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カテゴリー: 経営情報

生命保険を利用した資金繰り対策 生命保険での事業承継策

現在、中小企業の経営者の約4割が65歳以上であり、経営者の引退年齢が67~70歳とすれば、今後約5年で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えることが考えられます。
スムーズに事業承継を進めるためにも、早い段階で資金繰り対策と事業承継策を練っておくことが重要です。
また、経営者の死亡などにより、突然の事業を承継する場合にも、事業承継策が欠かせません。
相続税などを含め多額の資金が必要となるためです。

そして、その資金繰り対策の一つの方法として、法人が経営者を保険の対象とした生命保険(事業保険)を活用する方法があります。

この記事では、資金繰り対策と事業承継策に生命保険(事業保険)をどのように活用するのかを解説します。

事業承継策はなぜ必要か

 
経営者の任務は多岐にわたりますが、その最たるものが資金繰り対策です。
資金繰りがショートすれば、取引先への支払いや銀行への返済に遅れ、信用を失い、倒産の危険も大いにあります。
日々、資金繰り対策に奔走している経営者もいることでしょう。
これに劣らず重要なのが事業承継策です。
昨今、事業承継策の重要性は高まる一方です。
経営者の年齢の中央値は、直近の20年間で47歳から66歳へ上昇しています。
この高齢化により、事業承継策を迫られる経営者が増えているのです。
しかしながら、事業承継策は簡単なものではありません。
難しいだけに、できるだけ早い段階で事業承継策を立て、備えておくことが重要です。
まずは、事業承継策の重要性について、3つの観点からみていきましょう。

資金繰り対策のため

 
事業承継策が重要といえる最大の理由は、資金繰り対策の観点から考えるとよくわかります。
事業承継の形は会社ごとに異なり、それによって事業承継策のあり方も変わってきます。
しかしながら、どのような事業承継策を図るにせよ経済的な負担がつきものです。
資金繰りの負担に備えるためにも、資金繰り対策としての事業承継策が重要となります。
分かりやすいのが税金です。
事業承継の際には、元の経営者から次の経営者に株式を譲渡します。
株式譲渡によって発生するのが贈与税・相続税です。
経営者の勇退によって事業承継を行う場合、生前贈与という形で株式を譲渡するため、贈与税が発生します。
また、経営者の死亡によって事業承継を迫られた場合、相続という形で株式譲渡が行われ、相続税が発生。
生前贈与にせよ、相続にせよ、事業を受け継ぐ人は税金を支払わなければなりません。
この時、納税資金がなければ、スムーズな事業承継はできなくなります。
特に生前贈与の場合、ある一定の時期に事業承継を進めるわけですが、資金繰り対策が甘かったために税金を支払えず、予定通りに事業承継が進まないケースもしばしばです。
このとき、相続税の納付を猶予・免除できる事業承継税制を活用するのも一つの手です。
しかしながら、そのような税制を利用するにしても、事前の事業承継策(例えば専門家への相談など)があってこそ。
資金繰り対策をせずに無理な事業承継を断行すれば、会社としても個人としても資金が枯渇する恐れがあります。
そうなれば、事業承継後の資金繰り対策もうまくいかず、経営悪化により倒産、延いては継承者個人が借金を背負って困窮…ということにもなりかねません。
事業承継の資金繰り対策に必要なのは、何といっても現金です。
現金の確保こそ資金繰り対策の根幹であり、また事業承継策の軸といっても過言ではないでしょう。
この記事で解説する「事業承継策としての生命保険の活用」も、多くは事業承継に伴う資金繰り対策に関連しています。

