手形廃止に向けて知っておきたい! でんさい導入のメリット・デメリットとファクタリングとの違い

2026年度末に予定されている手形廃止を受け、でんさいの導入を検討する企業もみられます。でんさいとは電子記録債権の略称で、コスト削減や事務負担の軽減などさまざまなメリットがあることで注目されています。
一方で利用時の注意点もいくつかあるため、でんさいを導入する際は長所・短所の両方をよく理解してから導入を検討しましょう。
本記事ではでんさいの基礎知識とメリット・デメリット、ファクタリングとの比較をまとめました。手形廃止を前にでんさいの導入を検討されている方や、ファクタリングとの違いを知りたい方はぜひ参考にしてください。
【この記事で分かること】
- でんさいは従来の手形と比べると、事務負担の軽減やコスト削減、リスク対策、透明性の向上などのメリットが期待できる
- 一方で、でんさいは取引先も利用していなければ使えない他、貸し倒れリスクが生じる可能性がある
- 初回利用の手軽さや貸し倒れ防止を重視するのならファクタリングの利用がおすすめ
でんさいとは? 基礎知識と手形廃止との関連性
でんさいとは、手形や売掛債権を電子化し、オンライン上で取引できるようにした「電子記録債権」を活用した決済サービスです。株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が取り扱っており、2007年に成立・公布された電子記録債権法に基づき運用されています。
でんさいは元々、紙媒体の利用に伴う諸課題を解決する手段として誕生しました。近年、でんさいの導入を検討する企業がみられる背景には、2026年度末に予定されている手形廃止が大きく関係しています。
これまで卸売業や製造業、建設業などを中心に利用されてきた手形には、以下のような長年の課題がありました。
- 他の決済方法に比べ支払サイトが長い
- 取引先が利息や割引料を負担する構造
- 振出人優位の手数料体系
- 紛失・盗難のリスク
2024年10月に、公正取引委員会は60日を超える長期手形等の交付に対し指導する方針を示しましたが、上記のような根本的なデメリットは依然として残っています(※1)。こうした背景を受け、政府は手形・小切手が抱える問題を解決するため、2027年3月末までの利用廃止を目指し、でんさい等の電子記録債権やインターネットバンキングへの切り替えを推奨しています(※2)。そのため金融機関においても、2027年3月を待たずに手形・小切手の取り扱いを縮小する動きが出てきているのです。
決済手段の切り替えには準備期間が必要となるため、早期の検討が推奨されています。
※1参考:公正取引委員会.「(令和6年10月1日)手形等のサイトの短縮について」.(2024-10-01).
※2参考:金融庁.「紙の手形・小切手利用廃止へ」.(参照2026-05-29).
でんさい導入によるメリット

でんさいの導入によって期待できるメリットは大きく分けて6つあります。
- 事務負担の軽減
- コストの削減
- リスク対策
- 取引の透明性が高まる
- 複数の決済手段を一本化できる
- 資金繰りを円滑にできる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
事務負担の軽減
でんさいを導入すると、支払側・受取側ともに事務負担を軽減できます。
支払側の場合、手形を利用するには受取人や金額など必要事項の記載、印紙の貼付、押印といった作業が必要になる上、手形を封入したり郵便局に持ち込んだりと、さまざまな事務手続きが必要になります。一方の受取側も、郵送されてきた手形を受け取る、取引先に領収書を発行する、金融機関へ取立依頼を行うといった事務手続きが必要です。このように、双方に事務負担が生じるところが難点でした。
その点、でんさいならオンライン上で支払情報を入力し、承認を受けるだけで決済手続きが完了します。受取側も債権内容をオンライン上で確認するだけで済むため、事務負担を大幅に軽減できます。空いた時間を他の業務に充てれば、従業員一人当たりの労働生産性が高まり、一石二鳥の効果を期待できるでしょう。
コストの削減
手形からでんさいに切り替えると、コストの削減につながるのもメリットの一つです。
手形の場合、支払側は約束手形の用紙代や印紙代、郵送料といった諸費用に加え、手形の事務作業にかかる人件費の負担もかさんでしまいます。受取側にとっても、手形を受け取るたびに領収書に貼り付ける印紙代や郵送料がかかるところがネックでした。
一方、でんさいなら支払側の負担は金融機関に支払う手数料のみであり、受取側は印紙代・郵送料が不要になるため、双方ともにコストを削減できます。
