カテゴリー: 資金調達情報
初めての起業と資金調達を徹底解説。起業資金はどこで調達する?起業後の資金繰りは?
近年、日本では起業を志す人が増えています。
日本経済の発展を目指し、政府も起業を奨励してきました。
今後、起業はますます活発になっていくことでしょう。
しかしながら、起業は簡単なものではありません。
起業は成功よりも失敗の方がはるかに多いのです。
実際に、起業から5年以内に8割以上は倒産しています。
起業に成功できるかどうかは、資金調達にかかっています。
起業前の資金調達、起業後の資金調達、そして資金繰り。
これに正しく取り組むことができれば、起業に成功できるかもしれません。
逆に、これらをおろそかにすれば、起業は失敗に終わるでしょう。
この記事では、起業の成功に欠かせない資金調達と資金繰りについて詳しく解説します。
起業前に知っておきたいこと
起業と資金調達を考えるには、当然ながら起業を正しく捉えることが不可欠です。
起業を甘く考えている人は、おそらく起業に失敗します。
それも、5年以内に失敗する可能性が高いです。
起業のリアルを知ることで、資金調達の重要性もおのずと見えてくるでしょう。
起業のリアル
働き方の多様化が進む昨今、会社に勤めるばかりが人生ではありません。
志を抱き、起業に挑戦する人が年々増えています。
起業というと、良いイメージを抱く人も少なくないでしょう。
日ごろ目にする起業家は、皆優秀で、会社をどんどん成長させ、若いころから地位もお金も名誉も全て手にした人ばかりです。
しかし、このような起業家はごく一握りです。
一握りもいないかもしれません。
起業する人のほとんどは失敗し、生き残ったわずかな人だけがフィーチャーされ、華々しくみえるだけです。
このことは、起業後の生存率をみるとよくわかります。
起業した中小企業の生存率は、5年後が14.8%、10年後が6.3%、20年後が0.4%です。
起業するからには、会社を大きくして長く経営を続けたいと誰もが考えます。
しかし、起業してからたった5年で、80%以上の会社が淘汰されるのが起業のリアルです。
起業後、20年以上(望むだけの期間)経営を続けることを誰もが考えています。
しかし、1000件の起業のうち、20年後に生き残るのはたったの4件です。
このデータを見れば、起業がいかに厳しいかがよくわかるでしょう。
起業を成功させるために最も重要なのは、「起業時に甘い希望を捨てること」です。
厳しい現実を知ったうえで起業すれば、起業時の資金調達にしっかり取り組み、十分な起業資金を確保した上で起業に踏み切ることができます。
以下で詳しく解説していきますが、起業の資金調達にどう取り組むかによって、起業の成功率が大きく変わってきます。
実際に、起業から5年以内に失敗する起業家は、起業時の資金調達に何らかの問題があるのです。
起業に最も重要な経営資源は?
これから起業する会社も、起業後まもない会社も、業歴が長い会社も、経営資源は共通しています。
ビジネスの三大資源は、ヒト・モノ・カネです。
起業においても、ヒト・モノ・カネはどれも重要といえます。
しかし、起業前の段階でこれらを全て、しかも十分に確保するとなると、かなり厳しいと言わざるを得ません。
そこで気になるのが、「ヒト・モノ・カネを確保してから起業すべきか?」「どれかひとつ(あるいは二つ)を確保できたら起業してよいか?」ということ。
基本的には、
「ヒト・モノ・カネが揃うに越したことはないが、揃わなくても起業し、成功することは可能」
と考えてください。
起業に限らず、物事にはタイミングがあります。
そのタイミングを逃してしまえば、成功するはずの起業も失敗に終わるでしょう。
多少条件が揃わないとしても、起業に踏み切った方が良い(場合も多い)というわけです。
帝国データバンクの調査をみても、ヒト・モノ・カネが十分な状態で起業するケースはほとんどありません。
起業家の多くは、事業化できるアイデアを思いついたタイミングや、会社勤めにうんざりしたタイミングで起業を考え始めます。
そして、ヒト・モノ・カネのうちヒト・モノはさておき、カネの目途がついた時点で起業に踏み切る起業家が多いようです。
「起業時の資金調達をどうするか」は、「実際に起業にできるかどうか」に大きくかかわってくるといえます。
もちろん、資金調達さえうまくいけば起業に成功するとは限りません。
実際に起業してみると、資金調達と同じくらい、あるいは資金調達以上にヒト・モノが重要であったと気付く起業家も少なくないのです。
とはいえ、ヒトやモノの確保にカネが必要なことも事実。
なによりも、起業後の資金繰りをしっかり支えられるだけの資金調達が欠かせません。
カネがあれば、起業前の計画が狂ってもすぐに倒産することはなく、方向を修正しながら成功を目指せます。
この意味において、起業に最も重要な経営資源はカネといってよいでしょう。
起業と資金調達を知る
起業の成否を大きく分けるのが、起業時の資金調達です。
起業前の段階で充分な資金を確保しておけば、起業後のお金の恐怖におびえることなく、成功を目指して着実に歩むことができます。
起業資金の目安
ところで、起業のためには、いったいどれくらいの資金調達が必要なのでしょうか。
起業に必要な資金は、一概にいくらとはいえません。
どのような事業を考えているのか、起業からどれくらいで黒字になるのか、起業後の資金調達の見込みはどうか。
色々な要素によって起業資金は変化します。
とはいえ、起業前に豊富な資金を準備できる起業家は少ないものです。
サラリーマンが起業するなど、少ない資金で起業を目指すケースの方が圧倒的多数といえます。
大多数の起業家が、限られた起業資金の中で取り組んでいることは、実際のデータからも明らかです。
日本政策金融公庫の調査によれば、起業資金の最頻値は600~800万円。
これに次いで多いのが400~600万円となっています。
これは、起業に真剣に取り組み、日本政策金融公庫で資金調達をした起業家のデータです。
それだけに信ぴょう性は高いといえます。
600万円程度の起業資金を準備できれば、資金調達はまずまず成功といえるでしょう。
自己資金だけでの起業は困難
起業資金の目安を知って、自己資金だけでの起業をあきらめた人も多いことでしょう。
事実、数百万円という起業資金を自己資金だけで賄える人はそうそういません。
自己資金が足りず、かといって資金調達のこともよくわからず、起業をあきらめる人は多いのです。
日本では、毎年20~30万人が起業しています。
起業家予備軍はさらに多く、100万人以上とされています。
単純に考えて、4人中3人が「起業したいと考えながら起業に踏み切れない」わけです。
起業に踏み切れない理由のうち、圧倒的に多いのが資金不足。
起業家予備軍の80%は会社員です。
起業のために自己資金を貯めるといっても、会社からもらえる給料は限られています。
ましてや、起業家予備軍の中には、給与に不満を抱き、会社勤めに辟易している人も多いのです。
この場合、数百万円の自己資金を確保してから起業するのは現実的ではありません。
毎月5万円貯金したとして、600万円を貯めるには10年かかります。
この10年間、起業家の人生にも色々な変化があり、大抵は起業への情熱を失っていきます。
情熱を保ったところで、10年後にはアイデアが色あせており、起業に失敗するでしょう。
では、サラリーマンに起業は難しいのかといえば、そうではありません。
自己資金で足りない部分は、資金調達すればよいのです。
特別な場合を除いて、基本的には「自己資金だけでの起業は不可能」「起業には資金調達がつきもの」と考えてください。
実際に、ほとんどの起業家は公庫その他で資金調達し、起業資金を確保しています。
少ない資金で起業できる?
