カテゴリー: 助成金・社内制度
会社経営は助成金・補助金を最大限活用しよう!おすすめの助成金も紹介
いま、企業に対して国や自治体がさまざまな助成金・補助金を出しています。
それぞれの企業にとっては「自分の会社は果たしてどのような助成金・補助金が使えるのだろうか」「助成金・補助金を申請したいと思うが、どのように手続きをすればいいのかわからない」といった声もあるように思います。
しかし助成金・補助金は一定の要件を満たして申請、応募して審査が通れば「もらえるお金」であり、存在や内容を知らないだけでその機会を損失してしまうのは、非常にもったいない話といってもいいでしょう。
この記事では、会社経営に役立つ助成金・補助金の知識と、会社経営に使いやすい助成金について詳しく解説します。
助成金・補助金とは何か〜実はさまざまな助成金・補助金がある~
助成金・補助金とは、特定の条件を満たした企業などが、申請を行うことによって、国や自治体などから受け取ることができる資金です。
まずは助成金と補助金の違いを説明します。
~助成金とは~
助成金・補助金を会社経営に活用する場合、意識したいのは助成金・補助金の目的の違いです。
助成金は、厚生労働省が実施していることからも分かる通り、雇用の維持や創出、労働環境の改善・生産性向上などを目的としています。
人手不足が社会問題になっている昨今、雇用維持・人材確保・生産性向上などは会社経営においても課題となっています。
それらの取り組みを実施した場合、助成金を受給できるかもしれません。
助成金・補助金の大きな違いは、受給の難易度です。
助成金は受給要件を満たしていれば、申請を行えば原則として受け取る事ができます。
そして、融資などとは違って返済不要です。
そもそも助成金には、報奨金としての側面があります。
国の政策を受けて、それに沿った取り組みを実施した会社に助成金を支給するのです。
取り組みに対する評価として助成金が支給されるのですから、不正受給などの特別な場合を除けば返済不要というわけです。
返済不要でありながら、数十万円~数百万円といった助成金を受給できるため、会社経営に活用しない手はありません。
国や自治体によって様々な助成金があり、雇用関係の助成金は現在約50種類が実施されています。
利用しやすい助成金も多いため、まずは自社の取り組みの中で無理なく受給できるものを調べてみると良いでしょう。
ただし、助成金は毎年改定されますが、要件や支給額などが変化します。
廃止になる助成金もあれば新たな助成金もあり、去年まで使えた助成金が今年は使えないということも。
会社経営に役立つ助成金として、以下のものがあります。
-
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- 雇用調整助成金
- キャリアアップ助成金
- トライアル雇用助成金
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~補助金とは~
補助金は、経済産業省が実施しています。
補助金の種類は非常に多く、3000種類以上といわれるほどです。
それほど多ければ、会社経営に利用しやすいようにもみえます。
しかし、会社経営に補助金を活用する場合、助成金よりも難易度は高くなります。
補助金は助成金とは違い、要件さえ満たせば受給できるものではありません。
それぞれの補助金には採択件数が設定されており、採択された会社だけが補助金を受給できます。
応募要件を満たした会社であっても審査の結果、受給できない場合もあるのです。
むしろ受給できない方が多いといってよいでしょう。
なにしろ、補助金の倍率は10~20倍に上ります。
受給金額が大きいこと、返済不要であることから、会社経営に活用したいと考える人が多いのです。
補助金の審査は、書類と面接によって行われます。
受給のために、特に重要となるのが事業計画書。
補助金事業についての事業計画書を作成し、審査担当者が納得できる内容であることが第一関門です。
