ファクタリングの掛け目とは？売掛金全額が買い取り対象にならない仕組みを解説

ファクタリングは、売掛債権を売却する有償譲渡の仕組みであり、一般的には「請求書の金額から手数料を引いた金額が受け取れる」というイメージを持たれがちです。しかし実際には、複数の請求書があってもその全額ではなく、売掛債権の一部だけが買い取り対象となるケースが多く、特に少額の債権ではその傾向が強く見られます。
その理由として「掛け目（かけめ）」という考え方が存在します。掛け目とは、売掛先の信用力や支払いの確実性などを基準に、買い取り可能な割合を調整するための概念です。ファクタリングでは、この掛け目が適用されることで、買い取り額が請求額より低くなる仕組みになっています。
今回は、この「掛け目」がなぜ必要なのか、そしてファクタリングにおいてどのように作用するのかを、多方面から詳しく解説します。

掛け目とは何？

掛け目（かけめ）とは「買取率」のことで、融資の際の担保評価額に近いイメージです。融資でも担保（不動産、住宅、土地）の評価額全額まで借りられるわけではありません。

ファクタリング会社の際の売掛債権も債権額の額面全額の買取ではなく、一定の比率（掛け目）をかけた金額となります。回収リスクが低いほど掛け目は高くなります。

• 掛け目が高い→100％に近い＝リスクが低い
• 掛け目が低い→100％に遠い＝リスクが高い

ことになります。

実際に掛け目を使ってファクタリング額を計算してみましょう。

事例：額面100万円、掛け目90％、手数料5％の場合、100万円の売掛債権のファクタリング

1．100万円×90％＝90万円の買取額
2．手数料　90万円×5％＝45,000円　になります

実際に入金されるのは90万円－4.5万円＝85.5万円　です

返済はファクタリング会社に対して

3．100万円　全額行います。

すると、100万円をファクタリング会社に返済した後、ファクタリング会社から

4．額面－掛け目＝100万円－90万円＝10万円が手元に戻ってきます。

掛け目は、全額返済後に戻ってくる「保証金」のようなイメージで考えると理解しやすいでしょう。ファクタリングは、外見上は請求書や手形を早期に現金化できる“早い資金調達”と思われがちですが、その仕組みは意外と甘いものではありません。
手数料は、売掛債権額に掛け目を適用した“実際の買取対象額”に対して、既定の○％が上乗せされます。したがって、請求書に記載された金額よりも少ない基準額に手数料が掛けられる点が重要です。
つまり、請求書の金額（もとの売掛金額）×○％では計算しないという点に注意が必要です。掛け目によって調整された金額を基に手数料が発生するため、表面的なイメージよりも仕組みは慎重かつ正確に設計されています。

掛け目がある理由

そもそも、なぜ掛け目が存在するのでしょうか。請求書の金額が指定日に確実に振り込まれるのであれば、ファクタリング会社がそのまま買い取り、手数料だけ受け取る方式のほうが、表面的には効率的に見えます。掛け目を乗じた金額に手数料率をかける仕組みでは、請求書の満額に手数料を課す場合よりも収益が少なくなるはずだからです。
しかし実際には、ファクタリング会社は 売掛金の未回収＝貸し倒れリスク を完全にゼロにはできません。誰もが「ばれる」ことのない完璧な請求処理をしているとは限らず、請求内容の誤りや売掛先の突然の資金トラブルなど、予測不可能なリスクが常に存在します。そこで、ファクタリング会社は100％のリスクを背負わないために、掛け目相当分を「保証金」に近い形で事前に確保するのです。
もし売掛金を回収できなかった場合、その掛け目の差額が回収漏れ資金として充当されます。掛け目は回収漏れリスクが高いほど低く、リスクが低いほど高く設定されます。たとえば、ほぼ確実に回収できるとされる「診療報酬ファクタリング」は掛け目が95％前後と高い水準になります。診療報酬の支払い主体である基金や国保連が倒産したり、不渡りを出したりすることは現実的ではなく、日本の医療制度の構造上ほぼ考えられないためです。
とはいえ、医療機関が不正請求を行ったり、自費診療や本来の患者負担割合とは異なる形で請求したりすれば、当然チェックが入り、請求内容の誤りが 「仕分け」 の段階で ばれる 可能性があります。売掛先の倒産リスクが極めて低くても、請求内容そのものが正しい保証がない以上、掛け目100％がほぼ存在しない理由はここにあります。
一方で、「初回の2社間ファクタリング」は、債権者（申込者）にまだ信用が蓄積されていないため、掛け目が大きく下がることがあります。売掛先に同意を取らない形式で（同意を取るのが3社間ファクタリング）申込者が提示する請求書を信頼して買い取る必要があるため、初回は特にリスクが高いのです。これは、伝統的な手形割引における信用度による割引率の違いと似た構造で、ファクタリング会社は不確実性を織り込みながら掛け目を設定します。
このように、回収漏れの可能性に応じて掛け目を調整することで、ファクタリング会社は貸し倒れリスクをヘッジしています。

