カテゴリー: 資金調達情報
問題点もある!ベンチャーキャピタルのデメリットとは?問題別の対策も解説
ベンチャーキャピタルからの資金調達であれば、創業間もない会社であったとしても大規模な資金の獲得も可能です。
しかも出資なので、返済をする必要はありません。
良いことしかないようにも感じてしまうかもしれませんが、もちろんマイナス面もあります。
こちらではベンチャーキャピタルのデメリットについて徹底解説します。
利用前に必ず確認して欲しいテーマなので、一度立ち止まって考えてみましょう。
もちろんベンチャーキャピタルがだめと言っているわけではありません。
利用するにしてもデメリットを知っておくことが大事なのです。
マイナス面を理解しておけば、対策もできますからね。
ベンチャーキャピタルと出資の基礎知識
ベンチャーキャピタルのデメリットを知るには、ベンチャーキャピタルと出資の基本的なことを知っておく必要があります。
まずはベンチャーキャピタルと出資について解説します。
出資とは?
会社の資金調達方法は様々です。
大きく分けると、外部資金調達と内部資金調達の二種類があります。
外部から資金を調達することを外部資金調達といい、内部(自社の内部留保)から資金を調達することを内部資金調達といいます。
ベンチャーキャピタルの出資は、外部から資金の提供を受けるわけですから、外部資金調達の一種です。
ベンチャーキャピタルなどの出資者は、出資先に資金を提供し、経営に参加します。
後述の通り、出資者はベンチャーキャピタルだけではありません。
様々な出資者がおり、それぞれ異なる目的をもって出資しています。
全ての出資者に共通するのは、出資によって利益を得ることです。
例えば、以下のようなパターンがあります。
- 出資先の上場により値上がり益を得る。
- 上場・非上場に関係なく、出資先の価値を高めて値上がり益を得る。
- 出資先の利益の中から配当金をもらう。
- 出資者と出資先の事業で相乗効果を狙い、出資者の本業の利益を高める。
このうち、ベンチャーキャピタルの出資の目的は、上場による値上がり益です。
出資のメリット・デメリット
ベンチャーキャピタルに限らず、全ての出資には共通のメリット・デメリットがあります。
出資のメリット・デメリットを簡単にみていきましょう。
出資のメリット
出資の主なメリットは以下の3つです。
- 返済義務がない。
- 会社の将来性を重視してくれる。
- 代表者個人の連帯保証が不要
出資による資金調達の最大のメリットは、返済義務がないことです。
ベンチャーキャピタルの出資も返済義務はありません。
返済義務がある融資よりも負担が小さく、資金繰りの安定に効果的です。
また、出資は過去よりも将来を重視します。
現在、経営悪化により資金調達が困難な会社でも、将来性次第で出資を受けられる可能性があります。
そして、代表者個人の連帯保証は不要です。
例外はあるものの、代表者個人のリスクは融資よりも低いといえるでしょう。
出資のデメリット
出資は、メリットが大きい反面、デメリットもあります。
出資の代表的なデメリットは以下の二つです。
- 出資者を探すのが難しく、資金調達のハードルが高い。
- 経営に干渉される恐れがある。
まず、出資者を探すのが容易ではありません。
この時点でつまずき、出資を受けられない会社も多いのです。
詳しくは後述しますが、ベンチャーキャピタルもマッチングがひとつのハードルとなっています。
そして、経営に干渉されること。
出資するということは、株主になるということです。
株主は、持ち株に応じて会社を所有するわけですから、経営に口を出すこともできます。
経営権の掌握を目的とする出資者もいるのです。
ベンチャーキャピタルの場合、このデメリットは比較的軽微ですが、経営への関与は避けられないと考えてください。
ベンチャーキャピタルの特徴
出資とは、資金を出して経営に参加することです。
銀行や貸金業者ならば、融資という形で資金を調達し、経営に参加することはありません。
しかし出資の場合、株式発行により資金を調達するわけですから、出資者が経営に参加することが前提となります。
一口に出資者といっても色々です。