もちろん、少ない資金で起業に成功するケースもあります。
しかし、だからといって資金調達をおろそかにしてはいけません。
起業資金は多いに越したことはなく、少ないほど成功が難しくなるのです。
起業に限らず、全てのビジネスは「資金調達→投資→回収→資金調達→投資→回収…」の繰り返しです。
このサイクルを繰り返すうちに、会社は大きくなっていきます。
投資資金を効率的に回収すること、回転率を高めることは、いわばキャッシュフローを大きくするということですから、後々の資金調達にも影響し、延いては起業の成功を左右します。
このとき、投資資金が小さければ、効率を高めたところで結果は乏しいものです。
小さな投資からは小さな回収しか生まれず、事業が軌道に乗るまでの期間も長期化し、起業に失敗しやすくなるのです。
資金調達を避け、自己資金だけで起業することにこだわる人は、そもそも起業に向いていません。
著名な起業家たちは、例外なく「起業に必要なお金を資金調達で確保し、リスクを承知で投資する」というマインドを持っています。
起業に使える資金調達方法
資金調達の方法は多種多様ですが、長年経営を続けている会社と、これから起業する人では異なります。
起業に使える資金調達方法は少ないものです。
一般的には、以下の資金調達方法を選びます。
- 自己資金で資金調達…自分の貯金や資産を元手に出資する、または会社に貸し付ける
- 親族から資金調達…両親や配偶者、そのほかの親族から出資してもらう、または借りる
- 第三者から資金調達…友人、以前の勤め先、取引先などに出資してもらう、または借りる
- 金融機関から資金調達…銀行や公庫から借りる
- 国や地方自治体から資金調達…起業向けの補助金・助成金を受給する
- 投資家から資金調達…ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家に出資してもらう
- クラウドファンディングで資金調達…不特定多数に出資を募る
このように、起業時の資金調達だからといって、特別なことはありません。
誰でも思いつく方法・知っている方法で調達します。
唯一、クラウドファンディングは比較的新しい資金調達方法で、起業時に利用する人も増えています。
起業資金は、これらの資金調達方法を組み合わせて調達するのが基本です。
資金調達の優先順位
ただし、資金調達の軸はやはり借入れです。
中小企業庁の統計をみても、自己資金で足りない部分を親や友人から借りたり、金融機関から借りたりすることで調達する起業家は8割に上ります。
お金を借りる場合、資金調達先は複数あるため、優先順位を考えなければなりません。
資金調達先を「親族」「第三者」「金融機関」とすれば、「親族→第三者→金融機関」の順番で資金調達するのが一般的です。
もちろん、親族や第三者から資金調達できる見込みがなければ、真っ先に金融機関を利用することになります。
とはいえ、ただ「迷惑を掛けたくない」「嫌われたくない」といった理由であれば考え物です。
起業家向けの融資制度で資金調達する場合、一定の金利が発生し、返済期間も厳しく定められています。
これに対し、親族や第三者は起業家の人柄や情熱を見込んでお金を出します。
金融機関よりも安いコストで、柔軟に返済できることが多いのです。
起業後は資金繰りが苦しいため、負担を軽くするためにも、親や友人から資金調達できるに越したことはありません。
また、親や友人から調達した資金は、自己資金に加えることができます。
後述の通り、起業家向けの公庫融資や制度融資は、自己資金に応じて融資上限が変化します。
親や友人から借入れて自己資金が厚くしておけば、資金調達の上限額も大きくなるのです。
その意味でも、起業の資金調達は「親族→第三者→金融機関」が理想といえます。
起業資金は公的融資で調達
起業の資金調達は、親族や友人からの借入れだけでは間に合わないことも多いものです。
足りない部分は融資で資金調達しましょう。
民間金融機関は頼れない
もっとも、銀行や信金など、民間金融機関での資金調達は困難です。
これは、銀行側の事情を考えると簡単に分かります。
銀行は返済力を重視
銀行は営利目的の民間企業です。
会社にお金を貸付け、元金に利息を上乗せして回収することで利益を得ています。
この時、銀行は低金利で貸し付けます。
貸し付ける金額に対して、得られる利息はわずかなものです。
元金の一部が回収できなくなっただけでも、銀行は損失を被る可能性があります。
それだけではなく、貸倒引当金も必要です。
銀行は金融庁の監督下で営業しており、貸付先の信用を格付けし、格付けに応じて貸倒引当金を積み立てることを義務付けられています。
信用が高いほど貸倒引当金は少なくて済みますが、信用が低ければ多額の(実質破綻先や破綻先に至っては貸付金の残高に対して100%の)資金を積まなければなりません。
本来貸せるはずのお金が引当金として拘束され、収益性の悪化につながるのです。
したがって、銀行で資金調達する際、返済力を厳しく審査されます。
返済力に問題がなければ、銀行は貸倒損失を被ることも、多額の貸倒引当金を積むこともありません。
逆に、返済力に問題がある会社には融資しないのが普通です。
少なくとも、担保や保証による保全が必須となるでしょう。
起業前・起業直後の資金調達は不可能
起業の資金調達に銀行を頼れない理由はここにあります。
起業における資金調達のタイミングは、「起業前」「起業直後」「起業後」です。
起業からしばらく経過すれば、銀行からの資金調達も検討すべきです。
しかし、起業前と起業直後のタイミングでは、銀行借入での資金調達はほぼ不可能と考えてください。
銀行が返済力を見極める上で重要なのは、決算内容です。
一定期間の決算書から業績・財務の推移を分析すれば、ある程度返済力が分かり、融資の可否、条件、担保・保証の有無などを判断できます。
