カテゴリー: 資金調達情報
手形を受けとったときに早期に現金化するには?はじめての手形現金化
企業間の取引の形態として、日本で古くから根付いているのが手形取引です。
政府の方針により、従来の手形取引は近々廃止される予定です。
実際、手形の交換高は、ここ数年で急速に減少しています。
とはいえ、業種によってはまだまだ手形取引が行われていることも事実。
手形は回収に時間がかかるため、取り扱いに困っている会社も少なくありません。
そんな会社に役立つのが、支払期日前の手形を早期回収できる「手形現金化」です。
この記事では、初めて手形現金化を利用する方に向けて、手形現金化の基礎知識、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
手形現金化とは?
手形現金化とは、支払期日前の手形を銀行などの金融機関や手形現金化を専門に請け負っている手形現金化業者に買取ってもらうことをいいます。
したがって、資金調達方法の分類としては、自社の内部留保から資金を調達する「内部資金調達」に属し、さらに細分化すれば内部資金調達のうち「債権流動化」の一種です。
債権流動化では、手元の債権を資金繰りに活用します。
支払期日前の売掛金を早期資金化したり、受取手形の裏書譲渡、さらには本稿のテーマである手形現金化が債権流動化の代表例です。
手形現金化の際には、手数料を支払う必要があります。
つまり実際に支払われる金額は手数料等が割り引かれた金額となります。
額面より割り引いて現金化することから「手形割引」とも呼ばれています。
手形現金化は手形の売買?融資?
上記の通り、「手形現金化=支払期日前の手形の売却」と考えて差し支えありません。
手形現金化を請け負う銀行も、同じように認識しています。
手形現金化について、みちのく銀行は以下のように説明しています。
手形割引は、法的には手形の売買であり、弊行は手形期日までの利息相当額(割引料)を差し引いた価格で手形を買い取ります。
出典:出典:みちのく銀行「手形割引に関する説明書」
これをみれば、銀行が「手形現金化=支払期日前の手形の買取」と考えていることは明らかです。
しかしながら、手形現金化には別の側面があります。
「手形現金化=手形の買取」というのは、あくまでも取引の実態に基づく解釈です。
手形現金化の法的性質を重視した場合、手形現金化は「手形の買取」というよりも、「手形を担保とした融資」と考えられます。
金融機関や手形割引の専門業者から見れば、「手形を担保に現金を貸す」ということになり、手形現金化は融資と見なされるのです。
実際、手形現金化は出資法の対象です。
(金銭の貸付け等とみなす場合)
第七条 第三条から前条までの規定の適用については、手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は授受は、金銭の貸付け又は金銭の貸借とみなす。
出典:出典:e-Gov法令検索「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」
この通り、出資法には「手形割引(手形現金化)は金銭の貸付けとみなす」と明記されています。
そもそも、出資法は業としての貸付けを規制する法律です。
その中で手形現金化について触れていることからも、手形現金化が法的に貸付けであることが分かります。
手形現金化の流れ
手形を現金化するためには、ます手形の買取りを金融機関や手形現金化業者に依頼します。
銀行に手形現金化を依頼するには、初めに手形現金化を請け負う銀行に銀行取引約定書を提出する必要があります。
これは、自社と銀行との間で融資(手形現金化)に関する取り決めを定めた契約書ともいえます。
一方、手形現金化業者に依頼する場合も、業者によっては必要な手続きを交わすことがあります。
その後、銀行や手形現金化業者は手形を発行した人(振出人)に支払い能力があるか調査します。
ここで支払い能力があると判断されれば、手数料等が割り引かれた金額が、自社に支払われます。
手形現金化の注意点
手形現金化は、手形を担保にした融資と見なされているので、多くの場合手形現金化には引き受け可能な上限額が定められています。
手形の期日以前にその上限額に達してしまった場合には、以前に依頼した手形が決済されるまで、追加して手形現金化を依頼することができなくなります。
また、手形を振り出した相手先が倒産するなど割引手形が不渡りとなった場合は、手形現金化を依頼した自社が手形に記載された金額を割引人に全額支払わなければなりません。
