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ファクタリングと保険の違いとは?徹底比較で使い分けが見えてくる
大抵の場合、ファクタリングは売掛金の早期資金化を意味しますが、ファクタリングには色々な種類があります。
例えば、売掛金の支払保証を受ける保証ファクタリング。
ファクタリングは、種類によっては保険としても使えるのです。
このため、「ファクタリング≒保険」と考えてしまう人もいますが、ファクタリングと保険は全くの別物です。
この違いを明らかにするためにも、ファクタリングと保険の仕組みや特徴を徹底比較し、使い分けについても詳しく解説します。
ファクタリングとは?
ファクタリングは、日本では比較的新しい資金調達方法です。
世界的にみれば古い歴史がありますが、日本ではここ数年で急速な普及を見せています。
ファクタリングと保険の違いを理解するためにも、まずはファクタリングの基礎知識を解説します。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングは、会社が所有している売掛金を売却する資金調達方法です。
売掛金は、取引先と信用取引をすることによって発生する売掛債権であり、支払期日に代金を受け取る権利を意味します。
貸借対照表では「資産の部」の『流動資産』に分類されるため、ファクタリングは資産の売却による資金調達方法といえます。
売掛金の売却先は、ファクタリングを専門とする業者や、業務の一環としてファクタリングを手掛ける金融機関・ノンバンクなどです。
売掛金という資産の売却によって資金調達することから、ファクタリングは内部資金調達に含まれ、資産価値(売掛金の価値)に応じて資金を調達できます。
つまり、自社の経営状況に関係なく、手元に売掛金さえあれば価値相応に資金を調達できるのが大きな特徴です。
銀行や貸金業者から融資を受ける場合には自社の信用力、特に経営状況と返済力が資金調達の鍵となります。
経営に何らかの問題を抱えている会社は、融資を拒否されて資金を調達できない可能性が高いです。
したがってファクタリングは、融資を受けられない会社でも資金を調達できる方法として注目されています。
中小企業に資金調達の多様化を促すべく、政府もファクタリングの普及促進に力を入れています。
買取ファクタリングと保証ファクタリング
一口にファクタリングといっても、ファクタリングには二つの類型があります。
すなわち「買取型」と「保証型」です。
ファクタリングと保険の違いを正しく知るには、「ファクタリングと保険の違い」をざっくりと捉えるのではなく、「買取型のファクタリングと保険の違い」「保証型のファクタリングと保険の違い」を知ることが欠かせません。
買取ファクタリングとは?
買取型のファクタリング(以下、買取ファクタリング)は、ファクタリング会社に売掛金を買い取ってもらうファクタリングです。
ファクタリングの類型はふたつあるものの、現在の日本では買取ファクタリングが圧倒的に普及しています。
実際に、金融庁はファクタリングを以下のように定義しています。
一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
出典:出典:金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」
単に「ファクタリング」と記載されている場合にも、ほとんどは買取ファクタリングの意味で捉えて差し支えありません。
保証ファクタリングとは?
