カテゴリー: 経営情報
生命保険を利用した資金繰り対策。節税の注意点や資金調達も詳しく解説
資金繰りのために生命保険を利用する会社は多いものです。
しかし、生命保険といっても種類や条件は様々。
使い方・選び方を誤れば、期待した効果を得ることはできません。
却って逆効果になり、生命保険で資金繰りが悪化することも。
では、生命保険を資金繰りに役立てるには、どうすればよいのでしょうか。
この記事では、生命保険を資金繰りに役立てるための知識として、生命保険の見直し、生命保険による節税、生命保険による資金調達を詳しく解説します。
生命保険を利用した資金繰り対策 従業員対象の保険を見直す
近年、企業の雇用情勢は大きく変化しており、以前のような終身雇用制に基づく手厚い見舞金や保証などといった従業員への福利厚生制度もカフェテリアプランや確定拠出型年金導入に伴う退職金制度の見直しなども関心を集めています。
一方で従業員への見舞金や保証の上乗せを見越して生命保険(事業保険)を掛け続けている企業も少なくはないでしょう。
資金調達を考える意味でも古い雇用形態に合わせた生命保険(事業保険)を契約し続けるのは保険料という固定費に加え、保険の保証による給付がニーズにマッチしていない可能性もあるのです。
それではどのように資金調達と福利厚生の両者を見直していけば良いのでしょうか。
従業員の状況とニーズを把握する
まず自社の従業員の年齢構成や勤続年数をもとに、現行の退職金規程や慶弔見舞金規程などにそって当面必要となる退職金や見舞金の必要な金額を想定します。
そして現在契約している生命保険(事業保険)を解約した場合の解約返戻金について調べます。
この結果に基づいて現在の生命保険(事業保険)を継続するか、それとも生命保険(事業保険)を解約して解約返戻金を運転資金に回すことを含めた検討を行うかの方針を決めるのです。
解約返戻金が退職金や見舞金の必要額より多い場合
ここで退職金や見舞金の見積額よりも生命保険(事業保険)の解約返戻金の方が多いようであれば、その生命保険(事業保険)を解約することをおすすめします。
そして保険契約を解約した場合、今まで見込んでいた節税効果はなくなりますが、今まで固定費として発生していた保険料の支出はなくなり、さらに今まで掛けてきた保険金の一部が戻ってくるわけですから、資産を取り崩しているわけでもありません。
これを日常の運転資金や、新しい生命保険(事業保険)への切り替え、さらには新たな福利厚生制度にかかる費用に配分していくのです。
退職金や見舞金の必要額より解約返戻金が少ない場合
退職金や見舞金の必要額より解約返戻金が少ない場合は、現行の退職金規程や慶弔見舞金規程を見直して新しい制度に移行することもありますが、従業員の同意を得ることが難しく、ともすれば福利厚生制度の悪化と思われ、従業員のモチベーション低下につながることも考えられます。
このような場合はすぐに解約するのではなく契約者貸付といった保険会社の貸付制度も利用しながら資金調達の方法を考えることが有効と考えます。
保証を維持したいなら事業保険商品の見直しも有効
従来の生命保険(事業保険)は保証内容もさることながら貯蓄性と節税効果も重視している傾向にあるように考えます。
そのため死亡保険金で高額の弔慰金の支出、解約返戻金を従業員の退職金に当てるなどの対応を行うようなケースも少なからずありました。
しかしながら、最近では医療保険やガン保険といった、解約返戻金がないかわりに生前を含めた保証や高度医療に手厚い生命保険(事業保険)も発表されています。
これらの商品に切り替えることで、従業員のニーズにあった福利厚生制度を検討することも重要ではないでしょうか。
退職金規程などの変更は慎重に
従業員の立場から見ると退職金を織り込んで、住宅ローンの返済など生涯の生活設計を行なっている場合も少なくありません。
そのため会社側の一方的な規程変更は従業員のモチベーションを下げ、ともすれば優秀な従業員の退職などにも発展するケースも考えられます。
そのためには退職金規程など福利厚生を変更する際は、事前に従業員の意見を聞き、従業員に不利益がないように配慮することが必要不可欠なのです。
資金調達のために生命保険(事業保険)の見直しを行うことは、ある意味従業員のニーズにあった福利厚生制度を考える契機になるとも考えられます。
資金調達だけでなく従業員が働きやすい環境づくりとしても重要だといえるでしょう。
生命保険の節税効果と資金繰り
生命保険は損金算入ができます。
このため、節税を兼ねて生命保険に加入している会社も多いです。
実際のところ、生命保険にはどの程度の節税効果が期待でき、資金繰りにはどのような影響があるのでしょうか。
生命保険の節税効果
生命保険が節税になるのは、保険料を損金算入できるためです。
保険料を損金算入すれば利益が減り、利益に対してかかる法人税は小さくなります。