突発的な事業承継に備えるため

 
事業承継策は、早い段階で考えておくことが重要です。
とはいえ、現実的には突発的な事業承継を迫られるケースもあります。
現在の経営者が病気や事故によって突然死亡すれば、事業承継策がほとんど手つかずのまま、事業承継に取り組まなければなりません。
経営者が高齢化している昨今、突発的な事業承継のリスクが高まっています。
突発的に事業承継が発生し、その際に事業承継策を何ら講じていなければ、資金的な問題に直面する可能性が高いです。
上記の通り、事業承継策と資金繰り対策は切り離せないものです。
事業承継策が手つかずということは、事業承継のための資金繰り対策もできていないと考えるべきでしょう。
突発的であるだけに、その時になってから資金繰り対策を講じるのは不可能です。
大抵は資金不足のまま、無理な事業承継策を推し進めることになります。
その結果、納税による困窮、事業承継後の資金繰り対策の困難、経営の悪化、倒産の危機などに発展していきます。
事業承継策に取り組まなかったばかりに、二次的・三次的な問題が次から次へと起こるのです。
ただでさえ、事業を引き継ぐのは容易ではありません。
引き継ぐ人は、経営者としての経験が全くないのが普通です。
前の経営者の突然死によって事業承継に至った場合、直接の指導・業務の引き継ぎを受けないまま経営に携わることになります。
一時的に事業が悪化するのはやむを得ないことです。
事業承継策を立てておくことは、単に資金繰り対策のためだけではなく、日ごろから事業承継を意識することにもつながります。
相続人が自社の一社員として勤めている時代から、次代の経営を担うことを見据えて指導できるのです。
突発的な事態にも対応できるよう、日ごろから事業承継策を考えておく必要があります。

相続トラブルに備えるため

 
事業承継策は、相続トラブルの備えとしても重要です。
法定相続人が一人であれば問題ありませんが、多くの場合、複数の相続人が相続することになります。
この場合、法定相続分に基づいて株式譲渡を行うため、相続によって株式が分散することは避けられません。
持ち株比率によって株主の権利は変わります。
事業承継の際に株式が分散すれば、経営者に集中していた経営権も分散し、事業承継後の経営に支障を来します。
これを防ぐには、株式を分散させないための事業承継策が必要です。
特定の相続人(次代の経営者)が株式を一手に引き受け、他の相続人には株式の代償として現金を支払うことで、株式の分散を防げます。
これを代償分割といいます。
相続財産に多額の預貯金があれば、相続した預貯金によって代償分割を行うことも可能です。
実際にはそのようなケースはまれで、代償分割のための事業承継策が求められます。
他の相続人に代償金を支払うための資金がなければ、現実的に代償分割はできません。
代償分割のための資金繰り対策を想定し、事前に事業承継策を練っておくことが重要です。

事業承継策に生命保険が役立つ4つの理由

 
事業承継策には資金繰り対策がつきものです。
先立つものがなければ、事業承継はうまくいきません。
そこで直面するのが資金調達の問題です。
事業承継策には生命保険が役立ちます。

事業承継策では、「自社株対策資金」、「借入金対策」、「運転資金対策」、「贈与税・相続税対策」の4点の資金繰り対策が重要となります。

そしてこの資金対策での生命保険(事業保険)活用について説明していきましょう。

自社株対策資金①:生命保険で自社株取得資金を確保

 
事業承継策の中心となる問題のひとつに、自社株の問題があります。
事業承継の際には、現経営者の所有している株式を譲渡しなければなりません。
このとき生命保険が役立ちます。

経営者が急に死亡したような場合、高額になりかねない相続税の対策も合わせて事業承継策を考えなければなりません。

この事業承継策として、経営者を被保険者とし会社を受取人に指定した生命保険(事業保険)による保険金を活用するのが効果的です。
この場合、現経営者が死亡した際には、法人が保険金を受け取ります。
その保険金を事業資金に充てることで、様々な事業承継策が可能となるのです。
非上場企業は、上場株式のように公開市場で自由に売却できません。
相続税を捻出するために、相続した自社株を現金化することは困難です。
かといって、自社の資金繰り対策ができていなければ、自社株取得も難しいでしょう。

