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セールアンドリースバックとは何?新しい資金調達方法のメリットや注意点も解説
今回は「セールアンドリースバック」について紹介します。
資金調達方法と聞くと「銀行融資」や「クラウドファンディング」を思い出す経営者の方が多いはずです。
しかし、資金調達方法は多種多様で、融資では得られないメリットを持つものも少なくありません。融資はあくまでさまざまな資金調達方法の1つに過ぎません。
今回紹介するセールアンドリースバックは融資でもクラウドファンディングでもない、比較的新しいタイプの資金調達方法になります。
経営者としては資金調達についてさまざまな選択肢を持っていた方が良く「セールアンドリースバック」も使い方次第では非常に有効な資金戦略になります。
今回は実際に利用するかどうかは別にして、新しい資金調達方法である「セールアンドリースバック」について知ってください。そのことがみなさんの事業における資金危機を助けることになるかもしれません。
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セールアンドリースバックとはどのようなものなのか?
まず「セールアンドリースバック」という資金調達方法について詳しく説明していきます。セールアンドリースバックとは、企業や個人が自社で保有している不動産や設備などの資産を第三者に売却し、同時に賃貸(リース)契約を結ぶことで、売却後も継続して利用できる資金調達方法です。売却するので所有権は売却先に移ります。
「持っていた駐車場を売却してお金を得たが、その駐車場は引き続き自社で利用する」ようなイメージです。
セールアンドリースバックは資産を現金化しながら事業環境を変えずに済む点が特徴で、近年では融資に代わる選択肢として注目されています。
対象となる資産は幅広く、事務所や店舗、工場、倉庫、駐車場といった不動産のほか、医療機関で使用される医療機器、製造業の大型機械設備、業務用車両なども含まれます。
これらは事業に欠かせない重要な資産である一方、保有しているだけでは直接資金を生み出しません。セールアンドリースバックを活用することで、眠っている資産価値を資金として引き出すことが可能になります。
一般的に「売却」と聞くと、資産を手放し、利用できなくなるというイメージを持たれがちです。しかし、セールアンドリースバックの場合は、売却と同時に賃貸契約を締結するため、売却後も同じ場所・同じ設備をこれまでと変わらず使用し続けることができます。
そのため、事業拠点の移転や設備の入れ替えといった負担がなく、業務への影響を最小限に抑えながら資金調達ができる点が大きな特徴といえるでしょう。
以下は多種多様な資金調達方法をまとめたものですが、セールアンドリースバックも「⑦」、アセットファイナンスの1つとして示されています。
「①不動産売却」や「⑥動産売却」は単に売って終わりですが、「⑦セールアンドリースバック」はその後も使い続けられることが相違点になります。
| 内容 | 資金調達方法の選択肢 | |
|---|---|---|
| アセットファイナンス | 自社の資産を現金化する | ①不動産売却 ②知的財産権(特許、商標、著作権等)売却 ③独占販売権、営業権などの無形資産の売却 ④ファクタリング ⑤でんさい(電子記録債権)譲渡 ⑥動産売却 ⑦セールアンドリースバック |
| デットファイナンス | 「借入金融」お金を借りる、返済義務あり | ⑧銀行融資(無担保、無保証人) ⑨自治体等の公的融資(無担保、無保証人) ⑩不動産担保融資 ⑪消費者金融、ビジネスローン ⑫手形割引 ⑬社債、私募債発行 ⑭ABL(動産・売掛金担保融資) |
| エクイティファイナンス | 他社、第3者から出資を受ける、返済義務なし | ⑮新株発行公募 ⑯IPO(新規公開株)による資金調達 ⑰株主配当増資 ⑱第三者配当増資 ⑲クラウドファンディング ⑳ベンチャーキャピタル、エンジェル投資家 |
| その他の資金調達方法 | 返済不要の公的資金を受け取る | ㉑補助金(行政機関が支出) ㉒助成金(主に厚生労働省が支出) |
セールアンドリースパックの目的
セールアンドリースバックの目的は言うまでもなく資金調達です。単に売却したアセットファイナンスでは、それで終わりですが、セールアンドリースバックを使えば、換金した動産、不動産についても引き続きリース料を支払うことで継続利用できます。