しかしながら、起業前の段階では事業実績が皆無であり、返済力の裏付けが全くありません。
起業直後で決算期を迎えていない場合も同様です。
民間金融機関は、そのような相手に融資するノウハウを持っていません。
起業家が資金調達したいと考えても、銀行にはどうしようもないのです。
ビジネスローンでの資金調達はNG
もっとも、起業前・起業直後の資金調達に対応している銀行もあります。
ネット銀行などは、起業家の資金調達にも割合に好意的です。
ただし、ほとんどは起業向けのビジネスローンなどであり、条件面で問題を抱えています。
ビジネスローンは金利が高く、起業後の資金繰りには大きな負担です。
また、ビジネスローンは信用的にもマイナスです。
特に銀行はビジネスローンを嫌うため、起業後の銀行取引に支障を来します。
銀行・ノンバンクを問わず、起業時の資金調達にビジネスローンは不適当と考えてください。
起業時の資金調達に役立つ公的融資
銀行から資金調達できない起業家にとって、強い味方になるのが公的融資です。
公的融資ならば、実績も信用もない起業家でも資金調達できます。
起業時の資金調達に利用できるのは、日本政策金融公庫の創業融資と、自治体の制度融資です。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫は、政府の100%出資している政府系の金融機関です。
民間金融機関の補完を目的として、国の政策に基づいて融資しています。
実績・信用がない起業家は、銀行で資金調達できません。
起業を志す人の多くが、資金調達できずに起業できないとなれば、日本経済にとっては大変な損失です。
そのような状況が続けば、起業が一部の特別な人(自己資金が潤沢な人、親族から多額の支援を受けられる人など)だけのものとなり、経済は停滞(長期的には悪化)してしまうでしょう。
政府としては、経済発展のためにも起業を促したいと考えています。
そこで、銀行での資金調達が難しければ政府が補完しよう、日本政策金融公庫で対応しようというわけです。
それだけに、日本政策金融公庫は起業の資金調達に好意的です。
信用も実績もない起業家に、事業の将来性を評価しよう、なんとか融資しようと考えてくれます。
日本政策金融公庫は、起業家の資金調達に最も積極的な金融機関といえるでしょう。
日本政策金融公庫の融資制度は色々ありますが、起業の資金調達に利用できるものに「新創業融資制度」があります。
新創業融資制度は、起業前の資金調達、起業直後の資金調達に対応しています。
起業家が利用しやすいように、少ない自己資金で、無担保・無保証で借りられることも特徴です。
自治体の制度融資
自治体の制度融資も、起業家の資金調達に利用できます。
制度融資とは、都道府県や市区町村などの地方自治体が、信用保証協会・民間金融機関と協力して公的資金を融資する制度です。
もっとも、自治体から直接借りるわけではありません。
自治体から民間の銀行に貸付金を提供し、それを起業家が借りる仕組みです。
このとき、信用保証協会の保証付きで融資することも特徴といえます。
銀行は、様々な理由によって起業家の資金調達に対応できません。
主な理由は貸倒れリスクにあり、それさえ解消できれば話は別です。
制度融資は、貸付金を自治体が提供するため、貸し倒れになったところで銀行の懐は痛みません。
さらに信用保証協会の保証付融資は、貸倒引当金を積まなくてよいルールになっています。
つまり、自治体の制度融資は、銀行にとってほぼノーリスクです。
それでいて、銀行は起業家から利息を受け取れるのですから、積極的に対応するのもうなずけます。
起業家が資金調達するならば、日本政策金融公庫の創業融資だけではなく、自治体の制度融資も検討したいところです。
起業の資金調達は制度融資から
起業家にとって、公的融資は強い味方となります。
では、日本政策金融公庫の創業融資と、自治体の制度融資はどちらを選ぶべきでしょうか。
起業時の資金調達先として、優先すべきは自治体の制度融資です。
制度融資は、起業に役立つメリットを備えています。
起業後の資金繰りを考えた場合、日本政策金融公庫よりも自治体の制度融資の方が優れているのです。
制度融資は、国の政策ではなく自治体の政策によって運用されています。
それだけに、自治体ごとに融資条件、限度額、金利、補助などが異なります。
起業家の支援に積極的な自治体では、好条件で資金調達できることも多いです。
制度融資は金利が安い
例えば金利設定。
日本政策金融公庫は、無担保・無保証で資金調達できるものの、一般的な銀行融資よりも金利が高い傾向があります。
一般的な銀行融資が年利2.0%、日本政策金融公庫の創業融資は年利2.0%台(銀行融資より高くなることも)といったイメージです。
一方、制度融資の金利は安く設定されています。
実際の金利設定は自治体ごとに異なり、同じ自治体でも制度によって様々です。
制度融資の案内には、「金融機関に要相談」「長期プライムレート内」といった表記もみられます。
しかし、銀行融資よりも安い金利(1.9%以下)が明示されていることも多いです。
また、「金融機関に要相談」とする制度を利用し、一般的な銀行融資の水準で資金調達しても、結果的な金利負担は安くなります。
というのも、制度融資には利子補給があるからです。
例えば、ある自治体の制度融資では、金利を「金融機関に要相談」としつつも、起業前の資金調達には2.5%、起業後の資金調達には1.2%を上限として利子補給を行っています。
起業後の苦しい資金繰りにおいて、このような利子補給は非常にありがたいものです。
金利設定が2.0%、自治体の補助が1.5%であれば、起業家の実質的な負担は0.5%になります。
中には、金利のほとんど(または全部)を補助する制度も。
