ファクタリング「売却損」とは？会計処理時の勘定科目や仕訳方法

「売掛債権売却損」とはファクタリング手数料を会計処理するときの勘定科目のことです。

買い取り型ファクタリングは、自社の売掛債権をファクタリングサービス会社に売却（譲渡）することで本来の支払日よりも前に資金を調達できるものです。

しかし全額を受け取れる訳ではなく、ファクタリング会社に手数料を支払います。帳簿に記載する際、手数料の勘定科目は「売掛債権売却損」と記載しましょう。

今回は、買い取り型ファクタリングに関する帳簿作成時の仕訳方法なども解説していきます。

ファクタリングで発生する売却損

上述でも説明したように、ファクタリングで売掛債権をファクタリング会社に売却して資金調達をする場合、手数料を支払わなければなりません。

つまり財務に変化が起きることであり、会計処理が必要になります。

帳簿にファクタリング手数料を記載する際の勘定科目を、「売掛債権売却損」とすることができるのです。

ファクタリング利用の手数料により、売掛金の価値は本来の値段より安くなってしまうため、「売却損」と仕訳されます。

会計ソフトによって「売掛債権売却損」の項目がないこともありますが、その場合は「支払い手数料」や「雑損失」などで代用しても問題ありません。

その他の勘定科目

買い取り型ファクタリングの会計処理において、必要になる売却損以外の勘定科目もご紹介します。

売掛金

後からまとめて支払われる提供した商品やサービスの代金のことを売掛金と言います。

企業同士の支払いのやり取りは頻繁な取引をスムーズにするため、1か月ごとなどまとめて後払いする掛取引が一般的です。また後払いされる予定の代金を受け取る権利のことを売掛債権と言います。

未収入金

営業取引以外で発生した売り上げが未収入金です。

例えば、不動産や不用品を売却した代金を後から受け取る場合、未収入金として処理します。

ファクタリングも売掛債権を売却して得る代金のため、本業以外の収入として分類されます。よって売却代の入金まで数日かかる場合は、契約後に仕訳を売掛金から未収入金に変えましょう。

また、ファクタリング会社から代金を受け取ったら、未収入金から普通預金にします。

預り金

従業員や取引先など、他人が支払わなければならない金銭を自社が一時的に預かる際は、預り金という勘定科目を使用します。

ファクタリング利用時の仕訳方法

ファクタリングで資金を調達する場合に必要な仕訳方法をシーンごと、また2社間と3社間ファクタリングに分けて解説します。

2社間ファクタリングの仕訳方法

利用者とファクタリング会社のみで行われ、取引先が関与しない2社間ファクタリングにおける帳簿の仕訳方法から見ていきましょう。50万円の売掛金を例にします。

売掛金の発生時

取引先に50万円の商品を掛取引で販売した場合、借方に「売掛金」、賃方に「売上」という表記になります。なお売掛金、売上ともに50万円と記載してください。

ファクタリング利用（契約）時

売掛債権を売却してファクタリングを利用するときは、借方の売掛金を「未収入金」、賃方の売上を「売掛金」に変えます。

まだ代金を受け取っていない段階なので、どちらも表記金額は50万円です。

買い取り額の受け取り時

ファクタリング会社から売掛債権の買い取り金が入金されたら、借方に支払った手数料の金額と手数料を引いた金額（振り込まれた金額）を記載します。

振り込まれた金額は「普通預金」、手数料は「売掛債権売却損」です。

50万円の10％が手数料だとしたら、「普通預金45万円」、「売掛債権売却損5万円」となります。

一方、貸方には「未収入金50万円」と記載してください。決済日に取引先から振り込まれる売掛金です。

取引先からの入金時

2社間ファクタリングの場合、取引先はファクタリングが行われていることを知らないので、通常通り利用者に売掛金が支払われます。

つまり、利用者はファクタリング会社に受け取った売掛金を入金しなければなりません。よって計上は預り金となります。売掛金ではなく、ファクタリング会社に支払われるべき代金を一時的に預かるという状態だからです。