リスク対策
でんさいを導入すると、手形ならではのリスクを未然に回避しやすいというメリットがあります。紙媒体の手形は紛失や盗難の危険性がある他、配送トラブルで手形の遅延・未達が発生したり、取立依頼を忘れたりするリスクがあり、注意が必要です。
その点、でんさいは現物ではなくオンライン上でやり取りするため、紛失や盗難のリスクを低減できるのはもちろん、配送トラブルの影響も受ける心配がありません。また代金は支払期日になれば自動入金される仕組みになっているため、取立依頼忘れなどのヒューマンエラー防止にも役立つでしょう。
取引の透明性が高まる
でんさいで決済をすると、取引の透明性が高まるという利点があります。
紙の手形の場合、第三者に譲渡する際は手形の裏面に住所・会社名・代表者の肩書および氏名などを記載した上で、会社印を押印する「裏書譲渡」という手続きを行います。そのため裏書に記載ミスや署名の不備などがあると、無効と判断される可能性が高いです。
また裏書譲渡を繰り返した場合、全ての裏書の履歴はきちんとつながっていなければなりません。これを裏書の連続性といい、もし履歴がつながっていないと見なされた場合は正当な債権者であることを証明できず、支払期日に代金を受け取れない可能性があります。
でんさいなら譲渡の記録が電子データとして管理されるため、いつ・誰が・どの金額を・誰に譲渡したのかを明確に残せます。その結果、代金を間違いなく受け取れるのはもちろん、取引の透明性も担保されるでしょう。監査対応時の確認作業もスムーズに進むと考えられます。
【支払側】複数の決済手段を一本化できる
手形や小切手、銀行振込など複数の決済手段を使い分けている場合は、でんさいに一本化できます。決済手段が異なると、それぞれの方法ごとに事務手続きを行う必要があるため、作業工数や作業時間が増えがちです。
でんさいでまとめて決済できるようになれば、ワークフローもシンプルになり、業務をより効率化できるでしょう。
【受取側】資金繰りを円滑にできる
でんさいを利用すると、売掛債権を効率的かつ無駄なく活用しやすくなります。手形の場合、現金化できるのは最短でも支払期日の翌営業日であるため、資金確保までにタイムラグが発生するのがネックとされてきました。
その点、でんさいは支払期日になれば自動で入金されるため、わざわざ取立依頼を行う必要がなく、手形よりもスピーディに資金を確保できます。
またでんさい割引と呼ばれる仕組みを活用すれば、資金繰りをより円滑にできるでしょう。でんさい割引とは、支払期日前のでんさいを金融機関に譲渡し、早期現金化するサービスのことです。
なお手形は原則として分割不可ですが、でんさい割引は分割して譲渡できます。必要な分だけ割引して早期現金化し、残りは支払期日に受け取るといった方法にも対応できるため、ニーズに応じてより柔軟に活用できるところが利点です。
資金繰りを円滑にする際には、ファクタリングを利用する方法もあります。No.1の2社間ファクタリングでは、最短即日で資金調達ができます。
でんさい導入時に気を付けたいデメリット・注意点

でんさい導入には多くのメリットがある反面、いくつか注意しなければならない点もあります。デメリットを把握しないままでんさいを導入すると「期待していたよりもメリットが少なかった」「思ったより導入に手間がかかった」といった問題が浮上する恐れがあるため、注意点もきちんと理解した上で導入準備を進めましょう。
ここでは、でんさい導入時に気を付けたいデメリットや注意点をご紹介します。
取引先の同意が必要になる
でんさいを利用するには、支払側・受取側ともに金融機関とでんさいの利用契約を締結する必要があります。取引先の同意が必須となるため、もし取引先がでんさいの利用を拒否した場合は、他の方法での支払を余儀なくされます。
現在は2026年度末までの手形・小切手の利用廃止の影響により、既にでんさいを利用している、あるいはでんさいへの切り替えを検討している企業が増えていると説明しましたが、実際に導入するか否かはあくまで任意です。
取引先によっては「インターネットバンキングの振込で対応したい」などと断られる可能性もゼロではないことを、覚えておきましょう。
ワークフローの見直しが必要
でんさいと手形では事務手続きや会計処理の手順・内容が異なるため、導入時にはワークフローを見直したり、従業員に教育・指導を行ったりする必要があります。
特に、これまでアナログな方法で決済を行ってきた会社では、オンライン上で手続きを完結させるでんさいのやり方に、戸惑いを覚える従業員も多いでしょう。場合によっては説明会やトレーニングなどを実施しなければならず、導入までに手間やコストがかかる可能性があります。