また手形以外の資産(不動産等)を担保にすることが条件となる場合があります。
こうした上限額や現金化の条件等は、銀行取引約定書などで定められます。
手形現金化を使うメリット
資金調達方法のうち、特に手形現金化を選ぶメリットは様々です。
ここでは、手形現金化の主なメリットを解説します。
資金調達までのスピードが早い
手形現金化の大きなのメリットは「資金調達までのスピードが速い」ことです。
資金調達スピードは、資金調達方法によって異なります。
銀行融資で調達する場合、早くても数週間、大抵は1ヶ月程度を要します。
スピード融資でおなじみのビジネスローンでさえ、数営業日を要するのが一般的です。
手形現金化は、融資よりもスピーディに調達できることが多く、資金調達方法の中でもかなりスピーディな部類といえます。
もっとも、手形現金化の依頼先によって資金調達スピードは大きく変わってきます。
銀行の手形現金化は1週間程度、手形現金化業者は数営業日というイメージです。
手続きが早ければ、最短1日で資金調達ができると謳う手形現金化業者もあります。
後述の通り、手形現金化は即日調達に不向きな方法ですが、仕組み的には最短即日対応も不可能ではありません。
など手形現金化のスピードを活用すれば、必要なタイミングで素早く資金を調達でき、資金ショートの回避にふさわしい方法です。
資金繰りにつながる
手形取引の大きなデメリットは、回収サイト(手形が振り出されてから、回収するまでの期間)の長さです。
近年、下請法の改正などにより、売掛金・手形を問わず、回収サイトは短縮の傾向にあります。
とはいえ、受取手形は売掛金に比べると回収サイトが長くなるのが一般的です。
なかなか売上が回収できない中で資金繰りを回すのですから、手形取引をしている会社は資金繰りの悪化に気を付けなければなりません。
手形の回収に時間がかかって悩んでいるならば手形現金化が役立ちます。
上記の通り、手形現金化は資金調達スピードに優れており、支払期日前の受取手形を即座に現金化できます。
券面の上では支払期日が数ヶ月先でも、手形現金化によって即座に回収すれば、実質的な回収サイトはたちまちゼロに。
したがって、手形現金化は資金繰り改善にも効果的です。
原則として、回収サイトが長いほど資金繰りが悪化し、回収サイトが短いほど資金繰りは改善します。
手形現金化で回収サイトを短縮すれば、それだけ資金繰りは改善するというわけです。
例えば、額面金額・支払期日が同じ受取手形が2つある場合、片方を手形現金化に回すことで回収サイトの平均値は半減します。
このように考えると、手形現金化の資金繰り改善効果がよくわかるでしょう。
銀行融資が受けられな無い場合でも利用可能
銀行融資が受けられない場合でも手形現金化であれば、資金の調達が行えます。
手形現金化も法的には貸付けです。
通常の銀行融資が受けられない会社は、銀行で手形現金化をすることは不可能にも思えるでしょう。
しかし、銀行で通常の融資を受けられない会社が、手形現金化ならば審査に通るケースが多々あります。
これは、通常の融資と、手形現金化の審査基準の違いによるものです。
通常の銀行融資は、融資先の返済力を重視します。
信用に問題があったり、業績・財務に問題があったりする場合、銀行は返済力に問題ありとみなします。
銀行は低利息で融資するため、融資総額に対して得られる利息はわずかです。
元金の一部が貸し倒れになっただけでも損失を被るため、返済力に問題がある会社には決して融資しません。
つまり、通常の銀行融資の審査基準は、あくまでも「融資先」だけです。
手形現金化の場合、「融資先」と「(現金化する)手形の振出人」が審査基準となります。
融資先に求めるのは、手形が不渡りになった場合の償還能力です。
後述の通り、手形現金化には償還請求権があるため、不渡りになれば買い戻さなければなりません。
それに備えて、融資先の返済能力を審査するのです。
次に、手形の振出人の支払い能力が重視されます。
振出人に支払い能力がなければ、現金化した手形は不渡りになるでしょう。
そのような手形を、銀行は手形現金化の対象外とします。
逆にいえば、手形現金化の依頼人(融資先)に償還能力があり、手形の振出人に支払い能力があれば、通常の銀行融資を受けられない会社でも審査に通るわけです。
もちろん、自社または振出人の問題によって、銀行から手形現金化を断られることもあります。
その場合、銀行ではなく手形現金化業者に依頼するとよいでしょう。
