請法)でファクタリングが規制対象に? 中小企業への影響と資金繰り対策

取適法(旧下請法)の施行に伴い、ファクタリングが規制対象となるのではないかと不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
取適法はファクタリングそのものを禁止するものではなく、受託事業者が取引で不利益を被らないようにするための法律です。しかし、一部のファクタリング取引は規制対象となるため、事前に内容を理解しておくことが重要です。
本記事では、取適法が制定された目的や下請法からの変更点、ファクタリングとの関係性を解説します。
【この記事で分かること】
- 取適法とは、下請法では十分に対応しきれなかった受託事業者の不利益を是正するために制定された法律
- 取適法の制定によって、長期的な支払サイトが見直されれば、売掛金の回収までの期間が短縮される
- 委託事業者(売掛先)が受託事業者(利用者)に手数料を負担させるファクタリング契約は、取適法の規制対象となる
【2026年施行】取適法(旧下請法)とは?

取適法(とりてきほう)は、2026年1月に下請法を改正して施行された法律です。
ファクタリングとの関係性を確認する前に、まずは取適法がどのような法律なのか、下請法から改正された背景を見ていきましょう。
※参考:政府広報オンライン.「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」.(2025-11-18).
取適法の基礎知識
取適法とは、委託事業者と受託事業者の間で交わされる取引を健全化し、立場の弱い受託事業者が不利益を被らないようにするための法律です(※1)。
取適法の目的は、取引を進める上で立場が弱くなりやすい受託事業者に対し、一方的な代金減額や支払遅延、不当な負担の押し付けなどが起きるのを防ぐことです。具体的には、委託した成果物を受領する義務や、委託代金を期日までに支払う義務などが、委託事業者に課されています(※2)。
※1参考:e-Gov法令検索.「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」.”第一条”.(参照2026-06-06).
※2参考:公正取引委員会.「委託事業者の禁止行為」.(参照2026-06-06).
下請法が取適法に改正された背景
これまでにも、下請法によって受託事業者の立場や権限は保護されていました。しかし近年は、原材料費や人件費の上昇、取引形態の多様化などにより、従来の下請法だけでは対応しきれない課題が増えていきました。
例えば、原材料費や労務費が高騰しているのにもかかわらず、委託事業者が十分な交渉の機会を設けないまま取引価格を据え置くケースが問題視されています。委託事業者から支払われる代金が据え置きのままだと、受託事業者は思うように賃上げができず、人手不足や業績悪化に苦しむといった悪循環に陥ってしまいます。
このような状況を改善し、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させ、受託事業者が持続的に賃上げの原資を確保できる環境を整えるために、下請法の改正が行われました(※)。
※参考:公正取引委員会 中小企業庁.「下請法改正(取適法)の概要について」.”下請法改正の背景・趣旨等”.(2025-09-18).
下請法から取適法への改正による主な変更点
ここで、法改正によって具体的に何が変わったのか、主な変更点を確認していきましょう。
法律名・用語の変更
取適法への改正では、法律名や法律内で使用されている用語の名称が見直されました。変更点は、以下の通りです(※)。
| 改正前 | 改正後 |
| 下請代金支払遅延等防止法 | 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 |
| 親事業者 | 委託事業者 |
| 下請事業者 | 中小受託事業者 |
| 下請代金 | 製造委託等代金 |
改正前に使われていた「下請」「親事業者」といった表現は、発注側・受注側が対等な関係でないことを連想させるため「委託」「受託」といった表現に変更されました。
下請代金は委託事業者から受託事業者に支払われる成果物への対価を示していますが、こちらも上下関係を連想させることから、製造委託等代金という名称に変更されています。
※参考:公正取引委員会 中小企業庁.「下請法改正(取適法)の概要について」.”下請法の改正事項の概要”.(2025-09-18).
適用対象の拡大
取適法では、従来の下請法よりも適用対象が拡大されています。これまで下請法が適用されていた取引は、大きく分けて以下の4つに限られていました(※1)。
| 取引内容 | 詳細 |
| 製造委託 | 物品(有体物)の製造や加工を他の事業者へ委託する取引 |
| 修理委託 | 物品の修理を他の事業者へ委託する取引 |
| 情報成果物作成委託 | ソフトウェアやWebサイト、動画、記事などのデジタル上の成果物の作成を委託する取引 |
| 役務提供委託 | 運送・ビルメンテナンスなどを他の事業者へ委託する取引 |
改正後は、上記4つの中に特定運送委託が加わり、取適法の適用対象取引の区分が5つに分類されています。
特定運送委託とは、自社が販売・製造・修理した物品を取引先や一般消費者へ配送する際、その運送業務を外部の運送業者へ委託する取引のことです(※1)。これまでは、物品の運送の再委託に対して適用されていましたが、法改正によって発荷主から運送事業者へ運送業務を委託する取引にも適用されるようになりました。
また従業員数の基準が新たに追加された点も、大きな変更点の一つです。これまでの下請法では、会社の資本金規模で適用を判断していましたが、近年は資本金が少なくても多くの従業員を抱える企業が増えています。
改正後は、資本金に加えて従業員数も基準に含めることで、企業の実態に即して適用対象を判断できるようになりました(※2)。
※1参考:公正取引委員会.「中小受託取引適正化法ガイドブック 下請法は取適法へ」.”取適法の適用対象”.(参照2026-06-06).