節税せずに法人税をまともに支払うより、生命保険で節税したほうが資金繰りに的には良いといえます。
もっとも、損金算入できる金額は、生命保険の種類によって異なります。
最近、節税を兼ねて生命保険に加入する場合、逓増定期保険や長期平準定期保険を選ぶケースが主流となっています。
これらの生命保険は、保険料の半分を損金にできます。
さらに、逓増定期保険は短期間で解約返戻金を形成できることから、生命保険の解約による資金調達、生命保険を担保とした融資、後述する契約者貸付制度などにも適しており、資金繰りに活用しやすいのが特徴です。
節税のための生命保険はNG
保険会社の営業マンから「生命保険は節税になる」と聞いて、節税だけを目的に生命保険に加入する会社が少なくありません。
特に多いのが、「税金は支払うだけ無駄」「節税すればするほど資金繰りは改善する」などと考えて、とりあえず生命保険に加入する会社。
結論からいえば、節税だけを目的とする生命保険は基本的にNGです。
「節税のための節税」は、却って資金繰りを悪化させます。
そもそも、節税の目的は、税金の支払額を減らして資金繰りの負担を軽減することです。
節税を目的に生命保険に加入すれば、実際に納税額は減るでしょう。
しかし、納税額が減っても、結果的に資金繰りが悪化すれば元も子もありません。
「生命保険によって得られる節税効果」と、「実際の資金繰りへの影響」を比較してみて、節税効果が大きくならない限り、生命保険は資金繰りに悪影響と考えてください。
生命保険と法人税の関係
このように聞けば、「生命保険は節税効果だけではなく、満期保険金や解約返戻金がある」と考える人も多いでしょう。
節税による資金繰りメリットと、満期保険金・解約返戻金を資金繰りに活用できることを考えると、なるほど生命保険は効果的に思えます。
しかし、生命保険の満期保険金や解約返戻金には法人税がかかります。
多くの場合、保険会社の営業マンが生命保険を勧める際には、法人税についてサラッと触れるだけです。
そのため、生命保険の保険金・返戻金に法人税がかかることを見落としている人も少なくありません。
生命保険の種類によって節税効果や返戻率は異なりますが、場合によってはこの法人税によって節税効果がなくなってしまうことも。
例えば、資金繰りのために生命保険を中途解約し、解約返戻金を受け取ったとしましょう。
もし、節税効果がさほど高くない生命保険であれば、「生命保険による節税額=解約返戻金にかかる法人税」ということもあり得ます。
この場合、単に法人税を先延ばししているだけで、生命保険の節税効果はゼロです。
支払いはできるだけ先延ばしして、手元資金の流出を防ぐのが資金繰りの鉄則ですから、その意味では生命保険が資金繰りに役立ったといえます。
しかし、「生命保険で節税→資金繰り改善」といった目的では、ほとんど役だたないことが分かります。
生命保険で資金繰りが悪化?
節税効果がゼロになるだけならば、まだマシといえます。
実際には、生命保険が負担になり、資金繰りを悪化させるケースが多いのです。
考え方は簡単です。
「生命保険による節税額」よりも、「生命保険による損失」が大きくなれば、資金繰りは悪化します。
具体的に考えてみましょう。
主に節税を目的として生命保険に加入する場合、「損金算入が大きいほど節税効果が大きい→資金繰りの負担軽減になる」と考えるのが普通です。
できれば、全額損金タイプの生命保険に加入したいところ。
しかし、全額損金タイプの生命保険は、返戻率が低いものがよくあります。
特に2017年、生命保険の予定利率が引き下げられたことで、解約返戻率が大幅に下がりました。
実際、返戻率が80%を下回る生命保険も少なくありません。
そのような生命保険を選ぶと、支払った保険料に対して受け取れる返戻金が少なく、実質的な損失が大きくなります。
さらに、受け取った返戻金には法人税がかかるのですから、資金繰りへの悪影響は推して知るべしです。
生命保険で資金繰りが悪化する例
例えば、全額損金タイプで、解約返戻率が最大75%の生命保険を選んだとします。
保険料は全額損金になりますから、1000万円の保険料を支払った場合、損金算入も1000万円です。
会社の利益が1000万円であれば、支払保険料によって利益はゼロになり、法人税もゼロになります。
生命保険に加入せず、利益1000万円をそのまま計上すれば、法人税を支払わなければなりません。
令和7年現在の税法に基づけば、法人税は約200万円です。
200万円の法人税を支払うより、生命保険に加入することで法人税をゼロにした方がよさそうに思えますが、そこが落とし穴です。
返戻率を75%とすれば、支払った保険料1000万円に対して、750万円の解約返戻金を受け取れます。
差額の250万円は保険会社の儲けとなり、自社からみれば損失にほかなりません。
1000万円の生命保険によって節税できたのは200万円、解約時の損失が250万円ですから、この時点で50万円は確実に損となり、資金繰りは悪化するわけです。