手形現金化業者は、銀行よりも審査が緩いのが特徴です。
銀行で融資や手形現金化の審査に落ちた会社でも、手形現金化業者ならば審査に通るかもしれません。
以上のように、銀行融資を受けられない会社も、手形現金化ならば利用できることが多いです。
これは、資金調達方法を多様化できる点でも、大きなメリットといえるでしょう。
信用悪化リスクがない
資金調達方法によっては、信用悪化を伴います。
分かりやすいのが、あまりメジャーではない資金調達方法や、悪質業者が問題視されている資金調達方法などを選んだ場合です。
この場合、取引先などに知られてしまうと、「経営悪化により銀行融資を受けられないのでは?」「その資金調達方法は違法なのでは?」などと疑われ、信用が悪化する恐れがあります。
信用に傷をつけないためにも、信用悪化リスクが少ない方法を選ぶべきです。
手形現金化は、その点でも優れています。
まず、手形現金化はメジャーな資金調達方法のひとつです。
日本では明治時代から手形取引が続いており、手形現金化も古くから活用されています。
ごく一般的な資金調達方法ですから、手形現金化によって信用が悪化することはありません。
また、手形現金化は健全な取引です。
銀行が手形現金化に対応していることからも、違法性は全くありません。
もちろん、悪質業者もゼロではないでしょうが、それはどの業界にもいえることです。
貸金業者の中にヤミ金が潜んでいるのと同じです。
手形現金化業者の中に悪質業者が存在するからといって、利用した会社が悪質性・違法性を疑われ、信用が悪化することはないでしょう。
以上の2点から、手形現金化の信用悪化リスクは低いといえます。
それ以前に、手形現金化の利用を第三者に知られること自体、基本的にはありません。
手形現金化は、法的には手形を担保とした貸付けであり、債権譲渡とは異なります。
したがって、手形現金化で資金を調達しても、取引先(振出人)に債権譲渡通知は不要です。
債権譲渡登記も必要ないため、登記情報から手形現金化がバレることもありません。
さらに、手形現金化を請け負った銀行や手形現金化業者が、振出人と直接連絡を取る可能性もゼロです。
手形現金化が社会的に広く受容されており、なおかつ手形現金化の事実を第三者が知りえないのですから、手形現金化は信用悪化リスクと無縁といってよいでしょう。
調達コストが安い
手形現金化は、他の資金調達方法に比べて調達コストが安いです。
手形現金化の手数料率は、手形現金化の依頼先によって異なります。
一般的には、銀行は手数料率が安く、手形現金化業者は手数料率が高めです。
手形現金化の手数料率の目安は以下の通りです。
- 銀行の手形現金化:年利1.5~3.5%
- 信用金庫の手形現金化:年利2.5~4.5%
- 専門業者の手形現金化:年利2.5~15%
実際の手数料率は、現金化する手形の内容によって変わります。
手形の信用が高いほど手数料率は安く、例えば大企業の手形は上記の目安の下限付近で現金化できる可能性が高いです。
このほか、額面金額や支払期日までの日数なども手数料率に影響します。
とはいえ、銀行系の手形現金化は、銀行融資とあまり変わらないコストで調達できることが多いです。
手形現金化業者は手数料率が高めですが、それでもノンバンクのビジネスローンと大差ありません。
手形現金化は法的に貸付けであり、出資法で規制されています。
したがって、手形現金化の手数料率(の年利換算)は、通常の融資の貸付金利は、どちらも上限利息は同じです。
少なくとも、「手形現金化で調達したら、融資よりも調達コストが高すぎた」といった失敗はありません。
手形の内容次第では、銀行融資よりも安く調達できることもあります。
担保・保証不足でも安心
資金調達の際、担保・保証が足りずに困っている会社もあることでしょう。
その場合にも手形現金化が役立ちます。
資金調達方法によって担保・保証の重要性は異なりますが、融資を受ける場合、担保・保証がカギになることが少なくありません。
特に銀行融資です。
銀行融資は、法的には消費貸借であり、返済義務を伴います。
そのため、万が一の返済不能に備えるべく、担保・保証を重視するのです。
無担保・無保証で銀行融資を受けられるのは、ごく一部の優良企業だけです。
それ以外の会社は、担保・保証がなければ銀行から融資を受けるのは困難といえます。
手形現金化も、法的には貸付けですから、担保・保証を重視される点は同じです。
特に銀行の手形現金化は、借入先が銀行であるだけに、全くの無担保・無保証というわけにはいきません。