これを利用しない手はないでしょう。
保証料の補助を受けられる
制度融資は、信用保証協会の保証付きで融資します。
したがって、信用保証協会に保証料を支払わなければなりません。
保証料率は、資金調達の総額に対して1.5%が目安です。
もちろん、保証先の信用に応じて変動するため、実績・信用の乏しい起業家ならば、保証料率が高くなるのもやむを得ません。
たとえ数%とはいえ、資金が限られる起業家としては避けたいところ。
制度融資ならば、保証料の補助を受けられます。
利子補給と同じく、保証料の補助も制度ごとに様々です。
ただし、金利補給に比べて、保証料補助の方が多彩かつ積極的です。
東京都各区の制度融資を見てみると、自治体によって「全額」「半額(上限なし)」「保証料の1/2(ただし上限26万円)」「0.5%」「特定分野に限り全額補助」などなど。
同じ東京都でもこれだけの違いがあるわけですから、全国レベルでは実に多種多様です。
全額補助で資金調達できれば、無料で保証を受けられたことになります。
据置制度のメリット
自治体の制度融資でも、日本政策金融公庫でも据置制度があります。
これは、一定期間にわたって元金の返済を猶予する制度です。
据置期間は利息だけを支払えばよいため、起業直後の不安定な資金繰りで高い効果を発揮します。
起業の資金調達といえば、「起業資金の確保」だけを考える人が多いのですが、それだけではありません。
借りたお金を返さないことも、立派な資金調達です。
借りたお金の返済を先延ばしすれば、その分だけ手元資金の減少は緩やかになり、追加の資金調達も先延ばしできます。
その間に事業実績を作っておけば、追加の資金調達も容易になるでしょう。
日本政策金融公庫の据置期間は、運転資金は1年間、設備資金は2年間の一律設定です。
制度融資の据置期間も1年程度の設定が基本ですが、自治体によってはより長期の設定も考えられます。
ただし、据置制度を利用すると、その後の返済負担が増えるため注意してください。
据置制度は、返済期間の中で元金返済を猶予する制度であって、返済期間そのものは変わりません。
例えば、7年返済の条件で資金調達し、1年間の据置制度を利用した場合、本来7年で返済するものを6年で返済することになります。
その結果、毎月の返済額が増えるというわけです。
据置制度を利用したい起業家は、返済計画をしっかり立ててから資金調達してください。
制度融資のデメリット
もちろん、制度融資にもデメリットがあります。
起業の資金調達で注意すべきデメリットは以下の三つです。
多くの自己資金を求められる
制度融資で起業資金を調達する場合、多くの自己資金を求められます。
自治体の制度融資も、日本政策金融公庫も、自己資金ゼロでは利用できません。
事前に確保している自己資金に応じて、資金調達の上限が決まるのです。
制度融資の限度額は自己資金までとなっています。
例えば、起業家自身の貯金や家族や友人からの借入れを合わせて、200万円の自己資金を準備していたとしましょう。
この場合、制度融資で資金調達できるのは最大200万円です。
起業資金の中央値である600万円を確保するには、少なくとも300万円の自己資金を確保した上で制度融資に申し込み、上限300万円の資金調達を目指すこととなります。
もちろん、自己資金は多いに越したことはありません。
借入先を問わず、上限いっぱいの資金調達は難しいものです。
確実に資金調達するには、自己資金を多めに確保しておき、余裕をもって申し込むのが良いでしょう。
自己資金400万円を確保しておき、上限400万円の中で200万円借入れ、といった形の方が、資金調達の成功率は高まります。
審査が厳しい
制度融資には多くのメリットがあるものの、審査は厳しいです。
一般の銀行融資に比べると、制度融資のほうが資金調達しやすいことは間違いありません。
しかし、日本政策金融公庫と比較した場合、制度融資の方が厳しいこともまた事実です。
すでに解説した通り、制度融資は自治体・信用保証協会・銀行の三者が協力して行っています。
当然ながら、制度融資で資金調達できるのは、この三者が「融資してよい」と判断した場合だけです。
制度融資は、銀行にほとんどリスクがなく、積極対応が期待できます。
とはいえ、銀行も全く審査しないわけではなく、問題がある起業家には融資しません。
銀行以上に厳しいのが、信用保証協会の保証審査です。
資金調達した起業家が返済できなくなれば、信用保証協会が弁済することになります。
そのリスクを避けるためにも、将来性がない起業家を保証するわけにはいかないのです。
実際に、保証審査に落ちたために、制度融資で資金調達できない起業家も少なくありません。
逆にいえば、厳しい審査に通ったからこそ、自治体から手厚い補助が受けることができます。
そのような起業家は、自治体の発展のためにも支援する価値があります。
制度融資が好条件で資金調達できる裏には、「審査の厳しさ」があるのです。
資金調達に時間がかかる
制度融資は、資金調達に時間がかかると考えてください。
一般の銀行や日本政策金融公庫よりも長い時間を要します。
これも、制度融資が自治体・信用保証協会・銀行の三者が協力するためです。
日本政策金融公庫で資金調達する場合、日本政策金融公庫の融資審査に通れば融資を受けられるため、数週間~1ヶ月程度での調達が目安となります。
しかし制度融資は、銀行と信用保証協会の両方の審査に通らなければなりません。
信用保証協会は、スピード対応を基本としておらず、早くても1ヶ月はかかります。
さらに、込み具合によって対応が大きく変わります。
信用保証協会が込み合っているタイミングで制度融資を申し込んだ場合、資金調達に2ヶ月以上かかることも。
時間をかけてじっくり審査するのではなく、単に審査待ちが発生するためです。