さらに、返戻金には法人税がかかるため、「保険料で資金繰りが悪化」「法人税で資金繰りが悪化」という二重の資金繰り悪化を招きます。
生命保険の解約も視野に
このように、生命保険が資金繰り悪化につながるケースは珍しくありません。
この場合、生命保険に加入し続けるよりも、生命保険をやめた方が資金繰りは良くなります。
生命保険を解約するだけで資金繰りが良くなるのですから、これまでの加入期間や返戻率を考えながら、解約も視野に入れるべきでしょう。
解約後、再び生命保険に加入する場合は慎重に検討してください。
生命保険の条件は加入者の健康状態や年齢によって変わるため、前回の加入時よりも条件が悪くなっている可能性が高いです。
資金繰り的には、前回よりも今回の方がマイナスになりやすいといえます。
今後、生命保険に加入しないのもひとつの手です。
生命保険で節税に成功したとしても、資金繰り的には「加入しない方が良い」ということがよくあるのです。
というのも、最近は全額損金タイプの生命保険が減っており、節税のハードルが高くなっています。
半額損金タイプの生命保険が主流となっているのもそのためです。
損金算入できるのが半額だけとなると、節税効果を得るためにはかなりの保険料を支払わなければなりません。
法人税を100万円減らすために、生命保険を500万円も支払うようなことが実際にあるのです。
「支払い(法人税)を100万円減らす」という目的のために、「500万円(の保険料)を支払う」という手段を用いるのですから、目的と手段がまるであべこべです。
これでは資金繰りは悪化してしまいます。
100万円の法人税を支払っても、500万円を手元に残すのが資金繰り的には正解です。
さらに、返戻率が高くなり、ある程度まとまった解約返戻金を受け取るまで、平均して3~8年を要します。
その期間、利益を出し続けられる保証はありません。
赤字になり、資金繰りが苦しい中で、「今解約するともったいない」と考えて生命保険に加入し続けている会社もあります。
「生命保険で節税、資金繰りを改善」と考えていたにもかかわらず、生命保険が資金繰りを悪化させ、首を絞める結果になるのです。
生命保険の負担が大きいと感じているならば、すぐにでも見直すことをおすすめします。
生命保険の契約者貸付制度が資金繰りに役立つ
節税だけを目的にするのではなく、後々の資金繰りも含めて考えるならば、生命保険も検討する価値があります。
ただし、解約返戻金の受け取りには様々な制約があり、これだけではなかなか資金繰りに活用できません。
そこで知っておきたいのが、生命保険の契約者貸付制度です。
生命保険の契約者貸付制度とは?
契約者貸付制度とは、生命保険の契約者が、解約返戻金を担保として保険会社から借入れできる制度をいいます。
契約者貸付制度の有無は保険によって異なりますが、満期返戻金がある生命保険は、契約者貸付制度を利用できることが多いです。
生命保険で資金繰りする上で、契約者貸付制度は非常に役立ちます。
詳しくは後述しますが、契約者貸付制度は一般的な融資に比べてはるかに調達しやすく、資金繰りに使いやすい制度です。
契約者貸付制度は、解約返戻金の範囲内で貸し付けるため、保険会社は貸倒れリスクがほぼゼロです。
貸倒れリスクがない以上、審査に落ちることは基本的にありません。
それどころか、ノーリスクで金利はしっかり受け取れるのですから、保険会社にはメリットばかりです。
契約者貸付制度が使える生命保険に加入しておけば、資金繰りの切り札になるでしょう。
契約者貸付制度の対象となる保険
生命保険でも、その他の様々な保険でも、貯蓄性の保険は契約者貸付制度を利用できるものが多いです。
貯蓄性の保険とは、保険金の支払い条件に関係なく、解約によって返戻金を受け取れる保険のことです。
例えば、生命保険の代表的なものとして、死亡時に保険金を支払うものがあります。
この場合、保険金の支払い条件は「生命保険の契約者の死亡」です。
契約者が生きている限り保険金が支払われることはありません。
しかし、解約時に返戻金を受け取れる生命保険であれば、基本的には契約者貸付制度の対象となります。
というのも、契約者貸付制度は死亡時に支払われる保険金ではなく、解約返戻金を担保に貸し付けるためです。
担保となる解約返戻金さえあれば、保険金の支払い条件に関係なく利用できるというわけです。
生命保険ならば終身生命保険ですが、生命保険以外にも養老保険や学資保険などが契約者貸付制度の対象となっています。
中でも、契約者貸付制度が最も活用されているのは低解約返戻金型終身保険です。
これも生命保険の一種で、満期前は返戻率が低く、満期を迎えると返戻率が高くなります。
満期後は受け取れる解約返戻金も増えることから、契約者貸付制度で調達できる金額も大きくなり、資金繰りに活用しやすいというわけです。
生命保険買取制度は資金繰りに役立つ?
