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1記事で丸わかり!信用保証協会を徹底解説
中小企業・小規模事業者が銀行から資金調達(融資を受ける)する場合、信用保証協会の利用をすすめられるケースが多いのではないでしょうか。
ところで信用保証協会とはいったいどのような存在なのでしょうか。
そして銀行と利用者、そして信用保証協会の関係はどのようになっているのでしょうか。
この記事では、信用保証協会について、その位置付けと役割、具体的な利用方法、メリット、注意点などを詳しく解説します。
信用保証協会の基礎知識
まずは、信用保証協会の利用に欠かせない基礎知識を解説します。
信用保証協会とは
信用保証協会とは、「信用保証協会法」という法律に基づいた公的機関です。
その役割は日頃さまざまな業種で事業や経営に取り組んでいる中小企業に対して、金融機関からの事業資金の融資を受けるときに、債務保証などをして借入れを容易にする支援を行うことで、中小企業などの資金調達を円滑にすることを目的にしています。
つまり中小企業が銀行などの金融機関から事業資金の融資を受けるときに信用保証協会が保証人になってくれるということなのです。
銀行が無保証で融資することを「プロパー融資」というのに対し、信用保証協会の保証付きで融資することを「信用保証協会保証付融資」といいます。
ほかにも「信用保証協会付き融資」といったり、単に「保証付融資」とよんだりすることも多いです。
銀行が信用保証協会を利用させたがる理由
銀行から融資を受けるにあたり、信用保証協会の利用をすすめられた経験がある人も多いことでしょう。
なぜ銀行は信用保証協会をすすめてくるのでしょうか?
上記の通り、信用保証協会は銀行と会社を媒介する存在です。
信用保証協会が間に立つことによって、銀行の評価が低い会社でも融資を受けやすくなります。
信用保証協会は、銀行に対しては保険として、会社に対しては信用を付加する役割があるのです。
銀行からみた場合、信用保証協会は保険にあたります。
信用保証協会が保証することにより、銀行は貸倒れリスクを大幅に回避でき、融資を出しやすくなる仕組みです。
つまり信用保証協会は「保全」に役立つものであり、その意味では担保と変わらない効果があります。
銀行から融資を受ける際、担保の有無によって借りやすさに雲泥の差が生じることは、多くの経営者が知っているはずです。
それと同じ効果があると考えるならば、信用保証協会が銀行融資に与える影響もおのずとわかるでしょう。
担保・保証による保全がない場合、貸倒れリスクは全て銀行が負担することになります。
当然、簡単には貸せません。
特に以下のような場合、銀行から無担保・無保証で融資を受けるのは非常に困難です。
- 全く取引がない銀行に融資を依頼する場合
- 業歴が短く、実績が乏しい場合
- 資産背景がない(会社や経営者個人の資産が乏しい)場合
このような場合、銀行は融資を渋ります。
帝国データバンクのデータでも、無担保・無保証で融資を受けられる会社は、全体の1割未満となっています。
個人事業主や、法人でも零細企業であれば、そもそも審査対象とみなさないケースも多いです。
これまで取引したことがなく、業歴も短い(業績・財務の推移が不明)となれば、銀行は事業実態をつかむことができません。
無事に返済できるかもしれませんが、返済できない可能性もあります。
それが最初からわかっている以上、あえて審査する必要はないと考え、審査対象とみなさないのです。
経営者自身は、返済力に自信があるかもしれません。
また、事業展開に資金が必要なことも事実。
銀行が審査してくれないとなれば、会社の資金繰りは行き詰まってしまいます。
新規取引・業歴が短い・担保資産がないといった問題は、結局のところ、銀行側の貸倒れリスクの問題といえます。
貸倒れリスクさえ解消できれば、銀行は取引歴や業歴、資産背景に関係なく、融資を検討できるのです。
そこで活躍するのが信用保証協会です。
信用保証協会の保証付きで融資すれば、貸倒れリスクを大幅に回避できます。
融資先の会社が返済不能になっても、信用保証協会が残債の80~100%を弁済するためです。
銀行にとって、信用保証協会はいわば後ろ盾ですから、信用保証協会が絡むだけで銀行は融資に前向きになります。
銀行が信用保証協会をすすめてくる理由は、ここにあります。
自社が信用保証協会を利用する目的
銀行が信用保証協会を好む理由が分かれば、借り手である自社が信用保証協会を利用する理由もおのずと見えてくるでしょう。
銀行からなかなか融資を受けられない会社にとって、信用保証協会は融資の促進剤です。
銀行の融資審査は形式的なものです。
特に融資すべき理由がなければ、それだけで審査の難易度は上がります。
ところが、信用保証協会がつくことによって、銀行の姿勢が積極的になるのです。
また実際に、業容が小さい会社ほど、信用保証協会の利用を求められます。
銀行にもよりけりですが、年商2~3億円以下の会社であれば、大抵は信用保証協会付きになるでしょう。
地方銀行や信用金庫・信用組合は、年商が小さい会社にも親身に対応してくれます。
しかし、銀行も営利目的である以上、信用保証協会を好むのは当然です。
小さな会社の資金調達は、信用保証協会を大いに活用すべきでしょう。
もっとも、年商が大きくなれば信用保証協会も不要かといえば、そんなことはありません。
年商10億円以上の会社でも、新規融資などでは信用保証協会の利用を求められることがよくあります。
年商10億円を超えたあたりから、メガバンクと取引を始める会社が増えます。
資金需要が大きくなるにつれて、資金量が大きい(多額の融資に対応できる)銀行にシフトしていくわけです。
ところが、メガバンクから初めて融資を受ける場合、信用保証協会なしで融資を受けられる会社は多くありません。
逆にいえば、メガバンクから新規融資を受けるにあたり、信用保証協会がカギになるのです。
- 業績悪化により、融資を受けられない場合に信用保証協会を活用する
- 今後の展開を見据え、特定の銀行と取引を深めるために信用保証協会を利用する
- 信用保証協会によって銀行と新規取引を初め、資金繰りの安定を目指す
自社が目的意識をしっかり持つことによって、信用保証協会の利用価値は高まっていきます。
信用保証協会は日本全国にある
信用保証協会は47都道府県と4市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)に法人があり、それぞれが各地域に密着しています。
全国51法人の信用保証協会は、一般社団法人全国信用保証協会連合会に属しており、全国ネットでつながっている仕組みです。
各法人に複数の窓口があり、例えば東京信用保証協会には中央区の本店のほか、新宿・池袋・渋谷・上野などに支店を構えています。
実際に利用する信用保証協会は、自社の所在地によって決まります。
つまりどこの信用保証協会でもいいというわけではなく、自社の最寄りの信用保証協会に保証してもらうということになるのです。
ただし、会社の所在地によって、利用できる信用保証協会が決まっている(ひとつしかない)場合と、複数の信用保証協会から選べる場合があります。
分かりやすいのが、神奈川県で信用保証協会を利用するケース。
この場合、神奈川県信用保証協会と横浜市信用保証協会のいずれかを選ぶことになります。
そこで問題になるのが、どちらの信用保証協会を選べばよいかということです。
信用保証協会を利用する会社の多くは、自社から「信用保証協会付きで融資してください」と銀行に頼むのではなく、銀行から「信用保証協会付きなら融資できます」といわれたうえで、信用保証協会を検討します。
複数の信用保証協会がカバーしている地域であれば、銀行から信用保証協会を指定されることがほとんどです。
信用保証協会ごとに違いはあるか?