生命保険(事業保険)の保険金を自社株取得資金にすることで、後継者の相続した自社株を会社が取得し、納税に充てることもできます。
そして、後継者は自社株の売却した資金で相続税を支払い、事業承継をスムーズに進めることができるのです。

自社株取得対策②生命保険で自社株の評価額を下げる

 
事業承継策に生命保険を活用することは、自社株の価格を抑えることにも役立ちます。
そもそも、事業承継策に税金の問題を織り込むのは、納税額が大きくなりがちだからです。
株式の譲渡を受けた際の納税額は、株式の評価額によって決まります。
上場株式であれば、株式の市場価格(時価)から評価額を算出し、納税額を把握できるため資金繰り対策も考えやすいです。
しかし非上場株式の評価額は、上場株式のように明確ではありません。
非上場企業の株式価格は、主に二つの方法によって算定します。
一つは、純資産の時価から解散価値を算定し、株価を決定する純資産価額方式。
もう一つは、上場企業の業績と自社の業績を比較することで株価を見積もる類似業種批准方式です。
しかしながら、これらの方法によって、自社株の価格を正確に見積もることには大きな問題があります。
どちらの方法を用いても、優良な企業ほど株価が高くなるのです。
上場企業の株価は、投資家の心理によって大きく左右されるため、優良企業の株価が安くなることもよくあります。
一方、非上場企業の株価には投資家心理というものが影響せず、純粋に経営内容だけで判断します。
これにより、「優良な企業は株価が高くなる」「優良でない企業は株価が安くなる」という明確な差が生じるのです。
ここに事業承継策のジレンマがあります。
現経営者としては、優良な企業・事業を引き継がせたいと考えるでしょう。
その場合、自社株の評価額が過大に評価されやすく、納税の点で事業承継策が難しくなります。
自社株の評価額を下げるためには、経営内容、すなわち決算書の内容を悪くしなければなりません。
かといって、業績・財務を故意に悪化させるのは考え物です。
その結果、事業承継後の立て直しに苦労したり、銀行評価の悪化により借入が困難になったりすれば、健全な事業承継策とはいえません。
自社株の評価額を無理のない範囲で抑えるには、生命保険が役立ちます。
生命保険で支払う保険金は損金算入が認められています。
生命保険によって利益を圧縮し、資産を減らすことで、自社株の評価額を下げることができるのです。
結果的に、株式譲渡時の納税額も減り、資金繰り対策も柔軟になります。
生命保険を事業承継策に活用する際には、株価への影響も意識してください。

融資対策・借入金対策

 
事業承継の捉え方は金融機関によって異なります。
後継者不足に悩む会社が増えている昨今、後継者を確保し、事業を引き継げることは、基本的に好ましいことです。
しかし、結局のところ、後継者の資質によりけりです。
後継者が有望であれば、銀行は事業承継を高く評価します。
事業承継後に経営が改善したり、事業が伸びたりすることを想定し、積極的に取引してくれる銀行もあるはずです。
逆に、後継者に問題があれば、銀行は事業承継を評価しません。
分かりやすいのが、創業者は苦労人で経営者としての手腕も信用できる、しかし二代目は苦労を知らず経営者としての資質に疑いがある、というケース。
この場合、銀行は事業承継後の経営悪化を危ぶみ、融資姿勢が消極化することもあります。
だからこそ、事業承継策の一環として後継者の育成も重要となるわけです。
ところが、突発的な事業承継となるとそうはいきません。
経営者の資質に欠ける相続人や、経験不足の相続人が事業承継を余儀なくされるケースもしばしばです。
後継者が経営者にふさわしい資質を備えていても、銀行がすぐにそれを認めるとは限りません。
したがって、経営者の死亡を想定して事業承継策を立てる場合、一時的に金融機関からの信用が低下することも考えておかなければならないでしょう。
簡単にいえば、突発的な事業承継は融資環境の悪化を招きやすく、それを踏まえた資金繰り対策・事業承継策が必要となります。
具体的には、事業承継後に以下のような問題が想定されます。

