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銀行の企業格付けはどうやって決まるのか?企業格付けの改善方法も徹底解説

10年ほど前から、新聞や経済誌などで「企業格付け」というキーワードを目にすることが増えました。
銀行が融資先を評価・格付けするものであり、銀行格付けと呼ばれることも多いです。
企業格付けは、銀行融資に大きく影響します。
銀行から融資を引き出し、資金繰りを安定させるには、企業格付けの維持・改善が欠かせません。

この記事では、融資を考えている企業にとって気になる企業格付けについて、その仕組みから評価の方法、企業格付けの改善まで詳しく銀行が行う企業格付けについてどのように判断しているのかその概要と評価の方法を解説します。

企業格付けとは

銀行は資金を融資している企業の財務状況などを分析・評価することで、取引先としての格付けを決めています。

これが企業格付けです。

まずは、企業格付けの基本について詳しく解説します。

企業格付けの歴史

 
簡単にいえば、企業格付けとは「銀行からみた、各取引先(融資先)の通信簿」です。
なぜ銀行は企業格付けを行うようになったのでしょうか。
企業格付けの歴史はバブル崩壊後にさかのぼります。
バブルの崩壊は、金融システムに深刻な混乱をもたらしました。
それを安定させるべく、金融庁は独自に(金融庁の職員に対して)金融検査マニュアルを作成しました。
銀行は金融庁の監督下にあるため、常に金融庁の方針に左右されます。
当然、銀行としても金融庁のマニュアルを無視することはできません。
銀行も同じ基準に基づいて融資先を査定する用意なりました。
つまり、金融庁の方針・指導に基づき、一定の基準で(金融庁の検査マニュアルに沿って)融資先をランク付けしたものが企業格付けです。

企業格付けが銀行融資を左右する

 
銀行から融資を受けるにあたって、企業格付けの影響は非常に大きいです。
まず、企業格付けは、融資の可否を大きく左右します。
企業格付けに問題がなければ融資を受けることができますが、融資条件にも企業格付けが影響します。
融資金利、返済期間、担保・保証の有無など、融資条件の全てに企業格付けが関わってくると考えてください。

企業格付けが高い企業は信用力が高く、逆に格付けが低ければ信用力が低いと判断されます。

企業格付けが高い会社であれば、銀行は必要額を好条件(低金利・長期・無担保)で融資します。
しかし企業格付けが低い会社は、希望額の融資を受けることが難しくなり、金利が高くなったり、短期借入でしか調達できなかったり、担保・保証による保全を求められたり、なにかと条件が厳しくなるのです。
企業格付けの影響はほかにもあります。
企業格付けが一定の基準を下回った会社は、追加融資を受けられなくなり、融資条件の悪化は避けられません。
当初は好条件で調達できても、その後企業格付けが悪化すれば、既存の融資に追加担保を求められることがあります。
最悪の場合、融資の引上げなど、厳しい対応を受けることも。
追加融資を受けられず、資金繰りがショートすれば倒産する危険があります。
融資の引上げ対象になればさらに危険です。
このように考えると、銀行の企業格付けは中小企業にとって生死にかかわるほど重要といえます。

企業格付けは原則非公開

 
それだけに、自社の企業格付けが気になるところですが、銀行は企業格付けを開示していません。
開示するケースもあるようですが、銀行としては企業格付けを開示したくないのが本音です。
ほとんどの銀行は企業格付けの開示に消極的と考えてよいでしょう。
銀行が企業格付けを開示しない理由は簡単です。
企業格付けが低い会社に対して、下手に開示すればトラブルになるかもしれません。
「なぜウチの企業格付けがこんなに低いのだ」と説明を求められるよりも、最初から開示しない方が無難と考えるのです。
また、企業格付けの基準は銀行によっていくらか差がありますから、その基準を公にしたくないというのも理由でしょう。
もちろん、企業格付けが下がっても教えてもらえないことが多く、(知らない間に企業格付けが下がって)ある日突然融資を受けられなくなることも珍しくありません。
ただし、後述の通り、企業格付けにあたりをつけることは可能です。
自社の企業格付けが分かれば、計画的な資金調達に役立つだけではなく、融資交渉を有利に進めることもできます。

企業格付けと債務者区分を理解する

 
銀行の企業格付けを知る上で、避けては通れないのが債務者区分です。
ここでは、企業格付けと債務者区分について詳しく解説します。

債務者区分とは?