審査待ちが長期化し、2ヶ月以上経ってから「審査落ち」になることもあります。
制度融資で資金調達するならば、スピーディな対応は期待せず、余裕をもって利用すべきです。
もっとも、起業はじっくり取り組むものですから、資金調達が1~2ヶ月遅れたところで、さほど問題はないでしょう。
日本政策金融公庫と制度融資の併用を考えている人は、申し込むタイミングをずらすのがポイントです。
起業の2ヶ月前に制度融資を申し込み、1ヶ月前に日本政策金融公庫に申し込むことで、起業のタイミングに合わせて資金調達できます。
日本政策金融公庫での資金調達もおすすめ
起業の資金調達は、日本政策金融公庫もおすすめです。
制度融資を優先すべきですが、自治体によって内容が大きく異なります。
起業の支援に消極的な自治体では、そもそも利用できる制度がない、条件があまりよくない、といったケースも。
例えば、利子や保証料の補助が受けられない場合や、据置制度がない場合、あえて制度融資を優先する必要はありません。
日本政策金融公庫の方が好条件となれば、むしろ日本政策金融公庫を優先すべきでしょう。
起業の際に日本政策金融公庫から資金調達するメリットは、以下の5つです。
起業前の資金調達に対応
日本政策金融公庫は、民間金融機関の補完を目的としており、起業の資金調達にも対応しています。
この点は制度融資と同じですが、審査に通りやすいのは日本政策金融公庫でしょう。
制度融資の場合、審査に携わるのは銀行と信用保証協会です。
銀行と同じように、信用保証協会も起業向けのノウハウを持っているわけではありません。
難しいことを前提に審査するのですから、資金調達の難易度が高くなるのは当然です。
その点、日本政策金融公庫はこれから起業向けのノウハウを持っています。
起業の資金調達は事業計画書がカギとなりますが、事業計画書から将来性を汲み取る能力、その事業計画書に好材料を見出して融資に結び付ける能力などは、日本政策金融公庫の長所といえるでしょう。
実際に、起業前の資金調達でも、日本政策金融公庫は前向きに検討してくれることが多いです。
もちろん、制度融資・日本政策金融公庫に関係なく、審査に通る起業計画を練ることが重要ですが、審査に不安がある人は日本政策金融公庫をおすすめします。
少ない自己資金で調達できる
少ない自己資金で調達できることも、日本政策金融公庫の大きなメリットです。
制度融資で資金調達できる上限は、「自己資金と同額」でした。
これに対し、日本政策金融公庫の上限は自己資金の9倍です。
例えば、起業の資金調達に利用できるものとして、新創業融資制度があります。
この制度の概要を確認すると、自己資金の要件は以下のように記載されています。
「事業開始前または事業開始後で税務申告を終えていない場合、創業資金の10分の1以上の自己資金を確認できる人」
新創業融資制度の限度額は3000万円ですから、300万円の自己資金があれば、それをテコに2700万円を借入れ、合計3000万円の起業資金を確保することもできるわけです。
自己資金が少なく、制度融資での資金調達が難しい場合には、日本政策金融公庫をおすすめします。
無担保・無保証で資金調達できる
日本政策金融公庫は無担保・無保証で資金調達できます。
これは、起業の資金調達では大きなメリットといえるでしょう。
民間の銀行は、担保の有無で資金調達のハードルが大きく変わります。
しかし、起業前の資金調達では、十分な担保を容易できないケースが大半です。
起業後もしばらくは同じ状況が続きます。
最近は担保付き融資も徐々に多様化しており、不動産以外の資産(売掛金や在庫など)を担保に資金調達するケースも増えてきました。
それでも、資金調達に十分な担保を持てるのは、起業後しばらく経ってからと考えるべきです。
持ち家などがあっても、起業後の生存率を考えると簡単には担保にできません。
担保がなければ保証で…と考える人もいるでしょう。
制度融資も信用保証協会の保証ありきの仕組みです。
しかし、起業の資金調達と保証付融資は、必ずしも相性が良いとはいえません。
このことは、制度融資での資金調達が、保証審査によって厳しくなることからもわかります。
起業後も、有保証での資金調達は難しい場合が多いです。
そもそも、信用保証協会は保証枠の範囲内でしか融資しません。
保証枠は、月商の3ヶ月分が目安となります。
起業後は売上が不安定な時期が続き、月商が伸び悩むことも多いです。
月商が低ければ保証枠も小さく、十分に資金調達できないこともあり得ます。
日本政策金融公庫は無担保・無保証で資金調達できるため、担保・保証不足に悩むこともありません。
起業前に無担保・無保証で資金調達したい場合、あるいは起業後に無担保・無保証で資金調達したい場合におすすめです。
低金利で資金調達できることも
制度融資のメリットを解説する際、日本政策金融公庫は金利が高めといいました。
しかし、これはあくまでも「銀行より高くなる場合もある」というだけです。
当然ながら、日本政策金融公庫の金利は銀行より安くなることもあります。
銀行と日本政策金融公庫の金利は、二つの点で異なります。
ひとつは、金利設定の柔軟性です。
銀行は、融資先の経営状況を厳しく審査し、リスクとリターンのバランスを考えながら無理のない金利を設定します。
もちろん、銀行としては金利が高いに越したことはありません。
金利を下げてでも貸したい相手には、1%台で融資することもあります。
とはいえ、そのような低金利で資金調達できるのは一部の優良企業だけです。
起業前の資金調達や、起業直後の資金調達には無縁といってよいでしょう。
これに対し、日本政策金融公庫は融資の種類によって金利が決まっています。
起業向けの融資制度Aならば〇%、ただし無担保は〇%、有担保は〇%というように決まっており、制度と条件が同じであれば金利は変わりません。
