ファクタリングの損益分岐を考える！～手数料を考慮した最適な利用判断を徹底解説

資金調達の手段が多様化するなかで、特に中小企業の資金繰りを支える方法として注目されているのがファクタリングです。売掛金を早期に現金化できるため、急な支払いに対応したり、仕入れ機会を逃さずに済んだりと、経営に大きな柔軟性をもたらします。しかし、ファクタリングには手数料がかかるため、「早く資金化できること」と「利益が減ること」のバランスを慎重に見極める必要があります。

とくに重要となるのが、利用によってどの程度利益が減少し、どの手数料率で赤字になるのかを把握する「損益分岐ライン」（損益分岐点）です。利益率と手数料率の関係を正しく理解しないまま利用すると、せっかく売上は上がっていても、実質的な利益が出ない、さらには赤字に転落するケースさえあります。

本記事では、ファクタリングと損益分岐の関係を初心者にも専門家にもわかりやすく整理し、手数料が利益にどう影響するのか、損益分岐点の計算方法、使うべき場面、避けるべき場面までを網羅的に解説します。経営判断の根拠として使える実務的な視点を中心に、数値例や具体的なケースも交えて解説するため、損しないファクタリングの利用法について多くを知ることができます。ぜひ参考にしてください。

ファクタリングと損益分岐の関係をわかりやすく解説

ファクタリングは売掛債権（売掛金）の現金化を早められるという大きな魅力がある一方、手数料というコストを伴います。この手数料は、売掛金を設定された支払いサイトよりも早く受け取るためのコストとも言えますが、経営者にとっては利益を直接削る要因になります。

利益率が高い業態であれば吸収できますが、利益率が低いビジネスでは、手数料の支払いが利益をほぼ消し去る可能性もあります。

損益分岐とは、ファクタリングの利用によって利益がゼロになる点を指します。つまり、どの手数料までなら利益を維持できるのかの境界線です。この損益分岐点を理解することで、経営者は「この案件では使っていい」「今回は使うべきでない」という判断ができるようになります。

さらに、ファクタリングは資金調達のスピードがメリットであり、資金ショートを避けるための緊急手段として重宝されます。しかし、資金繰りが改善されても利益構造が崩れると、中長期的には経営圧迫につながるため、短期と長期のバランスを取るためにも損益分岐の理解は不可欠になります。

漫然と「売掛金を早く回収できキャッシュが潤う」と判断していると、後々経営が圧迫されてしまうリスクにもなります。

ファクタリング利用で「損益分岐」が発生するメカニズム、理由

ファクタリング利用に損益分岐が生じる最大の理由は、手数料が粗利益（売上－売上原価）から直接差し引かれるためです。売掛金の金額が大きくても粗利率が低ければ、わずかな手数料で利益が一気に小さくなってしまいます。

売上10万円、ファクタリング手数料10％でも
A：準備、仕入が不要な講演料
B：原材料5万円の製造販売

でファクタリングした場合、Aの儲けは10万円－1万円（手数料）＝9万円、一方Bの儲けは10万円－1万円（手数料）－5万円（原材料）＝4万円です。

AよりもBの方が損益分岐点は高く、慎重なファクタリングが求められます。

たとえば粗利率が10％の業種（卸売業や建設の下請け構造など）では、売掛金100万円の案件で粗利益は10万円しかありません。この案件で手数料が15％（15万円）であれば、それだけで利益を完全に超えてしまい、赤字になることは避けられません。

つまり、資金繰りは良くなるが利益は失われ、赤字になり倒産に近づくという状態です。

また、手数料は経費として計上できますが、経費化は赤字を「減らす」効果はあっても「利益を作る」効果はありません。したがって、損益分岐を超えてしまった手数料率で利用すると、どれほど経費処理をしたとしても赤字は赤字のまま残ります。

ファクタリング手数料は「売上債権売却損」や「支払手数料」勘定で経費、損金にできますが、積極的な節税対策にはなりません。

さらに注意すべきは、ファクタリングを毎月の資金繰りの穴埋めとして繰り返し利用してしまうケースです。一度損益分岐を超えた状態で利用し続けると、資金繰りは回るものの利益が全く積み上がらず、経営体力が急速に奪われます。