この記事のテーマであるベンチャーキャピタルも、出資者のひとつです。
ベンチャーキャピタル以外にも、企業再生ファンドや事業会社、バイアウトファンド、エンジェル投資家などが出資しています。
出資者ごとに出資の目的が異なり、目的に応じて出資先や出資規模、経営への干渉度などが異なります。
ベンチャーキャピタルの目的
出資者の目的は、大まかには将来的な上場益、長期的な配当益、事業の相乗効果の三つです。
このうち、ベンチャーキャピタルは「将来的な上場益」を目的としています。
もちろん、ベンチャーキャピタルも配当益や事業の相乗効果を全く無視するわけではありません。
ベンチャーキャピタルとしても、上場までの期間中、配当益を得られるに越したことはありません。
また、ベンチャーキャピタルの出資先同士で相乗効果を目指すことがあります。
とはいえ、やはりメインの目的は上場益です。
上場の見込みがなければ、いくら配当益が得られても出資することはなく、相乗効果ありきの出資もしません。
明確に上場を志向している場合、自社とベンチャーキャピタルの方向性が一致するため、ベンチャーキャピタルの出資を受けられる可能性があります。
また、ベンチャーキャピタルがよいパートナーになってくれるはずです。
しかし、上場を考えていない会社にはこれがデメリットになります。
ベンチャーキャピタルの出資先
ベンチャーキャピタルは上場益を目的としているため、未上場の会社を出資先とします。
既に上場している会社に、ベンチャーキャピタルが出資することはありません。
もちろん、上場の見込みがあることが大前提です。
ベンチャーキャピタルという名称から、「ベンチャーキャピタルの出資先はベンチャー企業」というイメージがあるかもしれません。
しかし、「上場していない」「上場の見込みがある」というふたつの要素を満たしていれば、ベンチャー企業でなくとも出資先になり得ます。
業歴が長い会社も、ベンチャーキャピタルから出資を受けられる可能性があるのです。
これは、ある意味デメリットでもあります。
ベンチャーキャピタルが「上場の見込みあり」とみなすのは、ごく一部に限られます。
実際にベンチャーキャピタルから出資を受けられる会社は非常に少なく、狭き門なのです。
ベンチャーキャピタルの出資規模
ベンチャーキャピタルの出資は、他の出資者に比べると小規模です。
ベンチャーキャピタルの目的は上場であって、経営の乗っ取りではありません。
経営権を取得せず、基本的には出資先に経営を任せて上場を目指します。
大規模な出資により会社を支配するということはないのです。
それだけに出資金(=出資先が調達できる金額)も小さいといえます。
もっとも、これは再生ファンドや事業会社、バイアウトファンドなどに比べると小規模というだけで、それなりにまとまった資金調達が可能です。
ベンチャーキャピタルの干渉度
ベンチャーキャピタルが経営に強く干渉してくることはありません。
株主の権利は持ち株比率によって変わります。
株主であれば、経営に口を出すことができますが、口出しできる内容が大きく異なるのです。
ベンチャーキャピタルの場合、出資規模が小さく、持ち株比率も低いため、経営に干渉できる範囲は限られています。
スタッフの派遣にもさほど積極的ではなく、役員を派遣するとしても非常勤というのが一般的です。
出資を受けた後も経営の自由を確保しやすいのが、ベンチャーキャピタルの特徴でありメリットといえるでしょう。
ベンチャーキャピタルのデメリット
ベンチャーキャピタルの性質や特徴から、デメリットがおぼろげにみえてきたことと思います。
ここからは、ベンチャーキャピタルのデメリットを具体的にみていきましょう。
ベンチャーキャピタルの出資は狭き門
まず、調達難易度の高さがデメリットです。
ベンチャーキャピタルは、過去の経営実績よりも将来性で判断するため、融資を受けられない会社でも資金調達できる可能性があります。
その意味では、融資よりも資金調達しやすいといえるでしょう。
しかしながら、ベンチャーキャピタル特有の難しさがデメリットになることも事実です。
何と言っても、ベンチャーキャピタルと知り合うこと自体、ハードルが高いです。
