カテゴリー: 資金調達情報

増加運転資金とは?増加運転資金の資金調達方法について解説

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 皆さんは、運転資金を正確に説明できるでしょうか。運転資金について説明できる人も、「増加運転資金とは?運転資金との違いは?」と聞かれると、返答に困る人が多いはずです。さらに、「なぜ運転資金は増加するの?」と聞かれたら……?
増加運転資金の知識は、資金繰りの安定に欠かせません。増加運転資金を理解せずに売上を伸ばした結果、資金繰りがショートする会社も多いのです。
そうならないためにも、本稿で増加運転資金の基礎知識や資金調達方法について学んでいきましょう。

運転資金とは?

 No.1でファクタリングを利用されるお客様の中には、健全な資金繰りの一環としてファクタリングを利用される方もいれば、緊急的な資金調達に利用する方、慢性的な資金不足の埋め合わせとして利用される方など様々です。
 ファクタリングは、活用次第で資金繰りを大きく改善することも可能ですが、資金繰り改善の基本を押さえていなければ、ファクタリングの効果が低くなる恐れがあります。特に、

「売上は増えているにもかかわらず、いつも資金繰りが厳しい」

と感じている場合、増加運転資金を正しく理解できておらず、資金繰りが困難になる可能性が大いにあります。
 運転資金というワード自体は、誰もが聞いたことがあるでしょう。文字通り「運転のための資金」であり「事業を続けるために必要な資金」のことです。
 しかし、これだけでは運転資金の性質を正しく理解するには不十分です。本稿のメインテーマは「増加運転資金」を理解するにも、運転資金の知識が欠かせません。

回収と支払いのギャップ

 運転資金を正しく理解するには、

「売上の回収(収入)と経費の支払い(支出)のギャップ」

と考えるのがポイントです。あるいは、信用取引を行っている会社では、

「売掛金の回収と、買掛金の支払いのギャップ」

と考えるとより正確でしょう。
 例えば、毎月1,000万円の売上があり、これが全て2ヶ月後に支払われるとします。この1,000万円を売り上げるためには、原材料や商品の仕入れが必要です。仮に、500万円分の商品を仕入れており、買掛金の支払いを1ヶ月後としましょう。
 この場合、1,000万円の売掛金を回収するより早いタイミングで、500万円の買掛金を支払うこととなります。回収した売掛金から支払うことはできないため、一時的に500万円を立て替えておく必要があるのです。この立て替えができなければ、決済ができずに信用を失い、最悪の場合には倒産に至ります。これが、売上があるのに倒産する「黒字倒産」です。
 そうならないためには、銀行融資やファクタリングなどによって資金を調達し、立て替えておかねばなりません。
 この立替資金が運転資金です。

運転資金の計算方法

 運転資金を具体的にイメージするには、計算方法を知り、実際に自社で経常的に必要となる運転資金を計算してみるのがおすすめです。
 運転資金は、

  運転資金=(売掛金回転期間+棚卸資産回転期間-買掛金回転期間)×月商

で計算します。
 このほか、運転資金の計算式では、

運転資金=売掛債権(売掛金、受取手形)+在庫-買掛債務(買掛金、支払手形)

という計算式もよく知られているため、混乱する人もいるかもしれませんが、どちらも意味するところは同じです。ただし、運転資金がなぜ増加するかを知り、増加運転資金への理解を深めるためには、

  運転資金=(売掛金回転期間+棚卸資産回転期間-買掛金回転期間)×月商

と考えるのが分かりやすいです。
 したがって、ここではこの計算式を使いながら、具体的な計算手順を見ていきましょう。

月商を計算する

 まずは、自社の月商を計算します。
 業種にもよりますが、季節要因などによって毎月の月商にはばらつきがあるはずです。月商の多い月、または少ない月によって計算すると運転資金が正しく計算できないため、平均月商を参考値とします。
 平均月商は、年商を12ヶ月で割って算出します。例えば、年商が1億円のA社であれば、