この「負のループ」はまるでクレジットカードのリボ払いに嵌ってしまった個人のようです。この事態を避けるためにも、損益分岐ラインの把握は極めて重要なのです。

ファクタリング手数料と利益への影響

実際に数字で見ると、手数料が利益に与えるインパクトは非常に大きいことがわかります。以下は具体例です。

例：売掛金100万円・粗利率20％（粗利益20万円）の場合

ここからわかるように、粗利率が20％の場合、手数料20％を超えると利益ゼロ（ファクタリングするだけで赤字）になります。

粗利率が低い業種だとこのラインはさらに厳しくなります。

粗利率10％の場合（利益10万円）

つまり、粗利率が低い企業ほど、数％の手数料増加が経営に致命的な影響を与えます。このように数値を用いた事例研究、シミュレーションを行うことで、どの案件で利用すべきかが明確に判断できるようになります。「ファクタリング漬け」は結果的にみなさまの経営を追い込んでしまいます。

ファクタリング利用における損益分岐点の算出方法

損益分岐を計算することは複雑に思えますが、考え方は非常にシンプルです。

損益分岐の基本概念

損益分岐とは、
粗利 − 手数料 = 0
となるラインを指します。

つまり粗利が手数料を上回っている限りは黒字になり、手数料が粗利を超えると赤字になります。

損益分岐の簡易計算式

損益分岐点は以下の式で簡単に算出できます。

損益分岐ライン = 手数料率 ÷ 粗利率

自社の粗利率とファクタリング手数料の多寡で判断します。粗利率＞手数料率なら黒字、粗利率＜手数料率ならその時点で大赤字です。

粗利率30％で手数料率10％であれば、粗利のほうが十分に大きいため利益は十分確保できます。

しかし粗利率10％で手数料率15％の場合、式に当てはめるまでもなく赤字になります。

これらを踏まえ、自社の平均粗利率を把握し、その範囲での限界手数料率を設定しておくと、利用判断の基準が明確になります。

ファクタリングを「利用すべき時」と「利用してはいけない時」を損益分岐から考える

ファクタリングは適切に使えば経営に対してプラスでキャッシュフローも改善しますが、タイミングを誤れば利益を大きく損ないます。判断基準は以下の通りです。

ファクタリングを損益分岐の観点から利用すべきとき

ファクタリングを利用すべきタイミングは、まず売掛金の入金日がまだ先で、仕入れや給与などの支払いが迫っている場合です。このような場合、入金を前倒しできることで、資金ショートを防ぎ事業運営を安定させることができます。

また、売掛先が堅実で、売掛金の回収がほぼ確実である場合にも適しています。さらに、粗利率が高い案件では、手数料を支払ったとしても十分に利益を確保できるため、ファクタリングを利用しても損失のリスクが小さいと言えます。

加えて、仕入れ資金を早めに確保することで、大きな売上機会を逃さずに済むケースや、新規事業の立ち上げなどで資金繰りを安定させたい場面も、利用の判断基準として挙げられます。

ファクタリングを損益分岐の観点から利用すべきではないとき

一方で、ファクタリングを利用すべきでないタイミングもあります。まず粗利率が低く、わずかな手数料でも利益がほとんど消えてしまう場合は、利用すると赤字に直結する可能性が高いため注意が必要です。

また、毎月恒常的にファクタリングを使わなければ資金繰りが成り立たない場合は、経営体力を圧迫する恐れがあります。ファクタリング以前に自社のキャッシュフローを見直してください。

手数料率が20％前後と高水準になっている案件や、すでに利益が薄く、ファクタリングを利用すると赤字が確定してしまうような場合も、利用は避けるべきです。ファクタリング会社を変えて手数料率を下げてください。