 
今でこそ、企業格付けは当たり前のものになっていますが、運用の当初は会社の資金調達に大きな影響を与えました。
上記の通り、企業格付けは金融庁の金融検査マニュアルに基づくものです。
元々は、金融庁の検査官が銀行を検査する際の指針として作られました。
それに伴い、銀行も融資先を査定し、企業格付けを行うようになったのです。
これはある意味、銀行の裁量があまり認められなくなったといえます。
企業格付けがなかった自体、銀行と会社の関係は今よりも自由でした。
会社の経営が悪化しても、関係の深い銀行に頼み込めば融資を受けられることがよくあったのです。
今のようにマニュアルで縛られていないからこそ、経営が悪化しても「企業格付けが下がる」ということがなく、銀行の判断で融資しやすかったといえます。
銀行としても、企業格付けのような明確な基準がないだけに、ノルマ達成のために関係の深い会社に協力を依頼することができました。
金融庁が金融検査マニュアルを作成し、銀行が企業格付けを行うようになれば、このような関係は成り立ちません。
銀行は、あくまでも金融庁の基準に基づき、融資を判断せざるを得なくなったのです。
この基準を「債務者区分」といいます。
債務者区分は、大まかには5段階、細かくは6段階で区分するものです。
銀行から融資を受けている全ての会社は、いずれかの債務者区分に分類されます。
ただし、債務者区分だけでは実務上の不都合があるため、銀行ごとにさらに細分化しなければなりません。
それが企業格付けです。
債務者区分は金融庁の大きな分類、企業格付けは銀行ごとの細かな分類といえるでしょう。

企業格付けと債務者区分の関係

 
具体的に、企業格付けと債務者区分はどのような関係にあるのでしょうか。
銀行が企業格付けを決める際は、まず評価する企業の財務情報などを点数化し、その評点によって信用力を1〜12段階にランク付けします。

企業格付けのランクの数や分け方は、銀行によって若干異なる場合もあります。

さらにいくつかのランクごとに債務者区分と呼ばれる6種類のカテゴリに分類することで、取引先としての最終的な評価が決まります。

企業格付けのランクと債務者区分の関係は、一般的には以下のとおりです。

  • ランク1〜6: 正常先
  • ランク7〜8: 要注意先
  • ランク9 : 要管理先
  • ランク10 : 破綻懸念先
  • ランク11 : 実質破綻先
  • ランク12 : 破綻先

それぞれの債務者区分について、簡単にみていきましょう。

  • 正常先・・・業績が良く、財務的に問題がない融資先
  • 要注意先・・・業績悪化や延滞などの懸念があり、今後の取引に注意が必要な融資先
  • 要管理先・・・要注意先のうち、要管理債権にあたる融資先
  • 破綻懸念先・・・現時点では経営が破綻していないものの、経営難は明らかであり、今後の破綻が懸念される融資先
  • 実質破綻先・・・法的・形式的に経営破綻の事実はないものの、実質的には破綻状態にある融資先
  • 破綻先・・・法的・形式的な経営破綻の事実がある融資先

企業格付けに誤差はある?

 
企業格付けと債務者区分は密接な関係にありますが、全く同じものではありません。
銀行ごとの事情を加味している以上、企業格付けには誤差が生じます。
実際、同じ決算書であっても、銀行Aの企業格付けと銀行Bの企業格付けに差が出ることがしばしばです。
ただし、極端な差が出ることはありません。
あくまでも、評価のもととなる債務者区分の範囲内で、いくらかの誤差が生じるだけです。
例えば、正常先には1~6のランクがあります。
正常先という債務者区分の範囲内で、信用金庫Aの企業格付けは「正常先の2」、都市銀行Bの企業格付けは「正常先の4」といった差が出るイメージです。
銀行によって企業格付けは様々ですから、どのような差が生じるかを把握することはできません。
強いて言えば、査定が厳しい銀行は企業格付けが低い、比較的査定が緩い銀行は企業格付けが高くなる、といった傾向があります。
企業格付けの厳しさは、「メガバンク(都市銀行)>地方銀行>信用金庫・信用組合」をイメージすると良いでしょう。

企業格付けと引当金

 

銀行が企業格付けをする目的は、企業との取引方針を決める指標とするためです。

銀行は顧客から集めた預金を原資に融資を行っているので、融資した資金が回収不能となる事態は回避しなければなりません。

そこで、財務状況が良好で信用力の高い企業とは融資取引を拡大し、財務状況が悪く信用力の低い企業との取引は縮小してリスクを避けようとします。

こうした方針を決める際に、企業格付けを参考にしているのです。
さて、上記の企業格付け・債務者区分のうち、銀行から融資を受けられるのはどの区分でしょうか?
原則的に、銀行にとって融資の対象になるのは債務者区分が「正常先」の企業だけです。

企業格付けが高い企業ほど、融資限度額や貸出金利といった条件面でも有利になります。

債務者区分がそれより下の企業に対しては新規融資はせず、取引を維持するか資金を引き上げるかのどちらかです。

企業格付けが下がり、債務者区分が要注意先以下になってしまうと、銀行は貸すに貸せなくなります。
その背景には、引当金があります。

引当金とは?