事業計画書に問題がなければ書類審査を通過し、面接に進みます。
面接では、補助金をどのように会社経営に役立てるのか、事業計画書を踏まえて経営者が自ら説明します。
単に事業計画書をなぞるような質問では審査に通りません。
補助金を活用することで事業の活性化が図れること、社会貢献につながることなどを詳しく説明し、納得させる必要があるのです。
というのも、補助金は事業者の取組の広がりによって、事業の拡大をサポートすることを目的としているのです。
そのため、様々な国や自治体の施策にあわせて補助金が用意され募集されているのです。
代表的な補助金として、以下のようなものがあります。
- ・ものづくり補助金
- ・創業促進補助金(創業補助金)
助成金・補助金をどう使うか〜目的意識を持つこと~
助成金・補助金を、会社経営にどのように活用したいかを明確にしておくことが重要です。
また助成金・補助金のほとんどは、社員研修や人材採用、特定の設備投資など使用目的が決められている場合が多く、事前にどの助成金・補助金を申請するのかしっかりと調べておくことが重要です。
そもそも、目的が決まっていない状態では、助成金・補助金を会社経営に活用することはできません。
まず補助金ですが、上記の通り補助金は審査が厳しいため、目的があやふやな会社が審査に通る可能性はほぼゼロです。
助成金は、目的意識に関係なく、ともかく要件を満たせば受給できます。
しかし、目的が曖昧な状態では、自社が会社経営に使うべき助成金が分からないでしょう。
「助成金・補助金は何でも会社経営に役立つ」などと考えて、手あたり次第に取り組めばよい結果は期待できません。
原則として、助成金・補助金は後払いです。
また、取り組みに要した資金が全額支給されるものではなく、ほとんどは一部の補助に留まります。
目的意識がないまま利用すると、会社経営にあまり役立たない助成金を選ぶ恐れがあります。
役立たない取り組みに資金を投じれば、助成金を受給したところで、却って損になってしまうのです。
助成金・補助金をもらうには〜申請したらすぐにもらえるわけではない~
上記の通り、助成金や補助金は後払いが原則です。
要件を満たせばすぐにもらえるわけではありません。
実際に助成金や補助金を受けとるまで、以下のようなステップが必要です。
1 助成金・補助金を申請する
書類やWebサイトなどから助成金・補助金の申請を行います。
助成金や補助金ごとに申請できる。
受給資格や条件が定められているので、自社がその条件を満たしているかどうかを事前に確認することが必要です。
2 指定されたフォーマットで活動記録を提出する
申請しただけでは助成金や補助金をもらうことはできません。
申請した内容の活動を実際に行っているかを証明するための記録を指定されたフォーマットで提出する必要があります。
3 審査と承認
申請内容と活動記録に基づいた審査が実施され、承認された場合に限って助成金や補助金の支給が決定します。
また助成金や補助金の種類によって承認率は変わり、申請したらすべてが承認されるわけではないので注意が必要です。
4 助成金・補助金を受けとる
活動内容が承認された後に助成金や補助金を受け取ることができます。
しかし助成金や補助金を受けとるまでの時間が申請から1年以上かかるものもあるため注意が必要です。
また、すべての助成金・補助金がかかった費用を全額負担してくれるわけではありません。
助成金や補助金によって補助率や上限額が定められている場合があるので、実際に自社がいくらぐらいの助成金・補助金がもらえるのか申請前に確認することをお勧めします。
助成金や補助金は目的を明確にして、申請をきっちり行うことでもらうことができる、返済が不要なお金です。
申請や活動記録の提出など手続きは必要になりますが、自社の資金調達の中に助成金や補助金をうまく組み入れることで、資金繰りを円滑に進めることができるともいえるでしょう。
自社で顧問契約している「社労士」がいるのであれば、社労士にお願いするのもありでしょう。
2025年、会社経営に使うべき助成金は?