  • 先代のころはプロパー融資で調達できたが、事業承継後、担保・保証を求められるようになった。いずれも不足しており追加の調達が困難となり、資金繰り対策が成り立たない。
  • 事業承継後、長期借入ができなくなった。経営改革のために設備投資をしたいが、資金繰り対策ができない。
  • 先代が一行取引を続けてきたため、事業承継後、新規取引銀行の開拓を進めたい。しかし融資に応じる銀行が見つからず、今後の資金繰り対策が不安である。
  • 事業承継後の体制整備につまずき、業績が悪化した。銀行は後継者の経営手腕に不安を抱き、融資を危ぶんでいる。
  • 事業承継後の追加融資で、金利が高くなった。支払利息が負担になり、資金繰り対策が難しくなった。

事業承継策がないまま引き継いだ後継者は、往々にして上記のような問題に直面します。
事業承継後、融資を受けられずに資金繰り対策が行き詰まるケースもあるのです。
最悪の場合、資金ショートから倒産に至るわけですが、この時に問題となるのが先代の頃の借金です。

会社が金融機関からの融資を受けていた場合、万一返済が滞ると後継者やその家族にも返済の義務がふりかかるケースも想定されます。

その対策として、生命保険による事業承継策が役立ちます。
事前に短期と長期の借入金の返済を見越した保証額に見合う生命保険(事業保険)に加入し、保険金の受取人を会社にしておくのです。
この事業承継策によって、借入金をいつでも返済できる状態で事業を引き継ぐことができます。
後継者の精神的な負担は軽くなり、事業承継後の経営に専念できるでしょう。
銀行としても、後継者の資質の如何にかかわらず、返済原資が確保できていることに安心感を抱きます。
生命保険で事業承継策を図ることで、事業承継後の銀行取引が円滑になり、資金繰り対策も柔軟になるのです。

運転資金対策

 
事業承継策はどうあれ、経営を続ける限り資金繰り対策をしなければなりません。
資金繰りが回らなくなれば倒産してしまいます。
何を措いてもお金が必要ですが、中でも欠かせないのが運転資金です。
事業承継策に生命保険を活用すれば、事業承継後の運転資金調達に苦労せずに済みます。
事業承継後、後継者の資質に不安を抱くのは銀行だけではありません。
多かれ少なかれ、全ての取引先が同様と考えるべきです。
例えば仕入先。
先代の経営者は、長年にわたって信用を積み重ね、仕入先の評価も高かったかもしれません。
その場合、与信限度額を高めに設定したり、支払条件を譲歩してくれたり、様々な面で資金繰り対策にプラスになります。
しかし、これはあくまでも先代の経営者の信用に基づくものであって、後継者の信用は別問題です。
慎重な取引先であれば、事業承継後、取引の姿勢が変化することもあります。
後継者の信用を確かめないうちは、与信管理を引き締めるケースもしばしばです。
もちろん、仕入先だけではありません。
売掛先の中にも、事業承継を重くみる人がいるはずです。
全ての取引先の経営者が善良とは限りません。
むしろ、事業承継につけこむ人もいます。
取引先の経営者は経験豊富なやり手、自社の経営者は事業承継したばかりで経験不足。
取引先が事業承継をチャンスと捉え、取引条件の見直しを求めてくるかもしれません。
後継者は右も左も分からない新米経営者ですから、下手に妥協して不利な契約を結んでしまったり、強硬な姿勢を貫いて取引自体を台無しにしてしまったり、様々な困難が予想されます。
特に、経営者が死亡した場合などは、後継者自身とは取引実績がないことなどによる売上の減少といった業績への影響も見越しておかねばならないでしょう。
この時、問題となるのが運転資金です。
運転資金は、「売掛債権+棚卸資産-買掛債務」によって算出します。
売上が減少すれば売掛債権も減少するため、運転資金は減るのが一般的です。
しかし、売上と運転資金は必ずしも連動しません。
むしろ、経験不足な後継者が闇雲に対処したことで、運転資金が増大することもあります。
例えば、売上回復を焦って取扱商品や仕入の数量を増やした場合、棚卸資産の増加によって運転資金が膨らみます。
仕入れたものがうまく売れればよいのですが、売れなければ過剰在庫を抱え、いつまでも運転資金は高止まりすることに。
過剰在庫はやがて不良在庫になり、資金繰り対策はどんどん困難になっていきます。
また売上が減少しても、従業員への給与や取引先への支払いなど固定費は変わらないため、後継者が事業を軌道に乗せるまでの間に必要な固定費をあらかじめ確保する必要があります。