信用と実績に問題がある起業家でも、それを理由に金利が上がることはなく、審査に通りさえすれば一律(それなりに安い金利)で資金調達できます。
さらに、銀行融資は変動金利が原則ですが、日本政策金融公庫は原則固定金利です。
銀行で資金調達すると、当初は金利が安くても、後々金利が上がる可能性があります。
これにより、中長期の事業計画にズレが生じ、起業の成功率にも悪影響は避けられません。
日本政策金融公庫は固定金利ですから、資金調達した時の金利が変わることはなく、安心して事業計画を立てることができます。
長期借入にも対応
日本政策金融公庫の五つ目のメリットは、長期借入のしやすさです。
起業後は資金繰りが苦しい状況が続くため、返済負担はできるだけ軽くしたいところ。
金利を下げるのも一つの手ですが、最も効果的なのは返済期間を延ばすことです。
返済期間が長いほど、毎回の返済額を低く抑えることができます。
返済期間に関して、銀行はシビアです。
起業後、銀行から資金調達できるようになったとしても、長期借入はかなり難しいと考えてください。
短期借入で資金調達し、1年以内に返済することになるでしょう。
制度融資の返済期間は、自治体の制度によって異なりますが、大抵は5~7年に設定されています。
特に長いものでせいぜい9年です。
日本政策金融公庫の起業向けの融資制度は、より長期の資金調達にも対応しています。
例えば、「新規開業資金」は運転資金が5~7年、設備資金は15~20年です。
「新創業融資制度」も、運転資金は5~7年、設備資金は最長15年となっています。
日本政策金融公庫で長期借入に成功すれば、起業の成功率も上がることでしょう。
サラリーマンとは明らかに違う請求と入金・支払サイトを理解する
起業のための資金調達を詳しくみてきました。
しかし、起業はあくまでも過程に過ぎません。
今後、起業の時期よりもはるかに長い期間、資金繰りを回していかなければならないのです。
そこで重要なのが、サラリーマンとは明らかに違うお金の流れを理解し、資金繰りの安定に努めること。
ここからは、起業後の資金繰りについて解説します。
起業後の資金繰り
起業時の資金調達に成功し、手元資金が潤沢であれば、それだけ起業の成功率は高まります。
とはいえ、起業してから事業が軌道に乗るまでの資金繰りは苦しいもの。
その間、普通の会社のように資金調達はできず、起業資金でのやり取りが基本となるでしょう。
したがって、事業が軌道に乗ったときには起業資金があまり残っていないのが普通です。
起業後の資金調達・資金繰りを本格的に考えるべきときに来たといえます。
起業に伴う資金調達と資金繰りはどちらも難しいものですが、特に意識したいのは資金繰り。
起業後間もない時期の資金繰りと、起業してからしばらくたった場合の資金繰り、そして成長期に突入した場合の資金繰りは大きく異なります。
資金繰りの方法・方針が定まるのは、もう少し先になるはずです。
また、初めて起業する人であれば、なかなか資金繰りに慣れないケースが少なくありません。
実際に、独立開業して売上は順調に上がっているのに、なぜか「お金が足りない」と感じる人は多いのではないでしょうか。
これは会社の業績がどうかという問題ではありません。
売上は順調に上がっていて利益も出ているのです。
これがサラリーマン時代では意識しなかった「入金サイト」と「支払サイト」によるものなのです。
それではサラリーマン時代は意識しなかったこの「入金サイト」と「支払サイト」の説明から独立後の資金調達にまつわる話をはじめていきましょう。
「入金サイト」と「支払サイト」
入金サイトとは請求書を出してから実際に入金されるまでの期間(日数)。
また支払サイトとは請求書を受け取ってから相手先に支払うまでの期間(日数)をいいます。
日本の商慣習では掛(かけ)で取引することが一般的で、請求書を発行してから実際に現金になるまで、最低でも1ヶ月程度かかるのが一般的で、飲食店などの現金商売でもない限りいくら売り上げが上がっても実際に現金化できるまでには比較的長い時間がかかってしまうのです。
一方で、ある程度事業が軌道に乗っていない状態では、掛けで仕入れやさまざまなものを購入することができないのも現実で、多くの場合現金や手持ちのクレジットカードで支払わなければならないのが現実なのです。
このため「お金が入ってこないのに、支払いだけはどんどん先にやってくる」という状況に陥るのです。
サラリーマン時代は仕事をしようが有給休暇を取ろうが決まった日に決まった金額や賞与などのお金が振り込まれますし、経費精算書に領収証を添えて経理に提出すれば、そのような経費も支払ってもらえます。
しかし独立後は商品の仕入れやボールペン1本、ノート1冊にいたるまで極端にいえば自分のお金ということなのです。
そして売上が実際に入金されるまでに経費を使いすぎると、売上があるにもかかわらずお金がない、つまり資金ショートの状態となってしまうのです。
しかもこれは売上と経費が書かれている損益計算書にはあらわれてこないのです。
資金繰り表を作成してお金の流れを把握しよう
事業を進めていく上で、売り上げや経費を把握する人は多いように思います。
一方で資金繰り表はいざ資金調達が必要になってから作成を始める人が多いのではないでしょうか。
しかしながら事業を始めた直後こそ資金繰り表をきっちりとつけておくことが重要だと考えます。
事業を始めた直後は、何かと意識していなかったお金が必要なものです。
だからこそ何日にいくら入金があって、何日にいくら支払う必要があるのか、そして現金で何にいくら払ったのかを資金繰り表できっちりと把握しておく必要があるといえるでしょう。
資金調達はまず資金繰り表から
資金繰り表は日々のお金の流れを管理するだけでなく、実際の資金調達でも必要不可欠です。