しかしながら、手形現金化の場合、実質的には無担保・無保証同然で資金を調達できます。
手形現金化は償還請求権付きの取引ですから、現金化した受取手形が不渡りになれば、自社に買い戻し義務が生じます。
手形現金化で調達した資金を全額返還することで、銀行は貸倒損失を回避できるというわけです。
そもそも、担保・保証は「貸付金の保全」が目的であって、その意味では受取手形も同じといえます。
手形現金化の際、不動産担保や信用保証協会の保証を求められないのは、受取手形が担保として機能しているためです。
手形現金化を利用する会社としては、担保・保証付きで融資を受けているという意識が薄く、無担保・無保証で資金を調達しているのとあまり変わりません。
銀行の手形現金化だけではなく、専門業者の手形現金化も償還請求権付きのため、手形が担保として扱われます。
担保・保証不足で融資を受けられない、しかし手形は持っているという会社は、手形現金化で調達すると良いでしょう。
業歴が短い会社でも調達しやすい
業歴をあまり重視されないことも、手形現金化のメリットです。
通常の銀行融資であれば、業歴を重視します。
業歴が信用の裏付けとなり、「業歴が長い」というだけで評価が高くなる傾向があるのです。
逆に、業歴が短い会社ほど融資審査は厳しくなります。
起業後間もない会社は、業歴が短いため融資を受けることは困難です。
銀行の融資審査の際には、まとまった期間の決算書を求められます。
起業したばかりの会社は、銀行の求めに応じて決算書を提出することさえできません。
審査書類が集まらない以上、銀行としても融資のしようがないのです。
手形現金化は銀行でも利用できますが、通常の銀行融資に比べて、業歴の影響はかなり軽くなります。
手形現金化の審査基準は、振出人と自社です。
手形現金化の最も重視されるのは「手形を回収できるか?(振出人に支払い能力はあるか?)」ということです。
振出人の業歴や支払い能力に問題がなければ、この問題をクリアでき、手形現金化の審査では大きなプラスといえます。
さらに、手形現金化は手形が担保として扱われます。
したがって、自社の業歴が短いとしても、償還能力があれば審査に通る可能性が高いです。
業歴が短く、通常の銀行融資が受けられない会社は、手形現金化を活用しましょう。
また、業歴が短い会社は、これから銀行取引を開拓していかなければなりません。
いきなり融資をお願いしても、ほとんどの銀行は「業歴が短い」「取引歴がない(信用が不明)」などを理由に、新規融資を断るはずです。
しかし、手形現金化ならば受けてくれるかもしれません。
銀行と取引を初め、深めていくためにも、業歴が短い会社は手形現金化業者ではなく、銀行に手形現金化を依頼するのがおすすめです。
必要書類が少ない
資金調達の際、利便性を左右するのが必要書類です。
たくさんの書類を求められたり、作成・取得に手間がかかる書類を求められたりする場合、利便性を大きく損ないます。
分かりやすいのが、通常の銀行融資です。
銀行から融資を受けるには、多くの書類を提出しなければなりません。
経営計画書や、資金使途に応じた書類なども必要ですから、書類の準備に手間がかかります。
また、資金を調達するときだけではなく、日常的な心掛けが重要です。
毎月試算表を作成し、提出しておくかどうかによって、銀行融資の難易度は変わってくるのです。
このように考えると、銀行融資は書類提出が大きな負担といえます。
手形現金化の場合、通常の銀行融資に比べて必要書類が少ないです。
利便性を重視するならば、銀行の手形現金化ではなく、手形現金化業者を選ぶと良いでしょう。
手形現金化業者は、銀行よりも必要書類が簡単な場合が多いです。
その一例として、ある手形現金化業者は以下の書類を求めます。
- 法人の印鑑証明書のコピー(3ヶ月以内のもの)と実印
- 代表者の印鑑証明書のコピー(3ヶ月以内のもの)と実印
- 法人の認め印
- 法人の社判
- 商業謄本のコピー(3ヶ月以内のもの)
- 決算書
- 受取手形の内容が確認できる書類
商業謄本や印鑑証明書などは、取得に時間がかかることもありますが、取得自体は簡単です。
その他の書類も、改めて作成するものはなく、手元にあるもので全て揃えることができます。
手元の書類で揃うということは、自社が必要なタイミングで手形現金化業者に申し込み、柔軟に資金を調達しやすいということです。
利便性の高い資金調達方法を確保するには、必要書類が少ない手形現金化を検討してみてください。