そのために、事業承継と同時に一定の運転資金を確保しておきたいものです。
このような事業承継策には生命保険が役立ちます。できるよう
運転資金の確保を見据えて、生命保険(事業保険)の保証内容を検討しておく必要があるでしょう。

贈与税・相続税対策

 
ここまでの解説でも触れた通り、事業承継策には税金の問題が絡みます。
生命保険で事業承継策を講じることにより、贈与税と相続税の問題にうまく対処でき、資金繰り対策の困難は大幅に緩和されるでしょう。

生命保険で贈与税の支払いに備える

 
まず、贈与税の観点から事業承継策をかんがえてみましょう。
現経営者の引退によって事業を承継する場合、自社株を後継者に生前贈与することになります。
この場合、贈与税が発生します。
後継者は贈与税を納めなければならず、これがネックとなって事業承継がスムーズにいかないケースがよくあります。
現経営者としては、経営が良好なうちに引き継ぎたいと考えるものです。
しかし、前述の通り、非上場企業の株式は、経営内容が株価にはっきりと表れます。
経営内容が良いほど株価は高くなり、事業承継に伴う贈与税も高額になるのです。
納税を考えると資金繰り対策を見通せず、なかなか生前贈与・事業承継に踏み出せない会社もあります。
生命保険が資金繰り対策に役立つのは、死亡時の保険金だけではありません。
生命保険の種類にもよりますが、一定期間にわたり保険料を支払うことで、解約返戻金が受け取れるものがあります。
この解約返戻金が、事業承継策・資金繰り対策に役立ちます。
単純なのは、事業承継時に生命保険を解約し、解約返戻金を受け取る方法です。
また、解約返戻金を担保にすることで、保険会社から契約者貸付という形で資金を調達できます。
この場合、以下のような事業承継策・資金繰り対策が成り立ちます。

    1. 生前贈与によって事業承継を行う。
    2. 会社は生命保険の契約者貸付で資金を調達する。
    3. 調達した資金で後継者から自社株を取得する。
    4. 後継者は株式の売却代金で贈与税を支払う。

このように資金繰り対策ができれば、生前贈与の困難はなくなり、計画的な事業承継も可能となります。

生命保険で相続税の支払いに備える

 
事業承継策に生命保険を活用すれば、相続税の備えにもなります。
経営者が死亡した場合、後継者や遺族、つまり法定相続人は様々な遺産を相続します。
相続人は、相続した遺産に応じて相続税を支払わなければなりません。
会社の株式を相続すれば、その時価に応じた相続税が発生します。
特に自社株の評価額が高い場合には、その相続税額が高額になります。
前述の通り、相続税を見据えた事業承継策として、法人による自社株取得がひとつ。
この場合、会社が保険金を受け取り、それを自社株取得の資金に充てます。
もっとも、これは相続人が納税資金を持っていない場合のアプローチであって、納税できれば会社が株式を買い取る必要はありません。