信用保証協会が公的機関であること、そして全国信用保証協会連合会に加盟していることから、信用保証協会ならばどこも同じと考える人が少なくありません。
多くの会社は自社の地域で唯一の信用保証協会を利用する、あるいは銀行が指定する信用保証協会を利用しています。
しかしながら、銀行から指定されたからといって、その信用保証協会が最善かどうかは別問題です。
なぜならば、信用保証協会によって使える制度や対応が異なるためです。
もし、最善の制度があるならば、どの会社に対しても同じように信用保証協会をすすめることでしょう。
しかし実際には、銀行または支店の方針、さらには銀行員ごとに、信用保証協会のすすめ方にはバラつきがあります。
銀行も、信用保証協会に精通しているとは限らないのです。
新しい融資商品ができた時などには、それを利用してほしいというだけで、特定の保証制度をすすめてくることも珍しくありません。
また、信用保証協会によって対応に差があります。
信用保証協会から保証を受けるには、保証審査に通らなければなりません。
一般的に、信用保証協会の審査機関は長いとされています。
それも信用保証協会によりけりで、審査にかかる時間や保証の受けやすさ(保証審査の難易度)は、信用保証協会によって異なるのです。
自社としても、信用保証協会ごとの違いはうまく利用すべきでしょう。
上記の通り、使える信用保証協会は自社の所在地によって決まることが多いです。
ただし、ここでいう「所在地」は、本社に限ったことではありません。
本社の所在地では信用保証協会Aが対象であっても、支店の所在地では信用保証協会Bが、工場の所在地では信用保証協会Cが使えるといったケースがあります。
原則、営業所の規模や業歴を問わず、実態として営業していれば問題ありません。
営業の実態を示すには、支店登記を提出するのがベストです。
しかし、支店登記も必須の要件ではなく、その他の方法、例えば納税証明書でも信用保証協会に申し込むことができます。
複数の所在地から信用保証協会を選べる場合、銀行から勧められるままに信用保証協会を決めるのではなく、有利な信用保証協会を選びたいものです。
後述の通り、信用保証協会の保証枠には上限があります。
これは、各地域の信用保証協会ごとに設定されるものではなく、保証先一社に対して設定されるものです。
営業エリアがA県・B県・C県にまたがっている場合、信用保証協会A・信用保証協会B・信用保証協会Cから選ぶことができますが、同じ保証枠の中で利用します。
保証上限が決まっているのですから、不利な信用保証協会で保証枠を消費するよりも、有利な信用保証協会で保証を受けるべきです。
どの信用保証協会を選ぶべきか、情報収集はごく単純です。
まずは、銀行の担当者に聞いてみると良いでしょう。
担当者が知らない、あるいは教えてくれないということもありますが、その場合には対象地域の経営者などから情報を集めてみてください。
何かしら違いが見えてくるはずです。
信用保証協会を詳しく知る
信用保証協会の基本的な仕組みをみてきました。
ここからは、信用保証協会についてもう少し詳しくみていきましょう。
信用保証協会の責任共有制度とは?
信用保証協会を知る上で欠かせないのが、責任共有制度です。
責任共有制度とは、信用保証協会の保証付きで融資した会社が返済できなくなった場合、銀行と信用保証協会で責任を分担する制度です。
責任共有制度が始まったのは2007年。
それ以前は、銀行と信用保証協会が責任を分担することはなく、残債の100%を信用保証協会が弁済していました。
銀行には一切リスクがなく、しかも利息を稼げるのですから、銀行が信用保証協会ありきになるのも無理はありません。
これが徐々に銀行の怠慢につながっていきました。
当時、「信用保証協会さえあればどのような会社にも融資。返済が滞れば3ヶ月目に事故報告を上げて弁済してもらう」といった考え方の銀行も随分あったのです。
平成20年度には、信用保証協会の代位弁済の金額が1兆円を突破しました。
1兆円の貸し倒れといえば、地方銀行や信用金庫・信用組合ならば破綻するレベルです。
信用保証協会は公的機関であり、税金を弁済資金に充てています。
政府としても放置するわけにはいかず、責任共有制度が導入されたというわけです。
責任共有制度によって、銀行は残債の20%を負担することとなりました。
責任共有制度が導入される以前に比べると、信用保証協会の保証付融資はハードルが上がったといえます。
それでも、プロパー融資ならば100%負担のところを、信用保証協会が80%負担してくれるのですから、依然として銀行には有利な仕組みであり、会社の資金調達に役立つことも変わりません。
今後、もし代位弁済が膨らむようであれば、銀行20%・信用保証協会80%の案分が見直される可能性があります。
責任共有制度の改正により銀行の負担率が高まれば、信用保証協会の活用度も当然変わってくるでしょう。
長期的に信用保証協会を活用していくためにも、常にアンテナを張っておくことが大切です。
信用保証協会で調達できる金額は?
