ファクタリングの二重譲渡は犯罪になる?対抗要件と刑事リスクを解説
ファクタリングを利用した後、同じ売掛債権を別のファクタリング会社にも売却する行為は、一般に「二重譲渡」と呼ばれます。二重譲渡は契約違反や損害賠償の問題につながるだけでなく、事実関係によっては詐欺罪などの刑事責任が問題になる可能性があります。
ただし、「二重譲渡をした時点で必ず犯罪になる」「先に登記した会社が常に勝つ」という単純な整理は正確ではありません。民事上の権利関係と刑事責任は分けて考える必要があります。
ファクタリングの二重譲渡とは
二重譲渡とは、同一の債権を複数の相手に重ねて譲渡することです。たとえばA社に100万円の売掛債権を譲渡した後、同じ債権をB社にも譲渡するケースが該当します。
一方、異なる請求書や異なる売掛債権を別々のファクタリング会社へ売却することや、契約成立前に複数社から相見積もりを取ることは、同一債権の二重譲渡とは異なります。
二重譲渡が起きたときは「対抗要件」が重要
債権譲渡の当事者間では契約によって譲渡の効力が生じますが、債務者や第三者に対して誰が権利を主張できるかは「対抗要件」が重要になります。
民法上、第三者に対抗するためには、原則として確定日付のある証書による債務者への通知または債務者の承諾が必要です。法人が債権を譲渡する場合は、債権譲渡登記によって第三者対抗要件を備える方法もあります。
法務省は、債権譲渡登記による対抗要件が民法上の通知・承諾より常に優先するわけではなく、対抗要件を備えた時点の先後によって優劣が決まると説明しています。また、登記は債権が実際に存在することや、譲渡が有効に行われたこと自体を証明する制度ではありません。
二重譲渡は必ず犯罪になるのか
二重譲渡という事実だけで、直ちに詐欺罪が成立するとまではいえません。刑事責任の有無は、譲渡済みであることを隠して相手をだます意思があったか、その説明によって相手が買取代金を支払ったかなど、具体的な事実関係に基づいて判断されます。
たとえば、すでに他社へ売却した債権であることを知りながら「未譲渡の債権です」と偽り、別の会社から買取代金を受け取った場合には、詐欺罪等が問題になる可能性があります。現在、刑法上の懲役・禁錮は廃止され、2025年6月1日から「拘禁刑」に一本化されています。
3社間ファクタリングでも二重譲渡が「絶対に不可能」とは限らない
3社間ファクタリングでは売掛先が債権譲渡を認識し、支払先もファクタリング会社に変更されるのが通常です。そのため実務上は二重譲渡を行いにくく、発覚もしやすいといえます。
しかし、制度上「3社間なら二重譲渡そのものが物理的・法律的に絶対不可能」と断定するのは適切ではありません。重要なのは、どのような譲渡契約が締結され、誰がいつ対抗要件を備えたかです。
二重譲渡が発覚する主なきっかけ
- 債権譲渡登記の確認
- 売掛先への確認や支払先変更の過程
- 支払期日に複数の譲受人が同じ債権の支払いを求める
- 請求書・入出金履歴・契約書の照合
二重譲渡が判明すれば、契約解除、買取代金の返還請求、損害賠償請求などの民事上の問題が生じる可能性があります。故意に相手をだまして資金を得た事情があれば、刑事事件へ発展することもあります。
複数のファクタリング会社を利用したい場合
複数社の利用自体が禁止されているわけではありません。異なる売掛債権を会社ごとに使い分けたり、契約前に相見積もりを取ったりすることは可能です。ただし、同一債権をすでに譲渡した後に再度売却しないこと、契約上の表明保証や通知義務を確認することが重要です。
まとめ
ファクタリングの二重譲渡は、単純に「二重譲渡=必ず犯罪」と整理するのではなく、民事上の対抗要件と刑事責任を分けて理解する必要があります。同一債権をすでに売却している場合は、別会社へ重ねて売却せず、追加の資金調達が必要なら別の売掛債権を利用するなど、適法かつ透明な方法を選びましょう。
参考資料
※本記事は2026年10月6日時点の法令・公的資料をもとに一般的な情報を整理したものです。個別案件の法的判断は、契約内容や事実関係によって異なります。
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