 
企業格付けが低い会社、債務者区分が要注意先以下の会社に貸せば、銀行は回収不能のリスクが高まり、管理コストも上昇するでしょう。
ただし、企業格付けが低い会社が必ず返済できなくなるわけではありません。
また、銀行の取り組みや融資条件である程度は対処できることですから、必ずしも企業格付けが低い会社には貸せない理由にはなりません。
銀行にとって、本当に厄介なのは引当金です。
金融庁のマニュアルでは、債務者区分が低い会社に融資する場合、債務者区分に応じて引当金を積むことを義務付けています。
引当金は、あくまでも引当金でしかありません。
貸倒損失に備える以外に何の意味も持たず、銀行の収益には全く貢献しないのです。
企業格付け・債務者区分が低い会社に融資すれば、融資先が最終的に倒産するかどうかに関係なく、引当金として銀行の資金が拘束されてしまいます。
つまり、企業格付けが低い会社への融資は、銀行にとっては自殺行為といえるのです。

債務者区分ごとの引当率

 
債務者区分ごとの引当率は以下の通りです。

  • 正常先・・・0.2~0.3%
  • 要注意先(要管理先を含む)・・・1~15%
  • 破綻懸念先・・・50~70%
  • 実質破綻先・・・100%
  • 破綻先・・・100%

これをみれば、銀行が企業格付けと債務者区分を重視する理由、企業格付けが低い会社には貸したくても貸せない理由がよくわかるでしょう。
企業格付けが高く、正常先の会社であれば、融資額に対して0.2~0.3%の引当金を積み立てるだけで済みます。
しかし、企業格付けが低下して要注意先になると、最大で15%程度の引当金を積むことに。
企業格付けがさらに下がれば、引当率は70%以上に上昇します。
企業格付けが低くなるにつれて引当率が上がり、銀行は融資できなくなるのです。

企業格付けが下がれば銀行の収益も悪化する

 
少し具体的に考えてみましょう。
破綻懸念先の引当率は50~70%となっていますが、まだ破綻すると決まったわけではなく、銀行の支援によって立ち直る可能性もゼロではありません。
仮に、破綻懸念先であるものの、立ち直る見込みがある会社に1億円を融資するとしましょう。
その会社に融資するには、5000~7000万円もの引当金を積む必要があります。
5000万円の引当金を積むとすれば、銀行が拠出する金額は貸付金と合わせて1億5000万円です。
もちろん、金利収入が得られるのは1億円の部分に限られるため、収益効率の悪化は避けられません。
破綻懸念先に対して1億円を年利3%で貸し付けた場合、貸付金を合わせて1億5000万円の負担になることを考慮すれば、実質的な貸付金利は年2%水準にまで低下します。
何より、この会社は破綻懸念先であり、満額回収できない可能性も十分にあるのです。
企業格付けが良い正常先の会社ならば、引当金は微々たるものです。
1億円を年利2%で貸し付けるだけで、同水準の収益を得ることができます。
さらに、5000万円を別の正常先に年2%で融資すれば、収益は更に高まります。
正常先ならば貸倒れリスクも低く、金利を確実に稼げるでしょう。
企業格付けは、収益の効率や堅実性を大きく左右するのです。
銀行が正常先だけに融資する理由はここにあります。
企業格付けが低い会社に融資するには、担保・保証による保全が必須です。
特に信用保証協会の保証付融資は、融資先の企業格付けに関係なく、引当金を積まなくてよいルールになっているため、保証さえつけば貸せることも少なくありません。
逆にいえば、企業格付けが低い会社は、無担保・無保証で融資を受けることは困難といえます。

企業格付け・債務者区分が銀行融資に与える影響

 
企業格付けと債務者区分についてみてきました。
では、企業格付けと債務者区分は、銀行融資にどのように影響するのでしょうか。
債務者区分ごとに詳しく解説します。

銀行融資を受けられるのは正常先だけ

 
業績が良く、財務的に問題がない融資先は、正常先に分類されます。
赤字でないのはもちろんのこと、繰越損失がない、債務超過でない、といったことが必須条件です。
つまり健全な融資先は正常先に分類され、その中で企業格付けが決まります。
上記でも述べた通り、銀行融資を受けられるのは正常先の会社だけです。
具体的には、前期の決算が黒字であり、繰越損失がなく、債務超過がなく、わずかな延滞もない会社だけが正常先に区分されます。
借入総額が大きくないことも重要で、正常先の債務償還年数はおおむね10年以内と考えてください。
企業格付けはちょっとしたことで低下し、問題によっては債務者区分が下がります。
正常先を維持することは簡単ではありません。
これまで融資してくれた銀行が急に融資を渋るようになったり、融資してくれなくなったりするのも、「企業格付けが低下し、債務者区分が正常先ではなくなった」ことが理由です。
銀行から融資を受け続けるには、正常先を維持することが重要です。
債務者区分が正常先になったら、その中で企業格付けのアップを目指し、好条件での融資を目指しましょう。