ファクタリング会社は数多くあるので高い手数料率で契約するのは無意味です。

損益分岐点を下げるためにできる対策

損益分岐点を下げ、ファクタリングでも十分な利益を出していくには、

①手数料を下げる
②粗利率を上げる

という2点で考えることが重要です。言うは易く行うは難しなのですが、損益分岐点を下げるためにある程度目安になるように方法を紹介します。

ファクタリング手数料を下げる方法

ファクタリングの手数料を抑えるためには、いくつかの工夫が有効です。まず、複数のファクタリング会社に同時に申し込みを行い、相見積もりを比較することで、より有利な条件を選ぶことができます。

また、売掛先の信用力を丁寧に伝えることも重要です。上場企業や大手企業と取引していることを示すことで、リスクが低い案件と判断され、手数料を引き下げてもらいやすくなります。

同じファクタリング会社を継続的に利用している場合は、これまでの取引実績をもとに手数料の引き下げ交渉を行うことも効果的です。これらの方法を組み合わせることで、ファクタリングがより使いやすくなります。

自社の粗利率を上げる方法

粗利率を上げても、損益分岐点が下がりファクタリングを利用しやすくなります。大前提として、自社のコスト構造を見直すことが重要です。具体的には、仕入れコストの削減や見直しによって、原価を下げることが効果的です。

また、外注費や人件費などの変動費を適正化することも、利益の確保につながります。

加えて、高利益率の商品やサービスの比率を高めることにより、全体の粗利率を向上させることも有効です。

ファクタリング以外の選択肢で補完する方法

ファクタリングよりも手数料（相当費用）が低い別の方法で補うことも、資金用途によってはできるかもしれません。いくつか紹介します。

請求書カード払い

請求書で来た「買掛金の支払い義務」をクレジットカードで購入することで、支払い期日を後ろ倒しにできます。

ビジネスローン

ノンバンク系の融資です。数日で審査が下り最短即日のこともあります。融資なので利息は利息制限法で規制され、ファクタリングより低くなります。ただし、信用情報に掲載されるマイナス面があります。

こうした選択肢を組み合わせることで、ファクタリングに過度に依存せず、健全なキャッシュフローを維持しながら利益を守れます。

ファクタリング会社にとっての損益分岐も考えてみよう

以上は、みなさま事業主様にとっての「ファクタリングと損益分岐」についての解説でしたが、ファクタリングはみなさまとファクタリング会社あっての債権譲渡行為です。

当然ファクタリング会社にも損益分岐の考えがあります。あまり安い売掛債権（売掛金）を買い取っても、スタッフの人件費や手間賃でペイしません。そのあたりを解説します。

ファクタリング会社にとっての「コストバランス」

ファクタリング会社の損益分岐を考えるとき、まず押さえておくべきポイントは「1件あたりの固定コスト」と「回収リスク」、そして「手数料率による収益」のバランスです。

利用者側から見ると、手数料はできる限り低いほうが当然望ましいのですが、ファクタリング会社側からすると、一定の手数料がなければビジネスとして成立しません。つまり、事業主側の「損益分岐点」と同じように、ファクタリング会社にも「最低限これだけは回収しないと赤字になる」というラインが存在します。

では、どのような費用がファクタリング会社の損益分岐を押し上げているのでしょうか。

管理と審査のためのコストが損益分岐を吊り上げる

まず大きいのは審査・管理コストです。ファクタリング会社が売掛債権（売掛金）を買い取る際には、利用者の状況だけでなく、売掛先（取引先）の財務状況や支払い実績なども確認します。2社間ファクタリングでも3社間ファクタリングでも、売掛先の信頼性を評価しなければならず、この調査にはスタッフの時間と専門的な知識が必要です。

売掛金の金額が20万円でも200万円でも、審査にかかる基礎的な工数はほぼ同じため、極端に低い金額の案件では割に合わないことが多くなります。

損益分岐点はこの考えだと一定額の売掛債権（売掛金）が必要になります。

回収不能リスクが高いと損益分岐点が上がる

次に、売掛債権（売掛金）の回収不能リスクに備えるための内部コストがあります。ファクタリングは融資ではなく債権譲渡であるため、買い取った債権が回収できなければファクタリング会社の実損になります（「回収できないリスク」もファクタリング会社に移るため）。