生命保険を資金繰りに役立てる方法に、生命保険買取制度があります。
生命保険買取制度は、その名の通り「生命保険を買い取る制度」のことです。
ただし、生命保険なら何でも買い取るわけではなく、幻想として「余命宣告を受けており、保険金の支払いが確定している生命保険」を買い取ります。
例えば、死亡時に1000万円の保険金を受け取れる生命保険に加入しており、余命宣告を受けているとしましょう。
余命1年であれば、1年後には1000万円の保険金が支払われることとなります。
この保険契約を買取業者の譲渡・売却するのが生命保険買取制度です。
買取業者は、契約者の死亡時に保険金を受け取り、保険金と買取代金の差額が儲けとなります。
余命宣告を受けた場合に、生命保険買取制度でまとまった資金を調達し、会社の将来のために遺すことも可能です。
生命保険買取制度のメリット
生命保険買取制度のメリットを簡単に、みてみましょう。
審査に落ちにくい
生命保険買取制度にも一定の審査がありますが、審査に落ちることは基本的にありません。
生命保険買取制度を利用する時点で、契約者は余命宣告を受けています。
余命宣告を受けた人が奇跡的に回復するケースもありますが、極めて稀です。
余命宣告を受けている以上、近い将来に保険金が支払われる可能性が高く、業者は安心して買い取ることができます。
これが、生命保険買取制度が審査に落ちにくい理由です。
まとまった資金を調達できる
まとまった資金を必要としているタイミングで余命宣告を受けた人は、生命保険買取制度が役立ちます。
一般的に、生命保険の死亡保険金は高額に設定されています。
買取率は業者によって様々ですが、保険金に対して60~90%で買い取るケースが多いようです。
死亡保険金として1000万円を受け取る場合、生命保険買取制度によって600~900万円という資金を調達できます。
そもそも生命保険買取制度は、まとまった資金を調達することで、高額の治療費などを支払うことを想定した制度です。
それだけに、買取業者も多額の買取資金をプールしており、数百万円、数千万円といった支払いに即座に応じられるよう、体制を整えています。
保険料の支払いが不要になる
生命保険買取制度は、保険契約を譲渡するものです。
資金繰りに活用すれば、その保険契約は業者が管理することとなります。
もちろん、月々の保険料は買取業者が支払います。
月々の保険料の支払いが重く、資金繰りを圧迫しているならば、生命保険買取制度で資金を調達すると同時に、保険料の支払いを免れるのも一つの手です。
掛け捨て型の生命保険も利用できる
生命保険には、貯蓄型と掛け捨て型があります。
生命保険による資金繰りとして、すでに解約返戻金と、契約者貸付制度について解説しました。
これはいずれも、貯蓄型の生命保険による資金繰りです。
掛け捨て型の生命保険には解約返戻金がないため、解約返戻金を資金繰りに充てることも、解約返戻金を担保に契約者貸付制度で資金調達することもできません。
そんな中、生命保険買取制度は掛け捨て型の生命保険も対象となっています。
貯蓄型・掛け捨て型に関係なく、死亡時に保険金が支払われる生命保険であれば、生命保険買取制度の対象となります。
生命保険買取制度のデメリット
もちろん、生命保険買取制度にもデメリットがあります。
最大のデメリットは、利用のハードルが高く、資金繰りに利用しにくいことです。
生命保険買取制度は、余命宣告を受けていることが買取の要件となり、生命保険に加入しているだけでは利用できません。
そもそも資金繰りは、収支の予測を立てて計画的に回していくものです。
計画的に資金繰りするからこそ、資金が不足する時期が事前に分かり、それに合わせて資金を調達することもできます。
しかし、余命宣告は予測できるものではありません。
健康と思っていた人が、突然余命宣告を受けることもあります。
重い病を患っていた人が、健康に気を付けたために却って長生きするケースもしばしばです。
つまり、生命保険買取制度は計画性とは無縁であり、資金繰りに活用しにくいのです。
したがって、生命保険買取制度は、「万が一余命宣告を受けた場合に、資金繰りに活用できるもの」といった程度に考えておくのが無難でしょう。
生命保険を活用した資金繰りは、節税や解約返戻金、契約者貸付制度を軸に考えてください。
資金繰りに使うならどっち?銀行融資と生命保険を徹底比較
会社の資金繰りにおいて、軸となる資金調達方法は銀行融資です。
生命保険と銀行融資を比較してみて、生命保険の方が優れている点があるならば、資金繰りに積極的に取り入れるべきでしょう。
ここからは、銀行融資との比較を通して、生命保険による資金繰りの可能性を探っていきます。
資金調達の難易度を比較
資金繰りを回すには、必要な資金を、必要なタイミングで調達しなければなりません。
資金調達に失敗し、取引先への支払いや借入先への返済に遅れてしまうと、資金繰りがショートしてしまいます。
資金繰りのために調達する以上、調達しやすいかどうか、すなわち調達難易度が大きな問題になってくるのです。
まずは、銀行融資と生命保険の調達難易度を比較してみましょう。
銀行融資は審査が厳しい
銀行融資は審査が厳しく、調達難易度は非常に高いです。
審査に落ちて調達できず、資金繰りに役立たないこともよくあります。
銀行融資が厳しい理由は、融資先の返済力を基準に審査するためです。
銀行は、決算書その他の書類を丁寧にチェックし、融資先の返済力を測定します。
その結果、返済力が十分(=貸倒れリスクが低い)と判断した場合に限って融資します。