融資ならば、近所の金融機関の支店がいくらもありますが、ベンチャーキャピタルにはこれといった窓口がありません。
ベンチャーキャピタルに直接連絡を取ることも難しいといえます。
実際、ベンチャーキャピタルの公式HPには問い合わせフォームがあるだけで、電話番号さえ書いていないことも多いです。
資金調達を必要としているものの融資を受けられず、出資で調達したいと考える会社はたくさんあります。
電話を連絡窓口にしてしまうと、そのような会社からベンチャーキャピタルに連絡が殺到することでしょう。
ほとんどは出資に値しない会社ばかりですから、ベンチャーキャピタルは電話連絡を嫌うというわけです。
問い合わせフォームから連絡しても、ベンチャーキャピタルの出資は狭き門です。
出資を依頼してきた会社のうち、ベンチャーキャピタルが実際に出資するのは全体の1~3%に過ぎません。
ベンチャーキャピタルの出資にはメリットも多いのですが、このようなハードルの高さがデメリットとなります。
当然、メインの資金調達方法にはなり得ません。
上場を目指すデメリット
ベンチャーキャピタルは、出資先が上場することで利益を得ています。
ベンチャーキャピタルの出資を受け入れるということは、とりもなおさず、上場を目指すということです。
これは、ベンチャーキャピタルのデメリットでもあります。
例えば、自社が新規事業を始めようとしており、それによって上場を目指すのであれば、ベンチャーキャピタルの出資は何ら問題ありません。
しかし上場を目指すつもりがなく、非上場のまま配当益を出し続ける、あるいは出資者を事業パートナーとして非上場のまま相乗効果を目指すといった場合、ベンチャーキャピタルは不向きです。
ベンチャーキャピタルから出資を受けた以上、自社の方針とは関係なく上場を目指さなければなりません。
自社の方針を「非上場→上場」へ変えるよう強いられることも、デメリットといえばデメリットです。
しかし、さらに大きなデメリットがあります。
それは、上場には莫大なコストがかかるということです。
上場のハードルは相当に高いもので、このハードルは年々高まっています。
というのも、投資家保護を目的とした上場企業の義務が増大しているためです。
この義務を果たすには、上場の準備段階で内部統制制度や四半期決算開示などの体制を整えなければなりません。
ベンチャーキャピタルの出資を受け、上場を目指すためのコストは、上場準備・上場時・上場後の3段階に分けて考える必要があります。
このうち、コスト面でのデメリットが最も大きいのは上場準備コストです。
内部統制システムの整備費用を初め、数千万円単位でコストがかかります。
上場準備期間によって変動するものの、一般的にはトータルで1億円超といわれるほどです。
もちろん、上場時にも数千万円のコストがかかります。
さらにデメリットといえるのが、上場後の維持コストです。
上場後も毎年数千万円のコストがかかり続け、大きな資金繰り負担になることは間違いないでしょう。
ベンチャーキャピタルは上場益が目的ですから、上場後に出資時の持ち株を売却し、株主ではなくなります。
上場前であれば、上場コストとして追加の出資を仰ぐこともできますが、上場後はベンチャーキャピタルを頼ることはできません。
もちろん、株式市場から資金を調達すればよいのですが、不特定多数の投資家に増資を乱発すれば、既存株主の反発は必至でしょう。
ベンチャーキャピタルは口を出す
ベンチャーキャピタルの出資によって資金を調達すると、株主構成が変化します。
縁故者だけで株主を構成していたところへ、ベンチャーキャピタルが入り込んでくるのです。
株主構成は経営権につながります。
ベンチャーキャピタルの持ち株比率が高まった結果、経営権を脅かされるかもしれません。
これも、ベンチャーキャピタルのデメリットのひとつです。
持ち株比率に応じた株主の権利を簡単にまとめると、以下のようになります。
- 持ち株比率1%以上…特定の事柄を株主総会の議題とするよう、取締役に請求する権利(株主提案権)
- 持ち株比率3%以上…株主総会の招集請求権
- 持ち株比率1/3超…株主総会で特別決議を拒否する権利