保証型のファクタリング(以下、保証ファクタリング)は、ファクタリング会社に売掛金の支払保証を依頼し、貸し倒れに備えるためのものです。
買取ファクタリングが「売掛金の売却による資金調達」を目的とするのに対し、保証ファクタリングは「売掛金の保証による貸し倒れリスクの回避」を目的としています。
買取ファクタリングは、銀行系・ノンバンク系・独立系の様々なファクタリング会社が提供していますが、保証ファクタリングは主に銀行系・ノンバンク系のファクタリング会社が取り扱っています。
一般的に、保証ファクタリングは「保険のような機能を持つファクタリング」と考えます。
買取ファクタリングと保証ファクタリングを比較する上では、「保証ファクタリング=保険」と考えても問題ありません。
しかし、厳密には保証と保険は異なるため、比較する上では「保証ファクタリングは保証ファクタリング、保険は保険」と考えることが重要です。
ファクタリングの方式は3つ
このほか、ファクタリングの方式は3つです。
大別すると2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2方式があり、さらに2社間ファクタリングの派生形としてオンラインファクタリングが普及しつつあります。
方式別の簡単な違いは以下の通りです。
- 2社間ファクタリング:ファクタリングの利用会社(以下、利用会社)とファクタリング会社の2社間で取引する方式
- 3社間ファクタリング:利用会社、ファクタリング会社、売掛先の3社間で取引する方式
- オンラインファクタリング:2社間ファクタリングの取引を全てオンラインで行う方式
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの決定的な違いは「売掛先の関与」にあります。
2社間ファクタリングは、利用会社とファクタリング会社の2社間で取引するため、売掛先が一切関与しません。
このため、手続きが簡単である、スピーディに契約できる、売掛先の信用悪化を回避できるといったメリットがあります。
買取ファクタリングの場合、2社間ファクタリング・3社間ファクタリングのどちらかを選ぶことができます。
ただし、圧倒的に利用率が高いのは2社間ファクタリングです。
保証ファクタリングには3社間ファクタリングが存在せず、2社間ファクタリングの一択となります。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは、売掛先が必ず関与する方式です。
資金を調達するには、売掛先に対する債権譲渡通知・承諾の手続きが必要となるため、売掛先の協力が得られなければ利用できません。
また、3社間取引が成立するまでの手続きも煩雑であり、手間と時間がかかるのもデメリットです。
ただし手数料が安い、ファクタリング会社の安全性が高いといったメリットもあります。
オンラインファクタリング
オンラインファクタリングは、2社間取引を全てオンライン化した仕組みです。
従来の2社間ファクタリングよりも好条件で利用できるため、徐々に普及率が高まっています。
ただしオンラインファクタリングは、3社間での買取ファクタリング、保証ファクタリングには対応していません。
ファクタリングと保険の違い
ここからは、ファクタリングと保険の違いについて解説します。
保険といえば、生命保険、自動車保険、火災保険、地震保険などを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、この記事で取り上げるのは取引信用保険です。
したがって、この記事で単に「保険」と表記したものは、すべて取引信用保険を意味するものと考えてください。
取引信用保険とは?
取引信用保険を正しくイメージするために、東京海上日動の手掛ける「国内取引信用保険」の説明をみてみましょう。
国内取引信用保険とは、国内に所在するお取引先が商品の販売やサービスの提供にかかわる代金支払債務を履行しないことで、お客様(被保険者)が損害を被った場合に、その損害の一定割合を保険金としてお支払いする保険です。原則として継続的なお取引先を対象とします。
出典:出典:東京海上日動「国内取引信用保険」
この説明にある通り、取引信用保険は売掛金が回収できなくなった場合に保険金を受け取ることができるサービスです。
したがって、買取ファクタリングと保険には明確な違いがあります。
ややこしいのは保証ファクタリングと保険の違いです。
実際、保証ファクタリングと保険は類似性が極めて高く、細かく比較しなければ違いが分かりません。
そこで、買取ファクタリングと保険の違い、保証ファクタリングと保険の違いをそれぞれみていきましょう。