  1億円÷12ヶ月≒833万円

が月商となります。

売掛金回転期間を計算する

 次に、売掛金回転期間を計算します。売掛金回転期間とは、自社が売掛先に商品やサービスを販売し、売掛金が発生した後、その代金をどれくらいの期間で回収しているかを表すものです。言い換えるならば、商品やサービスの代金を、一時的に自社が立て替えている期間ともいえます。
 売掛金回転期間は、

  売掛金回転期間=売掛金÷月商

で計算します。A社の売掛金が1,500万円であるとすれば、

  売掛金回転期間=1,500万円÷833万円≒1.8

となります。ここでは、計算式に月商を当てはめているため、売掛金回転期間も月商ベースで算出されます。したがって、A社の売掛金回転期間は平均1.8ヶ月であり、売上の計上から代金の回収に1.8ヶ月を要することがわかりました。

買掛金回転期間を計算する

 次に、買掛金回転期間を計算します。これも、考え方は売掛金回転期間と同じです。
 自社が仕入先から原材料や商品を仕入れるとき、ほとんどの会社では後日の支払いを約束して商品を引き受けるでしょう。仕入代金を、仕入先に立て替えてもらっている状態です。
 買掛金回転期間は、仕入れから代金支払いまでの平均期間を表すものです。計算式は、

  買掛金回転期間=買掛金÷月商

です。A社の買掛金が1,000万円ならば、

  買掛金回転期間=1,000万円÷833万円≒1.2

となり、仕入れから支払いまでの期間が1.2ヶ月であることが分かります。

棚卸資産回転期間を計算する

 最後に、棚卸資産回転期間を計算します。
 棚卸資産とは、原材料や商品などの在庫です。将来的には販売してお金に変わりますが、一時的に在庫としての期間が生じます。販売されることにより、棚卸資産が売掛金や現金に姿を変えるまでの期間を棚卸資産回転期間といいます。
 将来的にお金に変わる資産を在庫として置き換えているのですから、これも一種の立て替えと考えることができるため、運転資金を考える上では欠かせない要素です。
 A社の棚卸資産の資産価値を換算すると、1,500万円分を保有していました。棚卸資産回転期間の計算式は、

  棚卸資産回転期間=棚卸資産÷月商

ですから、A社は

  棚卸資産回転期間=1,500万円÷833万円≒1.8ヶ月

となります。これにより、A社の在庫が販売されるまでに1.8ヶ月を要することが分かります。

運転資金を計算する

 さて、運転資金を計算するための数値が全て揃いました。A社が経営を継続するために、経常的に必要となる運転資金は、

 運転資金
=(売掛金回転期間+棚卸資産回転期間-買掛金回転期間)×月商
=(1.8ヶ月+1.8ヶ月-1.2ヶ月)×833万円
≒2,000万円

となります。
 つまり、A社が滞りなく資金繰りを回していくには、2,000万円の運転資金が必要になることがわかるのです。
 運転資金が足りなくなると、支払いが滞って資金繰りがショートします。それを防ぐために、運転資金を調達する必要があります。

増加運転資金とは?

 ここから、いよいよ本題である増加運転資金の解説に入ります。
 増加運転資金とは、「運転資金の増加分」を意味します。上記の流れで運転資金を理解していれば、増加運転資金は決して難しくありません。

なぜ運転資金が増加する?

 運転資金の計算式を理解していれば、運転資金が増加する理由も分かります。運転資金が増加する原因には、

  • 売掛金回転期間が長くなった(回収サイトの長い取引先が増えた)
  • 買掛金回転期間が短くなった(支払サイトの短い仕入先が増えた)
  • 棚卸資産回転期間が長くなった(仕入れの数量が増えた)
  • 売上が大きくなった(事業が拡大した)

といったことが挙げられます。
 A社の例で考えてみましょう。以前(上記の例のころ)のA社では、

  • 月商:833万円
  • 売掛金:1,500万円(売掛金回転期間:1.8ヶ月)
  • 買掛金:1,000万円(買掛金回転期間:1.2ヶ月)
  • 棚卸資産:1,500万円(棚卸資産回転期間:1.8ヶ月)