- 持ち株比率1/2超…株主総会の普通決議の権利(取締役の選任・解任、計算書類承認など)
- 持ち株比率2/3超…株主総会の特別決議の権利(第三者割当増資の有利発行、株式交換、株式移転、会社分割など)
ベンチャーキャピタルは、他の出資者に比べて持ち株比率を重視しません。
ベンチャーキャピタルの目的から考えても、経営権を奪うような出資はほとんどありえないでしょう(詳しくは後述します)。
とはいえ、ベンチャーキャピタルが株主となり、経営権に影響を及ぼすのは事実です。
経営に口を出されたくなければ、ベンチャーキャピタルの出資は避けてください。
望まない事業転換を迫られることも
ベンチャーキャピタルは出資をするだけではありません。
そもそも彼らの目的は出資先の事業を成長させ、上場させることにあります。
会社として大きくなってもらわなければ出資したものが取り戻せないのです。
さらにベンチャーキャピタルが行っていることはハイリスクハイリターンな投資です。
より大きな利益が出てもらわなければ困るので、彼らに「事業の成功が見込めない」と思われてしまえば大変なことになる可能性も。
彼らは株主でもあるので、その意向を無視することは極めて難しいのです。
株主には一定の発言力があるので、彼らに事業の転換を求められてしまえば従わざるを得ない、といったことも十分に考えられます。
経営者として「こんな事業を行っていきたい」といった希望を持っていたとしても、彼らに強引に事業転換を迫られてしまうかもしれません。
要は、ベンチャーキャピタルを利用すると事業の方向性が自分の考えとは関係なく変化していくこともあるのです。
経営権を奪われる可能性もゼロではない
最悪のケースですが、ベンチャーキャピタルに会社を乗っ取られる可能性もあります。
要は経営権を奪われてしまうのです。
もちろん彼らの目的は経営権を奪うことではありません。
しかし自分たちの考えが実現できない、と判断されてしまえば彼らも株主として実力行使に出てくる可能性もあるのです。
ベンチャーキャピタルが行っているのは出資です。
資金を提供してくれるのですが、そのかわりに株式を渡すことになりますよね。
その株式の持ち株割合が極めて重要です。
より大きな資金調達を行いたい場合には、多くの株式を渡さなければなりません。
多くの株式を渡してしまえば、持ち株割合に変化が出てきてしまいます。
彼らのほうが多く持つようになってしまえば、会社も彼らの意向に従わざるを得なくなってしまうのです。
最悪なのが50%を超える株式をベンチャーキャピタルに抑えられてしまうような状況です。
株主総会の普通決議が可能になり、会社の方向性の多くがベンチャーキャピタルの意の向くままとなります。
ちなみに発行済株式の3分の2以上の株式をベンチャーキャピタルに抑えられてしまうと、あなたの地位も危うくなりますよ。
株主総会の特別決議が可能になり、取締役の解任ができるのです。
それだけではありません。
会社の合併であるとか解散などの重要なことまで決められるようになるのです。
ベンチャーキャピタルのデメリットに対処するには?
ベンチャーキャピタルのデメリットを様々な角度からみてきました。
デメリットが分かれば対処も可能です。
ここからは、上記で述べたデメリットの対処法を解説します。
第三者に仲介してもらう
ベンチャーキャピタルのデメリットは、調達難易度の高さにあります。
ベンチャーキャピタルと知り合うだけでも、容易ではありません。
このデメリットに対処するには、第三者に仲介してもらうのが一番でしょう。
例えば、知り合いの経営者などからベンチャーキャピタルを紹介してもらうのです。
公式HPの問い合わせフォームから連絡するだけでは「その他大勢の出資依頼」であり、ベンチャーキャピタルが真剣に検討してくれないこともよくあります。
しかし、知り合いの紹介となれば、少なくともその他大勢の出資依頼ではなくなります。
「ベンチャーキャピタルと知り合う」というハードルを超えるだけでも、このデメリットは大幅に解消されるでしょう。
仲介してくれる知人がいなければ、スタートアップ企業向けの交流会に参加するのがおすすめです。