信用保証協会保証付融資は、銀行の融資を信用保証協会が保証するものです。
資金を出すのはあくまでも銀行であって、信用保証協会が出すわけではありません。
では、信用保証協会は、いくらまで保証してくれるのでしょうか。
信用保証協会が保証できる金額には上限があります。
これを保証限度額といい、よく銀行が「枠」というも保証枠のことです。
現在の制度では、信用保証協会の保証限度額は、無担保で8000万円、有担保で2億8000万円となっています。
もし、自社が無担保で1億円の融資を希望した場合も、信用保証協会が保証できるのは8000万円までです。
足りない2000万円については、銀行のプロパー融資やその他の資金調達で賄う必要があります。
もっとも、無担保8000万円・有担保2億8000万円は上限ですから、この枠の範囲内で、各会社の保証枠が決まります。
全ての会社が、上限いっぱいの保証を受けられるわけではないのです。
実質的な保証上限額は、月商倍率によって決まります。
例えば、年商1億2000万円(平均月商1000万円)の会社があったとしましょう。
この会社が銀行から4000万円の融資を受けている場合、借入金に対する月商の倍率は4倍となり、月商4ヶ月分の借り入れをしていることが分かります。
信用保証協会が保証枠を決める際、月商倍率が大きなポイントとなります。
信用保証協会保証付融資であっても貸し手は銀行です。
銀行は、月商倍率が3ヶ月以下を優良、3~4ヶ月を可、4ヶ月以上を不良とみなします。
実際の判断は業種によっても異なりますが、運転資金であれば、おおむねこの判断になるでしょう。
例の会社は、すでに月商4ヶ月分を借り入れているわけですから、月商倍率がレッドゾーンです。
この場合、信用保証協会の保証がつくかどうかに関係なく、大抵の銀行は審査対象外とします。
これでは、信用保証協会としても保証のしようがありません。
このように、「信用保証協会の保証枠=借入金月商倍率が3~4ヶ月以下」というのが一つの考え方です。
別の言い方をすれば、月商3~4ヶ月分が保証枠の目安になります。
月商3ヶ月分を超えると、銀行・信用保証協会ともに対応が厳しくなるため、「信用保証協会の保証枠=月商3ヶ月分」と考えておくのが無難でしょう。
信用保証協会から無担保8000万円の保証枠を獲得するために、必要な月商は2667万円です。
それ以上の月商があっても、無担保8000万円の保証枠が広がることはありません。
信用保証協会の調達コストは?
どのような資金調達にも、調達コストがかかるものです。
銀行融資にも調達コストがかかります。
信用保証協会を利用せず、プロパー融資を受ける場合、調達コストは銀行に支払う利息だけです。
一方、信用保証協会の保証付きで融資を受ける場合、銀行に利息を支払うことに加えて、信用保証協会に保証料を支払わなければなりません。
ここで知っておきたいのは、信用保証協会の保証料率は一律ではないということ。
保証料は、会社の財務状況や、信用保証協会の制度によって変化します。
例えば、信用保証協会の制度には責任共有制度の対象となるものと、責任共有制度の対象外のものがあります。
保証料率は、「責任共有制度対象外>責任共有制度対象」です。
責任共有制度の対象外であれば、信用保証協会が100%弁済するわけですから、そのリスクを保証料に反映しなければなりません。
責任共有制度の対象であれば保証料率が下がります。
このほか、会社の財務による影響は一概には言えませんが、保証料率の高い・安いの目安は「1.55%」と考えてください。
全国の信用保証協会が統一的に提供しているものに「一般保証制度」がありますが、これも保証料率は0.45~1.90%に設定されています。
保証料率が1.55%以上の会社は、信用保証協会からハイリスクとみなされ、保証料率が高くなっています。
逆に、保証料率が1.55%以下の会社は、信用保証協会からローリスクとみなされていると考えてよいでしょう。
信用保証協会が実際に保証料率を算出する際には、CDR(クレジット・リスク・データベース)というシステムを用います。
CDRは、信用保証協会が作ったシステムであり、倒産の確率を割り出すためのものです。
CDRのスコアリングの結果に応じて、倒産リスクに見合った保証料率を設定します。
倒産リスクが高ければ、保証料率は1.55%よりも高くなり、倒産リスクが低ければ保証料率は1.55%よりも安くなるというわけです。
信用保証協会を利用するメリット
中小企業などが信用保証協会を利用する場合
・金融機関独自が実施する融資(プロパー融資)も併用することが可能なので、融資枠を拡大することができる。
・比較的返済期間が長く安定した資金繰りができる。
などのメリットがあります。
また実際に融資を行う金融機関にとっても、融資先に万が一のことがあっても信用保証協会が代位弁済を行うので、プロパー融資と比べてリスクの低い融資であるともいえます。
つまり貸す側にも借りる側にもメリットのある制度だといえるでしょう。
このため、いまや多くの中小企業融資が信用保証協会の保証を活用しており、中小企業融資の主流といっても過言ではありません。
以上が信用保証協会の代表的なメリットですが、そのほかにも様々なメリットがあります。
信用保証協会のメリットを詳しくみていきましょう。
新規融資が受けやすくなる
信用保証協会の大きなメリットは、新たな銀行から融資を受けやすくなるということです。
というよりも、これまで借り入れたことがない銀行に融資を依頼する場合、基本的には信用保証協会の利用を求められます。
融資の実績がない会社に対して、銀行は簡単に貸すことはできません。
新規融資ほど難しいのは、多くの経営者にとって常識ですから、銀行にとってはある意味「新規融資は信用保証協会を獲得するチャンス」ともいえます。
信用保証協会を利用せずに新規融資を受けられる会社も、ないわけではありません。
例えば、直近数年間で多くの利益を出しており、自己資本比率は30%以上、将来的にも有望といったケースです。
そのような会社は一握りですから、新規融資は信用保証協会を使うものと考えてよいでしょう。
銀行の融資を大別すると、「信用保証協会を利用する保証付融資」か「信用保証協会を利用しないプロパー融資」です。
保証付融資とプロパー融資の分かれ目は決算内容にあります。
決算が良ければプロパー融資を受けることも可能です。
決算内容が「良くも悪くもない」という場合、大抵は信用保証協会の利用を求められます。
決算内容が悪ければ、プロパー融資はまず不可能、信用保証協会の保証付融資でも融資不可というケースが出てきます。
融資難易度を比較すると、「プロパー融資≫信用保証協会保証付融資」です。
新規融資はただでさえ難しいのですから、プロパー融資はほぼ不可能といってよいでしょう。
しかし、信用保証協会の保証を付けることで新規融資を受けられるのですから、これは大きなメリットです。