要注意先は銀行融資が困難になる

 
要注意先は、業績悪化や延滞などの懸念材料があり、今後の取引に注意が必要な融資先のことです。
債務者区分が要注意先になると、たちまち銀行融資が困難になります。
ただし、会社が抱える問題によって影響は様々です。

業績悪化で企業格付けが悪化する場合

 
一時的に業績が振るわないだけであれば、正常先を維持できることもあります。
「債務者区分が正常先、企業格付けは中~上位」の会社は、正常先のまま企業格付けが落ちるだけです。
「債務者区分が正常先、企業格付けは下位(ギリギリ正常先)」という場合、業績悪化によって債務者区分がワンランク下がり、正常先から要注意先に転落することもあり得ます。
問題は、業績の低迷が続いている会社です。
この場合、徐々に企業格付けが落ちていくため、いずれは要注意先に転落してしまいます。
上記の通り、銀行が融資するのは正常先だけです。
特に都銀クラスであれば正常先が絶対条件となるため、要注意先に転落すれば即融資を受けられなくなります。
地銀や信金などは企業格付けがやや甘いため、要注意先に融資することもあります。
例えば、業績悪化によって企業格付けが下がる場合、都銀ならば「企業格付けは7まで転落(債務者区分は要注意先→融資謝絶)」となるところを、信金では「企業格付けは6(債務者区分はギリギリ正常先→融資可能)」となることがあるのです。
とはいえ、要注意先が融資を困難にすることは間違いありません。

赤字で企業格付けが悪化

 
都銀・地銀・信金などに関係なく、必ず要注意先に転落するケースがあります。
それは、赤字決算、債務超過、返済の遅れです。
まず赤字ですが、単なる業績悪化と赤字は全く異なります。
そもそも銀行は本業からの利益だけを返済原資とみなします。
赤字、つまり利益がマイナスということは、返済原資が得られていない状況です。
本来ならば融資できない状況ですから、一時的・軽微な赤字であっても大問題です。
銀行が返済を危ぶみ、企業格付けが大幅に悪化、債務者区分は要注意先に落ちるのも当然といえます。

債務超過で企業格付けが悪化

 
赤字よりも深刻なのが債務超過です。
債務超過とは、負債が会社の資産を上回っており、全ての資産を売り払っても負債を完済できない状態を指します。
貸倒れリスクが高いことは言うまでもありません。
軽微な債務超過であっても、もはや健全な融資先とはみなされません。
債務超過というだけで、企業格付けは要注意先に落ちます。
後述の通り、債務超過は要管理先以下に転落するきっかけにもなりやすいです。
債務超過でも要注意先に区分される目安は、債務超過解消年数が3年以内と考えてください。

延滞で企業格付けが悪化

 
最後に、借入金の延滞です。
延滞は、理由の如何を問わず、企業格付けの大幅な悪化・債務者区分の低下を招きます。
経営に全く問題がない会社が、不注意などで返済に遅れることもあるでしょう。
その場合、経営内容自体は正常先といえますが、銀行はそのようにみなしません。
今回は軽微な延滞で済んだかもしれませんが、本当に経営者の不注意であったかどうかは分かりません。
実際のところ、軽微な延滞を起こす会社は何らかの問題を抱えているものです。
銀行としては、経営者が「うっかりしていた」というのを信じるわけにはいかず、必ず警戒します。
延滞は、企業格付けが正常先上位の会社も、例外なく要注意先に転落すると考えてください。

要管理先になると銀行融資は受けられない

 
要管理先は、要注意先に含まれる債務者区分です。
単なる要注意先よりも大きな問題を抱えている会社は、要管理先に区分されます。
具体的には、要管理債権にあたる融資先です。
要管理債権とは、元本または利息の3ヶ月以上の延滞、またはリスケジュールが確定している債権を指します。
もちろん、債務超過や借入総額によっても要管理先に転落することがあります。
債務超過解消年数が3年超5年以内、債務償還年数が20~30年の会社は、要管理先の対象です。