ベンチャーキャピタルは、常に有望な出資先を探しており、このような交流会に参加しています。
交流会でベンチャーキャピタルと名刺を交換し、アプローチすると良いでしょう。
また、ベンチャーキャピタル同士には横のつながりがあるものです。
ベンチャーキャピタル1社とつながれば、そこから別のベンチャーキャピタルを紹介してえることもあります。
ベンチャーキャピタルが仲介者になってくれれば、調達難易度のデメリットはさらに解消されるはずです。
例外的なケースとして、マスコミが仲介の役割を果たすケースがあります。
マスコミに取り上げられたことで、ベンチャーキャピタル側からアプローチを受けるケースが実際にあるのです。
もっとも、マスコミに記事を書いてもらうこと自体がひとつのハードルになるため、デメリットの対処法としてはあまりおすすめできません。
ベンチャーキャピタルから出資を受けたい会社は、第三者からの仲介を受けることでデメリットの対処を図りましょう。
上場を目指したくない会社は他の資金調達方法を
ベンチャーキャピタルの出資を受けることは、上場を目指すことにほかならず、デメリットにもなります。
このデメリットに対処するには、上場コストを織り込んで慎重に検討し、上場を目指したくない会社は他の資金調達方法を模索することです。
まず、ベンチャーキャピタルの出資を受け入れる前に、上場によって得られるメリット・デメリットをよく検討しなければなりません。
一旦出資を受け入れてしまうと、ベンチャーキャピタルに株主権が発生し、上場を目指さないわけにはいかなくなります。
ベンチャーキャピタルから出資を受けたばかりに、望まぬ上場を強いられる会社も実際にあるのです。
上場準備・上場時・上場後のコストを見積もり、それを回収できるだけのリターンが得られるかどうかを考えてください。
検討の結果、非上場を貫くと決めたならば、その時点でベンチャーキャピタルの出資は諦め、他の資金調達方法を模索します。
同じ出資でも、個人投資家や事業会社ならば、上場を目指さずに出資を受けられるかもしれません。
また、出資以外の資金調達方法も検討してみましょう。
会社の資金調達方法は銀行融資を軸とすべきですが、銀行融資を受けられない会社も多いです。
その場合、自社の内部から資金調達を図ります。
一例として、売掛金の早期資金化は調達難易度が低く、融資を受けられない会社でも調達可能です。
信用取引を行っている以上、手元には売掛金があるはず。
その売掛金の信用に応じて、いつでも簡単に資金調達できるのです。
自社に適した資金調達方法をみつけ、ベンチャーキャピタルのデメリットを避けてください。
出資時の交渉を念入りに
ベンチャーキャピタルが経営に口を出してくることも、デメリットとなります。
このデメリットを回避し、自社の経営の自由を確保するためにも、ベンチャーキャピタルの持ち株比率を抑えながら出資を受けるのが理想的です。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける流れを簡単に示すと、以下のようになります。
- ベンチャーキャピタルへのアプローチ
- 出資検討先の現状調査
- 出資条件の検討・交渉
- 出資契約・払い込み
- 出資後の体制整備
重要なのは3です。
ここでは、現状調査を踏まえて、出資先とベンチャーキャピタルの間で支援条件を検討し、交渉します。
出資額と保有比率が決まるのもここです。
出資希望額が小さければ、経営権への影響も軽微でしょう。
しかし、自社の希望額が大きすぎる場合、ベンチャーキャピタルの持ち株比率が高くなり、経営への影響度も増します。
このデメリットを避けるには、計画そのものを見直して出資額を抑えるか、前提条件の工夫によってベンチャーキャピタルの影響を抑えるべきです。
ベンチャーキャピタルとの交渉では、資産の処分やリストラ、現在の役員・社員の処遇などを必ず取り決めます。
受け身で交渉すれば、ベンチャーキャピタルの持ち株比率は高まり、経営への干渉を防ぐ手立てもなく、デメリットは高まるばかりです。
必要に応じて専門家の協力も仰ぎつつ、積極的な姿勢で交渉することでデメリットを抑えましょう。
ベンチャーキャピタルに事業転換を迫られたら?