初回は掛け目が低く、2回目以降掛け目が上がる

初回の取引では、申込者の信用に関して十分な確認が取れていないため、掛け目は低く設定される傾向があります。ファクタリング会社としては、初めての債権譲渡でリスクを正確に把握できないため、慎重な条件で買い取りを行う必要があるからです。
しかし、取引を重ねて2回目、3回目、4回目と継続利用が進み、申込者が“お得意様”として信用を積み上げていくと、リスク判断が明確になり掛け目は徐々に高くなっていきます。これは、継続利用者ほど売掛金の入金実績が蓄積され、事前相談の段階でもスムーズに条件調整ができるようになるという傾向ともいえます。

2社間ファクタリングよりも3社間ファクタリングの方が掛け目が上がる

債権者とファクタリング会社のみで契約する 2社間ファクタリング は、売掛先への調査を行わないため、貸し倒れリスクが高くなります。売掛先が実は倒産しそうな企業である可能性もあり、その分、リスクヘッジにかかる負担が大きくなりやすくなります。
さらに、期日になっても債権者がファクタリング会社へ返済しないリスクも存在します。こうした背景から、2社間方式はファクタリング会社にとってリスクが 以上 に大きく、掛け目が低く設定される理由につながります。
一方の 3社間ファクタリング は、売掛先からファクタリング会社が直接回収するため、回収漏れの可能性が低くなります。売掛先の支払い実績が確認できるうえ、入金ルートも明確になるため、リスクが小さく、掛け目が高くなりやすく、利用者の 資金繰り も安定しやすくなります。

売掛先が大企業の方が掛け目が上がる

請求書の宛名、つまり売掛先として記載される企業が有名企業や大企業であるほど、掛け目は高く設定される傾向があります。これらの企業は倒産リスクが低く、過去の取引や支払い実績も豊富なため、ファクタリング業者としても安心材料が多く、掛け目を高めに設定できる理由を説明しやすいのです。
反対に、無名の中小企業が売掛先の場合は、倒産や不渡りの可能性が一定の数で発生していることから、リスクを考慮して掛け目を低く設定せざるを得ません。
一方で、誰もが知る歴史と伝統ある企業が売掛先であれば、貸し倒れリスクが極めて低いため、ファクタリング業者は掛け目を高水準に設定しやすくなります。

国際ファクタリングは例外的に掛け目100％

国際ファクタリングのみ、例外的に掛け目が100％となります。これは、国際ファクタリングでは手数料が“保険料”として位置づけられており、国内取引とは性質が大きく異なるためです。
ここでカバーされるリスクは、取引先企業の倒産だけではありません。国際情勢の変化や政情不安など、ビジネス環境に影響を及ぼす状況が発生した際に、売掛債権を確実に現金化する仕組みになっています。何も問題がなければ、通常どおり売掛金を回収し、手数料を保険料代わりに支払って取引が完結します。
このように、海外ビジネスでは予測が難しいリスクを広くカバーすることが重要であり、それが掛け目100％という仕組みが採用されている理由です。

ファクタリングの掛け目：種類別

どのファクタリングがどのくらいの掛け目なのかまとめました。初回は低く、だんだん掛け目が上がります。また、売掛先の倒産リスクが低いほど掛け目が上がるのは上述の通りです。

• 2社間ファクタリング：65％～80％
• 3社間ファクタリング：80％～90％
• 診療報酬ファクタリング：90％～95％
• 介護報酬ファクタリング：80％前後
• 国際ファクタリング：100％
• 給与ファクタリング：60％～80％

手数料が高いと言われている給与ファクタリング（給料ファクタリング）については、掛け目も低めで、手にできる現金は他のファクタリングと比較して少なくなります。

ファクタリング方式による掛け目の違い

　
掛け目を左右する最大の要素は、ファクタリングの方式です。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの掛け目の目安は以下の通りです。

このように、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングでは掛け目に大きな差があります。
これはリスクの違いによるものです。