リスケが企業格付けに与える影響

 
分類的には同じ括りでも、要注意先と要管理先では雲泥の差があります。
要注意先までであれば、その後の経営努力で正常先を勝ち取ることは十分に可能です。
しかし要管理先になってしまうと、しばらくは債務者区分を上げることはできません。
リスケジュールを考えるとよくわかります。
リスケジュールの条件は色々ですが、スタンダートなものは「一定期間にわたり元金の返済を据え置き、利息のみ支払う」というものです。
例えば、リスケの計画が3年間であれば、少なくとも3年間は要管理先のままです。
リスケ中にどれだけ経営内容が良くなっても、ただ「リスケ中」というだけで要管理先に区分されます。
また、要管理先の中では企業格付けの変動がないため、「リスケ中に企業格付けを上げ、リスケ後速やかに要注意先に復帰」ということもできません。

安易なリスケを避ける

 
リスケジュールは、経営改善の特効薬になります。
本来、元金の返済に充てるはずの資金を、経営改善に使うことができるのです。
経営改善の見通しが立たない会社でも、リスケを前提に考えることで、経営改善が見えてくることもあります。
「リスケジュール→経営改善→企業格付けの向上→融資正常化」という道筋が明確であれば、リスケジュールを検討するのも良いでしょう。
ただし、企業格付け・債務者区分を維持・改善していく上では、安易なリスケはNGです。
リスケに踏み切るとしても、必ずリスケ後の流れ(企業格付けの向上、要注意先・正常先への復帰)を考えてください。
企業格付け・債務者区分のことを考えず、安易にリスケに踏み切ったばかりに、経営難がいたずらに長期化し、結局倒産するケースが少なくありません。

コンサルティングの是非

 
特に注意したいのがコンサルタントです。
コンサルタントに依頼すること自体は、何ら問題ありません。
やみくもに取り組むよりも、専門家の支援を受けた方が経営改善に成功しやすくなります。
ただし、悪質なコンサルタントがいることも事実。
経営改善を掲げるコンサルタントの中には、「リスケ屋」などといわれる悪質な業者が存在します。
企業格付けの悪化を一切考慮せず、リスケを前提に経営改善を組み立て、リスケ後はほったらかしというケースもあるようです。
そのようなコンサルタントは避け、企業格付け・債務者区分も含めて考えてくれるコンサルタントを探しましょう。
例えば、No.1の経営改善コンサルティングは、黒字化・キャッシュフロー正常化・企業格付けの向上・融資正常化などに定評があります。

破綻懸念先

 
破綻懸念先は、その名の通り破綻の懸念がある融資先です。
現時点では経営が破綻していないものの、経営難は明らかであり、今後の破綻が懸念される融資先を指します。
この場合、すぐに倒産するというわけではありませんが、正常先のように「健全」とは程遠い状況であり、要注意というレベルでもありません。
深刻な経営難に陥っており、リスケジュールしても事業継続は困難、いずれ倒産という懸念ですから、要管理先の範疇も超えています。
破綻懸念先に区分されるのは、以下のような会社です。

  • 前期が黒字でも、借入金を6ヶ月以上延滞している会社
  • 前期が赤字であり、なおかつ債務超過に陥っている会社
  • 前期が債務超過であり、なおかつ3ヶ月以上の延滞またはリスケジュールをしている会社
  • 前期が債務超過であり、なおかつ6ヶ月以上延滞している会社
  • 2期連続で債務超過であり、なおかつ3ヶ月未満の延滞がある会社
  • 2期連続で債務超過であり、3ヶ月以上の延滞またはリスケジュールをしている会社

決算が黒字であっても、6ヶ月以上の延滞は問答無用に破綻懸念先となります。
さらに注目したいのは、債務超過が企業格付けに与える影響です。
債務超過解消年数が5年を超える場合、企業格付けは例外なく破綻懸念先です。
また、債務超過の会社がリスケに踏み切った場合、たちまち破綻懸念先に区分されます。
軽微な債務超過であれば、すぐにリスケするのではなく、債務超過を解消してからリスケすべきです。
それによって、企業格付け・債務者区分の低下を要管理先で食い止めることができます。

実質破綻先

 
実質破綻先とは、実質的に経営が破綻している融資先です。
破綻懸念先よりもさらに深刻で、短期的な資金繰りさえ困難な状況をイメージすると良いでしょう。
近い将来、資金ショートを引き起こして倒産ということが十分にあり得る状況です。
このような会社は、法的・形式的に経営破綻の事実がなくとも、実質的には破綻状態といって差し支えありません。
破綻懸念先の会社は、経営を再建できる可能性もゼロではありませんが、実質的に破綻しているとなると、その見込みはほぼゼロです。
具体的には、以下のような会社が実質破綻先に区分されます。