また、初回のみ信用保証協会を使うのではなく、取引開始から2~3年にわたって信用保証協会を利用するケースが多いです。
取引歴が浅く、融資交渉が難しい中、信用保証協会があることによって融資がスムーズになります。
信用保証協会の保証付融資を受けつつ、銀行と取引を深耕するうちに、プロパー融資での調達もみえてくるかもしれません。
無担保で融資を受けられる
信用保証協会の保証枠は、担保・保証の有無によって変わります。
無担保で保証を受けて資金を調達できることは、信用保証協会の大きなメリットといえるでしょう。
担保余力は会社によって大きく異なります。
業歴が短く、規模が小さい会社は、十分な担保資産を持っていないのが普通です。
また、業種や事業内容によっては担保を持ちにくいケースもあります。
担保が乏しい会社は、それだけで融資に苦労するものです。
というのも、銀行は担保を重視します。
銀行融資は法的に消費貸借にあたり、返済を前提とするものです。
返済は現金で行うのが普通ですが、現金以外で返済することも民法で認められています。
現金で回収できなくなった場合、担保の売却によって回収できれば、銀行は貸倒れリスクを回避できます。
担保の有無は、銀行にとって深刻な問題なのです。
当然、担保不足で銀行から融資を受けられない会社も多いわけですが、その際に信用保証協会が役立ちます。
信用保証協会の保証上限は、無担保8000万円・有担保2億8000万円です。
無担保でも8000万円まで保証を受けられるため、担保がない会社も安心して利用できます。
信用保証協会が交渉カードになる
そもそも融資は、会社と銀行の商取引です。
商品は貸付金、売り手は銀行、買い手は自社という関係で取引します。
成約に至れば融資実行となり、自社は資金繰りに必要な資金を獲得できます。
ところが、銀行融資を取引とは考えず、「借りられれば御の字」と考える会社が多いようです。
このような姿勢では、銀行交渉はうまくいきません。
銀行と交渉する姿勢があってこそ、必要な資金を確実に調達でき、融資条件も良くなります。
交渉である以上、交渉カードが豊富であるに越したことはありません。
信用保証協会も交渉カードになります。
新規融資の際、信用保証協会の利用を条件に融資を引き出すのも交渉のひとつです。
また、信用保証協会の保証枠に余裕があれば、銀行はそれを「実質的な調達余力」とみなすため、心理的に安心感を与え、積極的な姿勢を引き出すのに役立ちます。
信用保証協会の保証枠を温存しておけば、それもよい交渉カードになるでしょう。
このほか、プロパー融資を引き出すための交渉にも使えます。
銀行は、プロパー融資を簡単には出しません。
融資希望額の全額をプロパー融資で依頼すれば、なかなかうまくいかないものです。
このとき、プロパー融資と保証付融資の抱き合わせを提案するのです。
例えば、融資希望額の一部をプロパー融資、残りを信用保証協会の保証付融資という形にすれば、銀行のリスクは大幅に軽減され、融資しやすくなります。
ポイントは、たとえ一部であっても、「プロパー融資を出した」という実績が残ることです。
プロパー融資の実績が少しでもある会社と、プロパー融資の実績が全くない会社では、印象が全く異なります。
この実績が、今後プロパー融資を引き出すきっかけになるのです。
信用保証協会を交渉カードとして活用すれば、資金調達の可能性は広がっていくでしょう。
保証料の補助を受けられることも
信用保証協会の保証制度は色々あります。
全国の信用保証協会で利用できる「一般保証制度」のほか、都道府県や市区町村が独自に手掛ける保証制度もあるのです。
公的融資としてよく知られている「制度融資」は、自治体が独自に行っている保証制度の代表といえます。
制度融資は、自治体が主導して行うものですが、自治体・銀行・信用保証協会の三者が協力して融資するのが特徴です。
自治体は制度を策定し、貸付金を出すのが主な役割です。
銀行は、制度融資の実務を請け負います。
融資実行時には、信用保証協会が保証を付ける仕組みです。
制度融資は、自治体の発展を目的とするものですから、一般的な保証付融資にはないメリットがあります。
特に魅力的なのが、利子補給や保証料の補助です。
利子補給は、銀行に支払う金利を支給するものであり、保証料補助は、信用保証協会に支払う保証料を補助するものです。
信用保証協会に支払う保証料の半分または全額を補助する制度も少なくありません。
信用保証協会を使ってスムーズに調達し、なおかつ調達コストもカットできるのですから、大きなメリットといえるでしょう。
制度融資の内容は自治体ごとに異なるため、まずは自社に有利な制度がないか調べてみてください。
信用保証協会の保証を受けるための流れ
さて、ここからは信用保証協会から保証を受けるにあたっての、実践的な部分を解説していきましょう。
信用保証協会の利用の流れ
実際に信用保証協会から保証を受ける場合、どのように利用すればよいのでしょうか。
信用保証協会保証付融資を利用する際の流れは以下の通りです。
銀行に融資を申し込む
まずは金融機関に融資を申し込みます。すると、銀行員は資金使途や返済原資、保全などについて聞いてくるはずです。
経営者がこれらを説明した後、銀行員は融資できるかどうか、どのような形であれば融資できるかを考えます。
よほどの優良企業でなければ、プロパー融資は出ません。
銀行員はこのように言ってくるでしょう。
「プロパー融資は出せませんが、信用保証協会の保証付きなら出せるかもしれません。それでよければ店内で稟議を上げます」
信用保証協会に申し込む
会社が信用保証協会の利用を承諾すると、銀行の支店内で稟議を行います。
もちろん、融資担当者の稟議書には「信用保証協会の保証付きで融資を出したい」旨が記載されており、稟議に携わる融資課長や支店長も、信用保証協会の保証付きを前提に検討します。
稟議の結果、融資実行と決まれば、いよいよ信用保証協会に申し込みです。
銀行は、信用保証協会に提出する「信用保証委託申込書」を用意し、会社に記入を求めます。
記入後、会社が申込書を銀行に戻すと、銀行は信用保証依頼書に所見を書き込みます。
ここでいう所見(金融機関の所見)とは、銀行から信用保証協会に求める保証の内容を完結に述べたものです。
つまり、自社の調達希望は「自社→銀行→信用保証協会」という流れで、間接的に伝わります。
以上の流れからも分かるように、銀行への融資依頼と、信用保証協会への保証依頼のタイミングは同じではありません。
銀行の稟議に通った後に信用保証協会に申し込みます。
信用保証協会の保証審査
信用保証協会に保証申込書・依頼書、その他添付書類を添えて提出すると、信用保証協会は保証審査を実施します。
保証審査の結果に問題がなければ、信用保証協会から銀行に信用保証書を発送。
信用保証書は、いわば「保証審査通過のお知らせ(保証決定のお知らせ)」です。
銀行は、信用保証書と借入申請書を用いて本部稟議を行います。
もちろん、すでに銀行内の稟議に通っているため、信用保証協会の保証審査に問題がなければ本部稟議にも通るのが普通です。