貸し倒れのリスクがある
でんさいの譲渡やでんさい割引を行った後に取引先が倒産して支払ができなくなった場合、元の債権者が現在の債権者に対して代金の支払(償還)義務を負うことになります。
せっかく譲渡や割引を利用して資金調達をしても、場合によってはその資金を手放さざるを得なくなるでしょう。そのため、譲渡・割引したでんさいが無事に決済完了するまでは油断できないところがネックです。
No.1の2社間ファクタリングは、償還請求権がないノンリコース契約であるため、貸し倒れ防止に役立ちます。
どちらを選ぶ? でんさいとファクタリングの違い

ここまででんさいの特徴を説明してきましたが、売掛債権を活用して資金繰りを円滑にしたいのならファクタリングを利用するという選択肢もあります。
ファクタリングとは、ファクタリング業者に売掛債権を譲渡し、早期現金化する資金調達方法です。売掛債権を支払期日前に現金化できる点はでんさい割引と共通していますが、両者には明確な違いがいくつかあります。
まず、でんさい割引を利用するには金融機関窓口にて利用申込を行い、一定の審査や利用契約の締結、利用者番号の付番などを経て、でんさいネットを利用できる環境を整える必要があります。審査が行われるため、初めて利用する場合は、申込から資金調達まである程度の日数を要する可能性が大きいです。
一方のファクタリングも審査や債権譲渡の契約などは必要ですが、利用者とファクタリング業者だけで取引する2社間ファクタリングなら、最短で即日中に売掛債権を現金化できます。そのため、今すぐ売掛債権を現金化したい場合は、ファクタリングの方が利便性が高いといえるでしょう。
また審査の内容や基準にも違いがあります。でんさいでは金融機関が融資と同等程度の審査を行うため、利用者の経営状態が悪い場合は利用を断られる可能性があります。
一方、ファクタリングの審査は利用者よりも取引先の信用力が重視されることが多いです。取引先の信用力が高ければ、利用者が赤字やリスケ中であっても審査をパスできる可能性があるでしょう。
他には、両者の手数料相場の違いにも注目したいところです。金融機関ででんさい割引を利用する場合、電子記録債権の金額に対して1.5〜5.5%の手数料が発生します。
一方、ファクタリングの手数料は契約形態によって異なりますが、2社間なら売掛金に対して8〜20%、3社間なら1〜9%の手数料がかかります。具体的にどのくらいの手数料がかかるかはケースバイケースであるため一概に言えませんが、でんさい割引の方がややコストを抑えやすい傾向にあるでしょう。
ただし、コスト面だけで選択すると、調達まで時間と手間がかかる他、自社の信用力が審査に影響して利用できない可能性もあります。そのため、単純に手数料のみで比較せず、他の要素も含めて総合的に検討した方が良いでしょう。
さらには、貸し倒れリスクの有無も大きな違いの一つです。前述したようにでんさい割引には貸し倒れリスクがありますが、ファクタリングでは償還請求権のないノンリコース契約が一般的です。そのため、たとえ取引先が倒産したとしても資金を償還する義務はありません。
どちらを選ぶのがおすすめ?
でんさい割引とファクタリングは特徴に大きな違いがあるため、どちらが適しているかはニーズや状況によって異なります。例えばコストをなるべく抑えたいのなら、ファクタリングより手数料負担が少なくなりやすいでんさい割引が適しているでしょう。
一方、初めての利用でなるべく早く売掛債権を現金化したい場合や貸し倒れリスクを防ぎたい場合、あるいは赤字やリスケ中で資金繰り改善を目指している場合は、ファクタリングの利用がおすすめです。
まとめ:でんさい導入時はメリット・デメリットをよく理解しておこう
2026年度末までの手形・小切手の利用廃止が目標として掲げられている今、でんさいは事務負担の軽減、コストの削減、リスク対策などに役立つ決済方法として注目されています。
一方で、取引先の同意やワークフローの見直しが必要になる、貸し倒れのリスクがあるなど、いくつか注意しなければならない点もあります。またでんさいの利用には下準備が必要になるため、手形・小切手の代替手段としてでんさいへの切り替えを検討するのなら、早めに手続きを開始しましょう。
なお、資金繰りとしてでんさい割引の利用を検討しているのなら、ファクタリングを検討してみるのもおすすめです。ファクタリングはでんさいよりも申込に手間や時間がかかりにくく、貸し倒れリスク対策にも活用できます。
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