カテゴリー: 経営情報

社内預金制度の企業にとってのデメリットとは?

企業の資金調達法として、比較的リスクが低いのが社内預金制度です。

従業員などから企業に預金をしてもらう、といった形で資金調達ができます。

年利0.5%程度で資金調達ができることになるので、ビジネスローンなどを利用するよりも有利な条件で借り入れできるのがメリットです。

しかしメリットだけに目を向けていては足元をすくわれてしまうかもしれません。

もちろん社内預金制度にもデメリットはあります。

こちらでは社内預金制度におけるデメリットについてお伝えします。

利子を付与しなければならない
社内預金制度のデメリットとして、特に注意すべきはコスト面です。
コストが全くかからないわけではありません。
社内預金制度の運用にあたり、企業が負担する主なコストは、利息と管理費用です。

社内預金制度の支払利息

 
まず、企業は社内預金に利息を支払う必要があります。

通常の資金調達よりはコストがかからないのは事実ですが、あくまで労働者の資金を預金してもらっている形になるので利子を支払わなければならないのです。

さらに、社内預金制度の預金金利は銀行ほど安くなく、厚生労働省令で定める下限利率以上に利息を設定しなければなりません。

下限利率については「年0.5%」となっています。

仮に3,000万円の社内預金があった場合には、年間で15万円の利息が発生します(3,000万円×0.5%)。
今後、社内預金制度の下限金利は上がるかもしれません。
そもそも、社内預金制度は従業員の福利厚生を目的としています。
企業側のメリットは二次的なものであり、社内預金に利息を付けることで、従業員の資産形成を促すのが真の目的です。
「社内預金制度で資産形成」というからには、「銀行預金よりも資産形成に役立つ」ことが前提となります。
銀行預金と同程度、あるいは銀行預金よりも低い金利では福利厚生になりません。
日本の銀行では、預金金利が低い状況が長らく続いてきました。
数年前、主要銀行の普通預金の金利は年0.001%が当たり前だったのです。
しかし近年、銀行の預金金利が徐々に上がってきています。
2025年8月現在、三菱UFJ銀行の普通預金の金利は年0.25%です。
ネット銀行などでは、年0.5%の金利を提示するケースも増えてきました。
この流れが続けば、銀行の預金金利がおおむね年0.5%程度になることも十分にあり得ます。
その場合、「銀行預金よりも金利が高く、資産形成に役立つ」という特徴はなくなり、社内預金制度は成り立ちません。
当然ながら、銀行預金よりも高くなるよう、下限金利が引き上げられることでしょう。
その場合、社内預金制度の支払利息は膨らみ、企業の資金繰りを圧迫します。

金利だけを考えても、企業にはそれなりにコストが発生してくるので、預金残高にも注意を払わなければなりません。
これは、社内預金制度の大きなデメリットです。

社内預金制度の管理コスト

 
管理コストの負担も、社内預金制度のデメリットとして知っておくべきでしょう。
社内預金制度は、ただ導入すればよいというものではなく、企業が責任を以て管理します。
社内預金の管理が不適切であれば、従業員は安心して預けることができず、福利厚生の役には立ちません。
当然ながら、社内預金制度の運用にあたって、企業には管理コストが生じるわけです。
一般的に、社内預金は企業がみずから管理します。
預貯金管理に関する事務手続きだけではなく、労働基準監督署への報告なども負担になります。
管理に不安があれば、信託機関に管理を委託することもありますが、その場合には委託費用を支払わなければなりません。
社内預金制度の管理コストは企業によって異なりますが、コストゼロでは社内預金制度は成り立たないことも事実です。
社内預金制度の導入を検討する企業は、管理コストの負担も織り込む必要があります。

返還請求に応じなければならない
社内預金は、あくまでも従業員から預かったお金であって、企業のお金ではありません。

当然、労働者側からの返還請求を受けることもあります。

これも、社内預金制度の企業側のデメリットといえます。

労働者としても生活が厳しい時には預金を取り崩したい、と思うものです。

よってその申し出には応えなければなりません。

銀行預金で利用者がお金を引き出したいのに銀行側の都合で引き出させないようにすることはありえませんよね。

社内預金制度も同じ考え方です。

仮に企業が資金難に陥っている場合であったとしても、労働者側の引き出し要求には応えなければなりません。

いつ返還請求があるかは分かりません。
返還請求のタイミングは一定していないものの、遅かれ早かれ返還請求を受けると考えてください。
気を付けたいのは、返還までのスピードです。
社内預金制度の要件のひとつに、返還請求に速やかに対応することが含まれています。
速やかに対応できなければ、社内預金制度の要件に不備が生じるわけですから、場合によっては法律違反になるリスクも。
具体的なスピード感として分かりやすいのは、退職時の返還です。
社内預金制度を利用している従業員は、退職時に企業に対して社内預金の返還を請求します。
この時、企業は7日以内に社内預金を返還しなければなりません。
資金に余裕があれば問題ないのですが、余裕がない企業は要注意です。
特に経営が悪化している企業では、リストラを断行することがあります。
社内預金制度を導入している企業は、多数の従業員が退職する際、短期間に多額の返還請求が行われるでしょう。
経営が悪化している局面であれば、このような返還請求は企業にとって致命傷になりかねません。
なので急な返還要求にも対応できるように、ある程度の資金は用意しておくのがおすすめです。

