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売上債権回転率とは?計算式や目安について解説
売上債権回転率とは、企業が保有する売掛債権をどれだけ効率よく回収できているかを示す重要な指標です。この回転率が高いほど、売掛金の回収がスムーズに進んでおり、キャッシュフローの健全性にも好影響を与えます。一方で、回転率が低い場合は、回収に時間がかかっている、もしくは管理が行き届いていない可能性があるため注意が必要です。
売上債権の回収期間が長引くと、資金繰りに影響を及ぼし、日常の業務や新たな投資の制約にもつながります。したがって、企業は自社の売上債権回転率を常に把握し、業界の平均や自社の過去データなどの目安と比較しながら、定期的な見直しと改善を図ることが求められます。
また、売上債権の管理業務には、請求から回収、消込、さらには債権回収のための手続きまで、多くのステップが含まれます。これらを効率化するためには、体制の整備や専門ツールの導入など、戦略的な取り組みが欠かせません。
本稿では、売上債権回転率の概要や算出方法、改善のためのポイントについて、わかりやすく解説していきます。
売上債権回転率とは?
会社の収益力を測る指標のひとつに「売上債権回転率」があります。売上債権回転率とは、売上高に占める売上債権の比率です。
資金繰りに大きな影響を与えるほか、銀行融資でも重視されるため、しっかり理解しておくべき指標です。
売上債権回転率の計算方法
売上債権回転率の計算は簡単です。計算式は、
売上債権回転率=年間の売上高÷期末時点の売上債権
です。なお、期末時点の売上債権を計上する際には、
- 支払い期日前に手形割引によって現金化した受取手形
- 支払い期日前にファクタリングによって現金化した売掛金
などは差し引くことに注意しましょう。
基本的な考え方
「売上債権回転率」というと、このキーワードに馴染みがない人や、会計や経営分析に苦手意識がある人などには難しく感じられるかもしれません。しかし、考え方は簡単です。
まずは、
- 売上債権回転率は高いほど良く、資金繰りもラクになる
- 売上債権回転率が低いほど悪く、資金繰りに苦労する
と考えてください。「高ければ良い、低ければ悪い」が基本です。ただし、業種によって目安が異なるため、以下の目安も合わせて考えるのがポイントです。
売上債権回転率の目安
令和元年の中小企業実態基本調査をもとに目安を計算すると、業種別の売上債権回転率は以下の通りです。
業種 | 売上債権回転率 |
製造業 | 5.75 |
卸売業 | 6.56 |
情報通信業 | 6.75 |
運輸業、郵便業 | 7.85 |
建設業 | 9.07 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 9.55 |
不動産業、物品賃貸業 | 10.77 |
小売業 | 14.44 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 34.93 |
宿泊業、飲食サービス業 | 47.52 |
この表では、売上債権回転率の低い順(売上債権回転率が悪い順)に並べています。業種によって、売上債権回転率に大きな差が生じていることが分かるでしょう。
自社の売上債権回転率が適正水準であるかどうかを考える際には、この表を参考にしてください。目安より高ければ同業他社より資金繰りが良い、目安より低ければ同業他社より資金繰りが悪いと考えられます。
売上債権回転率の具体的な考え方
なぜ、売上債権回転率が高ければ良く、低ければ悪いといえるのでしょうか。これは、実際の資金繰りと合わせて考えると分かりやすいです。
売上債権回転率が低い場合
売上債権回転率が低いということは、売上高に占める売上債権の比率が大きいということです。
極端な例ですが、売上債権回転率が1ならばどうでしょうか。これは、売上高と売上債権の金額が一致している状態です。
上記の通り、売上債権回転率は「年間の売上高」と「期末の売上債権」によって計算します。売上債権回転率が1である、つまり年間の売上高と期末の売上債権が一致しているということは、
「年間に売り上げた代金が、期末時点で全く回収できていない」
ということを意味します。
この場合の資金繰りを考えると悲惨です。「売上高=売上債権」ということは現金収入がゼロです。取引は全て信用取引であり、取引によって生じた売掛金や手形が全く回収できていないのですから、全くお金が入ってこないまま資金繰りを回さなければなりません。
事業の継続には運転資金が必要ですから、お金は確実に出ていきます。売上が発生する裏では、仕入費用や製造コスト、光熱費や倉庫・オフィス賃料、人件費などあらゆる支出が発生しているのです。
これでは、資金繰りが破綻するのも時間の問題でしょう。
売上債権回転率が高い場合
逆に、売上債権回転率が高い状態を考えてみましょう。この場合、売上高に占める売上債権の比率が小さいために、売上債権回転率が高くなります。
例えば、売上債権回転率が12ならばどうでしょうか。
年間の売上高が1億2,000万円、期末の売上債権が1,000万円であれば、売上債権回転率は12になります。つまりこの会社では、
「平均で月商1,000万円を売り上げており、毎月1,000万円を安定して回収している(年間の回収は12回、売上債権の回収サイトは平均1ヶ月であった)」
ということが分かります。売上を毎月しっかり回収しており、資金繰りはとても安定しているといえます。
もし、利益率50%の事業であれば、平均月商1,000万円を稼ぐために必要な経費は500万円です。売上は毎月しっかり回収し、そこから必要経費500万円を支払って次の売上を生み出している状態ですから、資金繰りは極めて健全といえます。現金の留保も容易でしょう。
このように資金繰りが安定している会社は、銀行からも高く評価され、好条件での融資提案を受けられる可能性も高いです。
売上債権回転率を改善するには?