おおまかな数字だけで資金調達を行なって、蓋を開けてみれば必要な資金が足りなかったということになれば目も当てられません。
一方でもし仮に資金不足がわかっても、いつ頃にいくら入金があるかわかっていれば、必要な資金の金額を正確に把握できるのです。
そして必要な金額、次回の入金のめどがわかれば、銀行などにつなぎ融資の交渉をしてみたり、ファクタリングなども活用がしやすいのです。
事業を始めたばかりの頃は、事業を伸ばすことだけに手一杯かもしれませんが、いざ開業してみれば会社員時代では予想もしなかったようなお金が必要になります。
お金のことを正しく把握することも経営者の重要な役割といえるのではないでしょうか。
法人と個人事業主 資金調達はどちらが楽か
「個人事業主よりも法人の方は融資が受けやすいのでは」と思われる人は少なからずいるのではないでしょうか。
しかし結論からいって法人であろうが個人であろうが変わりはないというのが正直なところです。
事実、スタートアップの中小企業が融資で利用する日本政策金融公庫の融資要件や信用保証協会の利用要件では法人格であることは求めておらず、個人であっても利用可能なのです。
つまり金融機関の融資審査では、個人か法人かという法人格そのものは特に重要としておらず、中身を重要視するのです。
つまり、審査基準はどちらも同じということになるのです。
ではなぜ法人の方が有利と思われているのでしょうか。
それは恐らく、個人事業よりも株式会社など法人の方が、一般的に社会的信用が高いと思われているからでしょう。
確かに営業や人材募集などでは確かに個人事業よりも株式会社などの法人の方が有利に働くケースもありますが、こと融資に限っては特に有利というわけではありません。
さらに以前は会社設立には、有限会社の場合は300万円以上、さらに株式会社だと1,000万円以上の資本金が必要でした。
さらに株式会社の場合に限ると、取締役として3名以上、監査役として1名以上が必要なので設立に資金面でも人的側面でも経営資源が必要だったので法人のほうが有利な面もありましたが、今では資本金は1円以上、取締役も1名以上で株式会社を設立でき、合同会社だとさらにハードルが低く、実際に1ヶ月以下の期間、登記費用を入れても数万円あれば会社設立ができてしまうのです。
それでも融資を受ける準備としては法人をお勧めしたい理由
先に述べたように融資を受けるという意味では、「個人か法人か」は関係ありません。
しかし融資を受けるために必要な「事業計画書」や「決算書」、さらには「試算表」や「資金繰り表」などの資料を準備する意味では、税理士などの協力を仰ぎながら決算を行うなど企業としての事業計画や財務体質を整えておくべきです。
無論これは個人事業主でも不可能ではないのですが、これらを自身できっちり準備するクセをつけるという意味でも、ハードルの低い合同会社であっても法人とすることをおススメめします。
融資を考えるならきっちりとした事業計画が重要
事業計画書には、やろうとする事業が、なぜ自分にできるのかという根拠や、事業を継続して、きっちりと利益を上げた上で、将来的なキャッシュフローで借入金を返済できることを、客観的、合理的に計画書として取りまとめ、数字も用いて説明しなければならないのです。
自分の情熱や商品・サービスの素晴らしさだけでは融資担当者は納得しないのです。
法人化した以上、廃業届を出せばいつでも事業をやめられる個人事業主とは異なり、会社を設立したという責任感が生まれ、事業に対するモチベーションが高まるという意味合いもあります。
客観的な事実としては融資という意味で個人も法人も変わりません。
しかし融資を受けるために必要な事業の客観性、将来性では法人化するメリットはあると考えます。
メインバンクと資金調達の関係性
「メインバンク」といっても、企業側がそう勝手に名乗っているだけで特に届出やなんらかの契約を行なっているものではありません。
古い考え方の経営者の中には「他の銀行から融資を受けてしまうとメインバンクの心証が悪くなる。」「メインバンクの心証が悪くなれば融資を打ち切られるかもしれない。」と思ってメインバンクとしている銀行だけで資金調達をする会社も少なくないのではないでしょうか。
確かにテレビドラマの中ではそのようなシーンもあることからそう思ってしまっても仕方がないように思います。
しかし、銀行からみればその銀行をメインバンクと思い込んでいる企業であっても「数ある預金先、融資先の1つに過ぎない」ということを忘れてはいけないのです。
ですから、いくら担当の銀行員が「御社は当行がメインバンクです」と言っても、それはあくまで営業上のリップサービスで、仮に経営状況が悪化すれば速やかに手を引くということもありうるというものなのです。
銀行自体の経営体質も変化している
いまや従来からあったメインバンクという考え方がこれまでより希薄になっているのも事実です。
確かに以前は企業と銀行の関係においても、古き良き時代ともいえる「義理人情で融資をしていた時代があったのかもしれませんが、いまや銀行の店舗も数値で経営管理され、審査フローも本店主導でマニュアル化され、格付けや信用調査のフローもマニュアル化され、さらにスコアリングシステムなどのシステム化やコンプライアンス体制の整備などで古くから付き合っている「企業だから業績が悪くても融資をする」「銀行に接待をしていれば業績が悪くても融資する」といったことは起こりえないようになってきたのです。
つまりメインバンクを義理立てする必要がなくなったともいえるのです。
どこの銀行から融資を受けるべきか
例えば「メインバンクはこの銀行だけ」と固執して、一行からしか資金調達をしていない場合その銀行が「これ以上の融資はできない」といってきた場合にはどうするのでしょうか。