買取ファクタリングと保険の違い
では、ファクタリングと保険にはどのような違いがあるのでしょうか。
まずは買取ファクタリングと保険の違いからみていきましょう。
利用の目的
買取ファクタリングと保険の最大の違いは「利用の目的」にあります。
買取ファクタリングは「資金調達」が目的であるのに対し、保険は「貸し倒れリスクの回避」が目的です。
もっとも、買取ファクタリングには資金調達以外にも様々なメリットがあり、後述の通り貸し倒れリスクの回避にも役立ちます。
とはいえ、買取ファクタリングの利用動機が「資金調達」であることは間違いありません。
一方、保険はあくまでも保険であり、保険をかけたところで資金を調達することは不可能です。
契約する相手
契約する相手、つまりサービスの提供元はどうでしょうか。
買取ファクタリングは多くの業者が提供しています。
特に近年、ファクタリング市場の急速な成長に伴い、新規開業のファクタリング会社が後を絶ちません。
大部分は独立系の中小ファクタリング会社ですが、銀行や大手金融サービスがファクタリング事業に参入するケースも増えています。
したがって、買取ファクタリングは様々なファクタリング業者から選ぶことができます。
方式別の契約先は以下の通りです。
- 2社間ファクタリング…取引に関与するのは利用会社とファクタリング会社の2社のみ。したがってファクタリング会社が契約先となる。
- 3社間ファクタリング…利用会社・売掛先・ファクタリング会社の3社間で取引するため、契約先は売掛先・ファクタリング会社の2社となる。
一方、取引信用保険を取り扱っているのは損害保険会社だけです。
ただし、その他の金融サービスが保険の仲介を行うケースもあります。
買取ファクタリングのように、多くの中から契約先を選べるわけではありません。
また、同じ取引信用保険でも、ケースバイケースで契約の仕組みが異なります。
代表的なケースは以下の2つです。
- 損害保険会社が取り扱う取引信用保険に直接申し込み、契約を結ぶケース
- その他の金融サービス事業者が仲介する取引信用保険に申し込み、損害保険会社と包括保険契約を結ぶケース
どちらを利用した場合にも、保険としての機能は変わりません。
利用コスト
利用にあたって気になるのがコストです。
買取ファクタリングを利用する際には手数料を、取引信用保険を利用する際には保険料を支払います。
他の資金調達方法に比べて、買取ファクタリングの手数料は高めに設定されています。
方式別の手数料率の相場は以下の通りです。
- 2社間ファクタリング:額面金額の10~30%
- 3社間ファクタリング:額面金額の1~10%
- オンラインファクタリング:額面金額の10%以下
例えば、1000万円の売掛金を手数料率10%でファクタリングする場合、支払手数料は100万円になります。
これに対し、取引信用保険の保険料は年率にして1~3%程度です。
契約時に取り決めた保険期間中、毎月保険料を支払います。
保険をかける売掛金が1000万円、保険料が年2%とすると、年間の保険料は20万円。
買取ファクタリングと保険はそもそもの目的が異なるため、費用対効果を一概に比較することはできません。
しかしながら、コスト面で大きな違いがあることは事実です。
資金を受け取るタイミング
次に、利用した際に資金を受け取るタイミングを比較してみます。
買取ファクタリングで資金(買取代金)を受け取るのは、契約手続きが完了したタイミングです。
申し込みから入金までのスピードは、ファクタリング方式によって以下のように異なります。
- 2社間ファクタリング:最短即日
- 3社間ファクタリング:最短1週間程度
- オンラインファクタリング:最短数時間
このことから、買取ファクタリングはスピーディに資金調達できることが大きなメリットとされています。
これに対し、取引信用保険で資金(保険金)を受け取るのは、保険をかけた売掛金が回収できなくなったタイミングです。
ここでいう「回収不能」とは、売掛先が倒産した場合や、支払いが遅延した場合を意味します。
場合によっては、保険金を受け取るまでに長い時間を要することも珍しくありません。
コストを支払うタイミング
買取ファクタリングと保険では、コストを支払うタイミングも異なります。
買取ファクタリングの基本的な流れは「申し込み→審査→契約→入金」です。
審査によって手数料率が決まるわけですが、この手数料は入金と同時に差し引きます。
例えば1000万円の売掛金を手数料率10%でファクタリングする場合、手数料100万円をあらかじめ差し引いた900万円が入金されます。
したがって、買取ファクタリングでコストを支払うタイミングは「入金時」の1回だけです。