助成金と補助金は仕組みが大きく異なり、受給のハードルにも雲泥の差があります。
会社経営に利用しやすいのは、補助金よりも助成金です。
特に、初めて助成金・補助金を会社経営に使おうと考えているならば、まずは助成金を使うのが無難でしょう。
いろいろな助成金・補助金がある中、この記事で紹介したのは雇用調整助成金、キャリアアップ助成金、トライアル雇用助成金の三つ。
このうち雇用調整助成金は、コロナ禍で利用が増えたことからも分かる通り、経営悪化時に利用する助成金です。
会社経営のために積極的に利用する助成金ではなく、「2025年、会社経営に使うべき助成金」としてはふさわしくありません。
ここでは、2025年の会社経営に活用したい助成金としてキャリアアップ助成金とトライアル雇用助成金を取り上げます。
キャリアアップ助成金の5つのコース
キャリアアップ助成金は、以下の5つのコースから成り立っています。
- 正社員化を支援する「正社員化コース」
- 賃金引き上げを支援する「賃金規定等改定コース」
- 賃金規定の公平化を支援する「賃金規定等共通化コース」
- 賞与・退職金制度の導入を支援する「賞与・退職金制度導入コース」
- 社会保険の積極的な適用を支援する「社会保険適用時処遇改善コース」
すでに解説した通り、助成金・補助金は年々変化しています。
会社経営に利用する上では、助成金・補助金の最新情報を正確に押さえることが重要です。
キャリアアップ助成金も例外ではなく、令和7年度、複数の点で変更されています。
2025年、会社経営に使うべきキャリアアップ助成金について、最新情報をもとにみていきましょう。
正社員化コース
正社員化コースは、キャリアアップ助成金の中でも特に会社経営に役立つものとして有名です。
会社経営に役立つ正社員化コース
正社員化コースは、その名の通り、有期雇用労働者・無期雇用労働者などの非正規雇用労働者を正社員化することで、助成金を受給できます。
正社員化によって、雇用した従業員の定着率を高めることができ、勤続年数が長くなることで高い専門性や生産性も期待でき、会社経営に様々な角度からプラスになります。
とはいえ、正社員化にはコスト負担がつきものです。
会社経営において、人件費の負担は大きく、非正規雇用によって人件費を抑えている会社も少なくありません。
その場合、正社員化によって人件費の負担が高まれば、資金繰りにも不安が出てくることでしょう。
キャリアアップ助成金の正社員化コースを利用すれば、正社員化に伴う負担を軽減できます。
正社員化コースの注意点
キャリアアップ助成金の正社員化コースを会社経営に利用するには、令和7年の変更点をしっかり押さえてください。
令和7年、特に重要なキーワードは「重点支援対象者」です。
正社員化コースの助成金額は、3つの要素によって変動します。
中小企業か大企業か、正社員化する従業員が「重点支援対象者」であるかどうか、有期雇用か無期雇用か、の3つです。
このうち、企業規模と雇用区分は従来と同じですが、令和7年からは重点支援対象者という概念が加わりました。
以下のいずれかに当てはまる場合、「重点支援対象者」とみなします。
- 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
- 雇入れから3年未満であり、「過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下」かつ「過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない」有期雇用労働者のうち
- 派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
ただし例外もあるため、会社経営に役立てる際には専門家に相談してください。
正社員化する従業員が重点支援対象者であるかどうかによって、助成金額は大きく変わってきます。
重点支援対象者の概念を理解し、自社が正社員化によって受給できる金額を把握してこそ、会社経営に助成金を活用できるのです。
正社員化コースの助成金額
以上を踏まえて、キャリアアップ助成金の正社員化コースの助成金額をみていきましょう。
- 中小企業が重点支援対象者を正社員化する場合、有期雇用は80万円(40万円×2期)、無期雇用は40万円(20万円×2期)
- 大企業が重点支援対象者を正社員化する場合、有期雇用は60万円(30万円×2期)、無期雇用は30万円(15万円×2期)
