カテゴリー: ファクタリング
日本におけるファクタリングの歴史~手形割引からファクタリングへの移行期間が今!
ファクタリングは迅速に資金化できる手法ですが、過去の日本においてはあまり使われていませんでした。日本でファクタリングが積極的にビジネスの場面で使われるようになったのはここ20年くらいです。
それまでは別の方法で、期日到来前の債権を資金化していました。今回は日本におけるファクタリングのこれまでとこれからについて考えていきます。
日本のファクタリングの歴史
まずファクタリングそのものについて解説します。ファクタリングが資金調達方法として登場したのは1970年代ですが、日本においては債権譲渡登記制度ができた2005年以降に積極的に用いられるようになりました。
この15年で新しい資金調達法として定着したファクタングとはどういうものなのでしょうか?
ファクタリング (英: factoring) は、債権者(ファクタリングを申し込む人)が持っている売掛債権をファクタリング会社が買い取って、資金化する金融サービスです。
ファクタリングの歴史をさかのぼると、14世紀とも16世紀ともいわれますが、請求書の買い取りを行い資金化するサービスが始まったのは17世紀のアメリカです。
その後、信用取引(保証ファクタリングなど)の分野でファクタリングの利用が進み、現在のように早期現金化の手法として売掛債権の買い取りサービスとして安定したのが、戦前のアメリカです。
戦後、アメリカのファクタリング会社が世界に進出し、ビジネスの場面において手形取引などに変わる掛売、信用取引の手段として用いられるようになりました。
日本でファクタリングは1970年代から始まりました。しかし、後述のように日本では掛売取引については手形取引が主流であり、ファクタリングが入り込む余地がありませんでした。
売掛債権の譲渡が「経営が危ない」という風評被害を発生させ、取引先への信用低下を招くイメージがありました。売掛債権を手放すことは、自社や取引先(売掛先)の経営危機であるとほかの事業者に思われてしまう、これが社会的信用を大きく毀滅させる行為であり、歓迎されませんでした。
また、債権回収の際に信用調査を行う機関が未発達だったということも影響しています。
しかし、バブル崩壊やそこを起点とした「金融危機」の中で、手形取引によらない資金化の手法としてファクタリングが脚光を浴びることになります。債権回収についても、住宅金融専門会社(住専)問題などで。債権回収がどのようなものか認知されました。
2000年以降、21世紀に入ると、日本では様々な金融関連法が制定、改正され、債権譲渡に関する環境整備が進みます。
ネットの発展にともない、電子決済のシステムもどんどん導入され、融資や手形取引と比較して、規制の緩いファクタリングは、その(規制が緩い)メリットを活かしながら、現実の資金需要に合った形へ、常に進化しています。
これがファクタリングの歴史概略となります。日本にとっては2000年以降が、ファクタリング浸透の大きな転換点となりました。
従来の日本は手形取引がメインだった!それが請求書取引、ファクタリングへと変わっていく
従来、日本では現金によらない掛売の場合、江戸時代より手形取引がメインで行われてきました。
「通行手形」など、経済以外の分野でも「手形」という言葉が使われる中で、定形フォーマットで作成する約束手形は、日本人の気質に合っていました。
1970年代にファクタリング制度が日本に上陸しても、手形取引の地位は揺るがず、早期資金化の手段としては手形割引が使われていました。
保守的で変化を嫌う日本においては、制度の転換には「黒船」が必要です。バブル崩壊は黒船にはならず、手形法によって厳しく規定されていた手形割引がまだまだ隆盛でした。
大きな変化は、金融危機やそれと同時期に行われた法改正を待たなくてはなりませんでした。ファクタリングは民法の一般条項の規定で十分できるのですが、公的な「お墨付き」を得てようやく動き出すことになります。
債権譲渡に関する法律の改正は日本におけるファクタリング浸透の契機となる
商慣習上、売掛債権の譲渡(ファクタリング)ではなく手形取引、手形割引に特化していた日本の資金化、資金調達が変わる契機になったのが法改正です。
1998年、ちょうど住専処理問題が大きなトピックスになった直後、債権譲渡特例法が施行されます。これにより「債権譲渡登記制度」が設立されました。
それまでも民法の一般条項を根拠にファクタリングはできたのですが、売掛債権譲渡について、登記ができず、第3者に対する対抗要件となり得ませんでした。第3者が「債権譲渡について知らなかった」といえば、ファクタリングしても、売掛債権がファクタリング会社に移っていることの証明ができず、もともとの債権者が支払義務を負うことになりました。
債権譲渡登記が可能になることで、法務局で登記簿謄本を取得すれば、売掛債権の権利がファクタリング会社に移っていることがわかるようになります。
これにより債権者がよりファクタリングしやすい環境がようやく法整備されました。
また、「債権を譲渡された際、自分が債権者であるということを第3者に対して主張できる」という対抗要件は、ファクタリング会社にとっても朗報です。「自分が債権者なのだから売掛金は自社に支払ってください」と売掛先に主張できるようになりました。