これに対し、取引信用保険で保険料を支払うタイミングは毎月です。
審査によって決定した保険料(年率)を月ごとに分割し、毎月支払います。
1000万円の売掛金に対して年率1.2%で保険をかける場合、年間の保険料は12万円、月ごとに支払う保険料は1万円となります。
実際に保険金を受け取るかどうかにかかわらず、保険期間中は支払いを続けなければなりません。
審査の難易度
審査難易度も大きな違いです。
基本的に、買取ファクタリングの審査難易度は低く、保険の審査難易度は高いと考えてください。
政府が、銀行融資の補完としてファクタリングを推奨していることからも分かる通り、買取ファクタリングの審査は銀行融資に比べて圧倒的に低いです。
現在、ファクタリングに関する法整備が不十分であり、手数料率の上限規制もありません。
買い取る売掛金によって、ファクタリング会社が自由に手数料を決めることができます。
当然ながら、「リスクが高い売掛金は手数料を高く設定する」「リスクが低い売掛金は手数料を低く設定する」といった調整も可能です。
条件設定次第でかなり幅広く買取可能ということですから、審査難易度の低さがよくわかります。
一方、保険の審査難易度は非常に高いです。
このことは、取引信用保険の保険料を考えると分かりやすいでしょう。
保険会社は、年率1~3%程度の保険料で売掛金の支払いを保証するのです。
1000万円の売掛金に対して保険料2%であれば、年間の売上は20万円。
もしこの売掛金が回収不能になった場合、1000万円の保険金を支払うことによって、保険会社は980万円の損失を被ります。
同じく保険料2%の条件で980万円の損失を回復するには、4億9000万円の売掛金に対して1年間にわたり保証を請け負う必要があります。
このようなリスクを避けるためにも、保険会社は厳しく審査を行い、安全性が極めて高い売掛金でなければ受け付けません。
保証ファクタリングと保険の違い
買取ファクタリングと保険は、目的が違うだけに比較も容易です。
ややこしいのは保証ファクタリングと保険の違い。
このふたつは多くの点で類似しているため、細かい点で比較する必要があります。
利用の目的
まずは利用の目的を比較してみましょう。
保証ファクタリングも取引信用保険も、売掛金の貸し倒れリスク回避を目的とする点では同じです。
ただし保険の場合、必ずしも貸し倒れに陥らずとも、保険金を受け取れる場合があります。
このイメージをつかむには、取引信用保険と保証ファクタリングの両方を手掛けている会社のサービス概要を知るのが役立ちます。
一例として、三井物産クレジットコンサルティング株式会社 の説明は以下の通りです。
【取引信用保険】
取引信用保険とは、貴社のお取引先において法的整理事由の発生または履行遅滞の発生により売上債権が回収できない場合等に、貴社が被る損害の一定部分について補償する企業向けの保険商品です。
出典:出典:三井物産クレジットコンサルティング株式会社「取引信用保険・保証ファクタリング」
【保証ファクタリング】
貴社の売上債権 (受取手形、売掛金) が一定条件下で未回収の状態になった場合に、取引先ごとに設定された保証限度額を上限として保証金をお支払する債権保全商品です。
出典:出典:三井物産クレジットコンサルティング株式会社「取引信用保険・保証ファクタリング」
両者を比較してみると、取引信用保険では「履行遅延(支払いの遅れ)」を対象としているのに対し、保証ファクタリングでは「一定条件下」を対象としています。
保証ファクタリングにおける「一定条件下」とは、「倒産(実質的な倒産状態を含む)」にほかなりません。
つまり、保証ファクタリングと保険は「どちらも売掛金に対する保険機能を目的としているものの、保証の履行事由は保険のほうがやや柔軟」という点で異なります。
履行事由
次に、保証ファクタリングと保険の履行事由を具体的に比較してみましょう。
まず、保証ファクタリングの履行事由は、保険に比べてやや厳しく設定されています。
一般的な履行事由は以下の通りです。
●破産手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始、民事再生手続開始の申立またはその他法的倒産手続の申立
●手形交換所の取引停止処分
●手形または小切手の不渡り
●任意整理着手の公表
●営業の全部の廃止、本店事務所の閉鎖(移転除く)
出典:出典:出光クレジット株式会社「商品概要」
これを見ればわかる通り、保証ファクタリングで保証を履行するのは売掛先が倒産した場合に限られます。
単なる支払い遅延は履行事由に含まれておらず、倒産(または実質的倒産)が確定するまでは保証を受けることはできません。