⇒運転資金:2,000万円

でした。その後、A社は経営拡大路線に舵を切った結果、売上が2倍になりました。これにより、

  • 月商:1,666万円
  • 売掛金:4,000万円(売掛金回転期間:2.4ヶ月)
  • 買掛金:1,500万円(買掛金回転期間:0.9ヶ月)
  • 棚卸資産:4,000万円(棚卸資産回転期間:2.4ヶ月)

となりました。この条件を運転資金の計算資金に当てはめて計算すると、運転資金は6,500万円となります。売上増加前と増加後の運転資金の差は4,500万円となり、これが「増加運転資金」です。

売上が伸びると資金繰りは苦しくなる

 売上が伸びているのに資金繰りが苦しいとき、「商売はうまくいっているのになぜだろう」と思う経営者は多いものです。しかし、ここまで読んだ皆さんにはその理由がわかるはずです。
 A社の例では、経営拡大に舵を切ったことで売上が倍増し、同時に運転資金は3倍以上に膨れ上がりました。売上の増加率よりも立替資金の増加率のほうが高いのですから、資金繰りが苦しくなるのも当然です。
 A社の例は、決して極端な例ではありません。むしろ、ごく一般的な例であり、売上の拡大に伴って売掛金回転期間・棚卸資産回転期間が長くなり、買掛金回転期間が短くなることはよくあることなのです。
 主な原因は経営者の心理にあります。実際に売上が伸び、上手くいっていることに自信を抱くのですが、この自信が厄介です。売上アップを強気で目指した結果、

  • 売上を伸ばすために与信管理が甘くなり、取引先の与信限度額に見合わない枠を設定して販売した。取引先は、従来の条件では支払いが厳しいため、支払いの猶予を求めた(⇒売掛金回転期間が長くなった)
  • 新規取引先との取引を急速に増やした。契約条件の設定の際、支払い期日の設定が甘くなった(⇒売掛金回転期間が長くなった)
  • 販売先や販売数量が多くなり、仕入れの数量も増えた。仕入れの数量が増え、仕入先は回収不能に陥った際の損失が大きくなるため、できるだけ早いタイミングでの回収を図った(⇒買掛金回転期間が短くなった)
  • 販売先と販売数量が多くなり、仕入れの数量が増えた。今後も販売を増やすことに意欲を燃やしており、臨時の受注にも柔軟に対応したいと考えたため、在庫を多めに確保するようになった(⇒棚卸資産回転期間が長くなった)

 このように、売上至上主義が高まるにつれて、様々な理由によって運転資金が膨らんでいきます。増加運転資金も大きくなります。
 これが、売上が伸びると資金繰りが苦しくなる理由です。

増加運転資金の調達方法

 会社の目的は儲けることですから、売上を伸ばすことが悪いわけではありません。しかし、売上を伸ばした結果、運転資金の増加に耐えられずに資金繰りがショートすれば本末転倒です。
 そうならないために、増加運転資金の仕組みを正しく理解し、しっかりと確保していくことが大切です。
 資金調達方法には色々ありますが、増加運転資金の調達に適しているのは、銀行融資とファクタリングです。

銀行融資を受けやすい

 銀行融資は、あらゆる資金調達の軸となるものです。当然、増加運転資金の調達にあたっても、まずは銀行融資を検討すべきです。
 銀行から融資を受けるのは簡単ではなく、手間もかかる場合が多いのですが、増加運転資金の融資は比較的容易です。なぜならば、前向きな資金だからです。
 銀行が融資を検討する際には、資金使途が前向きであるか、後ろ向きであるかによって難易度が大きく変わります。銀行は、以下のような理由によって増加運転資金を前向きに考えます。

  • 売上が増えている

⇒資金需要が大きくなっている。増加運転資金を支援して融資額を伸ばしていくことで、長期的に利息収入の増大が見込める
⇒会社の成長を支援して関係を強化すれば、融資以外にも様々な取引が発生し、手数料収入などの増大が見込める