償還請求権なしのファクタリングが現在では当たり前で、償還請求権付きのファクタリング契約は融資とみなされる判決も出ており、現状では償還請求権なし＝ノンリコース契約がほとんどになっています。

この「ノンリコース契約」によって、リスク管理の体制整備が欠かせません。取引先が倒産した場合には回収できなかった損失がファクタリング会社を直撃するため、一定の手数料を設定しなければ経営が安定しないのです。

高額買い取り可能なファクタリング会社ほど資産調達コストも損益分岐点に影響する

さらに、資金調達コストも無視できません。多くのファクタリング会社は自社資金だけでなく、銀行などから調達した資金も使って売掛債権（売掛金）を買い取っています。当然その資金には調達コストがかかっており、手数料が低すぎると、資金回転が悪くなり、事業として存続できなくなります。

売り物の「お金」を調達するコストはファクタリング手数料からねん出しています。

ファクタリング会社の損益分岐点の決定方法

これらの費用、コストを踏まえると、ファクタリング会社が「この案件なら採算が取れる」と判断するラインは、自ずとある程度決まります。例えば、買取金額が10万円程度の小口案件では、5%や10%といった低い手数料では人件費を回収できません。

小口債権の買い取り案件では15〜20%のやや高めの手数料が設定されることがあり、逆に数百万円・数千万円規模の売掛債権（売掛金）であれば、1件あたりの固定コストが相対的に軽くなるため、手数料率を低く設定しやすくなるのです。

つまり、手数料の違いは「悪徳・良心的」という二元論ではなく、単純に「ファクタリング会社の損益分岐構造」の違いから生まれています（悪徳業者の手数料が高いのは事実です）。

スタッフ数が多く、審査や回収体制が整っている大規模な会社ほどコストがかかる反面、安定した資金調達力やノウハウがあり、リスクを精密に評価できるため、一定額以上の案件なら低手数料で提供できます。一方、小規模事業者、個人事業主やフリーランス向けの即日買い取りを得意とする会社は、スピード対応にリソースを割く必要があり、どうしても案件単価が小さくなるため、手数料がやや高くなる傾向があります。

このように、事業主側の損益分岐点と同様、ファクタリング会社の損益分岐点も合理的に決定されます。

みなさまも「なぜこの金額でこの手数料なのか」を理解しておくことで、見積り内容を見る目が養われ、相場より不当に高い手数料を提示する業者を見抜きやすくなります。

また、複数のファクタリング会社から見積りを取り比較する際にも、「なぜこの会社はこの手数料なのか？」を判断する基準が明確になり、結果としてより有利な条件でファクタリングを活用できるようになります。

損益分岐を理解すればファクタリングは強力な武器になる！

ファクタリングは有用な資金調達手段ですが、手数料というコストが発生する以上、「使うべき案件」と「使うべきでない案件」の線引きが極めて重要です。手数料を支払っても、ファクタリングで資金調達した方が、しない場合よりも稼げる、利益が増えることが損益分岐に重要となります。

自社の損益分岐ラインを正確に理解することで、利益を守りながら資金繰りを改善し、会社としての成長スピードを落とさずに済みます。

逆に、損益分岐を意識せずにファクタリングを利用すると、売上は増えているのに利益がまったく積み上がらない、さらには赤字が続くという事態にもつながりかねません。

経営の健全性を維持するためにも、手数料と粗利率のバランスを常に把握し、数字にもとづいた判断を行うことが不可欠です。

自社の損益分岐点を下げるためにはファクタリング手数料が安い会社を選ぶことが重要です。ファクタリング手数料が安ければ、利益になる売り上げの損益分岐点は下がります。

例えば株式会社No.1は買い取り手数料がとても低く、損益分岐点をなるべく下げたい事業主様にとってはおすすめのファクタリング会社になります。具体的なファクタリング条件は以下になります。

自社の損益分岐点を下げながらファクタリングで資金調達したい事業主様にはうってつけのファクタリング会社になります。

ぜひ、自社の損益分岐点を俯瞰しながら、株式会社No.1を候補に入れてください。

何卒よろしくお願い申し上げます。