※2参考:公正取引委員会 中小企業庁.「下請法改正(取適法)の概要について」.”下請法の改正事項の概要 ④ 従業員基準の追加”.(2025-09-18).
一方的な価格決定などの禁止事項の追加
取適法では、委託事業者による不当な取引を防ぐため、禁止事項が追加されています。これまでにも11項目の禁止事項が定められていましたが、法改正によって以下の行為が新たに規制対象となりました(※1)。
- 中小受託事業者と十分に協議を行わないまま、委託事業者が取引価格を一方的に決定する行為
- 手形払いなどを支払手段とする取引
物価高の上昇が激しい中で対等な価格交渉ができない場合、受託事業者は経営が苦しくなり、事業を存続できなくなる恐れがあります。取適法では、双方が対等な立場で価格交渉を進められるよう、委託事業者による一方的な価格決定や据え置きを禁止行為としています。
さらに1点禁止事項に追加されたのが、手形払いでの支払です。これまでの下請法では、支払サイトが60日を超えるケースでの手形払いを禁止していました(※2)。しかし、手形払いは現金化までに時間がかかり、資金繰りが悪化しやすいという特徴があります。そのため、改正後は取適法(旧下請法)の適用対象となる取引において、手形払いを全面的に禁止しています。
電子記録債権(でんさい)やファクタリングについても、支払期日までに代金に相当する額の金銭を満額(手数料含む)で受け取れることが困難な取引は、禁止となりました(※2)。
※1参考:公正取引委員会 中小企業庁.「下請法改正(取適法)の概要について」.”下請法の改正事項の概要 ① 協議を適切に行わない代金額の決定の禁止 ② 手形払等の禁止”.(2025-09-18).
※2参考:公正取引委員会.「取適法・振興法」.(参照2026-06-06).
違反行為の監督体制の強化
取適法への改正に伴い、違反行為を把握するための監督体制も強化されました。
以前は、公正取引委員会や中小企業庁が主に監督を担ってきましたが、改正後は事業を所管する各省庁との連携が強化されています。具体的には、事業所管省庁の主務大臣に対して、委託事業者への指導・助言の権限が新たに付与されました(※)。
受託事業者が問題を申告しやすくなることで、不当な取引の防止や取引環境の改善につながることが期待されています。
※参考:公正取引委員会 中小企業庁.「下請法改正(取適法)の概要について」.”下請法の改正事項の概要 ⑤ 面的執行の強化”.(2025-09-18).
その他変更点
取適法への改正では、これまで解説した項目以外にも、取引の適正化をさらに図るためのルールが整備されています。具体的な変更点は、以下の通りです(※)。
- 製造委託の対象に、木型や治具などの金型以外の型が追加された
- 受託事業者の承諾の有無に関わらず、電子メールなどによる発注内容の明示が認められた
- 遅延利息の対象に不当な減額が追加された
- 違反行為が過去のものであっても、再発防止措置の勧告が可能となった
このように、取適法では対象物の拡大やペナルティの強化に加え、発注確認の簡素化など、現代のビジネスニーズに合わせて多くの項目が改正されました。
※参考:公正取引委員会 中小企業庁.「下請法改正(取適法)の概要について」.”下請法の改正事項の概要 ⑤ 面的執行の強化”.(2025-09-18).
取適法とファクタリングの関係性と違反になるケース

中小企業・個人事業主の資金調達手段として広く活用されているファクタリングですが、取引の内容によっては取適法の規制対象となる場合があります。
ここでは、取適法とファクタリングの関係性を解説します。
取適法はファクタリング自体を禁止するものではない
結論として、取適法はファクタリングの利用を禁止するものではありません。
ファクタリングは、企業や個人が保有する売掛債権を売却し、入金前に現金化する取引です。問題視されているのは、ファクタリングの仕組みそのものではなく、支払期日までの満額現金化が困難な場合の取引です。
ファクタリングは銀行融資とは異なり、売掛先の信用力を基に審査が行われます。手続きもスピーディーに進むため、急な支払への対応や運転資金の確保などを目的に、多くの中小企業や個人事業主が活用しています。
「取適法が施行された = ファクタリングを利用できない」と捉えず、どの取引が法律違反となるのかを正しく把握しましょう。
支払期日までに満額現金化できない取引は認められていない
前述の通り、取引の委託事業者は支払期日までに代金を支払う必要があります。支払方法がファクタリングであっても、支払期日までに代金相当額を満額受け取れない取引は認められていません。
取適法で定める支払期日とは、委託された物品や製造物を受領した日から起算して60日以内を基準としており、委託事業者はこの60日以内のできるだけ短い期間内に代金を支払う必要があります(※)。
したがって、委託事業者がファクタリング決済で代金を支払う場合、期日までに手数料を含む満額が入金されないケースは、法律上認められていないことになります。
※参考:公正取引委員会.「中小受託取引適正化法ガイドブック 下請法は取適法へ」.”3. 支払期日を定める義務”.(参照2026-06-06).