  • 売掛金や棚卸資産が増えている

⇒運転資金の増加は、売掛金や棚卸資産の増加が大きな原因になっている。つまり、増加運転資金には売掛金や棚卸資産の裏付けがある。売掛金を回収する、棚卸資産を販売するなどによって会社には現金が入ってくるため、貸し倒れリスクが低い

 もちろん、銀行が前向きに考えるには、経営者自身が増加運転資金の性質を理解し、きちんと説明できることが重要です。銀行に融資を申し入れる際、

「売上は伸びているのに、なぜかお金が足りなくて困っています。融資してください」

と説明するならば、銀行は納得しません。しかし、試算表や資金繰り表を作成した上で、

「売上がこれくらい伸びて、売掛金回転期間・買掛金回転期間・棚卸資産回転期間はこのようになりました。その結果、××万円の増加運転資金が発生したため、融資をお願いします。今後の資金繰り計画は~~~で、返済原資には問題ありません」

と説明すれば、銀行は前向きに検討してくれる可能性が高いです。

プロパー融資を狙う

 
一口に銀行融資といっても、融資には様々な種類があります。
資金使途が異なる場合、適した融資の種類が変わることもあるため、増加運転資金の調達に適した融資を選びたいところです。
増加運転資金の調達にあたり、ぜひおすすめしたいのがプロパー融資です。
プロパー融資は、信用保証協会などの保証を付けることなく、銀行が独自に融資します。
融資先の返済力を根拠に、信用によって貸し付けるのですから、銀行にとってはリスクの高い融資形態です。
したがって、プロパー融資はあらゆる融資の中で最も審査が厳しく、プロパー融資で調達できる会社は限られます。
逆にいえば、プロパー融資を出せるほどの会社は、銀行にとって優良顧客に違いありません。
そのように信用が高い会社が少ないからこそ、銀行は担保・保証による保全を重視し、融資を断念せざるを得ないことも多いのです。
融資は銀行の基幹業務ですから、安心して貸せる相手を常に探しています。
もちろん、融資額は多ければ多いほど好都合です。
増加運転資金を調達する場合、この点がポイントとなります。
増加運転資金が発生しているということは、売上が伸びているということです。
取引によって生じる売掛金の残高も伸びています。
与信管理がずさんであれば問題ですが、そうでなければ将来的に売上を回収でき、それが返済原資になります。
つまり、増加運転資金は売掛金と紐づけやすく、銀行は無担保・無保証でも対応しやすいのです。
特に、短期借入で増加運転資金を調達すれば、売掛金との紐づけが明確になるため、プロパー融資を引き出しやすくなるでしょう。
さらに、成長力が旺盛な会社では、継続的に増加運転資金が発生します。
これも銀行にとって好材料です。
上記の通り、銀行はできるだけ多く貸付け、利息収入を伸ばしたいと考えています。
成長力が旺盛な会社は、将来的に貸付額が伸びていく可能性が高く、融資外取引のうまみも増していくでしょう。
したがって、銀行はプロパー融資に積極的に対応し、取引を強化したいと考えるのです。
過去の業績を示しながら、今後の成長戦略を説明することで、増加運転資金のプロパー融資を受けられるかもしれません。
経営に問題を抱えている会社とって、プロパー融資はほとんど無縁です。
言い換えれば、経営が順調で増加運転資金が発生しているときこそ、プロパー融資を引き出すチャンスです。
「プロパー融資を一度も受けたことがない会社」と「(たとえ少額でも)プロパー融資の実績がある会社」では、銀行の印象は大きく変わります。
プロパー融資の実績を作るためにも、増加運転資金の調達はプロパー融資を狙っていきましょう。