また、リモートワークの普及で、大きなオフィスを手放す会社も増えていて、必要な時だけ「会議室」とすてセールアンドリースバックを利用するというところもあるようです。
セールアンドリースバックのやり方
セールアンドリースバックはどのように行うのか、その方法をまとめました。セールアンドリースバックは一見すると複雑な仕組みに思われがちですが、実際の手続きは段階的に進めていくことでそこまで難しくありません。セールアンドリースバックの資金化までの流れについて順を追って解説します。
対象となる資産を確認する
最初に行うべきなのは、セールアンドリースバックの対象となる資産を明確にすることです。自社で所有している不動産や設備の中でも、今後も事業に不可欠で、引き続き使用する予定のある資産の方がメリットはあります。
事務所や工場、店舗、倉庫、駐車場といった不動産のほか、大型の機械設備や医療機器なども対象になるケースがあります。単に不要な資産を処分するのではなく、事業を継続しながら資金化したい資産であるかどうかが重要な判断基準となります。
セールアンドリースバック事業者へ相談・見積依頼
対象となる資産が定まったら、次に行うのはセールアンドリースバックを取り扱う事業者への相談です。この段階では、資産の種類や所在地、使用状況、事業内容などをもとに、概算の買取価格や賃貸条件が提示されます。
同時に、どの程度の資金を必要としているのか、どのくらいの期間利用を継続したいのかといった希望を伝えることで、より実態に近い条件を確認できます。条件は事業者ごとに異なるため、複数社に相談して比較検討することが重要です。
資産評価・条件交渉を行う
相談を進めると、対象資産について正式な評価が行われます。不動産であれば立地や築年数、市場動向などが考慮され、設備の場合は使用年数や保守状況などが評価のポイントとなります。
評価結果をもとに、売却価格だけでなく、売却後に支払う賃料や契約期間、更新条件といった具体的な内容について交渉を行います。セールアンドリースパックのメリットを十分に活かすためには、売却額の高さだけで判断せず、長期的な支払負担とのバランスを考慮することが欠かせません。
売買契約・賃貸(リース)契約を締結する
条件に合意した後は、資産の売買契約と賃貸契約を締結します。売買契約によって資産の所有権は買主へ移転しますが、同時に賃貸契約を結ぶことで、これまでと同じ資産を引き続き使用することが可能になります。
契約書には、賃料の金額や支払方法、契約期間、更新時の条件などが詳細に記載されるため、内容を十分に確認したうえで締結することが重要です。
資金を受け取り、賃料を支払いながら利用を継続
契約が完了すると、売却代金が一括で支払われ、まとまった資金を確保できます。その後は、契約で定められた条件に従い、毎月の賃料を支払いながら資産を使用し続ける形となります。
これにより、事業の拠点や設備を変えることなく、資金繰りの改善や事業投資を進めることが可能になります。
セールアンドリースバックのメリット
このように行う「セールアンドリースパック」についてメリットをまとめました。メリットが多い場合、積極的な活用をお願いします。
セールアンドリースバックのメリット① まとまった資金を短期間で確保できる
セールアンドリースバックの最大のメリットは、高額な資金を一括で調達できる点です。
特に不動産を対象とする場合、数千万円から数億円規模の資金調達が可能になるケースもあります。
銀行融資のように複雑な審査や長い待ち時間が不要な場合も多く、スピード感のある資金調達が実現します。
セールアンドリースバックのメリット② 事業を止めずに資金化できる
売却後も同じ資産を引き続き利用できる点は、セールアンドリースバックの大きな特徴です。たとえば工場を売却した場合でも、生産設備や場所を変えることなく事業を継続できるため、生産活動に支障が生じることはありません。
また、店舗をセールアンドリースバックしたケースでも、売却を理由に営業を止める必要はなく、これまでと同じ場所で通常どおりの営業を続けることが可能です。
オフィスについても、移転を伴わずに資金調達ができるため、従業員や取引先への影響を最小限に抑えられます。このように、事業の拠点や設備を維持したまま資金を確保できることから、事業継続性を保ちながら資金繰りの改善を図ることができます。
セールアンドリースバックのメリット③ 借入ではないため返済義務がない
融資の場合、元本と利息を返済する義務がありますが(デットファイナンス)、セールアンドリースバックでは返済という概念が存在しません。セールアンドリースバックは資産を売却するアセットファイナンスなので、返済義務、負債、信用情報と言ったものとは無関係の資金調達方法になります。