相続した自社株や不動産などを資金化し、相続税の支払いに充てるのも一つの手です。
しかし、このような資産は、流動性が低く、すぐにお金にかえることが難しいのも現実です。
特に、会社が非上場企業であれば、右から左へ売れるものではありません。
理想的なのは、事前に事業承継策を講じ、納税資金に充てることです。
生命保険の最大のメリットは、保険金の受取人を指定しておくことで、特定の相手にキャッシュを残せること。
後継者を保険金の受取人に指定すれば、後継者は保険金で相続税を支払うことができ、スムーズな事業承継につながります。
それも見越して生命保険(事業保険)の保証内容を検討しておくことも重要です。

生命保険(事業保険)は、万一のための事業承継策として効果的です。

ただし保険料の支払いにより経営の負担とならないよう、経営者の健康状態から保証内容、保険料の支払いや税制なども注意を払いながら活用していくことをおすすめします。

事業承継策に使える4種の生命保険

 
ここまで、事業承継策の重要性、生命保険が事業承継策に役立つことを解説しました。
では、実際の事業承継策はどのように進めるのでしょうか。
正しい事業承継策のためには、生命保険の選び方を知っておくことが重要です。
一口に生命保険といっても、色々あります。
事業承継策に使える4種の生命保険と、選び方のポイントをみていきましょう。

定期保険

 
まず、定期保険について考えてみます。
定期保険とは、保障期間が限定されている掛け捨て型の生命保険です。
このタイプの生命保険は、他の生命保険よりも保険料が安く設定されており、コスト面から資金繰り対策を考えたい会社におすすめです。
保障期間中に被保険者(現在の経営者)が死亡すると、保険金が支払われます。
現経営者の死亡によって突発的な事業承継を迫られた場合、この保険金を資金繰り対策に使えるわけです。
ただし、保障期間を過ぎてしまうと保険金を受け取ることができず、事業承継策には役立ちません。
この点をカバーするには、長期保障タイプの生命保険を選ぶと良いでしょう。
例えば「保障期間は100歳まで」といったものがあります。
また、途中解約すると、返戻金をほとんど(あるいは全く)受け取れない点にも注意が必要です。
したがって、解約返戻金を用いた事業承継策(契約者貸付を含む)にも使えないため注意してください。
低コストで事業承継策を行いたい場合には、このタイプの生命保険を選ぶと良いでしょう。

終身保険

 
次に解説するのは、終身型の生命保険です。
終身保険は、保障期間が定められていません。
解約しない限り保障が続き、死亡時保険金を必ず受け取れます。
このため、経営者の勇退時期が決まっていない場合の事業承継策に効果的です。
また、ほとんどの終身保険には解約返戻金があります。
生命保険を解約した際、保険料を支払った期間に応じて返戻金を受け取ることができます。
解約時期や返戻率の問題はあるものの、現経営者の死亡にかかわらず、解約返戻金が資金繰り対策・事業承継策に役立つのです。
事業承継策に生命保険が役立つ理由として、自社株取得対策を挙げました。
法人が保険金の受取人となり、その資金で自社株を取得し、後継者の納税資金を用立てるものです。
自社株取得以外にも、融資・借入金対策、運転資金対策など、活用の範囲は広いです。
もちろん、後継者が保険金を受け取り、納税資金その他に充てることもできます。
このような事業承継策には、終身保険が役立ちます。
終身保険の問題点は、保険料の高さです。
他の生命保険に比べて保険料が高く設定されていることが多いため、この点をよく理解した上で資金繰り対策が必要となります。
コスト負担と事業承継策のバランスを考えて、無理のない生命保険を選びましょう。

長期平準定期保険

 
長期平準定期保険は、上記の定期保険の一種です。
事業承継策に利用されることも多く、経営者向けの生命保険として知られています。
保障期間が長期に設定されていること、そして保障期間中、保険料が変わらないことが特徴です。
保障期間が長いことから、定期保険でありながら終身保険と同じように事業承継策に使えます。
死亡時の保険金が事業承継策に役立つだけでなく、解約返戻金を受け取れることもメリットです。
また、保険料が変わらないため、資金繰り対策を立てやすい生命保険といえます。