信用保証協会保証付融資の実行
いよいよ、信用保証協会の保証付融資の実行です。
信用保証協会に支払う保証料は、融資実行時の一括先払いが基本となります。
例えば、信用保証協会の保証付きで1000万円を調達し、保証料率が1.5%であれば、融資実行時に保証料を差し引いた985万円を受け取ります。
そして実際の返済は融資を行なった金融機関等に行われ、万が一返済が滞ってしまったような場合は、金融機関に信用保証協会が代わりに弁済するしくみです。
信用保証協会の代位弁済に至った場合、金融機関ではなく信用保証協会に債務を返済することとなります。
しっかりと準備を
まず信用保証協会の保証を受けるといっても、銀行などの金融機関から融資を受けることに変わりはありません。
信用保証協会の保証付融資であっても、実際にお金を出すのは銀行であり、信用保証協会と直接やり取りするのも銀行です。
つまり、窓口である銀行がその気にならなければ、信用保証協会の保証は受けられず、資金調達にも失敗します。
そこで重要となってくるのが、事前の準備。
特に書類は重要ですから事業計画や決算書、資金繰り表などをきっちりと準備して財務体質や融資の必要性、使途を明確にしておく必要があるのです。
プロパー融資でも、信用保証協会の保証付融資でも、銀行に前向きに検討してもらうためには書類が最も有効です。
銀行員が書類好きというのは、普遍的な事実といえます。
そもそも、信用保証協会の保証付融資を受け付けるにあたり、銀行の担当者自身が判断を下すわけではありません。
担当者が稟議書を作成し、上司、支店長などが回覧しながら融資を検討します。
信用保証協会の保証付融資も、内容次第では本部に最終判断を仰ぐことも。
このうち、自社と面識があるのは担当者だけで、担当者の上司や支店長との付き合いは会社ごとにかなり違います。
担当者以外とはほとんど面識がないケースも多く、本部の人に至っては全く面識がないのが普通でしょう。
つまり、面識がない人が稟議書だけで判断しているわけです。
当然、稟議書の良し悪しによって判断が大きく左右されます。
担当者に良い稟議書を作ってもらえるかどうかが、信用保証協会の保証付融資を引き出せるかどうかの分かれ目です。
特に、自社の提出書類をそのまま稟議書に添付してもらうことで、稟議書の説得力が高まります。
信用保証協会を利用する際の基本書類
信用保証協会を利用する際、信用保証協会から様々な書類をリクエストされます。
書類の全て提出しない限り、信用保証協会の保証は受けられません。
気を付けたいのは、信用保証協会の利用歴・利用状況・調達内容によって提出書類が変わることです。
信用保証協会の基本書類をみていきましょう。
(信用保証協会の基本書類は、保証協会ごとに異なる場合や、変更される場合があります。詳細は申し込み先の銀行または信用保証協会に直接お問い合わせください)
毎回求められる書類
信用保証協会の利用歴や利用状況に関係なく、以下の書類は毎回求められます。
信用保証協会の保証付融資における、もっとも基本的な書類といえるでしょう。
- 信用保証依頼書:銀行を通して、信用保証協会に保証を依頼するための書類。
- 申込企業概要:信用保証協会に保証を申し込む企業(自社)の概要。企業の沿革、経営者の略歴、取引先状況、所有不動産概要などを記入。前回の信用保証協会の利用から変化がなければ省略可。
- 信用保証委託申込書:今回の保証付融資について、信用保証の委託を申し込む書類。
- 信用保証委託契約書:今回の保証付融資に関する信用保証委託の契約書類。
- 個人情報の取り扱いに関する同意書:今回の保証付融資に関する個人1人につき1枚、署名捺印のうえ提出。
利用状況によって求められる書類①
利用状況によって、信用保証協会の求める書類は変わります。
過去に信用保証協会を利用したものの、現在は信用保証協会を利用していない会社もあるでしょう。
その場合、信用保証協会から以下の書類を求められます。
- 印鑑証明書:取得から3ヶ月以内のもの。申込人のほか、第三者連帯保証人がいれば保証人の印鑑証明書も提出。
- 商業登記簿謄本:取得から3ヶ月以内のもの。
- 定款の写し:最新のものを提出。
- 決算書の写し:税務署収受印が押印されている決算書を2期分提出。信用保証協会によっては、決算書の原本や2期以前の決算書を求める場合も。個人事業主は確定申告書を提出する。
- 納税証明書:法人税または事業税の納税証明書。これがあることにより事業実態を証明でき、信用保証協会の選択肢が広がる。最新のものを提出、コピー不可。
利用状況によって求められる書類②
現在、信用保証協会を利用している会社が、さらに信用保証協会を利用する場合があります。
例えば、追加の資金調達が必要になった場合、信用保証協会の保証付融資で追加融資を受けるわけです。
その場合、信用保証協会に以下の書類を提出します。
- 納税証明書:前回信用保証協会を利用してから、事業年度が変わっていれば最新の納税証明書を提出。
- 決算書・確定申告書:前回信用保証協会を利用してから、事業年度が変わっていれば最新の決算書を提出。
前回、設備資金の保証を受けた場合
前回、信用保証協会の保証付融資で設備資金を調達した会社は、今回の保証にあたり設備領収書の提出を求められます。
前回の保証付融資で支払った設備について、金額や宛名などを確認できる書類を提出します。
具体的な記載内容は投資設備によって変わってくるため、信用保証協会に確認するのが確実です。
今回、設備資金の保証を申し込む場合
今回、信用保証協会の保証付融資で設備資金を調達する場合、以下の書類を求められます。
- 見積書:投資設備の購入予定先から、自社宛の見積書を提出。
- 契約書:投資設備の購入に関する契約書を提出。信用保証協会に申し込む時点で契約書がなければ(契約前の段階であれば)、実際の保証・融資は契約書の提出後となるため要注意。
- 設備投資計画説明書:信用保証協会に具体的な資金使途を示すため、設備内容、調達額、返済方法などを説明する書類。
建物に関する設備資金の保証を申し込む場合
設備資金の中でも、建物に関するものは書類が異なります。
例えば、製造業者が工場を建築する場合、あるいは運送業者が倉庫を建築する場合など。
信用保証協会に求められる書類は以下の2点です。
- 建築確認申請書:申込人と建築申請人が同じであることが原則。信用保証協会に申し込む時点で建築確認申請書がなければ、実際の保証・融資は提出後となるため要注意。
- 建築承諾書:借地に建築する場合、土地所有者の承諾書を提出。
許認可事業が保証を申し込む場合
営業に許可や免許が必要な事業であれば、信用保証協会はそれに関する証明書類を求めます。
また、業種によっては信用保証協会の保証を受けられないため、それに関する宣誓書を求められることがあります。
- 許認可事業の各種証明書類:許可証、認可証、届出書、登録証、免許証などの写しを提出。多店舗展開など、複数の事業所が許可等を受けている場合、主要店舗の証明書を提出する。すでに提出している場合は不要。