支払いは「賃料(リース料)」のみであり、キャッシュフロー管理がしやすくなる点も大きなメリットです。
セールアンドリースバックのメリット④ 資金使途が自由
調達した資金の使い道に制限がない点も、セールアンドリースバックの大きなメリットです。日々の資金繰りを安定させるための運転資金の補填として活用できるほか、将来の成長を見据えた設備投資に充てることも可能です。
また、既存の借入金を返済して財務状況を整理したり、新規事業への投資資金として活用したりするなど、経営戦略に応じた使い方ができます。さらに、人材採用や広告宣伝費に充てることで事業拡大を図ることもでき、このように経営判断に応じて柔軟に資金を活用できる点が大きな特長といえます。
セールアンドリースバックのメリット⑤ 買戻しできる(オプション)
セールアンドリースバック契約をするときに「買戻しオプション」を付けられることがあります。
このオプションがあれば、業績が向上し、潤沢な資金を得られた段階で、売却したものを購入できます。購入すれば、再び会社の所有物になり、自由に使えます。リース料も支払うことがなくなります。
売却価格の1.3倍~1.5倍の買戻し価格になりますが、再び所有権を取り戻せるのは、単なる資産売却では叶えられないことです。
セールアンドリースバックのデメリット・注意点
セールアンドリースバックのメリットは多い一方で、仕組みを正しく理解せずに利用すると、後々経営に影響を及ぼす可能性もあります。ここでは、導入前に必ず押さえておきたいデメリット、注意点を解説します。
セールアンドリースバックのデメリット① 長期的にはコスト負担が増える可能性がある
セールアンドリースバックでは、資産を売却した後、賃料(リース料)を支払い続ける必要があります。
短期的には資金繰りが大きく改善しますが、長期的に見ると支払総額が売却額を上回るケースも少なくありません。住宅を賃貸で数十年住むよりも、購入した方が最終的には安いようなイメージです。
特に、契約期間が長期に設定されている、賃料改定条項が含まれているようなケースでは、リース会社の意向が強く反映されやすく、更新時に条件が不利になる可能性があります。
買戻し特約を付けて、早期に買戻すのも1つの経営戦略になるでしょう。目先の資金調達だけでなく、中長期のキャッシュフローを見据えた判断が重要です。
セールアンドリースバックのデメリット② 資産の所有権を失う
売却を行う以上、対象となる不動産や設備の所有権は相手方に移転します。
そのため、将来的に売却益を得ることができない、担保として活用できなくなる、自由に改修・用途変更ができなくなる場合があるといった不利益が生じます。
特に不動産の場合、将来の資産価値上昇を見込んでいるケースでは慎重な判断が求められます。
セールアンドリースバックのデメリット③ 契約内容によっては事業の自由度が下がる
セールアンドリースパックで資金調達後は、その資産は売却先のものになるので今まで通り自由に使うことができなくなります。あくまで借りて使うので、レギュレーションに縛られてしまいます。
セールアンドリースバック契約には、以下のような条件が設定されることがあります。「中途解約ができない」「解約時に違約金が発生する」「使用目的が限定される」これらの条件は、将来的な事業転換や工場、事務所移転を検討する際の足かせになる可能性があります。
契約前には、事業計画との整合性を十分に確認しましょう。
セールアンドリースバックが向いている事業者
セールアンドリースバックは新しい資金調達方法ですが、すべての事業主様におすすめできるものではなく、向いている事業主様、そうではない事業主様がいます。向いている、向いていないは以下の基準を判断材料にしてください。
セールアンドリースバックが適している事業者
セールアンドリースバックは、当面の運転資金や支払い資金の確保が急務となっている企業に適した資金調達手法です。特に、手元資金が不足しており、資金繰りの改善を早急に図る必要がある場合には、有効な選択肢となります。もちろん売る資産がある場合に限ります。
企業経営において、資金の確保は事業継続の土台となる要素です。しかし、業績や財務状況によっては、金融機関からの借入が思うように進まないケースも少なくありません。
そのような状況でも、セールアンドリースバックであれば、融資を受けずに、自社が保有する不動産や設備を活用して資金化することが可能です。