逓増定期保険

 
逓増定期保険の「逓増」とは、次第に増すことを意味します。
逓増定期保険も、定期保険の一種です。
このため、保障期間があらかじめ決まっているのが特徴のひとつ。
これに加えて、逓増定期保険は、加入期間が長くなるにつれて、受け取れる保険金が多くなっていきます。
ただし、増えていくのは保険金だけではありません。
加入期間の前期と後期で保険料が異なり、加入期間が長くなると保険料も高くなります。
逓増定期保険を事業承継策に活用する際には、保険料の変動をあらかじめ織り込み、資金繰り対策を立てることが重要です。
また、返戻率にも注意してください。
一般的に、逓増定期保険の返戻率は5~10年でピークを迎えます。
ピークを過ぎると返戻率は下がり、満期を迎えるとゼロに。
返戻率がピークになるタイミングと、事業承継のタイミングを合わせることで、事業承継策に役立ちます。
近い将来に事業承継を予定している場合、事業承継策に活用しやすい生命保険といえるでしょう。
事業承継のタイミングが未定の場合や、事業承継がまだまだ先という場合には、逓増定期保険は事業承継策に役立ちません。

選ぶべき生命保険は今後の見通しで決まる

 
以上、四種の生命保険と、事業承継策への効果を解説しました。
事業承継策のためにどの生命保険を選ぶかについては、今後の見通しで決まります。

事業承継の時期が決まっている場合

 
生命保険を選ぶ時点で事業承継の時期が明確に決まっているならば、事業承継策に効果的なのは定期保険です。
定期保険は終身保険よりも保険料が安いため、資金繰り対策が比較的容易であり、無理のない事業承継策を立てることができます。
今後10年以内に事業承継を予定している会社には、解約返戻金を事業承継策に活用できる逓増定期保険がおすすめです。
事業承継の時期は決まっているものの、20年、30年先を予定している場合、その時期に返戻率がピークを迎える長期平準定期保険を選ぶべきでしょう。

事業承継の時期が決まっていない場合

 
事業承継の時期が決まっていない場合、定期保険ではなく終身保険がおすすめです。
終身保険を選んでおけば、いつでも死亡時保険金を受け取れます。
定期保険のように、保障期間が過ぎて死亡時保険金を受け取れない、満期を迎えたため解約返戻金がゼロになる、といった心配はありません。
また、事業承継を予定していない理由として、現経営者が生涯現役でありたいと考えていることも多いです。
この場合、事業承継策は現経営者の勇退ではなく、死亡を想定しなければなりません。
事業承継策に適している生命保険は、終身保険または長期平準定期保険です。
終身保険は、経営者がいつ亡くなっても保険金を受け取ることができ、事業承継に伴う資金繰り対策に役立ちます。
保障期間が長い長期平準定期保険も、実質的には終身保険と同様の効果が期待できます。
なおかつ保険料が変わらないことから、保障期間中の資金繰り対策を立てやすいことも魅力です。
終身保険と長期平準定期保険は、どちらも解約返戻金を受け取ることができます。
生命保険の加入時は生涯現役を考えていても、病気などにより引退を余儀なくされるケースは少なくありません。
その際には、解約返戻金を受け取ることで、スムーズな事業承継につながります。

事業承継策に生命保険を活用する際の注意点

 
ここまでの内容から、事業承継策に生命保険を活用したいと思った人も多いことでしょう。
実際に、生命保険によって事業承継策を講じる際には、いくつか注意点があります。
主な注意点は以下の三つです。