返済力に問題があれば、融資を受けることはできません。
例えば、業績や財務に問題がある、資金繰りが悪い、事業実績が乏しいなどなど。
もっとも、業績・財務の推移、現状の資金繰り、将来性など、あらゆる点で全く問題がない会社はごくわずかです。
中小企業であれば、多かれ少なかれ問題を抱えており、その中でいかに銀行融資を引き出すかが資金繰りの明暗を分けます。
銀行融資で資金繰りするにも、審査が厳しいことを前提に考えるべきです。
生命保険が銀行融資に悪影響になることも
ここでぜひ知っておきたいのが、生命保険が銀行融資に与える影響です。
生命保険は、融資審査に悪影響になることがあります。
例えば、以下のようなケースです。
- 生命保険に無駄が多く、利益率の低下を招いている。
- 節税のために生命保険を利用し、利益をあまり残さないようにしている。
- 生命保険の契約後に経営が悪化し、資金繰りの負担が大きすぎる。
- 生命保険の支払いが苦しいものの、解約返戻金のために無理な契約を続けている。
このような生命保険を、銀行がプラスに評価することはありません。
銀行が返済原資とみなすのは、本業によって得られる利益だけです。
その利益を生命保険が食いつぶしているならば、銀行は「返済力が低い」と評価します。
生命保険が銀行融資に悪影響になっている場合、すぐに生命保険の見直しや解約を検討すべきです。
生命保険は簡単に調達できる
銀行融資に比べて、生命保険の調達難易度は低いといえます。
生命保険の解約返戻金を資金繰りに充てる場合、解約返戻金を貰える条件を満たしている限り、必ず調達できます。
条件を満たしているのに、審査が厳しくて解約返戻金が支払われなかった、ということはあり得ません。
同様に、契約者貸付制度も簡単に調達できます。
契約者貸付制度が利用できる生命保険であり、なおかつ解約返戻金が受け取れる状態であれば、資金繰りへの活用は容易です。
保険会社は銀行や貸金業者とは異なります。
保険会社のサービスは保険業法に基づいており、銀行は銀行業法、貸金業者は貸金業法に基づいて営業しています。
しかしながら、生命保険の契約者貸付制度は貸付けの一種です。
保険会社は、保険業法の枠組みの中で、契約者貸付制度に限って貸付けを認められています。
貸付けであれば、返済力が重視されるのが普通ですが、契約者貸付制度は解約返戻金を担保として融資を受けます。
保険会社はほぼノーリスクで融資できるため、厳しく審査することはありません。
たとえ銀行融資を受けられない会社でも、契約者貸付制度ならば簡単に審査に通るのが普通です。
また、契約者貸付制度は契約を残したまま資金調達できます。
生命保険を解約せず資金繰りに活用したい場合におすすめです。
結論:銀行融資を軸に、生命保険で補完を
銀行融資は審査が厳しく、いつでも資金繰りに使えるわけではありません。
今まで融資してくれていた銀行が、突然融資を渋ることもあります。
資金繰りの軸は銀行融資が最適ですが、銀行融資への過度な依存は避けるべきです。
資金繰りを安定させるには、資金調達方法の多様化を考えましょう。
様々な資金調達方法を積極的に取り入れておけば、銀行から融資を受けられずとも、他の方法で調達することで資金繰りを維持できます。
生命保険は、銀行融資の補完に適しています。
銀行融資を断られた会社も、生命保険ならば解約返戻金次第で調達可能です。
早いうちから生命保険に加入し、まとまった解約返戻金を受け取れる状況を作っておけば、銀行融資に落ちても資金繰りがショートすることはありません。
結論としては、
「銀行融資も生命保険も資金繰りに使うべき。資金繰りの軸は銀行融資、生命保険はその補完」
といえるでしょう。
担保・保証の影響を比較
資金繰りを大きく左右する担保・保証について、気になる人も多いことでしょう。
銀行融資と生命保険の担保・保証を比較します。
銀行融資は担保・保証を重視
銀行は、担保・保証重視します。
銀行から借り入れて資金繰りしている会社のうち、無担保・無保証で融資を受けられるのは全体の1割程度に過ぎません。
9割の会社は有担保または有保証で融資を受けています。
もちろん、無担保・無保証で融資を受けられるならば、資金繰りに大きなメリットがあるでしょう。
しかし、実際にはかなりハードルが高く、多くの会社は不動産を担保にしたり、信用保証協会から保証を受けたりすることで調達しています。
逆にいえば、担保・保証が不足している会社は、銀行から融資を受けることが難しいということです。
実際に、資金繰りのために融資を必要としているものの、追加融資を受けられず資金繰りが困難になる会社が少なくありません。
その場合には、銀行融資以外の方法で資金を調達し、資金繰りを回すことを考えます。
担保・保証は無限ではありませんから、現在は担保・保証付きで融資を受けている会社も、いずれは無担保・無保証で資金調達・資金繰りを迫られる時が来るでしょう。
生命保険は実質無担保・無保証
生命保険で資金繰りする場合、担保・保証が不足していても問題ありません。
現在、担保・保証の余力がなく、不動産担保ローンや信用保証協会の保証付融資を受けられない会社でも、生命保険ならば簡単に調達できます。
まず、生命保険を解約して返戻金を受け取り、資金繰りに充てるケース。
生命保険の加入期間や返戻率、タイプによって異なるものの、貯蓄型の生命保険であり、なおかつ返戻金の受有要件を満たしているならば、生命保険を解約するだけで資金を調達できます。