- 中小企業が重点支援対象者以外を正社員化する場合、有期雇用は40万円(40万円×1期)、無期雇用は20万円(20万円×1期)
- 大企業が重点支援対象者以外を正社員化する場合、有期雇用は30万円(30万円×1期)、無期雇用は15万円(15万円×1期)
なお、正社員化コースの申請上限人数は、1年度1事業所当たり20人となっています。
重点支援対象・有期・無期などの要素に関係なく、全部ひっくるめて20人ですから、会社経営に最も効率的な申請を考え、助成金額を伸ばしたいものです。
正社員化コースの加算
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、一定の要件を満たすことで助成金額が加算されます。
具体的には、1事業所当たり1回のみ、以下の措置によって加算を受けられます。
- 正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合、中小企業は20万円、大企業は15万円の加算
- 多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定・短時間正社員いずれか一つ以上)を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合、中小企業は40万円、大企業は30万円の加算
重点支援対象者を積極的に正社員化し、加算も狙っていけば、数百万円単位の助成金も決して不可能ではありません。
会社経営に利用すべき助成金・補助金に迷っているならば、まずはキャリアアップ助成金の正社員化コースを検討してみてください。
賃金規定等改定コース
キャリアアップ助成金のうち、賃金規定等改定コースも会社経営に活用したい助成金です。
賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者と無期雇用労働者の基本給について、賃金規定を3%以上増額改定することで助成金を受給できます。
賃金上昇が会社経営の負担に
長年、最低賃金の引き上げが続いています。
令和6年の引き上げにより、最低賃金の全国平均(加重平均)は時給1055円となりました。
コロナ禍でも最低賃金が引き上げられたことから、今年もほぼ間違いなく引き上げられるでしょう。
一部では、令和7年の引き上げ幅は63円前後と予想されています。
令和元年には901円であった最低賃金が、わずか7年のうちに1100円を超えてくるわけです。
令和7年の引き上げ幅が63円であったとして、最低賃金が時給1118円になったとすれば、令和元年と比較して約25%もの上昇になります。
この間、コロナ禍もあったわけですから、最低賃金の上昇を吸収できる会社は少ないはず。
とはいえ、最低賃金法に違反しないためにも、最低賃金の引き上げに応じなければなりません。
これが会社経営に大きな影響を与えることは、政府も認識しているようです。
キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースは年々手厚くなっており、これを活用することで賃金引き上げの影響を緩和できるようになっています。
賃金引き上げは長期的に続くことでしょう。
これからの会社経営には、賃金規定等改定コースの活用が欠かせません。
賃金規定等改定コースの助成金額
上記の通り、賃金規定等改定コースは3%以上の賃金引き上げが要件です。
ポイントは、引き上げ率が大きくなるにつれて、助成金額も増えていくこと。
引き上げ率と助成金額は以下の通りです。
- 中小企業…3%以上4%未満は4万円、4%以上5%未満は5万円、5%以上6%未満は6.5万円、6%以上は7万円
- 大企業…3%以上4%未満は2.6万円、4%以上5%未満は3.3万円、5%以上6%未満は4.3万円、6%以上は4.6万円
上記の助成金額は、賃金引き上げの対象労働者1人当たりのものです。
1年度1事業所当たり100人まで受給できます。
賃金規定等改定コースは、キャリアアップ助成金の中でも会社経営に利用しやすいものです。
3%以上の賃金引き上げは、決して不可能ではありません。
令和7年、最低賃金が63円アップの1118円になった場合、前年度(1055円)と比較して約5.97%の上昇です。
この引き上げに沿って、自社の賃金規定を6%改定した中小企業は、6%以上7万円の区分で助成金を受給できます。