債権譲渡登記は不要
手形現金化は、法的には貸付けであり、資金調達方法の分類でいえば外部資金調達に属します。
外部資金調達とは、銀行や貸金業者から借り入れる、ベンチャーキャピタルから出資を受ける、少人数私募債を発行して資金を集めるなど、外部から資金を調達することです。
一方、内部資金調達は自社の内部資産から資金を調達するもので、資産の売却がそれにあたります。
売掛金の早期資金化も内部資金調達の代表的なものです。
手形現金化も、支払前の受取手形を現金化するため、資金調達する会社にとっては「手形現金化=債権(手形債権)の譲渡取引」「手形現金化=内部資金調達」といったイメージが強いことは確かです。
手形現金化を債権譲渡取引と捉えた場合、問題になってくるのが債権譲渡登記。
債権譲渡取引の際、譲受人は第三者対抗要件を具備する必要があります。
そのための方法のひとつが債権譲渡登記です。
実際、譲渡人と譲受人の二者間で債権譲渡取引を行う場合、債権譲渡登記が必須となるケースがよくあります。
この時、債権譲渡登記手続きは司法書士に委託するのが一般的であり、司法書士報酬が発生します。
その他の経費を合わせると、10万円程度の登記コストがかかるのです。
しかしながら、手形現金化に登記コストはかかりません。
手形現金化は、表面的には債権譲渡であっても、法的には貸付けです。
債権譲渡取引でない以上、債権譲渡登記を求められることもありません。
債権譲渡登記を求められる資金調達方法に比べて、手形現金化の方が低コストで調達できます。
手形現金化のデメリット
手形現金化のメリットについて、様々な角度からみてきました。
しかし、手形現金化はメリットばかりではありません。
ここからは、手形現金化のデメリットを解説します。
手形が不渡りになった場合、弁済が必要
ここまでの解説にもある通り、手形現金化は償還請求権付きの取引です。
償還請求権とは、現金化した受取手形が不渡りになった場合、手形の買い戻しを求める権利を指します。
手形現金化の後、手形が無事に決済されれば何も問題ありません。
しかし、手形現金化では手形を発行した人(振出人)が倒産するなど不渡りが出てしまうと、銀行や手形現金化業者に対して弁済の義務が生じます。
買い戻しは義務であり、自社の都合で弁済を遅らせたり、拒否したりすることは不可能です。
手形現金化で調達した資金をすでに使っており、手元に弁済のための資金がなければ、何等かの方法で調達しなければなりません。
現金化した手形が不渡りになった場合、結果的に手形の額面金額を金融機関や手形現金化業者に弁済しなければならないので、これまで以上に資金繰りが悪化することになります。
また、手形現金化に償還請求権があるということは、リスク回避に役立たないということです。
売掛金の早期資金化など、最近は償還請求権無しの資金調達方法も増えてきました。
償還請求権がなければ、資金調達に用いた債権が回収不能になっても、自社が弁済する必要はありません。
資金調達と同時に、回収不能リスクを軽減・回避できるメリットがあるのです。
手形現金化には償還請求権があるため、このようなメリットは期待できません。
手形現金化の後も、不渡りのリスクは自社に残り続けます。
これは、手形現金化のデメリットの一つといってよいでしょう。
償還能力がなければ審査に落ちる
手形現金化のメリットとして、通常の銀行融資よりも審査に通りやすいことを挙げました。
銀行融資の審査に落ちた会社でも、手形現金化ならば資金調達しやすいことは間違いないでしょう。
しかしながら、手形現金化でも審査に落ちることがあります。
手形現金化の審査基準は、振出人と自社です。
このいずれかに問題があれば審査に落ちます。
振出人の問題で審査に落ちる場合、大して問題にはなりません。
別の受取手形を用いて、再度手形現金化に使えばよいのです。
手元にある複数の(振出人が異なる)手形が、全て審査に落ちるということは考えにくいでしょう。
しかし、自社の問題で審査に落ちる場合は厄介です。
手形現金化は、償還能力がなければ審査に落ちます。
例えば、債務超過に陥っている会社は、おそらく手形現金化の審査に通りません。
債務超過とは、負債総額が資産総額を上回っている状態です。
資産を全て売り払っても負債が残る状態ですから、返済力が乏しいと判断されます。
もちろん、銀行は「債務超過=償還能力が低い」と考えます。
手形現金化も法的には融資の一種であり、償還能力が重視されるため、債務超過では審査に通らないのです。