仕訳は借方に「普通預金50万円」、貸方に「預り金50万円」といった表記になります。

複数の取引先を持っているのであれば後から混同しないように、「〇〇社からの売掛金入金」などと摘要欄に記しておくと良いでしょう。

ファクタリング会社への入金時

ファクタリング会社へ回収した売掛金を支払ったときは、借方に「預り金50万円」、貸方に「普通預金50万円」と仕訳します。

摘要欄には「○○社（売掛先）から回収した売掛金を○○社（ファクタリング会社）に支払い」などと記録しておきましょう。

これで2社間ファクタリングの会計処理は完了です。

3社間ファクタリングの仕訳方法

続いて、取引先も交えて行われる3社間ファクタリングにおける帳簿の仕訳方法です。同じく50万円の売掛金を例とします。

売掛金の発生時

2社間ファクタリングと同様です。取引先に50万円の商品を掛取引で販売した場合、借方に「売掛金50万円」、賃方に「売上50万円」という表記になります。

ファクタリング利用（契約）時

ファクタリングを利用時も2社間と同様、借方の売掛金を「未収入金」、賃方の売上を「売掛金」に変えます。

どちらも表記金額は50万円。まだ代金を受け取っていない段階です。

買い取り額の受け取り時

当項目も2社間と同じ処理です。

ファクタリング会社から振り込まれた金額は「普通預金」、手数料は「売掛債権売却損」です。

50万円の10％が手数料だとしたら、「普通預金45万円」、「売掛債権売却損5万円」となります。一方、貸方には「未収入金50万円」と記載してください。

ここまでは全く同じ会計処理になります。

大きく違う点として、3社間ではファクタリング会社から代金を受け取った後の仕訳はありません。すでに取引先がファクタリング利用に承諾しているため、売掛金の入金は取引先からファクタリング会社に直接行われるからです。

ファクタリング契約と入金が同日のとき

2社間ファクタリングやオンラインファクタリングの場合、即日で代金を受け取れるケースがあります。50万円の売掛金・手数料10%の例で仕訳方法を見ていきましょう。

ファクタリング会社から売掛債権の買い取り額を受け取るときには、借方に支払った手数料の金額と手数料を引いた金額（振り込まれた金額）を記載します。

したがって借方に受け取った金額「普通預金45万円」と、手数料「売掛債権売却損5万円」という仕訳表記になります。

ファクタリングを契約した即日に買い取り額を受け取れるケースでは、入金を待つ期間がなく未収入金は生まれません。よって貸方の勘定科目には「売掛金50万円」と仕訳し、処理は完了です。

買い取り型ファクタリングにおける仕訳の注意点

売掛債権を売却して、資金調達をする売買型のファクタリングの仕訳をする上で、注意しておくべき点をお伝えします。

手数料の勘定科目

「売掛債権売却損」の項目がない会計ソフトの場合は、「支払い手数料」や「雑損失」などで代用が可能とお伝えしましたが、気を付けなければならない点があります。

ファクタリング会社から手数料を差し引かれることは、売掛金本来の価値より安くなってしまうことを意味するのです。つまり損失となるため、「売掛債権売却損」で仕訳するのが最善ということを覚えておいてください。

また、仮にファクタリングの利用頻度が多くなり、「支払い手数料」や「雑損失」などの計上が前年よりも増えてしまえば、税務署に理由を聞かれる可能性もあります。さらに銀行融資を考えている場合、決算書の確認の際に不利になる可能性もあるでしょう。

ファクタリングは非課税

ファクタリングで債権を売却し代金を受け取ることは、金融商品の売買と同じで消費税はかかりません。

もしも、ファクタリング会社が手数料などに消費税を上乗せした請求をしてきたとすれば、悪質業者の可能性があります。

非課税ということを覚えておかなければ、騙され損をしてしまうかもしれません。

ただし、債権譲渡登記が契約条件のケースで司法書士に報酬を支払う際は、消費税がかかります。

売却損についてまとめ

売掛債権を売却して資金を調達するファクタリングでは、手数料が引かれた代金を受け取ります。

ファクタリング会社に支払った手数料を会計処理する際の勘定科目は、「売掛債権売却損」です。

「支払い手数料」や「雑損失」など他の勘定科目で代用も可能ですが、手数料はいわゆる損失になるため「売掛債権売却損」で計上するのが最善でしょう。

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