このデメリットに対処するには、企業のルールとして「社内預金の〇〇%の資金はいつでも確保しておく」と決めておくのもおすすめですよ。

労使協定の締結をしなければ社内預金制度が利用できない

社内預金制度は経営者側の一存で始められるものではありません。
社内預金制度には、いくつかの導入要件があり、それらを全てクリアして初めて導入できます。
その一つに、労使協定があります。
企業は、社内預金制度の導入について労使協定を締結し、労働基準監督署へ届け出なければなりません。
経営者側と労働者側で労使協定を締結して初めて利用できる制度なのです。

仮に労働者側との折り合いが悪いような時には拒否される恐れもあります。
デメリットといえばデメリットですが、実際には労使協定でつまずくことは少ないです。
社内預金制度は、企業のための制度ではなく、従業員の福利厚生を目的としています。
また、社内預金制度の加入は従業員の自由であって、企業は強制できません。
社内預金制度は会社の責任で運用するため、従業員に負担が生じることもないのです。
企業と従業員の双方に有益な制度であり、従業員の多くは「あって損な制度ではない」と考えています。
とりあえず企業に預けておけば、給料の使い過ぎを避けることができ、着実に資産を形成できると考える人もいるのです。
したがって、労使協定によほどの問題がない限り、拒否される可能性は低いです。
そもそも、そのような問題を抱えている労使協定では、締結したところで労働基準監督署が認めません。
ただし、労使協定の内容自体は社内預金制度の要件を満たしていても、具体的な条件面で労働者側から内容についての注文を受けることもあるでしょう。

労使交渉で議題に挙がりやすいのは以下の項目です。

・制度の対象者
・預金の限度額
・利率とその計算方法
・預金の保全方法
・制度利用時の手続方法

特に労働者側が気にするのが「利率」です。

2025年現在、社内預金制度の下限金利は「年0.5%以上」となります。

問題は最低ラインの0.5%の利率になるのか、それとも0.5%を超える利率を設定するのか、という部分です。

労働者側としては、もちろん少しでも利率が高いほうが良いですよね。

一方で企業側は利率を少しでも引き下げたいところです。
銀行の預金金利と社内預金制度の金利の差、それによる企業・従業員双方のメリット・デメリットをよく考え、協議し、落としどころを探りましょう。
上記でも述べた通り、近年、銀行の預金金利は上昇傾向にあります。
年0.5%以上の金利を出す銀行もありますから、社内預金制度の下限金利ではうま味がないと考える従業員もいるはずです。

ちょうどよい利率を設定しなければ交渉がうまくいかない恐れもあるので注意してください。

預金を保全しなければならない
社内預金は従業員のお金ですから、企業が責任を以て管理しなければなりません。
もちろん、社内預金の管理には「保全」も含まれます。
保全措置に手間がかかること、コストがかかることなども、社内預金制度の企業側のデメリットといえるでしょう。

社内預金制度の保全とは

 
社内預金制度の導入にあたり、社内預金の保全措置も必須要件のひとつです。
社内預金制度を導入する企業は、年に一度、社内預金の管理状況を労働基準監督署へ報告し、毎年3月31日時点での社内預金の全額について、保全措置を講じる必要があります。
企業の経営は、いつも安定しているわけではなく、常に経営悪化への備えが必要です。
今後、経営ができなくなるようなこともあるかもしれません。

倒産に至ってしまう可能性もゼロではないでしょう。

仮に資金難になって倒産したとしても社内預金については保全しなければなりません。

それが社内預金制度のルールなのです。

ではどのような方法で預金を保全するのでしょうか?
具体的な保全措置は以下の通りです。

  • 金融機関と保証契約を結ぶ
  • 信託機関と信託契約を結ぶ
  • 預金保全委員会を設置し、支払準備金制度を併用する

このうち、最もわかりやすいのが金融機関等による保証の契約でしょう。

間に金融機関に入ってもらうことにより、社内預金を保証してもらうのです。

もう一つの方法は信託会社との信託契約です。

こちらに関しても預金の保全が可能です。

さらに質権や抵当権の設定による保証、預金保全委員会の設置などで対応できます。

保全とコスト

 
保全方法を検討する際には、コストに注意してください。
金融機関と保証契約を結ぶ際には、保証料を支払わなければなりません。
信託機関と信託契約を結ぶ場合も、同様にコストがかかります。
金融機関に支払う保証料を決める要素は、保証金額(対象となる社内預金の総額)・保証期間・保証料率などです。
従業員が多い企業は、保証する社内預金の総額も大きくなるのが普通です。
もちろん、社内預金制度の導入から月日がたつほど、社内預金の積立額は膨らんでいき、保証コストは増大します。
社内預金制度は恒常的なものですから、保証期間は長期が前提です。
保証期間中に保全コストが大きく下がることは基本的になく、長期にわたって一定以上の負担が生じます。
保証料率は一定でも、社内預金制度を長く運用していけば、コスト負担も大きくなっていくと考えてください。

社内預金の保全方法は、長期的なコストもよく考えた上で、計画段階で決めておくべきです。

まとめ:社内預金制度のデメリットを知り、正しい活用を

社内預金制度には様々なメリットがある一方で、デメリットも少なくありません。
安易に導入したばかりに、社内預金の管理負担や法律違反のリスクに悩む企業も多いのです。
社内預金制度をデメリットを知っておくことで、正しい活用も見えてくるでしょう。
No.1は、売掛金の早期資金化やコンサルティングを行っています。
経営改善、資金繰り、資金調達の専門家が多数在籍しており、社内預金制度に関するサポートの実績も豊富です。
社内預金制度の導入や運用に悩んでいる方は、No.1までお気軽にご相談ください。

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