償還能力を問題視されるケースはほかにも色々あります。
書類上の業績・財務は良好でも、信用が低い会社は手形現金化の審査に落ちます。
例えば、既に借入金の返済が遅れている会社や、税金を滞納している会社が好例です。
手形現金化は審査が緩いとはいえ、信用上の大きな問題を抱えている会社は利用できません。
これは、銀行の手形現金化だけではなく、手形現金化業者も同様です。
手形現金化である限り、手形現金化業者も償還能力を重視します。
償還請求権があり、償還能力を重視することは、手形現金化ならではのデメリットといえるでしょう。
手形は分割できない
手形現金化は、柔軟な資金調達に不向きな場合があります。
というのも、手形は分割できないためです。
手形は、支払額や支払期日などを券面に明記して振り出します。
額面1000万円の受取手形は、あくまでも1000万円のものとして取り扱うため、一部を分割して譲渡したり、手形現金化に用いたりすることはできません。
例えば、手形現金化の手数料率が年6%(月利0.5%)・1ヶ月後支払予定であれば、500万円を手形現金化する場合の手数料は25000円です。
しかし、自社が必要としているのは500万円でも、手形の額面が1000万円であれば、1000万円の全てを手形現金化に利用します。
同じ条件で1000万円を手形現金化に利用すると、手数料は5万円になります。
つまり、額面金額が大きければ、必要以上に手形現金化をすることとなり、無駄な調達コストが発生するのです。
近年、手形現金化の電子版である「でんさい割引」などが徐々に普及しています。
これは電子手形を現金化するもので、額面の分割も可能です。
そのような新しい仕組みと比較すれば、歴史が古いだけに、手形現金化はやや柔軟性に欠けるといえるでしょう。
スピーディに調達できるとは限らない
最後に、手形現金化のスピード面のデメリット。
手形現金化のメリットとして挙げたように、手形現金化は他の資金調達方法に比べてスピーディに調達できます。
しかし、手形現金化業者などが謳う調達スピードを鵜呑みにしてはいけません。
例えば、「最短即日」を謳う手形現金化業者がありますが、本当に即日中に(つまり手形現金化を申し込んだ当日中に)資金調達できるかどうかは甚だ疑問です。
銀行の手形現金化にせよ、専門業者の手形現金化にせよ、紙媒体の受取手形をやり取りするわけです。
手形現金化において、手形は担保でもありますから、その実物の受け渡しを重視します。
「最短即日」を謳う手形現金化業者に申し込み、審査書類をアップロードすることで、審査自体は即日で完了するかもしれません。
しかし、この時点ではまだ手形を受け渡していない状態です。
手形現金化業者の実店舗が近くにあれば、手形を持ち込むことで、即日中の資金調達も可能です。
そうでない場合、手形を郵送で受け渡すこととなります。
業者によっては、契約書類を郵送でやり取りする必要があり、そうなれば契約完了・手形の受け渡しに数日はかかるでしょう。
手形現金化業者が代金を振り込むのは、あくまでも手形の受け渡しが完了した後です。
したがって、即日中の資金調達はできません。
「最短即日」というのが、「審査完了まで最短即日」なのか、「手形の受け渡し完了後、即座に(最短即日で)入金」なのか、あるいは「来店・対面取引であれば最短即日」なのか、手形現金化業者によって意味合いが異なります。
スピーディに調達したければ、手形現金化業者に申し込む際に、資金調達の目安を尋ねるのが良いでしょう。
手形現金化だからといって、資金調達スピードを過信せず、ある程度の余裕をもって利用することをおすすめします。
まとめ:手形現金化でお困りの方は、No.1までご相談ください
今回は手形の早期資金化の方法として手形現金化について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
手形現金化には様々なメリットが存在する反面、デメリットも発生することがお分かりいただけたかと思います。
手形現金化で失敗しないために、経営者の間で評価が高い業者を選ぶようにするか、手形ではなく売掛金の現金化を検討してみましょう。
No.1では、売掛金の早期資金化に対応しています。
償還請求権がなく、即日対応にも強いため、手形現金化のデメリットにお悩みの方に好評です。
手形現金化でお困りの方は、No.1までお気軽にご相談ください。
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