これに対し、取引信用保険の履行事由は以下のように考えるのが一般的です。
法的整理事由の発生…お取引先に民事再生手続の開始や会社更生手続の開始の申立があった場合等において、債務が履行されないとき。
履行遅滞の発生…お取引先が債務の弁済期日から一定期間を経過しても債務を履行しない場合において、その債務につき履行の見込みがないと判断されたとき。
出典:出典:三井物産クレジットコンサルティング株式会社「取引信用保険・保証ファクタリング」
取引信用保険における「法的整理事由の発生」は、保証ファクタリングの履行事由と同じです。
しかし取引信用保険は、保証ファクタリングでは履行事由にならない「履行(支払い)遅延の発生」も履行事由になります。
ただし、保険金が支払われるのは履行の見込みがないと判断された場合に限られるため、例えば売掛先が「1ヶ月後に支払い可能」「1年間にわたって分割払いならば支払い可能」といった場合には保険金を受け取ることはできません。
契約する相手
保証ファクタリングと保険では、契約する相手も異なります。
基本的に、保証ファクタリングを取り扱っているのは金融機関や信販会社だけです。
したがって保証ファクタリングでは、金融機関やその系列企業、あるいは信販会社などが契約先となります。
なお、保証ファクタリングは2社間ファクタリング一択のため、売掛先を含む3社間での契約を結ぶことはありません。
すでに解説した通り、取引信用保険を取り扱っているのは保険会社だけですから、契約先も保険会社となります。
利用コスト
保証ファクタリングと取引信用保険は、どちらも保険を目的に利用できる商品です。
同じ目的で利用するのですから、できるだけコストが安い方を選びたいところ。
保証ファクタリングの保証料と、取引信用保険の保険料の相場は以下の通りです。
- 保証ファクタリングの保証料…保証額に対して年率1~8%程度
- 取引信用保険の保険料…保証額に対して年率1~3%程度
このように、保証ファクタリングよりも保険のほうが低コストで利用できます。
なお、コストを支払うタイミングは、保証ファクタリングも保険もほぼ同じです。
どちらも、審査の結果に応じて保証限度額や保証期間を取り決め、保証期間中は毎月保証料を支払います。
審査の難易度
最後に、審査難易度を比較してみましょう。
保証ファクタリングと保険は、どちらも審査難易度が高いと考えてください。
買取ファクタリングとの比較でも解説した通り、保証を請け負う業者が最も重視するのは「いかに貸し倒れを避けるか」です。
当然、厳しい審査によって売掛金のリスクを精査し、貸し倒れリスクの低い売掛金に限って保証を請け負います。
保険を目的とする以上、審査が厳しくなるのはやむを得ません。
ただし、保証ファクタリングと保険ではコストが異なるため、これによって審査難易度にも差が生じます。
上記の通り、利用コストの関係は「保証ファクタリング>保険」です。
基本的に、リスクとリターンは比例するため、コストが高い(リターンが大きい)ほどリスク許容度は高く、コストが低い(リターンが小さい)ほどリスク許容度は低くなります。
この違いは、審査難易度にも大きく影響してきます。
例えば、売掛金1000万円に対して保証料率5%の場合、ファクタリング会社の売上は年間50万円。
この売掛金が回収不能になり、保証を履行した場合の損失は950万円です。
同じ売掛金1000万円に対して保険料率2%の場合、保険会社の売上は年間20万円。
この売掛金が回収不能になり、保険金を支払った際の損失は980万円です。
売上と損失の差は30万円ですが、この差は極めて大きいといえるでしょう。
なにしろ30万円といえば、保険会社が受け取る年間保険料の2.5倍にあたるのです。
収益性にこれだけの差があるのですから、審査への影響も大きいです。
利用コストだけを比較すれば、コストが低い保険を利用したいところですが、そもそも審査に通らなければ売掛金に保険をかけることもできません。
信用の高い売掛金には取引信用保険、信用にやや問題のある売掛金には保証ファクタリングといった使い分けが肝要です。
買取ファクタリングと保険を使い分けるポイント
ファクタリングと保険は様々な点で異なりますが、具体的にはどのように使い分けるべきでしょうか。
上記の比較からも分かる通り、顕著な違いがあるのは買取ファクタリングと保険であり、保証ファクタリングと保険には大きな違いがありません。
したがってほとんどの場合、使い分けに悩むのも買取ファクタリングと保険です。
そこで、買取ファクタリングと保険の使い分けについて詳しくみていきましょう。
買取ファクタリングを選ぶべきケースは?