  • 前期が赤字であり、なおかつ1年以上の延滞をしている会社
  • 前期が債務超過であり、なおかつ1年以上の延滞をしている会社
  • 2期連続の債務超過であり、なおかる6ヶ月以上の延滞をしている会社

破綻先

 
破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実がある融資先です。
破産・民事再生・銀行取引停止処分などに至った会社は、破綻先に分類されます。

企業格付けを決める評価方法

実際のところ、銀行は企業格付けをどのように決めているのでしょうか。
企業格付けを決める仕組みを知ることで、銀行融資の戦略を立てやすくなります。

企業格付けが融資の決め手に

 
資金繰りを安定させるには、資金調達が欠かせません。
資金調達がうまい会社は、資金繰りに必要なお金を確実に調達できます。
特に、銀行から確実に融資を受けることができれば、資金繰りに困ることはなくなります。
月末の資金繰りに悩むことはなく、設備投資に不自由したりすることもなく、経営計画に沿って本業に取り組むことができるでしょう。
しかしながら、そのような会社はごく少数で、月々の資金繰りに悩んでいる会社が多いのが実情です。
これもやはり、企業格付けや債務者区分が大きく影響しています。
企業格付け・債務者区分を理解し、自社に対する銀行のスタンスを把握しているかどうかによって、融資環境は大きく変わってきます。

融資に苦労する会社の典型例

 
企業格付け・債務者区分を理解していない会社ほど、銀行融資に苦労するものです。
それもそのはず、ひとつ典型例をみてみましょう。

    1. 資金繰りに計画性がなく、資金不足を事前に把握できない。いつも行き当たりばったりで資金を調達している。赤字補填資金の調達に奔走することもしばしば。
    2. 資金ショートの直前になって、銀行に融資を依頼する。
    3. 銀行に融資を断られる、もしくは希望額の融資を受けられない。なんとか資金ショートは回避したものの、資金不足が慢性化。
    4. ギリギリの資金繰りを回すうち、収支のずれによって銀行の返済が滞った。数日後には解消したが、この延滞によって企業格付け・債務者区分が低下。
    5. 1~4を繰り返し、そのたびに企業格付け・債務者区分が悪化。
    6. どの銀行からも融資を受けられなくなり、リスケジュールに踏み切る。企業格付け・債務者区分の改善には長期を要し、厳しい経営再建を余儀なくされる。

会社によって多少の差はあるものの、資金繰りに行き詰まる会社には類似の傾向があります。
これは、企業格付け・債務者区分の無理解が原因です。
企業格付け・債務者区分の重要性を理解していないからこそ、このような悪循環に陥るのです。

融資に苦労しない会社の典型例

 
逆に、企業格付け・債務者区分をきちんと理解し、積極的に取り組んでいる会社は、融資に苦労しません。
これも簡単な例を見てみましょう。

    1. 経営者は企業格付け・債務者区分の評価方法を知っており、自社の企業格付け・債務者区分を把握している。
    2. 普段から資金繰り表を作り、今後半年間の資金計画を立て、不足額と時期を事前に予測できる。
    3. 現在の企業格付け・債務者区分から銀行のスタンスを考え、決算書の対策や試算表の改善などに取り組む。
    4. 十分に対策した後、銀行に融資を申し込む。対策された決算書と、今後の計画の見通しを丁寧に説明する。
    5. 銀行の信用が高まり、速やかに融資実行へ。
    6. この時点で将来的な資金不足が分かっていれば、希望額の融資を受けると同時に次回の借入れを相談し、了解を取り付けておく。

企業格付け・債務者区分を理解し、自社の評価を把握している会社は、戦略的に融資を引き出すことができます。
企業格付け・債務者区分について、表面的に知っているだけでは不十分です。
さらに一歩踏み込み、銀行の評価方法を理解し、自社の企業格付け・債務者区分を把握することで、初めて自社に有利な交渉も可能となります。

企業格付けの評価方法

 
では、銀行は融資先どのように評価し、企業格付けを決めているのでしょうか。
銀行が企業格付けを決めるための、大まかな手順は以下の通りです。

    1. 定量評価を実施する。対象企業の財務内容を分析し、点数化する。これによって債務者区分が決まる。
    2. 補足的に定性評価を実施する。対象企業の財務内容以外の部分を評価し、必要に応じて債務者区分を修正する。
    3. 1~2の結果を銀行の基準に照らし合わせ、企業格付けを決定する。