雇用人数にもよりますが、政府の最低賃金引き上げに対応するだけで、多額の助成金を受給できるのです。
会社経営には賃金引き上げがつきものですから、そこで賃金規定等改定コースを活用できるかどうかによって、会社経営に大きな差が出てくるでしょう。
賃金規定等改定コースの加算
賃金規定等改定コースも、一定の措置によって助成金が加算されます。
加算措置と加算額は以下の通りです。
- 職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合、中小企業に20万円、大企業に15万円の加算
- 有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した場合、中小企業に20万円、大企業に15万円の加算
この加算措置は、1事業所当たり1回のみとなっています。
会社経営の状況に合わせて、加算を狙っていきたいところです。
賃金規定等共通化コース
賃金規定等共通化コースも、これからの会社経営にぜひ活用したい助成金です。
この助成金は、非正規雇用と正規雇用の間で、職務に応じた賃金規定を共通化することで受給できます。
人材確保に役立つ助成金
賃金規定等共通化コースは、人材確保に役立つ助成金です。
非正規雇用と正規雇用の間で、職務が重複していながら、賃金に格差が生じているケースが少なくありません。
賃金は労働の対価ですから、本来は職務に応じた賃金が支払われるのが当然です。
非正規雇用であっても、正規雇用と同じ職務に従事しているならば、正規雇用並みの賃金を受け取るべきなのです。
非正規雇用というだけで格差が生じているならば、その不公平感が離職を招くかもしれません。
この場合、離職率を下げる唯一の方法は、賃金格差の是正です。
賃金規定を改定し、職務に応じて共通の賃金が支払われるようになれば、不公平感は解消され、離職率の低下が期待できます。
もちろん、賃金規定の共通化によって人件費は膨らむでしょう。
キャリアアップ助成金の賃金規定等共通化コースは、その負担軽減に役立ちます。
賃金規定等共通化コースを活用し、定着率が向上すれば会社経営に副次的なメリットも得られます。
例えば、正社員化です。
定着し、勤続年数が長くなれば、非正規雇用労働者の能力や適性も見えてくるはずです。
正社員化にふさわしい従業員を的確に選ぶことで、人手不足の解消に役立ちます。
もちろん、正社員化の際には、キャリアアップ助成金の正社員化コースを利用し、会社経営はスムーズになるでしょう。
賃金規定等共通化コースの助成金額
賃金規定等共通化コースの助成金額は以下の通りです。
- 中小企業…60万円
- 大企業…45万円
なお、賃金規定等共通化コースを会社経営に活用できるのは、1事業所1回のみ。
加算措置もないため、自社が賃金規定を共通化するタイミングで確実に利用してください。
賞与・退職金制度導入コース
賞与・退職金制度導入コースは、すべての有期雇用労働者等に関して、賞与・退職金制度を新たに設け、支給または積立てを実施した場合に助成金を支給する制度です。
会社経営に余裕があれば活用を
キャリアアップ助成金のうち、賞与・退職金制度導入コースはやや使いにくいといえます。
賞与・退職金制度導入コースは、もともと「諸手当制度等共通化コース」という名前で運用されていました。
当時は家族手当や住宅手当、食事手当など、様々な手当てが対象となっており、複数の手当を共通化することで多額の助成金を受給することもできたのです。
それだけに、会社経営にも活用しやすかったのですが、令和4年に賞与・退職金制度導入コースになってからは、賞与・退職金制度だけが対象となっています。
対象となる措置が大幅に減ったことで、会社経営に活用しにくくなったといえます。
もちろん、既に賞与・退職金制度を導入している会社や、それに類する制度を実施してる会社は、この助成金は利用できません。
さらに、会社経営の大きな負担になる恐れがあります。
賞与や退職金を制度化すれば、その後長期にわたって実施しなければなりません。
賞与の支払いや退職金の積み立ては、全て会社負担で行うものです。
この負担は、賞与・退職金制度導入コースによっていくらか軽減できるものの、多額の助成金を支給するものではありません。
長期的な負担を織り込み、慎重に取り組まなければ、会社経営に悪影響になる恐れがあります。