買取ファクタリングの目的は資金を調達することです。
保険は資金調達には役立たないため、悩むまでもなく買取ファクタリング一択となります。
もっとも、買取ファクタリングは資金調達に役立つだけではなく、その他のメリットも様々です。
それらのメリットを考慮しつつ、特に買取ファクタリングが適しているケースを紹介します。
自社の経営に問題がある
買取ファクタリングと保険の比較でも述べた通り、買取ファクタリングは審査のハードルが低いのがメリットです。
したがって、経営に問題を抱えており、審査に不安を抱いている場合には買取ファクタリングが非常に役立ちます。
どれくらいハードルが低いか、具体例をいくつか挙げてみましょう。
- 銀行から融資を断られた会社でも利用できる
- 銀行に対してリスケジュール中の会社でも利用できる
- 信用情報に重大な問題がある会社でも利用できる
- 連続赤字であり、黒字転換の見通しが立っていない会社でも利用できる
- 債務超過(実質債務超過を含む)の会社でも利用できる
- 業歴が短い会社でも利用できる(創業1年未満でも利用できる)
- 税金を滞納している会社でも利用できる(可能性がある)
このような悪材料がある場合、融資による資金調達はほぼ不可能です。
しかし買取ファクタリングならば問題ありません。
これは、買取ファクタリングの審査対象が利用会社ではなく、売掛先だからです。
ファクタリング会社としては、買い取った売掛金が支払期日に満額回収できれば、収益を確保できます。
利用会社がこれらの悪材料を抱えていても、売掛先に支払能力があれば、ファクタリングというビジネスは成り立つのです。
また、ファクタリングは資産の売却であり、借入れではありません。
当然返済義務はなく、債務不履行に備えるための担保や保証も不要です。
これも、審査難易度が低い理由のひとつです。
保険は審査が非常に厳しいため、利用会社自身の問題によって審査に落ちることが珍しくありません。
スピーディに資金調達したい
買取ファクタリングは、他の資金調達方法に比べて圧倒的にスピーディです。
2社間ファクタリングの多くでは、最短即日対応を基本としています。
オンラインファクタリングはさらにスピーディで、最短数時間での資金調達も可能です。
No.1のオンラインファクタリングでも、最短60分入金の実績が多数ございます。
資金ショートが迫っているなど、早急に資金を調達しなければならない場合、買取ファクタリングがおすすめです。
保険の場合、保険金が支払われるのは回収不能が確定した後ですから、スピードはほとんど問題になりません。
ただし、手続きのスピードには要注意です。
買取ファクタリングにおける「最短即日」「最短数時間」というのは、「申し込みから入金まで最短即日(数時間)」を意味します。
これに対し、保険は申し込みから補償開始までに長い期間を要します。
実際に、問い合わせから補償開始までに5~6ヶ月、申し込みから起算しても4~5ヶ月といったケースが一般的です。
資金調達を多様化したい
買取ファクタリングは資金調達の多様化に役立ちます。
政府がファクタリングの活用を推奨しているのも、買取ファクタリングを第二の資金調達方法とすることで、銀行融資への依存度を引き下げるためです。
銀行融資以外にも資金調達方法は色々あるのですから、単に資金調達を多様化するだけならば、買取ファクタリング以外でも良さそうなものです。
しかしそうではありません。
買取ファクタリングと銀行融資は非常に相性が良いのです。
銀行融資の審査では融資先を重視するのに対し、買取ファクタリングの審査では売掛先を重視します。
このように、「資金を調達できるかどうか」の基準が異なる点に注目です。