以上のように、企業格付けを決める評価方法には、一次評価である定量評価と二次評価である定性評価があります。

一次評価:定量評価

定量評価とは、企業の決算書にあらわれる財務上の数字によって評価する方法です。

定量評価はシステマチック

 
銀行は企業の財務情報を分析するシステムを持っており、企業から決算書を受け取ると、売上や経費、利益といった数字をシステムに登録していきます。

システムは登録された情報をスコアリングモデルに照らして評価し、財務状況の点数を算出します。

スコアリングモデルとは、企業の財務状況を評価するための計算式や財務指標などをまとめたものです。

銀行によって、また対象となる企業の規模によって採用するスコアリングモデルは異なりますが、おおよそ以下のような4つの財務的な観点で評価しています。

  • 収益性:売上を上げたり、利益を出したりする力。売上高経常利益率、総資本経常利益率、支払利子率など。
  • 安全性:倒産のリスク。自己資本比率、ギアリング比率、固定比率、固定長期適合率、流動比率など。
  • 成長性:将来的な成長の見込み。経常利益増加率、自己資本額、売上高など。
  • 返済能力:債務を返済する能力。債務償還年数、キャッシュフロー、インタレストカバレッジレシオなど。

企業格付けを上げるには?

 
定量評価は企業格付けにおいてほとんどのウエイトを占めます。

銀行は数字としてあらわれる情報を重視するからです。
銀行の企業格付けを100点満点と仮定すれば、点数の配分は定量評価に70~80点、定性評価に20~30点とイメージしてください。
もちろん、この配分は銀行ごとに異なります。
企業格付けが低い原因が定量評価にある場合、定性評価をいくら改善したところで、企業格付けを上げることはできません。
銀行によっては、定性評価にほとんど配点しないケースもあるのです。
定量評価を上げるには、売上を上げたりコストカットしたりするなどして黒字を増やし、決算書上の財務情報を改善することが必要になります。
したがって、企業格付けを改善するには、「定量評価と定性評価をまんべんなく改善する」のではなく、「定量評価に注力する」ことが重要です。
融資に苦労しない会社が、自社の企業格付けに合わせて決算書に対策するのも、定量評価で良い結果を得るためです。
さらに、企業格付けを効率よく上げるには、定量評価の中でも重要度の高いものから優先的に対策するのがポイントとなります。
定量評価のうち、特に重要なものをピックアップしてみましょう。

自己資本

 
自己資本は、定量評価に大きく影響します。
成長性の評価項目(経常利益増加率、自己資本額、売上高)は、どれもそれなりに重要ですが、特に配点が高いのは自己資本額です。
安全性の評価項目でも、自己資本比率は配点が大きくなっています。
総資本は、返済の必要がない自己資本と、返済の必要がある他人資本によって構成されます。
自己資本比率は、総資本に占める自己資本の比率です。
自己資本額は大きいほど良く、自己資本比率は高いほど良いと考えてください。
もっとも、自己資本比率の考え方は業種によっても異なります。
そもそも、業種によって自己資本比率の平均値に差があるのです。
とはいえ、自己資本比率が高いほど定量評価は高まり、企業格付けも上がることは間違いありません。
まずは自社の自己資本比率を計算してみると良いでしょう。
計算式は「(自己資本額÷総資産額)×100%」です。
自己資本比率は70%以上が理想ですが、50%以上でも優良と評価されます。
自己資本をテコに企業格付けを改善するならば、50%を目指したいところ。
自己資本比率が30%ならば普通ですから、まずは40%を目標にしてください。

ギアリング比率

 
安全性の評価項目のうち、自己資本比率と並んで配点が高いのはギアリング比率
その他の項目(固定比率、固定長期適合率、流動比率)は配点が低いため、企業格付けを上げるためには自己資本比率とギアリング比率に注力するのがポイントです。
ギアリング比率とは、自己資本に対する他人資本の比率です。
他人資本は返済しなければなりません。
銀行からの借入金にしても、社債で調達した資金にしても、他人資本は経営を圧迫します。
支払利息が負担になり、また調達先への配慮もそれなりに必要です。
当然ながら、ギアリング比率は低いほど良く、企業格付けにもプラスとなります。
ただし、ギアリング比率は業種によって異なるため、理想的な数値は一概には言えません。
ギアリング比率の全業種平均は44%、銀行が企業格付けにあたって「危険」とみなすのは50%超ですから、これを目安にすると良いでしょう。
ギアリング比率の計算式は「(有利子負債÷自己資本額)×100%」です。
自社のギアリング比率を計算してみて、50%を超える会社は速やかに対策してください。
ギアリング比率を50%以下に抑えるだけで、企業格付けが上がるかもしれません。