この時に受け取る解約返戻金は借入金ではなく、返済義務がありません。
そもそも担保・保証は、貸倒れリスクに備えるためのものです。
返済義務があればこそ、担保・保証が重要になってきます。
その点、生命保険の解約返戻金には返済義務がなく、担保や保証は一切不要です。
次に、生命保険の契約者貸付制度で資金調達するケース。
生命保険の契約者貸付制度は貸付けの一種であり、返済義務があります。
当然、返済不能時の備えとして、担保・保証が重要になってきます。
ところが、契約者貸付制度は解約返戻金を担保とする制度です。
契約者貸付制度を利用できるということは、その時点で解約返戻金があることを意味し、「担保不足」ということはあり得ません。
無担保・無保証の制度ではないものの、改めて担保・保証を用意する必要はなく、実質無担保・無保証といって差し支えないでしょう。
結論:担保・保証の問題は生命保険で解決
銀行融資は担保・保証を重視、生命保険は実質無担保・無保証というのは、大きな違いです。
資金繰りのために、いつでも担保を提供できる会社は少ないものです。
信用保証協会の保証枠は月商の3ヶ月分ですから、保証枠が確保できない会社も少なくありません。
担保・保証不足で資金調達に困っている会社は、生命保険を資金繰りに活用しましょう。
解約返戻金を受け取る、もしくは契約者貸付制度で借り入れるならば、担保・保証が不足している会社も安心です。
また、担保・保証に余裕がある会社も、生命保険の活用を検討してみてください。
あえて生命保険で資金繰りを回すことで、担保・保証を温存しておけば、将来の備えになります。
業歴の影響を比較
資金調達の際、業歴も影響します。
業歴が短い会社は、資金調達の選択肢が少なくなるものです。
業歴に影響から、銀行融資と生命保険を比較してみましょう。
銀行融資は業歴を重視
あらゆる資金調達方法の中で、最も業歴を重視するのは銀行融資はです。
業歴が短いほど融資のハードルが上がり、業歴が長いほど融資のハードルが下がることは間違いありません。
これは、業歴が信用の裏付けになるためです。
業歴が長い会社は、長期にわたって資金繰りを破綻させず、収益を上げてきたということです。
銀行が収益力・返済力を評価する上で、その事業実績や営業基盤は確実にプラスに影響します。
一方、業歴が短い会社は、このようなプラスの評価ができません。
実際に、業歴が短いほど資金繰りに余裕がなく、業績・財務も脆弱であり、貸倒れリスクが高いことは事実です。
特に、起業したばかりの会社は、銀行から融資を受けることは基本的に不可能です。
起業後間もない時期は、事業実績がほとんどなく、銀行は返済力を評価できません。
創業1年未満となれば、融資審査のための決算書さえ提出できず、稟議の対象にならないのです。
業歴が短い時期の資金繰りは、将来性を評価してくれる公的融資で借り入れたり、返済義務がない方法で調達する必要があります。
生命保険は業歴不問
生命保険を資金繰りに活用する場合、業歴は不問です。
生命保険の解約返戻金は、受給要件を満たせば必ず受け取ることができます。
業歴が短いからといって、支払いを拒否されることはありません。
起業したばかりの会社でも、起業前から経営者自身が加入していた生命保険を解約することで、簡単に資金を調達できます。
同様に、契約者貸付制度も業歴不問です。
業歴が短いことを理由に、審査に落ちやすくなったり、金利が高くなったりすることはなく、安心して利用できます。
実際に、起業後間もない時期に、経営者個人の生命保険で契約者貸付制度を利用し、会社に貸し付ける形で調達するケースがあります。
結論:業歴が短い会社は生命保険で資金繰りを
業歴がネックになっている会社の資金繰りには、生命保険がおすすめです。
業歴が短すぎる会社は、事業実績を積み重ねながら、時間をかけて銀行と取引を広げていきます。
それまでの期間は、銀行融資以外で調達し、資金繰りを回さなければなりません。
創業期の苦しい資金繰りは、生命保険を利用できるかどうかによって、大きく変わってくるでしょう。
どれだけ念入りに立てた創業計画も、多かれ少なかれズレが生じるものです。
不安定な状況が想定以上に長期化し、資金繰りが続かなくなることも。
このとき、生命保険が資金繰りの切り札になるかもしれません。
なお、生命保険は、解約返戻金さえあれば起業前の段階でも利用可能です。
起業前の段階では業歴がゼロですから、銀行融資では調達できません。
公的融資を利用するとしても、開業資金の調達に苦労する人は多いものです。
十分な資金を確保せずに起業に踏み切り、早々に資金繰りが破綻するケースも。
開業後、余裕をもって資金繰りを回せるよう、生命保険の解約返戻金や契約者貸付制度で開業資金を確保してはいかがでしょうか。
調達上限を比較
資金繰りを維持するには、不足する資金を確実に調達しなければなりません。
審査に通っても、資金不足を解消できなければ資金繰りは破綻します。
そこで重要となるのが、調達上限です。
銀行融資の調達上限
銀行融資は、多額の融資にも対応しています。
貸倒れリスクが低い会社にはいくらでも融資したいと考えているため、その意味では「上限なし」といえるでしょう。
もちろん、無限に融資を受けることはできず、会社ごとに調達できる上限があります。
調達上限の目安となるのが、借入金月商倍率です。
これは、銀行が融資審査の際に用いる指標の一つで、月商に対する借入金総額の倍率を表します。
例えば、年商1億2000万円の場合、平均月商は1000万円です。