自社の経営に問題があれば銀行融資を受けられませんが、その場合でも買取ファクタリングならば利用できます。
銀行融資が難しい時期を買取ファクタリングで乗り切ることも可能です。
では「銀行融資+保険」を組み合わせた場合、保険は資金調達を目的とするものではなく、資金調達の多様化にもつながりません。
また、利用会社の抱えている問題によって銀行融資を受けられない場合、同じ理由によって保険も利用できない可能性があります。
したがって、銀行融資と保険を組み合わせたところで、あまり意味はありません。
「銀行融資+買取ファクタリング」だからこそ、資金調達の多様化に効果的なのです。
貸し倒れリスクを回避したい
ここまでの解説から、
「資金調達には買取ファクタリングを」
「売掛金の貸し倒れリスク回避には保証ファクタリングか保険を」
とイメージしている人も多いかもしれません。
しかし、買取ファクタリングでも貸し倒れリスクを回避できます。
これは、買取ファクタリングの契約は「償還請求権なし(ノンリコース)」が原則だからです。
償還請求権とは、ファクタリングした売掛金が回収できなくなった場合に、ファクタリング会社から利用会社に買い戻しを求める権利のことです。
買取ファクタリングには償還請求権なし、つまりファクタリング会社がこの権利を有さないため、売掛金が回収不能になっても利用会社は何ら責任を負いません。
貸倒損失は全額、ファクタリング会社の負担となります。
額面金額1000万円の売掛金を手数料率15%でファクタリングした場合、利用会社が調達できる資金は850万円です。
後日売掛金が回収不能になっても、この850万円の返還を求められることはありません。
本来ならば、利用会社が1000万円の損失を被っていたはずですが、買取ファクタリングを利用したことによって貸し倒れリスクを回避できたのです。
このように、買取ファクタリングも貸し倒れリスクに役立ちます。
ただし後述の通り、債権保全効果だけを比較すると、買取ファクタリングは保険に劣ります。
買取ファクタリングが役に立つのは、あくまでも「資金調達を必要としており、なおかつ貸し倒れリスクにも対処したい場合」と考えてください。
資金繰りを改善したい
買取ファクタリングの意外なメリットは、資金繰りを改善できることです。
そもそも資金繰りが悪化する場合、多かれ少なかれ売掛金が関係しています。
売掛金が増加すれば資金繰りが悪化し、売掛金が減少すれば資金繰りが改善するのが資金繰りの原則です。
具体的には、売上の増加に伴って売掛金が増えたり、回収サイトが長期化したりすることによって資金繰りが悪化します。
逆に、売掛金の増加によって資金繰りが悪化しているならば、売掛金を減らすことで資金繰りを簡単に改善できるのです。
買取ファクタリングによって売掛金を売却すると、売却した分だけ売掛金を減らすことができます。
売却代金は現金として入ってくるため、資金繰りに使える手元資金も厚くなります。
さらに、本来の支払期日を待たずに「売掛金→現金」の流れが起こるのですから、これは売掛金の早期回収にほかなりません。
実際に、金融庁でも買取ファクタリングを「売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」と定義しています。
買取ファクタリングを利用すれば手元の売掛金が減少し、実質的な回収サイトも短くなるため、資金繰りの改善にも役立つというわけです。
保険は、回収不能時に保険金を受け取ることができますが、これはあくまでも「資金繰りの悪化防止」に役立つのであって、「資金繰り改善」に役立つわけではありません。
したがって、資金繰りを改善したい場合には買取ファクタリングを利用しましょう。
保険を選ぶべきケースは?