取適法(旧下請法)改正で規制が強化されるファクタリングとは?

ここでは、先ほどの内容をさらに深掘りし、取適法で規制が強化されるファクタリングの特徴を解説します。
規制対象となるのは「委託事業者指定型のファクタリング」
取適法の施行により、規制が強化されているのが委託事業者指定型のファクタリングです。これは、委託事業者(売掛先)が特定のファクタリング会社を指定し、受託事業者(利用者)である中小企業・個人事業主に対してそのシステムを利用して決済するように指定するケースです。
この仕組み自体が違反になるわけではありませんが、手数料を受託事業者が負担している場合、問題となることがあります。例えば、30万円の委託代金に対してファクタリング手数料が3万円発生したとすると、利用者が実際に受け取れる金額は27万円です。
このような状態では、本来受け取るべき代金を満額受領できていないことになり、実質的な買いたたきと見なされる可能性があります。
受託事業者(利用者)が自主的に現金化するファクタリングは規制対象外
受託事業者(利用者)が自身の判断で利用するファクタリングは、取適法の規制対象にはなりません。代表的なのが、委託事業者(売掛先)へ通知せずに資金を調達できる2社間ファクタリングです。
2社間ファクタリングは、ファクタリング会社と利用者の間で契約を締結します。売掛先は契約に関与しないため、取適法の手数料負担や支払期日に関するルールが適用されません。あくまで規制対象となるのは、売掛先の都合や指定によってファクタリングを利用し、手数料コストを実質的に負担させられるケースだと理解しておきましょう。
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取適法への改正で中小企業が受ける影響とファクタリングの役割
下請法から取適法に改正されたことで、中小企業のキャッシュフローにどのような影響が出るのか気になる方も多いのではないでしょうか。
取適法では、手形払いの禁止や価格交渉のルールなどが定められており、受託事業者の資金繰りの改善が期待されています。
しかし、全ての課題が解消されるわけではなく、状況によってはファクタリングなどを活用した資金調達が必要となる場合があります。最後に、法改正が中小企業にもたらした影響とファクタリングの役割を見ていきましょう。
支払サイトの短縮によって資金不足に陥るリスクが軽減された
取適法で支払期日に関するルールが設けられたことで、長期の支払サイトは見直しが進み、取引の受託事業者が代金を受け取るまでの期間の短縮が可能となりました。
建築業や製造業では、成果物の完成までに時間を要すことから、支払サイトが長くなるケースがあります。
しかし、取適法によって長期の支払サイトの見直しが進めば、売掛金の回収までの期間が短縮され、資金計画も立てやすくなります。手元の運転資金が不足する事態を避けやすくなることで、必要な事業に投資できるようになり、企業の安定経営にもつながるでしょう。
さらに、振込手数料は委託事業者が負担することがルール化されたため、受託事業者が本来受け取るべき代金を確保しやすくなります。収益基盤が安定していないスタートアップ企業などは、わずかなコスト削減でも資金繰りの改善につながります。
ファクタリングは取適法への対応に伴う一時的な資金不足への備えとして活用できる
一方で、全ての委託事業者が新しい支払フローへすぐに移行できるわけではありません。
委託事業者がこれまで手形払いや長期の支払サイトを採用していた場合、支払方法の変更や社内の労務管理体制の整備に時間がかかることがあります。その結果、請求処理が一時的に滞り、受託事業者への入金が遅延する可能性があります。
取適法への対応に伴う運用変更などの影響で、委託事業者からの支払いが一時的に遅れ、受託事業者である自社の資金繰りに影響が出る場合は、ファクタリングを活用するのも選択肢の一つです。
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まとめ:ファクタリングによる自主的な現金化は資金繰り悪化を改善する手段の一つ
取適法は、委託事業者による不当な取引から受託事業者を守るために改正された法律です。
法律内でファクタリングが禁止されているわけではありませんが、委託事業者が主導して取引を進め、受託事業者に手数料を実質的に負担させるファクタリングは、取適法の規制対象となります。
しかし、その一方で受託事業者が自らの意思で行うファクタリングは規制対象外となっており、今後も資金不足を解消する手段として活用できます。資金を調達する際は、信頼できるファクタリング会社と契約し、手数料の設定や契約条件が適切かどうかを確認しましょう。
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