売上債権回転率が低い会社は、どうすれば改善できるのでしょうか。
売上債権回転率の目安で紹介した表を参考に、改善方法を考えてみましょう。
業種 | 売上債権回転率 |
製造業 | 5.75 |
卸売業 | 6.56 |
情報通信業 | 6.75 |
運輸業、郵便業 | 7.85 |
建設業 | 9.07 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 9.55 |
不動産業、物品賃貸業 | 10.77 |
小売業 | 14.44 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 34.93 |
宿泊業、飲食サービス業 | 47.52 |
売上債権回転率が極めて高い業種に生活関連サービス業、娯楽業、宿泊業、飲食サービス業などがありますが、これらの業種で売上債権回転率が高い理由を知ると、売上債権回転率改善の参考になります。
生活関連サービス業とは、美容室・理容室、クリーニング、銭湯など、日常生活に関連するサービス業です。娯楽業は映画や歌舞伎といった興行、ゴルフ場やボーリング場といった娯楽施設の営業などです。
宿泊業はホテルや旅館の経営、飲食サービス業はレストランなどの飲食店経営が代表例です。
これらの業種に共通する特徴は、基本的に現金払いであることです。クレジットカード払いにより売上債権が発生することもありますが、基本的には現金払いが大部分を占めています。したがって、売上高に占める売上債権の比率が極めて小さく、売上債権回転率が他業種より大きくなっているのです。
逆に、製造業や卸売業などは売上債権回転率が低くなっています。これらの業種に共通するのは、信用取引を行っていることです。納入と同時に代金が支払われることは、基本的にあり得ません。売掛金や手形による支払いが一般的であり、数ヶ月間は支払いを待つ必要があるため、売上債権回転率も低くなります。
上記の違いを知ると、売上債権回転率改善の方法も見えてきます。
契約条件を変更する
売上債権回転率を改善するには、信用取引ではなく現金取引をするのが最も効果的です。
しかし、これは現実的な改善策とはいえません。「次回の取引から、全て現金取引にしてください」と頼んでも、買い手が承知しません。そのような変更に応じると、買い手は毎回現金で即時に決済することとなり、資金繰り悪化を招くからです。
したがって、契約条件の変更を提案し、回収サイトをできるだけ短縮するのが現実的です。売値をディスカウントする、小ロットでの納入に応じるなど、買い手にもメリットを与えながら回収サイトの短縮を提案することで、受け入れてもらえるように交渉します。
回収サイトが短くなれば、期末時点の売上債権は少なくなり、売上債権回転率を高めることができます。
現金回収を図る
このほか、代金の一部を現金払いにしてもらうのも効果的です。全額を現金取引に変更してもらうのは無理がありますが、一部を現金で支払ってもらうならば交渉の余地があります。
例えば、これまで「全額を売掛金で2ヶ月後に支払い」としていたものを、「代金の50%を現金払い、残る50%を売掛金で2ヶ月後に支払い」に変更すれば、計上される売掛金が半減するのですから、売上債権回転率は大幅に改善します。
ファクタリングを活用する
最後に、ファクタリングの活用がおすすめです。
ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に売却し、早期資金化する資金調達方法です。ファクタリングには手数料が必要ですが、
- スピーディに資金調達できること
- 借り入れではないため返済も必要なく、資金繰りへの負担が小さいこと
- 銀行にマイナス評価をされないこと
など、様々なメリットがあります。
少額の資金をスピーディに調達する場合、ノンバンクを選ぶ経営者も多いのですが、ノンバンクは高金利の借入であるため資金繰りへの負担が大きく、銀行から大きなマイナス評価を受けるなど、重大なデメリットを抱えています。ファクタリングにはこのようなデメリットがなく、銀行からプラスの評価をされることも多いです。
売掛金を売却して資金を調達すると、帳簿の上では売掛金が現金に代わる動きとなります。売上高は変わらず売上債権が減るため、売上債権回転率は高くなり、資金繰りを評価されるのです。
少額資金を調達するならばノンバンクよりファクタリングを選ぶべきといえるでしょう。
同様に、手形取引の多い会社では、手形割引を活用することで売上債権を減らし、売上債権回転率を高めることができます。
まとめ
本稿の解説により、本稿の解説により、売上債権回転率の基本的な理解は一通り深めていただけたかと思います。売上債権回転率の計算自体は複雑なものではなく、政府などの公的機関が公表している業界別データ──たとえば、売上債権回転期間、仕入債務回転率、棚卸資産回転率など──と比較することで、自社の経営効率を客観的に把握できます。
売上債権回転率が高いということは、売掛金を短期間で回収できているということを意味し、キャッシュフローの観点ではキャッシュ・インが早くなることを示します。その結果、資金繰りの不安が軽減され、経営の安定性が高まります。
さらに、売上債権回転率の改善は、日々の経理処理や仕訳業務、月次決算といった日常業務の効率化にも直結します。企業全体の財務健全性を測る重要な指標の一つであり、とくに中小企業においては、固定資産や不動産など動かしにくい資産の比重が大きいため、短期的な流動性を示す指標として、売上債権回転率の向上は非常に重要です。不良債権の発生リスクを抑える意味でも、回転期間(日数)の短縮は有効な対策といえるでしょう。
このような中で、ファクタリングの活用は、売上債権の回転率を改善するための効果的な手段の一つです。No.1では、資金繰りに精通した専門コンサルタントが在籍しており、企業の財務状況や売上債権の内容に応じた最適なファクタリングプランをご提案可能です。
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