会社によっては、買取ファクタリングよりも保険が役立つ場合があります。
保険を選ぶべきケースを3つ紹介します。
低コストで貸し倒れリスクを回避したい
保険の目的は貸し倒れリスクを回避することです。
買取ファクタリングにも同様の効果がありますが、債権保全効果は保険の方が優れています。
これはコストの違いによるものです。
両者の債権保全効果を具体的に比較してみましょう。
額面金額1000万円の売掛金を手数料率15%でファクタリングする場合、利用会社が受け取る金額(=回収不能時にも保証される金額)は850万円です。
一方、保証額1000万円・保険料率2%の条件で保険をかける場合、回収不能時には980万円の保険金を受け取ることができます。
両者の回収率を比較すると、買取ファクタリングは85%、保険は98%ですから、債権保全効果の違いは明らかです。
資金調達を目的とせず、単に貸し倒れに備えたい場合には保険の利用がおすすめです。
金融機関の評価を改善したい
保険を利用することで、金融機関の評価を改善できます。
評価が上がる理由は主に二つ。
まず、保険を利用するためには厳しい審査に通る必要があります。
審査に通るのは信用力が高い売掛先の売掛金だけです。
つまり、保険の審査に通ったという事実は、売掛先の信用力が高い(優良企業と取引している)ということでもあります。
さらに、たくさんの優良企業と取引していることは、その会社が優れた商品やサービスを持っていること、業界内で高い信頼を得ていることの裏付けにもなります。
このような会社は、金融機関から高く評価されるものです。
次に、保険を利用している会社は、資金繰りや財務の安定性を高く評価されます。
万が一貸し倒れに陥った場合、保険をかけていない会社は巨額の損失を被り、最悪の場合には連鎖倒産に陥ります。
しかし保険をかけておけば、貸倒損失の大部分を保険金によってカバーできるため、資金繰り・財務が極端に悪化する懸念はありません。
つまり、保険によって資金繰り・財務の安定性が大きく高まり、金融機関に対する信用力も向上するのです。
買取ファクタリングでも金融機関の評価アップが期待できますが、保険に比べて効果は限定的です。
金融機関の評価アップを図るならば、買取ファクタリングよりも保険を利用しましょう。
信用調査をアウトソーシングできる
買取ファクタリングも保険も、どちらも与信管理の軽減に役立ちます。
買取ファクタリングの場合、資金調達に伴って売掛金を売却するため、与信管理の対象となる売掛金そのものが減少します。
保険の場合、手元の売掛金は減少しないものの、回収不能時に保険金を受け取れるため、貸し倒れ回避を目的とする与信管理は不要です。
しかしながら、与信管理の目的は貸し倒れの回避だけではありません。
売掛先の信用力に応じて与信限度額を設定したり、契約条件を見直したりすることも重要です。
売掛先の経営に問題がなく、信用力が高ければ与信限度額を引き上げ、自社の売上アップを図ることも可能です。
逆に、売掛先の経営環境が悪化している場合、与信限度額を引き下げたり、取引そのものを停止したり、様々な対処が求められます。
このような判断に欠かせないのが、売掛先に対する信用調査です。
ただし、継続的な信用調査は負担が大きいため、ほとんどの中小企業にとって現実的ではありません。
そこで役立つのが、外部に信用調査をアウトソーシングすることです。
保険の審査では、売掛先に対して十分な信用調査を行います。
またリスクの変動に備えるために、保証期間中は継続的に調査を行い、調査結果は保険会社と利用会社で共有されます。
つまり、保険を依頼することによって、結果的に信用調査をアウトソーシングできるのです。
買取ファクタリングの審査では、売掛先に対して入念な信用調査を行うのではなく、提出書類などの客観的事実からリスクを測定します。
したがって、信用調査のアウトソーシングには繋がりません。
ファクタリングを拒否された場合に、「この売掛先はなにか大きな問題を抱えているらしい、一度こちらで調査してみよう」といった判断ができるだけです。
信用調査に悩んでいる会社では、保険と同時にアウトソーシングしてみてはいかがでしょうか。
まとめ:ニーズによって使い分けを
ファクタリングと保険の違いについて詳しく解説しました。
ファクタリングの中でも、買取ファクタリングと保険の仕組みは大きく異なります。
双方を経営に役立てていくには、それぞれの特徴を知り、比較することが重要です。
ただし、中小企業の現実的なニーズを鑑みると、保険よりもファクタリングのほうがおすすめです。
多くの中小企業は資金繰りに余裕がなく、資金調達に悩んでいます。
その場合、保険によって将来的な貸し倒れに備えるよりも、ファクタリングによって売掛金を早期に回収し、資金の確保や資金繰りの改善を図るべきでしょう。
ファクタリングをご利用の際には、ぜひNo.1までご相談ください。
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