以上のことから、「正社員化」「賃金増額」「賃金規定共通化」などに比べると、「賞与・退職金制度の導入」は優先度が下がります。
とはいえ、賞与・退職金制度が離職率の低減・人材確保につながり、会社経営にプラスになることも事実。
賞与・退職金制度導入コースは、正社員化コースや賃金規定等改定コースを十分に活用した上で、さらに会社経営に余裕があれば活用を考えましょう。
賞与・退職金制度導入コースの助成金額
賞与・退職金制度導入コースの助成金額は以下の通りです。
- 中小企業…賞与または退職金制度のいずれかを導入すれば40万円、賞与・退職金制度を同時に導入すれば56.8万円
- 大企業…賞与または退職金制度のいずれかを導入すれば30万円、賞与・退職金制度を同時に導入すれば42.6万円
このように、片方の導入か、両方の導入かによって助成金額が変わるのが特徴です。
両方を導入する場合、就業規則等に規定するタイミングが同時でなければなりません。
賞与・退職金制度導入コースを受給できるのは1事業所当たり1回のみです。
まず賞与を、次に退職金を…といった流れで導入すると、賞与のみ導入(40万円)とみなされるため注意してください。
社会保険適用時処遇改善コース
社会保険適用時処遇改善コースは、非正規雇用労働者の労働時間を延長し、新たに社会保険の被保険者とした場合に助成金を支給する制度です。
社会保険適用時処遇改善コースは令和8年3月31日までの暫定措置となっているため、会社経営に活用したい場合、令和7年度中に取り組む必要があります。
人手不足の解消に役立つ
社会保険適用時処遇改善コースも、人手不足に解消に役立つ助成金です。
人手不足を解消する方法はいくつかありますが、新規雇用を考えない場合、従業員の労働時間を延長するのも一つの手です。
とはいえ、残業時間の縮小は昨今のトレンドですから、残業という形ではなく「短時間労働者の労働時間を延長する」という形をとります。
その場合、これまで社会保険の対象外だった労働者が、対象になることもあり得ます。
社会保険の被保険者になることで、労働者の手取りが減ったり、会社経営の負担が増えたりすることも多いです。
これがネックとなり、労働時間の延長に踏み込めない会社も少なくありません。
そこで社会保険適用時処遇改善コースが役立ちます。
社会保険適用時処遇改善コースには、手当等支給メニューと労働時間延長メニューが設けられています。
手当等支給メニューは、社会保険の被保険者になる従業員に対し、賃上げを行うことで助成金を受給するものです。
これにより、従業員の所得が減ることがなくなり、社会保険を適用しやすくなります。
労働時間の延長メニューは、所定労働時間を延長し、対象労働者が社会保険の被保険者になった場合に助成金を支給するものです。
延長時間に定めがあり、賃上げが要件になることもありますが、その負担を助成金によって軽減できます。
社会保険適用時処遇改善コースの助成金額
社会保険適用時処遇改善コースの助成金額を、メニュー別にみていきましょう。
【手当等支給メニュー】
手当等支給メニューの要件は、「新たに社会保険の被保険者要件を満たし、その被保険者となった際に、賃金総額を増加させる取り組み(手当支給・賃上げ・労働時間延長)を行っていること」です。
取り組みの期間は最長3年。
1年目と2年目は、新たに社会保険の被保険者となった際に、賃金総額を増加させる取り組みを実施します。
賃金の上げ幅は、労働者負担分の社会保険料相当額以上でなければなりません。
基本給に限らず、手当による増額も認められます。
3年目には、恒常的な所得の増額となる取り組みを実施。
賃上げや労働時間の延長などによって、基本給の総支給額を18%以上増額することが要件です。
以上の取り組みにより、1年目と2年目は中小企業40万円(10万円×4期)、大企業30万円(7.5万円×4期)の助成金を、3年目には中小企業10万円、大企業7.5万円の助成金を受給できます。
中小企業は、対象者1人につき最大50万円の支給ですから、会社経営の負担軽減に効果的です。
【労働時間延長メニュー】
労働時間延長メニューの要件は、「週の所定労働時間を4時間以上延長する等を実施し、これにより当該労働者が社会保険の被保険者要件を満たし、その被保険者となること」です。
周の所定労働時間を4時間以上延長した場合、賃金の引き上げは行わずに助成金を受給できます。
4時間を下回る場合には賃金の引き上げが必要です。