所有している資産を現金に換えつつ、同時に賃貸契約を結ぶことで、売却後も事業に必要な拠点や設備を使い続けられる点は、大きなメリットといえるでしょう。資産を手放さずに事業を継続したい企業にとって、相性の良い方法です。
セールアンドリースバックが適さない事業者
一方で、銀行融資やその他の資金調達手段を問題なく利用できる企業にとっては、セールアンドリースバックを選択する必然性は高くありません。売る資産がない事業者ももちろんセールアンドリースバックには適しません。
セールアンドリースバックは短期間で資金を確保できる反面、賃料の支払いが継続的に発生します。そのため、長期的に見ると資金負担が増える可能性がある点には注意が必要です。資金面での優位性が必ずしも大きいとは言えず、安易に導入するとコストが重くのしかかるリスクもあります。
すでに十分な資産を保有しており、かつ融資や別の手段で資金を調達できるのであれば、セールアンドリースバックを利用する必要性は低いでしょう。
セールアンドリースパックは、大切な資産を質に入れるようなもので、他の選択肢が限られている場合に検討される、いわば「最後の手段」として位置づけられる資金調達方法といえます。
セールアンドリースバック会社を選ぶポイント
セールアンドリースバックを取り扱う会社は増えていますが、どのようなことに気を付ければ良いのか、ポイントを解説します。
複数の事業者を比較したうえで選定する
セールアンドリースバックを検討する際は、1社だけで判断せず、複数の事業者を比較することが重要です。業者ごとに、資産の評価額や売却条件、リース料、契約期間などの設定は大きく異なります。
また、条件が一見良く見えても、信用面に不安があったり、後から不利な条件が判明したりするケースも否定できません。
そのため、複数社の提案内容を並べて検討し、自社の資金計画や事業方針に最も適した条件を提示する事業者を選ぶことが大切です。
契約条件を細部まで確認する
セールアンドリースバックに関するトラブルの多くは、契約内容の理解不足から発生しています。たとえば、
・将来的に買い戻すつもりだったが、その条項がなかった
・想定よりもリース料が上昇した
・契約更新が認められず、利用を継続できなかった
といった問題が起きえます。
こうした事態を避けるためにも、契約書の内容が自身の認識と一致しているかを事前にしっかり確認することが不可欠です。曖昧な点や理解できない条項があれば、必ず確認・修正を行いましょう。弁護士のリーガルチェックも有効です。
専門家の意見も参考にする
「セールアンドリースバックを使うべきか判断できない」「セールアンドリースバックを良く知らない」「条件やリスクに不安が残る」
このような悩みを抱えている場合は、契約前に専門家から意見を聞いてください。特に、企業の資金繰りや財務状況を幅広く見てきた税理士であれば、感情に左右されない客観的な視点から、自社にとって適切な選択かどうかを判断してもらえます。
契約条項については弁護士、資金繰り全般については税理士に聞きましょう。
専門家の意見を踏まえることで、本当にセールアンドリースバックで良いのか、他にメリットが大きい資金調達方法があるかもしれません。
セールアンドリースバックはメリットが大きいが別の資金調達方法も合わせて検討しよう
以上、「セールアンドリースバック」について説明しました。不動産を売却し資金調達でき、なおかつ借用(リース)と言う形で引き続き不動産を利用し続けられるメリットがあります。
しかし、所有権は買い取ったところへ移転してしまいます。再び所有権を得るには買い戻すしかありません。
また、そもそも売却できる不動産がないと利用できない手法です。非常に「大事」になるものであり、「最後の手段」にしたいものです。
それ以外にも資金調達方法はあります。冒頭の表で示したようにこれだけあるので、みなさまの状況に応じて適切な資金調達方法を選んでください。
例えばファクタリングならば、売掛債権を売却することで、信用情報と無関係な資金調達が可能です。
掛売がない事業主様は少ないはずであり、セールアンドリースバックによって不動産の権利を失うよりもはるかに低リスクでの資金調達が可能です。
それぞれの資金調達方法にはそれぞれのメリットがあるため、ぜひ適時適切な判断をお願いします。
セールアンドリースパックのメリットが薄い場合、別の資金調達方法を考えてください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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