この会社の借入金総額(短期借入金・長期借入金の総額)が3000万円であれば、借入金月商倍率は3ヶ月となります。
借入金月商倍率が2ヶ月以内であれば「やや少ない(または適正水準)」、2~4ヶ月ならば「やや多い」、4ヶ月以上は「多い」というのが、銀行の一般的な判断です。
これを応用すると、銀行融資の調達上限は「月商の2~4ヶ月分 」といえるでしょう。
信用保証協会の保証付融資も、保証枠の目安は月商3ヶ月分ですから、これが調達上限の目安になります。
不動産担保融資を受ける場合、月商ではなく担保価値によって調達上限が変わります。
土地の担保評価は70%が目安となるため、1億円の土地を持っている会社が担保付融資で調達できる上限は7000万円。
以上のように、銀行融資の調達上限は借入金総額・月商・担保価値などで変化します。
既に多額の借入をしている、業績が悪化している、担保資産の価値が低い、といった場合には調達上限は低くなります。
生命保険の調達上限
生命保険で資金繰りする場合、調達上限は解約返戻金の金額次第です。
生命保険を長期にわたって継続しているならば、解約返戻金が溜まっており、返戻率も高いと考えられます。
したがって、調達上限もそれなりに大きいです。
契約者貸付制度の調達上限も、解約返戻金で決まります。
契約者貸付制度を担保付融資と考えるならば、銀行の不動産担保融資よりも好条件で調達できます。
生命保険によって異なるものの、契約者貸付制度の貸付上限は「解約返戻金の70~90%」に設定されていることが多いです。
不動産の担保掛目は55~70%が目安ですから、契約者貸付制度の方が調達効率は良いといえます。
結論:多額の調達はやっぱり銀行が強い
銀行融資と生命保険は、調達上限の根拠が異なります。
銀行融資の場合、会社の月商や担保価値が調達上限を決めるため、小さな会社でも数百万円、数千万円を調達できることが多いです。
その点、生命保険は解約返戻金によって調達上限が決まります。
法人として生命保険を契約しても、小さな会社が数百万円、数千万円の解約返戻金を貯めるのは容易ではありません。
経営者個人の生命保険を会社の資金繰りに充てるならばなおさらです。
例えば、保険料が月々1万円の生命保険に加入し、10年間継続すれば120万円の保険料を支払ったことになります。
この時点での返戻率を70%とすれば、受け取れる解約返戻金は84万円。
契約者貸付制度の貸付上限が解約返戻金の80%であれば、調達上限は67.2万円です。
個人事業主や、小さな会社のちょっとした資金繰りには役立つでしょうが、調達上限は低いです。
設備投資などのためにまとまった資金を調達するならば、生命保険よりも銀行融資のほうが適しています。
資金繰りの負担を比較
資金調達方法を比較する際、見落としてはならないのが資金繰りの負担です。
調達後の資金繰りの負担が大きい場合、一時的に資金繰りを維持できても、長期的には資金繰りが悪化する可能性があります。
銀行融資と生命保険の資金繰り負担を比較してみましょう。
銀行融資の資金繰り負担
銀行融資には返済義務があり、返済計画に沿って元金と利息を支払います。
返済が完了するまでは、これが資金繰りの負担になります。
もっとも、調達後に経営が大幅に悪化しなければ、資金繰り負担はあまり問題になりません。
銀行は、過去の決算内容から現在の返済力を測定し、将来的な(返済期間中の)返済力を見込んで融資します。
現時点の返済力に問題があれば、そもそも融資を受けることはできません。
返済力の低下が懸念される場合、何らかの保全を求められるはずです。
もちろん、返済計画は現在と将来の返済力を考慮しながら、無理のない計画を立てます。
返済計画に無理があれば、融資先の資金繰りが破綻して貸し倒れになったり、リスケジュールを求められたりする危険が高まり、銀行にとっても不都合です。
つまり、現在の経営を維持できれば、さほど資金繰りの負担にならず、無理なく返済できるように計画されています。
問題は、経営が悪化した時です。
従来は「無理のない返済計画」であっても、現在では無理が生じ、資金繰りの負担が過大となることがあります。
その場合は、銀行にリスケジュールを依頼し、元金返済を一時的に据え置くことで資金繰り負担を軽減することも可能です。
このように考えると、銀行融資の資金繰り負担は一概に軽いとも重いともいえません。
生命保険の資金繰り負担
生命保険の資金繰り負担は軽いです。
まず、生命保険の解約返戻金を資金繰りに充てる場合、返済義務がないため資金繰りの負担にはなりません。
また、解約返戻金を受け取った後(生命保険の解約後)は保険料の支払いもなくなり、資金繰りの負担を軽減できます。
契約者貸付制度で資金を調達する場合、返済義務があります。
しかしながら、資金繰り負担は軽微です。
というのも、契約者貸付制度には返済計画というものがありません。
銀行融資のように計画に沿って返済するのではなく、借入限度額の中で借入・返済を自由にできる仕組みとなっています。
資金繰りが苦しければ、しばらく返済せずに資金繰り改善に専念し、余裕ができてから返済することも可能です。
後述の通り、契約者貸付制度には金利がかかりますが、利息の支払いも基本的には自由です。
元金・利息ともに支払いを先送りできます。
契約者貸付制度は解約せずに資金を調達するため、調達後も保険料の支払いが続きます。
保険料の支払いが滞った場合、生命保険が強制解約になるため注意してください。