1998年に債権譲渡特例法が施行されて以降、2005年に、債権譲渡登記制度が改正され、より簡便、簡潔に債権譲渡取引ができるようになりました。
また、2006年には「新会社法」が施行され、会社周りの環境が大きく変わりました。
2020年の民法(債権法)改正によって日本ではよりファクタリングしやすくなる
「ファクタリング法」などの特別法がないファクタリングは、融資などと比べて当事者間の合意によって行われ、民法の一般原則が適用される自由な法律行為ですが、その民法について、2020年に大きな手が入りました。
民法の債権法部分の改正が行われます。これは、「ファクタリング法」のような特別法ではなく、民法の一般条項を現代化するもので、その中にファクタリングにかかわる規定もありました。
2020年の民法(債権法)改正でファクタリングにかかわる大きな柱は以下の2つです。これにより日本のファクタリングはさらに前に進みます。
- 1.債権譲渡特約の撤廃
- 2.将来債権の明文化
債権譲渡特約の撤廃
2020年の民法(債権法)改正によって、債権譲渡特約が撤廃されます。債権譲渡特約の撤廃により、債権譲渡禁止特約をした売掛金契約でも、債権譲渡は有効にできるとされました(改正民法466条2項)。
売掛先と「この売掛債権(売掛金)は第3者に譲渡(ファクタリング)してはいけない、禁止する」という契約をした場合も、債権者はファクタリングできるようになります。
ただし、債権譲渡禁止特約をした売掛債権をファクタリングした事実が売掛先にバレれば、心証は最悪になります。少なくとも、債権譲渡禁止特約をしている場合、3社間ファクタリングは避けるべきです。手数料は高くなりますが、バレた時のリスクを考えると2社間ファクタリングにすべきでしょう。
将来債権譲渡の明文化
2020年の民法(債権法)改正において、ファクタリングにかかわるもう1つの柱が「将来債権」の譲渡です。
これまで日本では、金額や支払期日が決まっている「確定債権」のファクタリング、つまり請求書の買い取りがほとんどでしたが、将来債権の譲渡が可能になることで、それ以前の「注文書」や「発注書」のファクタリングも明文化され、お墨付きが得られました(2020年以前も違法ではないが明文化されておらず避けられていた)。
従来の確定債権だけではなく、将来発生する「将来債権」も譲渡できるようになりました。
将来債権とは
- 債権譲渡時に、その債権が発生していなくてもよい
- 債権譲渡時に、まだそれが発生していない場合、発生時には譲受人が債権を得る
という性質を持つ債権です。
従来のファクタリングは請求書の確定債権の譲渡がほとんどでした。2020年の民法(債権法)改正によって、請求書という確定債権だけではなく、将来債権の譲渡、ファクタリングも可能になります。
将来債権を示す帳票は、注文書や発注書であり、それぞれ「注文書ファクタリング」や「発注書ファクタリング」と呼ばれます。保守的で決められていないことはあまりしない日本ですが、将来債権の譲渡が規定されたことで、今後、注文書ファクタリングや発注書ファクタリングが増え、よりファクタリングが身近なものになっていくはずです。
ファクタリング会社は将来債権のファクタリングについても、積極的にメニューに加えてくるところが増えています。日本でよりファクタリングが身近になることの後押しをする民法(債権法)改正でした。
【ファクタリングに関する法令改正の流れ】
①1998年 債権譲渡特例法の改正
②2005年 債権譲渡登記制度の改正
③2020年 債権譲渡特約の撤廃、将来債権譲渡の明文化
手形取引の衰退、減少
従来、日本では請求書払いではなく手形取引が大手企業を中心に行われていたので、掛取引は請求書ではなく手形取引がメインでした。
しかし、手形取引は手形法によって厳しく規制されていて、手形発行にかかるコストも馬鹿になりません。規定にのっとって手形を印刷して必要事項を記入します。
また、手形取引には銀行の与信審査をクリアしないといけない決まりもあります。新しい取引先ができた場合も、与信審査が都度必要になります。クラウドソーシングなどでその都度取引先が変わる現在のビジネスに手形が合わなくなってきました。
誰でも何の審査もなく発行できる請求書を用いた資金調達=ファクタリング可能と事情が異なります。
そもそも手形取引は売掛先が不渡り2回で事実上倒産というペナルティもあるため、非常に厳格に運用されています。回収漏れは売掛先の倒産に直結します。しかし、ネットの普及により、比較的容易に売掛先の信用調査ができるようになり、請求書払い、ファクタリングでもよいではないか?と考え方が変わるようになったのです。
支払手形の発行残高はそのような事情もあり、年々減っています。
1990年度の約107兆円をピークに減少傾向で、近年は約25兆円前後と4分の1になっています。逆に請求書払いは年々利用者数が増えています。
今後の日本におけるファクタリングを展望する
以上のような事情もあり、日本における掛取引は手形からファクタリング可能な請求書払いへと変わってきています。
「ファクタリング法」のようなものはないものの、民法でファクタリングに関係する条項の整備が進む中で、今後の日本におけるファクタリングはどうなるのでしょうか?