- 風俗営業でない旨の宣誓書:食事の提供を主たる目的としていない飲食業(喫茶店や酒場など)は、信用保証協会に申し込むたびに必ず提出する。
従業員確認書類
信用保証協会は、保証先の業種と規模に応じて、従業員の確認書類を求めることがあります。
具体的には以下の通りです。
- 小売業・サービス業:資本金が5000万円を超えており、なおかつ従業員数が小売業では45人、サービス業では90人を超える場合。
- 卸売業:資本金が1億円を超えており、なおかつ従業員数が90人を超える場合。
- 上記以外の会社:資本金が3億円を超えており、なおかつ従業員数が270人を超える場合。
以上に該当する会社は、労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書の写し、または公的機関(社会保険庁など)による証明書を信用保証協会に提出してください。
不動産担保を提供する場合
信用保証協会の保証枠は、無担保8000万円・有担保2億8000万円です。
信用保証協会に不動産担保を提供する場合、以下の書類を求められます。
- 不動産登記簿謄本:発行3ヶ月以内のもの。
- 公図・住宅地図
- 土地賃借契約書・地代領収書:借地の場合は提出。
- 土地所有者の抵当権設定に関する承諾書:信用保証協会に担保提供する場合、金融機関の抵当権がつくため、土地所有者の承諾書が必要となる。
- 所得税・消費税の納税証明書:先行する租税債権がないことを信用保証協会に証明するために提出。
信用保証協会を利用する際の重要書類
以上は、信用保証協会からリクエストされる書類です。
そのほか、窓口は銀行ですから、銀行に対して提出することになります。
この場合、提出書類は大きく分けて二通りあります。
ひとつは手続きのための書類、もうひとつは銀行融資のための書類です。
手続きに必要な書類
まずは、信用保証協会を利用するために欠かせない、手続きのための書類をみていきます。
既に挙げた書類のうち、特に重要なのは以下の書類です。
- 信用保証依頼書
- 信用保証委託申込書
- 信用保証委託契約書
- 個人情報の取り扱いに関する同意書
- 決算書(個人事業主は確定申告書)
- 商業登記簿謄本
これらの書類は、銀行から求められたらすぐに提出しましょう。
ただし、不備のないように注意してください。
特に、依頼書や申込書に不備があれば、信用保証協会は保証を出すことができず、再提出を求められます。
基本的に、信用保証協会の保証付融資はプロパー融資よりも手続きが煩雑であり、提出書類も多いです。
書類の提出に手間取ると、資金調達に時間がかかり、資金繰りが狂ってしまうかもしれません。
決算書や商業登記簿謄本は、事前に準備しておくと安心です。
銀行に融資を依頼し、信用保証協会の保証を受けることになれば、その時点で準備を始めるのが良いでしょう。
銀行融資のための書類
信用保証協会の保証付融資も、銀行融資の一種ですから、そのための書類が必要です。
銀行との日常的な取引、これまでの信用保証協会の利用歴など、会社によって求められる書類は変わってくるでしょう。
注意したいのは、新規の銀行から融資を受ける場合。
新規融資は信用保証協会の使いどころですが、その際には新規融資のための書類を提出しなければなりません。
当然、求められる書類は多く、作成に手間がかかるものです。
新規融資の際には、以下の書類を求められます。
- 決算書
- 事業計画書
- 資金繰り予定表
- 数年分(基本的には5年分)の損益予定表
- 合計残高試算表
- 金融機関別借入内訳表
以上の書類は、信用保証協会を利用しない場合でも求められる書類です。
もし、銀行が求めなかった場合には、自社の方から率先して提出してください。
それだけで銀行の心証は変わり、稟議書が良くなるだけではなく、信用保証協会にも積極的に働きかけてくれます。
信用保証協会の保証付融資を含め、既に融資実績がある銀行であれば、必要書類は少なくなります。
前月分の合計残高試算表と、今後6ヶ月分の資金繰り予定表を準備しておけば、信用保証協会の保証付融資を受けられるでしょう。
既存の銀行も、新規の銀行と同様に、書類を積極的に提出するのがポイントです。
例えば、合計残高試算表は、決算後6ヶ月以上を経過した場合に提出義務が生じます。
しかしながら、銀行はできるだけ最新の動向を把握したいと考えているため、義務はなくとも提出するに越したことはありません。
決算後3ヶ月を経過していれば、求められずとも試算表を提出することをおすすめします。
資金繰り予定表は、過去の実績として直近の3ヶ月分、今後3ヶ月分の資金繰り計画、合計6ヶ月分を求められるのが一般的です。
ただし、銀行によっては1年分の資金繰り予定表を求めることもあります。
その場合、実績6ヶ月分・計画6ヶ月分ではなく、実績3ヶ月分・計画9ヶ月分を記載するのが良いでしょう。
なお、これらの書類は銀行と信用保証協会の両方がみるものです。
信用保証協会は、資金繰り予定表を重視するため、しっかりと作成してください。
信用保証協会保証で融資を受ける場合の注意点
プロパー融資を受けられない会社にとって、大きなメリットがある信用保証協会。
しかし、信用保証協会を利用する際には、いくつか注意すべき点があります。
根保証に注意
信用保証協会の利用にあたり、特に間違いが多いのは根保証です。
根保証とは、あらかじめ一定の保証枠を設定しておき、その範囲内で信用保証協会が保証するものです。
例えば、信用保証協会で5000万円の根保証を組んでいる場合、この保証枠の範囲内で、保証期間中ならばいつでも保証付融資を受けることができます。
信用保証協会の根保証には、メリットとデメリットがあります。
メリットは、事前に保証枠を獲得しておくことで、スムーズに融資を受けられることです。
信用保証協会の保証付融資は調達に時間がかかるため、その点では根保証はメリットといえるでしょう。
ただし、メリットよりもデメリットの方が大きいのが実情です。
信用保証協会の根保証の枠は、利用の有無に関係なく、他の枠と合算して考えます。
例えば、「運転資金の調達を円滑化したい」という目的で、信用保証協会から無担保で5000万円の根保証を受けたとしましょう。
銀行にしろ信用保証協会にしろ、資金使途以外に流用することを認めていません。
したがって、根保証の枠で調達できるのは、あくまでも運転資金に限られます。
そこで問題となるのが、運転資金以外の調達が必要になった場合です。
設備投資のために5000万円の保証付融資を希望しても、5000万円の根保証が邪魔になります。
無担保の保証枠は8000万円が上限ですから、追加で保証できるのは最大でも3000万円だけです。
根保証の枠を全く使っていないにも関わらず、十分な保証を受けられないこともあり得ます。
以上のように、信用保証協会の根保証は、保証付融資の活用を妨げることがあります。