返済能力は全て重要

 
銀行の融資審査は、返済能力の審査といっても過言ではありません。
返済できる相手には融資し、返済できない相手には融資しないのが基本です。
したがって、定量評価の観点のうち、返済能力の三項目(債務償還年数、キャッシュフロー、インタレストカバレッジレシオ)は全て配点が大きくなっています。
成長性・収益性・安全性・返済能力のどこから手を付けるべきか迷った場合は、返済能力から取り組むのが効率的です。

【債務償還年数】
債務償還年数は、債務を何年で返済できるかを表します。
債務償還年数が短いほど定量評価は高く、企業格付けにも好影響です。
理想は5年以内ですが、5~10年であればさほど問題にはならないでしょう。
債務償還年数が10年超の会社は問題ありとみなされます。
その場合、借入金の削減、利益の増加、減価償却費の増加などによって債務償還年数を短縮し、企業格付けの改善を目指しましょう。

【キャッシュフロー】
資金繰りがお金の流れを計画するものですが、キャッシュフローはお金の流れの結果を表します。
一定期間にわたって資金繰りを回し、お金が様々に流れた結果、手元に残ったお金がキャッシュフローです。
銀行は、キャッシュフローを返済原資とみなします。
キャッシュフローが大きいほど銀行の評価が高まり、企業格付けも上がりやすくなります。
キャッシュフローの計算式は「税引後利益+当期減価償却額」です。

【インタレストカバレッジレシオ】
インタレストカバレッジレシオは、借入金などの利息の支払能力を表す指標です。
銀行は利息で稼ぐのですから、インタレストカバレッジレシオが低いほど定量評価が悪化し、企業格付けにも悪影響となります。
インタレストカバレッジレシオの計算式は以下の通りです。
{(営業利益+受取利息・配当金)÷(支払利息・割引料)}
理想的なインタレストカバレッジレシオは10%超です。
業種ごとに平均値は異なるものの、10%超であれば企業格付けにも確実にプラスになるでしょう。
1~10%は可もなく不可もなし。
この範囲内で、できるだけ高い数値を目指しましょう。
1%未満は問題ありとみなされるため、1%以上への改善が急務となります。
改善策としては、税引き後利益を増やす、借入金を減らす、借り換えによって支払金利を抑える、といった方法があります。

二次評価:定性評価

定性評価とは、企業の個別事情や周囲の環境などを分析して評価する方法です。

定量評価が数字で評価するのに対し、定性評価は数字にあらわれない企業の強みや弱みを評価します。

銀行員が企業との面談やヒアリング、業界研究などによって集めた情報を評価・点数化し、その結果によって一次評価である定量評価の結果を補正します。

評価するポイントは多岐にわたりますが、代表的なものは以下の通りです。

  • 業歴
  • 経営方針
  • 代表者の経歴、資産状況
  • 競合力
  • 市場動向
  • 過去の企業格付け
  • 取引履歴、融資返済状況
  • 技術力
  • 販売力
  • 後継者の有無

定性評価が企業格付けに占めるウエイトは高くありませんが、その結果によっては一次評価からのランクアップ・ランクダウンも十分ありえます。
定量評価にしっかり取り組んだうえで、定性評価にも取り組んでいきましょう。
ここでも、配点が高いものを優先的に改善してください。
定性評価の項目のうち、それなりに配点が高いのは業歴・資産力・販売力です。
これらは全て、返済力に影響します。
業歴が長いほど安定性は高く、資産力が大きい(経営者個人の資産が豊富)ほど資金調達の余力が大きくなり、販売力が高いほど返済原資を得やすくなります。
とはいえ、業歴は会社の努力で伸びるものではありません。
資産力も、急激に高めることは困難でしょう。
唯一、企業努力で改善できるのは販売力です。
したがって、定性評価を高め、企業格付けのアップにつなげていくには、販売力を強化するのが最も効率的です。

なお、数字のみで機械的に評価される定量評価と違い、定性評価は銀行担当者の主観が影響します。

定性評価を上げるには普段から担当者と良好な関係を構築し、独自の強みがあるなら積極的にアピールして知ってもらう努力をするべきでしょう。

まとめ:企業格付けは銀行交渉のカギ

この記事では、銀行による企業格付けの仕組みと、企業格付けの評価のポイントについて解説しました。

企業にとって銀行から資金を調達できるかどうかは、経営上の重要な課題です。

企業格付けを上げて融資を受けやすくするためには、継続的に経営改善していくことが大事になります。
もちろん、企業格付けの改善は簡単ではありません。
下手に取り組んで逆効果になるよりも、コンサルタントに依頼するのがよいでしょう。
No.1は、売掛金の早期資金化やコンサルティングを行っています。
経営改善コンサルティングに定評があり、企業格付け改善の実績も多数ございます。
企業格付けの悪化にお悩みの方は、No.1までお気軽にご連絡ください。

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