自由とはいえ返済義務があること、利息が発生すること、保険料の支払いが続くことが、契約者貸付制度の資金繰り負担といえるでしょう。
結論:資金繰り負担を避けるには生命保険を
銀行融資と生命保険の資金繰り負担を比較すると、生命保険に軍配が上がります。
資金繰り負担を避けることを重視する場合、銀行融資よりも生命保険のほうがおすすめです。
例えば、既に多額の銀行融資を受けている会社は、生命保険を検討してみてください。
借入総額が小さければ、少々経営が悪化しても資金繰りが破綻することはありません。
しかし、借入総額が大きい会社は、少しの経営悪化で資金繰り負担が過大となり、リスケジュールを余儀なくされることも多いです。
このような場合、生命保険で資金を調達し、資金繰りの負担増を避けるべきでしょう。
調達コストを比較
どのような資金調達方法も、調達コストがかかります。
銀行融資と生命保険の調達コストを比較してみましょう。
銀行融資の調達コスト
銀行融資には返済義務があり、元金に利息を上乗せして返済します。
銀行は低金利で融資しており、年2~3%の設定が一般的です。
もちろん、これよりも低い金利で借り入れることもできます。
実際に、銀行から融資提案を受けることによって、年利1%台で調達できるケースも。
銀行融資の調達コストのうち、最も大きいのは支払利息です。
事務手数料や印紙代を求められることがありますが、調達コスト全体からみれば微々たるものです。
ただし、信用保証協会の保証を受ける場合、保証料の支払いが発生します。
保証料率の目安は、借入総額に対して1.5%が目安です。
銀行に支払う利息と、信用保証協会に支払う保証料がダブルでかかり、資金繰りの負担になるため注意してください。
生命保険の調達コストは高い
基本的に、生命保険の調達コストは高いものと考えてください。
解約返戻金を資金繰りに充てる場合、生命保険を解約すれば受け取ることができ、金利や保証料などは一切かかりません。
表面的には、調達コストがゼロにもみえます。
しかし、解約返戻金が発生する前提として、会社は生命保険に加入し、保険料の支払いを続けています。
つまり、調達した解約返戻金は、元々は会社のお金です。
さらに、積み立てた保険料が全て返ってくるわけではありません。
払い込んだ保険料が1000万円、返戻率が75%であれば、支払われる解約返戻金は750万円です。
25%の部分(250万円)は戻ってこず、いわば損失になります。
同じお金を生命保険ではなく、銀行の預金として積み立てていれば、調達コストゼロで1000万円を調達できたはずです。
このように考えると、生命保険の調達コストは高いといえます。
契約者貸付制度は複利に注意
同様に、契約者貸付制度の調達コストも高いです。
契約者貸付制度の金利は、生命保険の種類によって異なりますが、年2~8%が目安です。
これだけでも、銀行融資より調達コストが高いことが分かります。
さらに、返済の仕方によっては調達コストがどんどん膨らんでいきます。
上記の通り、契約者貸付制度は返済の自由度が高く、支払利息を繰り越すことも可能です。
ただし、その場合には金利が複利になるため、調達コストは加速度的に増えていきます。
例えば、金利5%で100万円調達し、元金を一切返済しなかった場合、初年度の支払利息は5万円です。
この利息を繰り越すと元金は105万円に増え、翌年は105万円に対して5%の金利がかかります。
返済を放置していると、元金と利息が雪だるま式に増えていくのです。
最悪のケースは、利息の支払いが資金繰りの大きな負担となり、さらに放置を続けた結果、元金が貸付上限を超過するケース。
契約者貸付制度は、解約返戻金の範囲内で一定額を貸し付けるものです。
貸付上限を超えてしまうと、生命保険が失効し、強制解約になります。
もちろん、解約返戻金の大部分を借り入れている状態ですから、解約後の返戻金は期待できません。
結論:調達コストは銀行融資が安い
以上の比較から分かる通り、生命保険よりも銀行融資の方が調達コストは安いです。
金利と保証料を合わせても、生命保険の調達コストより安くなります。
もっとも、生命保険は様々な目的(節税効果、調達のしやすさなど)で利用するため、単純に調達コストだけで比較するのは難しいでしょう。
その他の効果を総合して比較すれば、生命保険のコストが必ずしも高いとは言い切れません。
なお、銀行融資を受けられないからといって、安易にビジネスローンを利用すべきではありません。
銀行もビジネスローンを扱っていますが、金利はかなり高い設定です。
経営状況が悪い会社や、初めてビジネスローンを利用する会社では、年利15%程度の設定も珍しくありません。
生命保険の契約者貸付制度と比較しても、ビジネスローンは調達コストが高いため、資金繰りの大きな負担になります。
まとめ:生命保険を資金繰りに活用しましょう
生命保険と資金繰りについて詳しく解説しました。
この記事の内容からも分かるように、生命保険を資金繰りに活かすのは簡単ではありません。
生命保険で節税し、資金繰りを改善したいと思っていても、実際には逆効果ということも多いです。
解約返戻金や契約者貸付制度で資金を調達する場合も、資金繰り負担や調達コストをよく考え、銀行融資とうまく組み合わせる必要があります。
生命保険は、うまく使えば資金繰りに役立ち、使い方を誤ると逆効果になるのです。
資金繰りへの効果を十分に考えたうえで、生命保険の見直しや解約も検討してみてください。
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