目的が明確であり、メリットも十分であれば、根保証を利用するのも良いでしょう。
しかし、「安心のために保証枠を事前に確保」といったあいまいな目的で利用するのは避けるべきです。
安心を目的とするならば、「将来、特定のケースに備えて根保証を組む」より、「将来、不測の事態に備えて根保証を解約しておく」ほうが無難です。
現時点で、信用保証協会から根保証を受けている会社は、解約も検討してみてください。
許認可事業は注意が必要
信用保証協会の基本書類でも簡単に述べましたが、許認可が必要な事業の場合、信用保証協会の利用は変わってきます。
許認可事業として、これまでも信用保証協会を利用してきた会社であれば、さほど問題はありません。
注意が必要なのは、業態を変更する会社です。
信用保証協会は許認可を重視
信用保証協会の利用に失敗する会社は、以下のようなケースが少なくありません。
「以前の事業では許認可の必要がなく、信用保証協会を利用できていた。業態を変えたところ許認可の対象となった。申請がうまくいかず、認可が遅れたため証明書がなく、信用保証協会を利用できなかった」
許認可事業は、信用保証協会から証明書の提出を求められます。
業態を変更した後、許認可を受けるまでは信用保証協会の保証対象外となります。
業態の変更だけではなく、経営の多角化も同じです。
例えば、不動産業者が飲食業を始める場合、保健所の許可が必須となります。
保健所から許可が下りない限り、飲食業を始めることはできません。
会社としては、許認可を取る前に資金調達したいところですが、そのタイミングでは信用保証協会の利用を断られます。
信用保証協会は公的機関ですから、保証先の健全性には銀行以上に敏感です。
法律違反や税金の未納には厳しく対応するため、許認可を受けていない会社には決して保証を出しません。
業態が変わり、許認可が必要になる場合、事前に計画を立てるはずです。
その計画に沿って、早い段階で信用保証協会を訪問し、保証条件を確認しておくとよいでしょう。
個人事業主の法人成り
許認可事業を営む個人事業主が法人成りする際も、信用保証協会の利用に注意が必要です。
法人成りにあたり、個人事業の許認可が引き継がれないことがあります。
この場合、個人事業主の頃は「信用保証協会の対象」であったものが、法人成りによって「信用保証協会の対象外」になってしまうのです。
当然、信用保証協会の保証付融資は利用できません。
このパターンで分かりやすいのが古物商免許。
中古品を販売するには古物商免許が必須となります。
例えば、中古車販売業を営んでいた個人事業主が、営業規模の拡大に伴い法人成りするとしましょう。
この場合、法人成りにあたって再度警察署に申請し、法人として古物商免許を取得しなければなりません。
それを知らずに法人成りをし、中古車を販売すれば違法になります。
法律に敏感な信用保証協会が、そのような事業者に保証するはずがないのです。
もっとも、銀行に融資を相談した時点で問題が発覚し、信用保証協会の申請に至らないケースが大半でしょう。
法人成りの後に信用保証協会を利用できるのは、あくまでも古物商免許を取得した後です。
古物商の許可には3週間~1ヶ月を要します。
法人成りを決めた時点で、許認可に約1ヶ月、信用保証協会の保証付融資が出るまでに約1ヶ月かかるとすれば、少なくとも2ヶ月分の資金繰りを計画しておかなければ、資金ショートの危険があります。
信用保証協会の訪問を断らない
信用保証協会は、保証先の会社を訪問することがあります。
この訪問は、信用保証協会の利用状況によって様々です。
初めて信用保証協会を利用する会社は、100%訪問を受けると考えてください。
既に信用保証協会を利用している場合も、信用保証協会によっては訪問することがあります(東京都信用保証協会が有名)。
信用保証協会の訪問は、初めての利用ならば事前の連絡がありますが、既に取引がある場合には抜き打ちで訪問するケースが多いようです。
信用保証協会に訪問を希望されても、見られてはまずいことがあれば、訪問を断りたくなるものです。
「問題ないとは思うが、思いがけずマイナス評価を受けるかもしれない」と考える経営者もいることでしょう。
問題が発生しているタイミングで抜き打ちの訪問を受ける可能性も、ないわけではありません。
しかし、事前希望があっても、抜き打ちであっても、信用保証協会の訪問を断ってはいけません。
それだけで信用保証協会の心証が悪化し、保証を受けられなくなってしまいます。
信用保証協会が訪問を重視するようになったのは、約30年前の創業融資ブームが原因です。
当時、国の施策で創業融資が推進され、日本政策金融公庫と信用保証協会が創業融資に積極対応しました。
しかし、この制度の悪用が問題になりました。
事業の実態がないのもかかわらず、創業するフリをして信用保証協会で創業融資を受け、全く返済せずトンズラするケースが多発したのです。
返済されなかった創業融資は、全て信用保証協会が弁済しなければなりません。
それ以降、全国の信用保証協会は新規利用の会社を必ず訪問するようになりました。
被害件数が最も多かったのは東京都です。
東京都信用保証協会が、保証先を抜き打ちで訪問する理由はここにあります。
この背景からも分かるように、信用保証協会が訪問する最大の目的は、事業の実態を確認することです。
ペーパーカンパニーであれば、訪問すればすぐに分かります。
信用保証協会の職員は、実際に事業所を訪問してみて、デスクがある、電話を引いている、現場で人が働いている、倉庫に原材料があるといったことから、本当に商売していることを確認します。
訪問を拒否すれば、信用保証協会は事業の実態を確認できません。
決算内容が良い会社であっても、訪問を拒否すれば保証を受けられなくなる可能性が高いです。
既に信用保証協会を利用し、その後に抜き打ち訪問を受けた場合も同様です。
抜き打ち訪問を拒否することは、信用保証協会の心証は確実に悪化します。
見られたくない部分があっても、訪問を拒否するよりははるかにマシです。
肝に銘じておきたいのは、全ての信用保証協会が全国信用保証協会連合会に所属しており、情報を記録・共有していること。
信用保証協会が保証を出さなかった場合、その審査の履歴は信用保証協会に記録されます。
審査に通らなかった理由が、信用保証協会が最も嫌う「訪問拒否」であれば、長期的な悪影響は必至です。
原則として保証人は必要
信用保証協会は、無担保8000万円・有担保2億8000万円を上限に保証しています。
無担保で資金調達できるのがメリットですが、保証はまた別問題です。
信用保証協会で「無保証人」というのは、個人事業主は代表者個人が連帯保証人にならなくてよい、あるいは法人は第三者を連帯保証人に立てなくてよいことを意味します。
逆にいえば、法人が信用保証協会を利用する場合、代表者個人の連帯保証は必須ということです。
信用保証協会は無担保・無保証人で利用できると考えているならば、改めてください。