日本のファクタリング利用者は上昇中!今後も増えていく可能性高し!
まず日本におけるファクタリング利用額の推移を見てみましょう。
FCI「Total Factoring Volume by Country in the Last 7 Years (in million of Euros)」
による統計資料では、2019年までの日本のファクタリング市場規模について以下のようにまとめています。
<下記の数字単位は「万ドル」>
年 | 日本のファクタリングの市場規模(万ドル) |
---|---|
2013 | 77,255 |
2014 | 51,072 |
2015 | 54,184 |
2016 | 49,466 |
2017 | 37,284 |
2018 | 48,384 |
2019 | 49,466 |
2019年で約5億ドル。現在のレート(2023年8月)に換算すると約7兆市場になります。そして、2020年からの新型コロナウィルス、2022年からのロシアによるウクライナ侵攻があり、世界経済は大きく混乱しています。つなぎ資金を調達するためにファクタリング利用者が増えました。
2020年以降のファクタリング市場は、民法(債権法)改正も相まって、日本ではかなり拡大していることが予想され、今後もこの流れは維持されるでしょう。
融資以外の資金調達を推進するという政府の方針
また政府の方針として、中小企業に対して
- 売掛債権を資金の調達方法として活用することの推奨
- 融資以外の資金供給を促す
という2つの方針があります。
前者では動産担保融資(ABL)の積極的活用が金融庁によって各銀行へ通達が出されています。
また、後者については「ABCP」(アセットバックド コマーシャルペーパー プログラム)という売掛債権の証券化推進プログラムが該当します。
ABCPを行うことで、売掛債権を早期に資金化できるのと、資金調達方法に多様性が出ます。
従来の銀行融資(不動産担保)だけではない多様な資金化を政府が後押しする流れは今後も続きます。
「売掛債権の資金調達への利用」「融資以外」という2条件を満たすファクタリングは、まさに政府方針と合致しているのです。
従来の融資とは異なる多様な新しい資金調達方法を政府が促すことで、中小企業の倒産、経営破綻を避けること、市場規模の拡大双方に寄与しています。
IT化、オンライン化によってファクタリングが気軽に利用できるようになる
コロナの影響で、ZOOMなどITツールが社会的に浸透しました。ファクタリングは融資ではないので、銀行法や貸金業法の規定に縛られません。
審査時の面談についても、ZOOMなどを用いたオンライン面談が可能になりました。これにより、より資金化までのステップが短縮されました、
日本全国、どこに住んでいてもどこのファクタリング会社へ申し込むこともできるようになり、ファクタリングの機会が増えました。融資の場合は最寄りの店舗での申し込みというところが少なくありませんが、「最寄り」が遠い方もいますし、昨今の店舗削減の影響もあります。
人口減の日本社会において、資金化へのアクセスが近いのは融資よりもファクタリングという時代になってくるのでしょう。
柔軟に契約できるファクタリングのニーズは今後高まります。ファクタリングは融資ではないので、信用情報照会がないのもメリットがあります。
民法改正などで日本のファクタリング環境が改善中!No.1のファクタリングに相談してみよう
以上、日本におけるファクタリングの昔、今、未来について解説しました。2000年位まではまったく使われていなかったファクタリングですが、債権譲渡に関する法規定の整備や外部環境の変化もあり、かなり利用されるようになってきました。
今後も衰退が予想される金融機関の融資とは逆に、ファクタリングは機動性があるため見通しが明るい部分もあります。手形割引も使いづらく、数字としてもファクタリングへ乗り換えていることがわかります。
日本でのファクタリングは現在法規制の動きはなく、いわゆる「給料ファクタリング」について最高裁判決(判例)で融資とみなすというものが出ているくらいです。事業者様のファクタリングは融資ではないので、銀行法などは適用されません。
「株式会社No.1」によるファクタリングは、豊富なメニューと確かな実績で業界の中でも評価されています。日本のファクタリング会社の中でもパイオニア的存在で、その実績は誇れます。
まずファクタリングを利用してみたいという方はぜひNo.1のファクタリングにお問い合わせください。欧米に続いて日本でもファクタリングが資金化の重要な方法になる時代がそこまで来ています。
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