信用保証協会の保証付融資

 
プロパー融資を受けられずとも、増加運転資金が前向きな資金であることは変わりません。
何らかの形で保全を提供すれば、増加運転資金を調達できる可能性が高いです。
銀行は、担保・保証のいずれかによって保全を図ります。
不動産などの担保資産を持っているならば、不動産担保融資で増加運転資金を調達できるでしょう。
しかし、増加運転資金の性質を考えると、保証付融資の方が適しています。
保証付融資は、信用保証協会などが債務を保証し、銀行が融資するものです。
銀行融資の一種ではあるものの、銀行はほとんどリスクを負わない形で融資できます。
なぜならば、融資先が返済できなくなった場合、信用保証協会が残債の8~10割を弁済するためです。
これにより、プロパー融資よりも格段に融資しやすくなります。
元々、増加運転資金は売上と返済を紐づけやすく、リスクが低いのです。
その上、さらに信用保証協会の保証でリスクを軽減し、なおかつ利息は得られるのですから、こんなにおいしい話はありません。
実際、増加運転資金を調達する際、銀行員から「プロパー融資は難しいので、信用保証協会を利用しましょう」と提案されることもしばしばです。
信用保証協会の保証枠は、無担保で8000万円、有担保で2億8000万円が上限となります。
ただし、必ず上限いっぱいの保証を受けられるわけではなく、保証審査によって保証上限が決められます。
保証枠の目安は、運転資金ならば月商の3ヶ月分が目安です。
平均月商1000万円の会社の場合、保証枠は3000万円となります。
保証枠の算定基準が月商であれば、増加運転資金の調達にも大きく影響します。
増加運転資金が発生している会社では売上が伸びており、保証枠も大きくなる可能性が高いのです。
平均月商が1000万円から1500万円に伸び、増加運転資金が必要になった場合、理論的な保証枠は3000万円から4500万円に膨らみます。
逆に、突発的な売上の増加であれば、保証枠にはあまり影響しません。
1ヶ月だけ売上が伸びたとしても、平均月商が大きく伸びることはなく、保証枠もさほど増えないのです。
信用保証協会の保証付融資は、突発的な増加運転資金の調達にも利用できますが、成長の波に乗っている会社には一層おすすめです。

売掛債権担保融資

 
近年、政府は売掛債権の活用促進に取り組んでいます。
その柱の一つが売掛債権担保融資です。
売掛債権担保融資は、その名の通り売掛債権を担保とする融資制度です。
日本の銀行融資では、不動産担保を重視する傾向があります。
不動産は担保価値が高く、評価も比較的安定しています。
建物は経年によって価値が減少しますが、土地は経年による影響を受けません。
土地を担保にすれば、長期融資も容易に出せるというわけです。
しかし、全ての会社が不動産担保を持っているわけではありません。
事業内容的に、不動産を持ちにくい会社もたくさんあります。
そのような会社にとって、不動産担保を重視する傾向は極めて不都合であり、資金調達の障害になっていました。
不動産担保への依存を緩和するには、担保資産の多様化が欠かせません。
そこで政府は、売掛債権担保融資の普及に力を入れているのです。
売掛債権担保融資は、売掛債権の評価に応じて融資します。
実際の評価はケースバイケースですが、担保掛目の中間値は85%です。
例えば、信用取引によって1000万円の売掛金が発生し、平均回収サイトが1.5ヶ月の場合、手元の売掛金の平残は1500万円となります。
売掛債権担保融資で増加運転資金を調達するとして、85%の掛け目を適用すると、1275万円の調達が可能です。
なぜ売掛債権担保融資が増加運転資金の調達に適しているかといえば、増加運転資金の発生は売上の増加によるものであり、手元の売掛債権も増加するためです。
また、売上を伸ばすために契約条件を妥協することもあるでしょう。
その結果、現金取引の割合が減ったり、回収サイトが長期化したりすることも多いです。
現金取引の減少も、回収サイトの長期化も、手元の売掛債権が増加することを意味します。
増加した売掛債権を担保にすることで、増加運転資金の調達可能額も大きくなるというわけです。
売掛債権の増加は資金繰りの悪化に直結するため、基本的には望ましくありません。
しかしながら、成長局面ではやむを得ないことであり、増加運転資金をいかに調達するかが重要です。
その際、売掛債権担保融資が役立ちます。