また、代表者個人が連帯保証人になるにあたって、知っておきたいのは代表者の個人情報の影響、そして弁済の影響です。
個人情報は影響するか
代表者個人が連帯保証人になると聞いて、個人情報の影響を気にする人は多いはずです。
信用保証協会に申し込む際、個人情報の取り扱いに関する同意書を提出することから、個人情報のチェックが必須と考える人もいます。
結論からいえば、代表者の個人情報は保証審査に影響しません。
「個人情報に取り扱いに関する同意書」で同意するのも、「信用保証協会に保証を申請した企業としての個人情報」であって、代表者個人の情報とは何ら関係ないのです。
そもそも、信用保証協会が保証するのは事業融資であって、代表者の個人的な借金を保証するわけではありません。
また、信用保証協会の保証付融資で会社が調達した資金を、代表者個人の目的に流用することは禁止されています。
したがって、信用保証協会が個人情報にアクセスすることはほぼないといってよいでしょう。
代表者が消費者金融から多額の借入をしていても、その返済が滞っていても、極端にいえばブラックであっても、それだけを理由に保証審査に落ちることはないでしょう。
ただし、これはあくまでも信用保証協会の保証審査の話。
保証付融資の審査は、信用保証協会の保証審査だけではなく、銀行の融資審査も必須です。
銀行員によっては、代表者の個人情報を厳しくチェックします。
信用保証協会の保証付融資は、「申し込み→銀行の融資審査→信用保証協会の保証審査→融資実行」の流れですから、まず銀行が審査するわけです。
代表者個人の悪い情報が銀行にバレて、融資審査に落ちてしまえば、そもそも信用保証協会の保証審査にたどり着けません。
資金調達に失敗し、銀行と信用保証協会の評価も悪化…ということも考えられます。
代表者の個人情報は、クリーンな状態を保っておきましょう。
代位弁済の影響
信用保証協会の保証付融資で調達した後、返済できなくなれば信用保証協会が残債の8割を弁済します。
これによって、銀行への返済義務はなくなります。
その代わり、信用保証協会に返済しなければなりません。
このことはしっかり認識しておくべきです。
債務不履行になった後の影響は、信用保証協会の方がはるかに大きいです。
これはサービサー(債権回収会社)の違いにあります。
プロパー融資が回収不能になった場合、銀行は民間のサービサーに債権を譲渡します。
この時、民間サービサーは、債権の金額(残債)よりもはるかに安い金額で買い取るのが特徴です。
銀行は、回収にかかる労力を考えると、格安でも売った方がよいと考えるわけです。
これにより、債務が大幅に圧縮されます。
残債の数%に圧縮されれば、代表者個人の資力で何とか返済し、自己破産を回避できることも多いです。
ところが、信用保証協会は民間サービサーに債権を譲渡せず、信用保証協会サービサーに譲渡します。
信用保証協会サービサーは、法的処理をしない限り債権を圧縮しません。
どれだけ時間がかかっても、少額ずつでも回収を続けます。
信用保証協会サービサーから取り立てを受けるのは、連帯保証人である代表者個人です。
個人の収入で返済できる金額など、たかが知れています。
毎月数千円、数万円の返済が精いっぱいでしょう。
信用保証協会から数千万円単位の保証を受け、代位弁済に至った場合、一生かかっても返済できないことになりかねません。
自己破産は避けるべし
信用保証協会に代位弁済を受け、代表者個人に債務が降りかかったとき、逃れるための唯一の方法は自己破産です。
自己破産で債務を整理すれば、いかに信用保証協会サービサーといっても、債権を大幅に圧縮せざるを得ません。
しかし、安易な自己破産は禁物です。
自己破産に踏み切った場合、信用保証協会は二度と使えなくなるのです。
自己破産したことは事故履歴として残ります。
よく、個人の借金などでは、「自己破産の記録が残るのは7年間」などといいますが、これはあくまでも個人信用情報機関のことです。
信用保証協会が記録し、全国で共有している情報は永遠に残ります。
信用保証協会は代表者の個人情報を照会しませんが、信用保証協会自体に自己履歴が残っていればすぐに分かります。
したがって、自己破産後に事業を起こしても、信用保証協会から保証を受けることはできません。
信用保証協会の保証を全く利用せず、銀行のプロパー融資や、融資以外の資金調達だけで資金繰りを回していくのはほぼ不可能です。
自己破産は、結局のところ借金の踏み倒しです。
過去に踏み倒した相手を再び保証するほど、信用保証協会は甘くありません。
代位弁済後、返済すべきか
信用保証協会の保証付融資は、代表者個人が連帯保証人になる以上、代位弁済と返済のリスクは常にあります。
代位弁済になった場合、信用保証協会には返済すべきかどうかは、債務の金額次第です。
あまりにも多額であり、個人で返済するには無理があると判断すれば、自己破産もあり得ます。
その後、信用保証協会は利用できず、再チャレンジは不可能になりますが、一生返済を続けるよりはマシかもしれません。
ただし、負債額が少ない場合、返済して自己破産を避けた方が良いでしょう。
代位弁済は、いわば借金の立て替えです。
信用保証協会に立て替えてもらったお金を、時間がかかってもきちんと返済すれば、借金を踏み倒したことにはなりません。
会社だけ破産させて経営者個人が返済すれば、信用保証協会と付き合いを続けることができます。
残債の7~8割程度まで返済が進めば、信用保証協会は再び保証を受け付けてくれます。
一番悪いのは、自己破産もせず、代位弁済の返済もしないことです。
この場合、信用保証協会は法的手続きに移ります。
会社の預金や代表者個人の預金、延いては自宅も差し押さえられる恐れがあります。
差し押さえの結果、債務が帳消しになったとしても、踏み倒したことには変わりありません。
それならば、自己破産したほうがまだマシでしょう。
まとめ:信用保証協会
この記事では、信用保証協会の基礎知識から具体的な利用の流れ、メリット、注意点などを詳しく解説しました。
信用保証協会の利用に必要なことは、ほぼ網羅しています。
信用保証協会は、プロパー融資を受けられない場合はもちろんのこと、業歴が短い会社の資金調達、新規の銀行取引など、さまざまなシーンで役立ちます。
信用保証協会の保証付融資で調達する際には、注意点を踏まえたうえで、メリットを最大化することを心がけましょう。
ただし、信用保証協会の保証枠は無担保8000万円・有担保2億8000万円が上限です。
調達できる金額には限りがあるため、過度な依存は禁物です。
信用保証協会の保証付融資だけではなく、様々な資金調達方法を組み合わせながら資金繰りを回しましょう。
融資以外の方法で資金調達方法として、人気が高まっているのが売掛金の早期資金化です。
No.1も、売掛金の買い取りを行っています。
資金調達でお悩みの方は、No.1までお気軽にご相談ください。
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