保険料の負担を織り込む

 
事業承継策として生命保険を取り入れるにあたり、注意すべきは保険料の負担です。
生命保険に加入すれば保険料がかかります。
生命保険の種類によっては、保険料が変動することもあります。
保険料を甘く考えていると、事業承継策はうまくいきません。
支払う保険料が資金繰りを圧迫するためです。
よくあるのが、事業承継の際にお金に困らないように…と考えるあまり、保障内容が必要以上に手厚い生命保険を選ぶケース。
確かに、事業承継時には役立つかもしれませんが、実際の事業承継まで保険料がかかり続けるのです。
このような生命保険は保険料が高く、資金繰りの負担も大きくなりがちです。
保険料がキャッシュフローを圧迫し、業績が悪化することも考えられます。
業績悪化により銀行評価が下がり、融資を受けられなくなれば、事業承継以前の資金繰り対策に支障を来します。
保険料の支払いに耐えられず、解約に至ることもあり得るのです。
解約の直後に経営者が死亡すれば目も当てられません。
事業承継策のために生命保険を利用するはずが、事業承継策には何ら役立たず、「経営悪化」「事業承継の失敗」「資金繰り対策の破綻」といった結果だけが残ります。
かといって、保険料の安さだけで選ぶのも問題です。
保険料が安ければ保障内容も薄く、事業承継策としては不十分な生命保険も少なくありません。
大切なのは、事業承継策を具体的に検討し、それに見合う生命保険を選ぶことです。
事業承継策に適した生命保険が複数あれば、保険料の負担を比較し、資金繰り対策が十分に成り立つものを選びましょう。

計画的な事業承継を

 
事業承継策に適した生命保険の選び方は、事業承継の時期が確定しているか、あるいは未定であるかによって大きく変わります。
事業承継の時期が未定であっても、生命保険で事業承継策を講じることは可能です。
しかしながら、漠然とした事業承継策になることは否めません。
そのために保険料が過大になったり、返戻率が低くなったりすることも多いです。
経営者の死亡により突発的な事業承継となれば、納税の問題が生じます。
「相続財産が予想以上に多く、納税額が高額になってしまった」という失敗もあり得ます。
事業承継策が漠然としていたことで、このような失敗が起こるのです。
事業承継策を立てる以上、事業承継の時期を明確化するに越したことはありません。
事業承継の時期が確定していれば、その時期に合わせて生命保険を選ぶことができます。
返戻率がピークになるタイミングで事業承継に踏み切れば、資金繰り対策も容易になるでしょう。
当然のことながら、事業承継の時期があらかじめ決まっているということは、経営者の死亡による突発的な事業承継ではありません。
財産の相続ではなく、贈与という形になるため、納税額も事前に把握しやすいです。

損金算入に気を付ける

 
生命保険を事業承継策に活用する際、気を付けたいのが損金算入です。
保険料の損金算入することで、支払った保険料の分だけ利益を減らすことができます。
これにより、会社が支払う法人税が安くなるだけではなく、自社株の評価額を下げて贈与税・相続税の対策にも効果的です。
しかし、2019年の制度改正により、返戻率が高い生命保険は損金算入の条件が厳しくなりました。
このため、返戻率が高い生命保険は、以前ほど資金繰り対策・事業承継策への効果は期待できなくなっています。
これからの事業承継策は、保険料の損金算入を軸に考えるのではなく、事業承継に伴う資金繰り対策や納税資金確保を中心に考えるべきでしょう。

まとめ:事業承継策に生命保険を活用しよう

この記事では、事業承継策と生命保険の活用について詳しく解説しました。
経営者の高齢化が進んでいる昨今、事業承継策を検討している経営者は多いことでしょう。
生命保険を活用することで、事業承継がスムーズになり、事業承継後の資金繰り対策にもつながります。
ただし、事業承継策に役立つかどうかは、生命保険の選び方次第です。
生命保険の選び方を誤ると、事業承継策に役立たないのはもちろんのこと、却って逆効果になることもあり得ます。
それを避けるためにも、事業承継策に利用する生命保険は慎重に選びましょう。
事業承継策や資金繰り対策でお悩みの方は、No.1までお気軽にご相談ください。
No.1では、売掛金の早期資金化やコンサルティングを手掛けています。
資金調達や経営改善に精通したスタッフが、お客様ごとに最適な資金繰り対策・事業承継策をご案内します。

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