ABL

 
増加運転資金の調達に役立つのは、売掛債権だけではありません。
動産も利用できます。
動産を担保とする融資をABLといいます。
機械や車両、在庫などの動産が担保になるため、不動産を所有していない会社でも資金調達が可能です。
ABLは、増加運転資金の調達と相性がよい資金調達方法です。
繰り返す通り、増加運転資金は売上の増加によって発生します。
売上高が増加するには、取引高が増えることが前提です。
取引高が増えるということは、小売業者ならば商品の販売量が増え、製造業者ならば製造品の販売量が増えているわけです。
当然ながら、確保する在庫も増やさなければなりません。
在庫が増えると、仕入先に対する買掛金が増加します。
また、倉庫のサイズを大きくしたり、在庫管理の負担が増加したり、コスト高もつきものです。
その結果、増加運転資金が発生します。
売上が伸びるほど在庫も増え、増加運転資金は増加していくのです。
そこで役立つのがABLです。
在庫の増加が一因ですから、その在庫によって増加運転資金を調達できれば好都合といえるでしょう。
ただし、ここまでに紹介した資金調達方法に比べると、ABLはあまりおすすめできません。
というのも、ABLは日本ではあまり普及しておらず、積極的に対応してくれる銀行が少ないためです。
ABLで増加運転資金を調達したくても、取引している銀行が対応していなければ利用できません。
また、仮に対応していたとしても、増加運転資金の調達に活用できるかどうかは別問題です。
一口に在庫といってもいろいろなものがあり、担保管理が難しい場合もしばしばです。
銀行員が担保評価・管理が困難と判断すれば、融資謝絶ということにもなりかねません。
さらに、担保評価が極端に低くなることも考えられます。
実際に、ABLにおける在庫の担保掛目の中間値は25~50%が目安です。
売掛債権の担保掛目が85%であることを考えると、担保としての活用度は低いといえます。
ABLで増加運転資金を調達する際には、銀行の対応や在庫の性質を見極める必要があるでしょう。

日本政策金融公庫

 
ここまでに紹介した資金調達方法は、全て民間の銀行での調達を想定しています。
では、銀行で資金調達できない場合にはどうすればよいのでしょうか。
増加運転資金を調達したくても、銀行を利用できない会社は少なくありません。
分かりやすい例が、業歴が短い会社です。
業歴は信用の裏付けとなります。
新興業者よりも、老舗業者の方が信用されるのは当然のことです。
また、業歴があまりにも短い場合、銀行から門前払いに近い対応を受けることもあります。
銀行は返済力を重視し、慎重に審査を行います。
そのためには、過去の決算書が欠かせません。
中長期にわたる業績・財務の推移から現状を把握し、将来的な(少なくとも融資期間中の)返済力を測定した上で、融資の可否を検討するのです。
業歴が短い会社は、ごく短期間の決算書しか提出できません。
起業したばかりであれば、決算書を全く提出できないということも有り得ます。
その場合、銀行は審査のしようがなく、門前払いせざるを得ないのです。
とはいえ、業歴が短い会社ほど、増加運転資金の需要が大きいのも事実。
創業期の売上は変動しやすいもので、事業が軌道に乗るにつれて売上が伸びていくものです。
前期の決算は赤字、今期の決算は黒字という場合、単に利益率の問題だけではなく、売上が大幅に伸びているケースもあります。
当然、増加運転資金も発生するわけですが、銀行から調達できない以上、他の方法を頼るほかありません。
この場合、まずは日本政策金融公庫を検討してみましょう。
日本政策金融公庫は、政府の100%出資で運営している公的金融機関です。
民間金融機関の補完を目的としているため、銀行が対応できない融資にも対応してくれます。
もちろん、増加運転資金の調達も可能です。
日本政策金融公庫は将来性を踏まえて審査するため、創業したばかりの会社や業歴が短い会社も、事業計画さえしっかりしていれば増加運転資金を調達できます。
なお、日本政策金融公庫の国民生活事業では、融資限度額は基本7200万円、うち運転資金は4800万円です。
増加運転資金を調達する場合も、運転資金4800万円の枠で調達します。
もし、増加運転資金の需要が2000万円以下であれば、日本政策金融公庫の各支店で決済できるため審査難易度が下がります。
それ以上になると本部決済となり、多くの書類を要求されたり、融資実行までに時間がかかったりするため注意が必要です。