2社間ファクタリングの掛け目が低い理由

2社間ファクタリングは、取引の当事者が利用会社とファクタリング会社の2者のみで行われる取引形態です。 3社間ファクタリングとは異なり、売掛先（取引先企業）がこの取引に関与しないため、ファクタリング会社は売掛先に直接債権の内容や支払い状況を確認することができません。
この仕組み上、ファクタリング会社は利用会社の申告内容を前提に審査を進めるしかなく、そこにリスクが生じます。たとえば、利用会社が誤って、あるいは意図的に虚偽の売掛金情報を申告した場合、正確な審査が困難になります。さらに悪質なケースでは、実際には存在しない架空債権を売却して資金を得ようとする事例も報告されています。
当然ながら、架空債権を買い取ってしまえば、支払期日が来ても入金はなく、ファクタリング会社にとっては回収の見込みがゼロになります。
また、2社間ファクタリングでは、売掛先がファクタリングの存在を知らないまま、期日に売掛金を利用会社へ支払うことになります。
そのため、通常は「売掛先 → 利用会社 → ファクタリング会社」という流れで資金が動きますが、ここにもリスクが潜んでいます。利用会社が資金を受け取った後に、ファクタリング会社へ送金せずに使い込みをしてしまう、あるいは資金移動に遅れが生じるといったトラブルが発生する可能性があるのです。
こうしたリスクはファクタリング会社にとって非常に大きいため、その分リスクヘッジとして掛け目（買取率）を低く設定せざるを得ません。
掛け目が低いということは、売掛金の額面金額に対して調達できる金額が少なくなるという意味ですが、これには明確な理由があるのです。2社間ファクタリングは、売掛先への通知や同意が不要な分、スピーディに資金化できるというメリットがあります。
しかしその一方で、虚偽申告や支払遅延・入金遅れのリスク、そして回収不能のリスクを抱えるというデメリットも存在します。
このように、2社間ファクタリングにはメリットデメリットの両面があり、スピードや手軽さを重視するか、安全性を重視するかによって、利用価値の感じ方は大きく異なります。
リスクが高い分だけ掛け目が低くなるという仕組みを理解しておくことが、賢くファクタリングを活用するための第一歩といえるでしょう。

3社間ファクタリングの掛け目が高い理由

　
3社間ファクタリングは、2社間ファクタリングと異なる仕組みであり、リスクは大きく変わり、低くなります。3社間で取引する場合、ファクタリング会社は売掛先に直接連絡して情報を照会でき、売掛先への債権譲渡通知も必ず行うため、売掛金が実在しなければ成立しません。
さらに、売掛先が債権譲渡に承諾する際には、債権者がファクタリング会社に変わることも含まれており、売掛先は直接ファクタリング会社に支払うことに同意しています。そのため、「売掛先→ファクタリング会社」の流れで回収でき、利用会社による資金の使い込みが起こるリスクは、2社間に比べてほうが厳しい制約下に置かれ、抑えられます。
つまり、掛け目によって備えるべきリスクが低いため、掛け目を高く設定できるのです。

ファクタリングの掛け目ありは違法？

　
掛け目ありのファクタリングにはひとつ問題があります。それは、違法性の問題です。掛け目を設定することで、売掛金の一部しか受け取れる金額が制限される場合があります。
この点を正しく理解しておかないと、ファクタリングを継続的に安全に利用する上でトラブルの種となりかねません。ファクタリングの仕組みをよく持って把握し、あれこれ確認したうえで掛け目の有無を選ぶことが重要です。

ファクタリングは完全合法

　
ファクタリングは債権譲渡取引の一種であり、100％合法な取引です。
このことは、民法第466条に明記されています。

（債権の譲渡性）
第四百六十六条　債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
２　当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

出典：出典：e-Gov法令検索「第四節　債権の譲渡」
しかし、これはあくまでも「債権譲渡取引である限りにおいてファクタリングは合法」ということです。
ファクタリングの契約内容によっては、ファクタリングではなく実質的に貸付けとみなされる場合があります。

まとめ｜掛け目でお悩みの方はNo.1にご相談ください

掛け目は、ファクタリングを利用する際の「保証金」のような役割を持ち、特殊な例を除けば100％にすることは一般的にできません。請求書額の全額を買い取るのが難しいのは、売掛先の倒産や回収漏れといったリスクが発生する可能性があるためで、そのリスクを掛け目によって減じてから現金化を行う仕組みになっています。
より高額の資金を手元に残したい場合は、掛け目が高いファクタリング会社を選ぶことが効果的な資金調達につながります。焦らず比較し、自社の状況に合った会社を選ぶことが重要です。特に、会社によって審査基準や売掛先の信用度評価が異なるため、慎重な判断が求められます。
掛け目については、売掛先のリスクを丁寧に審査し、お客様の利益を最大化できるよう当社「株式会社№1」がサポートいたします。金融機関とは異なり、柔軟な審査で対応しておりますので、信用できる請求書・信用度の高い売掛先であれば、掛け目についてもお客様のご期待に沿えるようしっかりと審査を行います。
ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

【監修】株式会社No.1 編集局長

保有資格：貸金業務取扱主任者

20代はノンバンクにて法人融資を中心とした営業に従事。
その後、不動産担保融資の会社でキャリアを重ね金融業界で幅広い経験を積む。
2018年に株式会社No.1へ入社。
これまでの実務経験と専門知識を活かし、中小企業の経営課題解決に向けた支援を行っている。