ベンチャーキャピタルのデメリットに「経営への干渉」があり、事業転換を迫られる恐れがあります。
もっとも、このデメリットはさほど重大ではありません。
そもそも、ベンチャーキャピタルが出資に応じたのは、出資先の事業内容に上場の可能性を見出したからです。
既存の事業にお金を出したのであって、その事業を大きく転換することは考えていません。
「上場できる」と見込んだ既存事業が頓挫し、出資先に事業転換を迫るならば、それはベンチャーキャピタルの見込み違いにほかならず、その時点で出資は失敗といえます。
ベンチャーキャピタルの出資は全てが成功するわけではなく、むしろ大部分が失敗に終わります。
その場合、事業転換によって上場できる可能性があれば、ベンチャーキャピタルが事業の転換を迫ることもあるかもしれません。
しかし、当初の出資段階で吟味に吟味を重ね、その上で失敗しているのですから、事業を転換したところで、結果はやはり失敗ということがほとんどでしょう。
失敗に失敗を重ねて損失拡大を招くよりは、早めに損切りに踏み切るというのが投資家の通念です。
買取請求権付きの出資であれば、会社や代表者に株式の買い戻し(出資金の返還)を求めます。
そうでなくとも、株式の譲渡先が見つかればさっさと手を引くのが普通です。
つまり、ベンチャーキャピタルに事業転換を求められることは少ないといえます。
ベンチャーキャピタルが口を出すのは、事業転換のような大きなものではなく、事業の修正に関することが多いです。
事業転換を迫られるデメリットは、あまり深刻に考える必要はありません。
強いて言えば、出資前の交渉段階で条件を念入りに打ち合わせることで、このデメリットを未然に防ぐことができます。
ベンチャーキャピタルは乗っ取りとほぼ無縁
ベンチャーキャピタルのデメリットとして、乗っ取りの危険を述べました。
しかし、これは「乗っ取りの可能性もゼロではない」というだけです。
実際のところ、ベンチャーキャピタルは乗っ取りとはほぼ無縁であり、取るに足らないデメリットと考えてよいでしょう。
一部には、乗っ取りの危険をベンチャーキャピタルのデメリットとして挙げ、注意を促す意見もあります。
このような意見は、ベンチャーキャピタルとバイアウトファンドを混同しているケースが大半です。
バイアウトファンドは、「ハゲタカ」などとも呼ばれる出資者です。
バイアウトファンドは、経営不振で資金調達に行き詰まっている会社をターゲットとして、株式を安く買いたたく形で大量の資金を注入します。
経営権を握った後、短期間で経営改善や事業転換などに取り組み、企業価値が高まったところで売り抜け、利益を得るのです。
ベンチャーキャピタルは、バイアウトファンドとは大きく異なります。
そもそも、ベンチャーキャピタルの目的は上場益であり、バイアウトではありません。
このことは、両者の出資先を比較するとよくわかります。
まず、バイアウトファンドは、それなりに成熟した会社に出資します。
起業したばかりのベンチャーに出資して経営権を握ったところで、事業を軌道に乗せるだけでも一苦労です。
それよりも、すでに成熟している会社に出資し、大化けは期待せず、当たり前の価値向上によって利益を目指します。
中小企業庁の実態調査(2022年)をみても、バイアウトファンドの出資先は、出資決定時点で売上10億円以上の会社が96%を占めています。
一方、ベンチャーキャピタルはこれから成長していく会社に出資し、大化け(上場)による利益を目指すため、むしろ成熟していない会社のほうが何かと好都合です。
実際に、ベンチャーキャピタルの出資先は、出資決定時点で売上0円の会社が約45%を占めています。
巨額の出資によって乗っ取るならば、もう少しましな出資先があるはず。
出資先の売上の規模だけを比較しても、ベンチャーキャピタルとバイアウトファンドが明らかに違うことが分かるでしょう。
もちろん、実際にベンチャーキャピタルから経営権を握られるケースもないわけではありません。
例えば、追加調達のためにベンチャーキャピタルに第三者割当増資を繰り返すうちに、ベンチャーキャピタルの持ち株比率が高まっていき、経営権を握られるパターンです。
とはいえ、この場合もベンチャーキャピタルが乗っ取りを目的としているわけではありません。
ベンチャーキャピタルが乗っ取りを図ることは基本的になく、デメリットへの対処も不要です。
まとめ:ベンチャーキャピタルのデメリットが気になる方はNo.1までご相談を
この記事では、ベンチャーキャピタルのデメリットについて詳しく解説しました。
ベンチャーキャピタルのデメリットは、出資をうけることで生じます。
そもそも出資を受けなければ、上場を目指す必要もなければ、経営に干渉されることもないのです。
銀行融資を受けられず、資金調達のためにベンチャーキャピタルの出資を考えているならば、デメリットを踏まえて慎重に検討してみましょう。
資金調達方法は、融資や出資だけではありません。
融資を受けられずとも、ベンチャーキャピタルに出資を仰がずとも、売掛金を早期資金化することで簡単に資金を調達できるのです。
No.1でも売掛金の買い取りに対応しています。
また、資金調達・資金繰りを専門とするコンサルタントも多数在籍しており、お客様に最適な資金調達方法の提案も可能です。
ベンチャーキャピタルのデメリットでお悩みの方は、No.1までお気軽にご相談ください。
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ご不明点やご質問はお気軽にお問い合わせください。
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