他の銀行に融資を依頼すると思いますが、銀行というのは普段付き合いのない一見客に対しては厳しい対応をするのが現実です。
つまり取引銀行が1社だけの場合は、いざというときに身動きが取れなくなってしまう可能性があるということなのです。
ここで重要なのは「少額でも良いからつきあいのある銀行をある程度増やしておく」「口座だけでも作ってお金を動かしておく」「担当者に決算状況の報告などをしておく機会を作っておく」などメインバンク以外の複数の銀行とパイプを持っておくことが重要なのです。
複数の銀行とのコネクションがある状態にしておけば、
・メインバンクから融資を断られたときに融資を受けられる可能性が高まる
・有利な融資条件を提示してくれる可能性がある
といった可能性もあるのです。
つまり複数の銀行やノンバンクとの付き合いというのも、非常に重要なポイントになってくるということなのです。
ただし、事業を始めた当初は、一つの銀行からの融資からはじめ、事業歴や売上規模が大きくなるにつれ、付き合いをする銀行やノンバンクなどを増やして行くことが重要です。
また他の銀行から融資を受けるような場合は、他の取引銀行に一声かけておいた方が、銀行との関係も円滑です。
日銀のマイナス金利など、銀行の経営環境も厳しくなってきています。
そのような中で企業と銀行の付き合い方も変わってきているのも事実です。
普段から銀行との良好な関係を維持しつつ、いくつかの銀行やノンバンクなどから資金調達できるような工夫も必要なのではないでしょうか。
融資を申し込むにはどのようにすれば良いのか
銀行融資を申し込むにはどのようにすればいいのでしょうか。
これには2つの方法があります。
まずは、取引銀行の担当者が訪問してきたときに依頼することです。
これは地方銀行や信用金庫、信用組合などの地域密着型の金融機関でよくおこなわれています。
銀行の担当者は日頃から会社経営者とよくコミュニケーションをとっており、財務状況やその会社の動向をよく知っています。
ですからそのような銀行の担当者に相談や依頼を行うことで、自社に応じた適切なアドバイスも期待できるのです。
そしてもう一つの方法が、銀行の融資窓口を訪問して相談や融資申し込みを行う方法です。
この場合、相手はあなたの会社や事業のことを知らないわけですから、初めての取引であれば、3期分の決算書、定款、登記簿謄本、建設業などの許認可事業であれば許認可証を準備しましょう。
また、すでに取引がある場合でも直近の決算書を用意しておく必要があります。
その上で経営者自身が窓口を訪れることが重要なのです。
中には経理担当者や、ともすれば税理士が代わりに銀行を訪れるような場合があるようですが、事業のターニングポイントとなるのですから、経営者自身がその姿勢をきっちり銀行に示すことが重要なのです。
また用意する資料や自社の事業、業績に関する説明を工夫することもポイントです。
できればパワーポイントで3期分の推移を示すなどビジュアルデータを準備して、また端的に業績推移の理由などを説明できるようにしておくと、銀行の理解も深まります。
また個人での借入れ状況や仮払金、役員貸付金など聞かれそうな内容についても、きっちり説明できるようにしましょう。
相手が聞いてくる内容は融資の審査で重要なことなのです。
例えば後で色々な資料を追加で出すよう求められたら、それだけ銀行から警戒されていると思ってもいいかもしれません。
さらに細かいポイントかもしれませんが身だしなみや表情、話し方も注意が必要です。
銀行員も人間ですから、見た目で信頼感を相手に与えることも重要なのです。
申し込みから融資まで
融資担当者の面談が終わると、融資の申し込み、そして審査に進みます。
そして審査の過程においても、いろいろ追加で質問を受けたり、資料を請求されることもあります。
大体のやりとりは電話かメールで行われますが、即答する必要はありませんが的確に回答したりタイムリーに資料を提出することが重要です。
審査が終わると無事「契約」となります。
この時点では印紙と印鑑証明書が必要になります。
特に印鑑証明書は有効期限があるので、期限内のものを提出するようにしましょう。
そして全ての準備が完了したら融資実行日の調整をして、融資が実行されるという流れになるのです。
またこの間に担保や保証人が必要なことや、さらには信用保証協会の保証を求められることもあります。
これらの手続きが全て完了しないと融資が実行されないので、実際に融資されるまでに最低でも2〜3週間程度の日数の余裕を見ておいた方が良いでしょう。
銀行も融資をするのも仕事ですが、倒産や貸し倒れなどリスクの高い相手先には融資はしないのが原則です。
ですから銀行から融資を受ける場合は、銀行にリスクの低い相手先だと客観的な材料で安心感を与えることが重要だといえるでしょう。
まとめ:起業後の資金調達はNo.1におまかせ!
起業と資金調達について詳しく解説しました。
起業前の資金調達は公的融資がおすすめです。
起業後も、民間の銀行で融資を受けることは難しく、公的融資は強い味方になります。
とはいえ、日本政策金融公庫はメインバンクにできず、いずれは民間の銀行で資金調達しなければなりません。
起業後は、銀行融資以外の資金調達方法も積極的に検討すべきです。
資金調達方法が多いほど資金繰りは安定します。
ポイントとなるのは、手元の資産からうまく資金調達すること。
例えば、手元の売掛金の早期資金化すれば、起業後間もない会社でも簡単に資金調達できます。
No.1でも、売掛金の早期資金化サービスを手掛けており、起業家の皆様にも大変好評です。
起業後の資金調達にお悩みの方は、No.1までお気軽にご相談ください。
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