手形割引

 
手形取引を行っている会社は、手形割引を検討してみてください。
手形取引は、支払期日前の受取手形を銀行や専門業者に売却することで資金を調達します。
融資に比べてスピーディに調達できるため、増加運転資金の調達を急いでいる会社におすすめです。
また、手形割引は融資の一種ですから、割引料には利息制限が適用されます。
割引料を年利換算した場合、年15~20%の上限を守らなければなりません。
したがって、ローコストで増加運転資金を調達できる点もメリットです。
近年、手形の交換高は急速に減少しています。
政府が手形取引の廃止を目指しており、電子記録債権や信用取引への移行を促しているためです。
しかし、業種によっては手形取引の習慣が根強く、まだしばらくは続くことでしょう。
そのような業種の会社で増加運転資金が発生する場合、手元の受取手形も増加しているはずです。
それを割り引くことで、増加運転資金を容易に調達できます。
手形割引は、上記の融資に比べて審査のハードルが低いです。
これは、手形割引は「償還請求権あり」の契約であり、割り引いた手形が不渡りになれば、銀行や手形割引業者は買い戻しを請求できるためです。
つまり、手形割引は実質的に、受取手形を担保とした融資といえます。
さらに、手形割引の審査では、財務的に「買戻し請求に対応できるか」という点を厳しくチェックします。
この点に問題がなければ、銀行や手形割引業者はほぼノーリスクで手形を買い取ることができ、審査難易度が低いというわけです。
売上増加によって手形が増えた際には、手形割引を積極的に活用しましょう。

増加分が小さければファクタリングで対応

 売上が大きく伸びた場合には、増加運転資金も大きくなるため、銀行からまとまった資金を調達する必要があります。しかし、増加運転資金がそれほど大きくなければ融資以外の方法でも代替可能です。
 売上が微増した場合にも運転資金は増加しますが、金額的にはそれほど大きくありません。軽微な増加であれば、その都度銀行から少額の短期融資を受けるよりも、ファクタリングなどで対応すべきです。
 銀行の借入れは、一件ごとにそれぞれ返済していくものです。少額の借入れを多数抱えてしまうと返済負担も大きくなります。
 例えば、

  • 借入総額:3,000万円
  • 借入れ件数:1件
  • 返済期間:5年間

であれば、毎月の元金返済は50万円です。しかし、

  • 借入総額:3,000万円
  • 借入れ件数:6件(1件あたり500万円)
  • 返済期間:1年間

であれば、毎月の元金返済は250万円になり、返済負担が5倍にもなってしまいます。
 借入れ件数を少なくするためには、少額の増加運転資金はファクタリングなど銀行融資以外の方法で調達し、まとまった増加運転資金が発生した場合に銀行融資を利用することが大切です。
 この使い分けがしっかりできるならば、増加運転資金は怖くありません。

まとめ:増加運転資金の調達はNo.1にお任せください

 運転資金を理解しているものの、増加運転資金をあまり理解していない経営者が少なくありません。増加運転資金をよく理解せずに売上が伸びていくと、資金繰りが苦しくなるため注意が必要です。
 増加運転資金を理解し、資金調達にも備えた上で売上を拡大してくならば、会社は確実に成長できることでしょう。資金調達に備えるためにも、銀行融資とファクタリングの活用を心がけることが大切です。
 No.1では、ファクタリングだけではなく、コンサルティングサービスも提供しています。トータルサポートをご希望の方は、ぜひNo.1にご相談ください。

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