延長時間が3時間以上4時間未満の場合には5%以上の引き上げ、2時間以上3時間未満の場合には10%以上の引き上げ、1時間以上2時間未満の場合には15%以上の引き上げが要件となっています。
延長時間や賃金引き上げ率に関係なく、助成金額は中小企業30万円、大企業22.5万円です。
トライアル雇用助成金
最後に、トライアル雇用助成金についてみていきます。
キャリアアップ助成金と同じく、トライアル雇用助成金も有名な助成金のひとつです。
助成金・補助金の中でも、会社経営に活用しやすいものです。
助成金・補助金を会社経営に活用したい場合、トライアル雇用助成金から取り組んでみるのも良いでしょう。
トライアル雇用とは
トライアル雇用助成金は、その名の通り「トライアル雇用によって受給できる助成金」です。
会社経営にとって人手不足は深刻な問題であり、人材確保が急務となっています。
有期雇用として雇入れるのも一つの手ですが、できれば常時雇用(いわゆる無期雇用。期間の定めのない雇用であって、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者と同じであるもの)が望ましいでしょう。
とはいえ、適正・能力に問題のある人をいきなり常時雇用するのは、会社経営にとってリスクになります。
また、適正・能力的に無理がある常時雇用は、労働者にとっても不幸です。
労働者は働きづらさに悩み、結局は離職してしまうでしょう。
そこで重要となるのが試用期間。
トライアル雇用というのも、職業経験の不足などから就職が困難な求職者を原則3ヶ月間にわたって試験的に雇用することを指します。
実際に雇用してみれば、3ヶ月間で適性や能力はみえてくるものです。
トライアル雇用を経て常時雇用に移行すれば、 ミスマッチを防ぐことができます。
これにより、会社は適切な人材を雇用しやすく、労働者も定着しやすく、双方にとって望ましい形で人材を確保できます。
会社経営において、人手不足が課題と感じているならば、トライアル雇用助成金が役に立つかもしれません。
トライアル雇用助成金の助成金額
トライアル雇用助成金は、原則3ヶ月の有期雇用として雇入れることで、月額最大4万円(最長3ヶ月)を受給できます。
トライアル雇用助成金の目的は、3ヶ月間のトライアル雇用(有期雇用)を通じて適正・能力を見極め、常時雇用を促すことです。
もちろん、トライアル雇用によって適正・能力に問題ありと判断し、常時雇用に至らないこともあるでしょう。
トライアル雇用助成金は、常時雇用に移行するかどうかに関係なく、トライアル雇用を実施するだけで助成金を受給できます。
トライアル雇用を実施してみて、適正のある人材を見つけることができれば人材を確保しつつトライアル雇用助成金を受給でき、トライアル雇用だけで終われば人材は確保できないものの、トライアル雇用助成金は受給できるのです。
会社経営のリスクを避けながらトライアル雇用に取り組めるのが、トライアル雇用助成金の魅力といえます。
ただし、トライアル雇用のリスクの対象となるのは「職業経験の不足などから就職が困難な求職者」だけです。
具体的には、転職を繰り返している人、無職の期間が長い人、就職援助に特別な配慮を要する人など、何らかの難を抱えている人が対象です。
広く一般に人材を求める場合に比べて、トライアル雇用の対象労働者が対象ですから、望む人材が確保できないことも十分にあり得ます。
だからこそ、常時雇用に至らない場合でもトライアル雇用助成金を受給できるわけですが、優秀な人材を求める会社にはおすすめできません。
会社経営の現状を踏まえて、トライアル雇用を検討してみて下さい。
まとめ:会社経営に助成金・補助金を活用しよう
この記事では、助成金・補助金について様々な角度から解説しました。
助成金・補助金は返済不要であり、会社経営の過程で受給できるものです。
会社経営の改善や効率化のために、助成金・補助金の活用をおすすめします。
助成金・補助金の中でも、キャリアアップ助成金やトライアル雇用助成金は取り組みやすく、無理のない形で会社経営に取り入れることができます。
もっとも、助成金・補助金は手続きが煩雑であり、原則後払いです。
確実に受給するには、社労士など専門家の協力が欠かせません。
また、先行コストを確保した上で取り組むことが重要です。
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