カテゴリー: 経営情報

社内預金制度の導入に必要なこととは?導入の要件、メリット・デメリットを解説

社内預金制度の導入を考えている企業も多いでしょう。

安定した資金調達になる可能性も高いのです。

従業員の給与から一定額を社内にプールするような資金調達法となっています。

毎月の額は少額かもしれませんが、1年や2年、それ以上の期間続けていくと高額になる可能性も出てきます。

しかし思い立ってすぐに社内預金制度が導入できるわけではありません。

導入するためにはいくつかの工程を経なければならないのです。

こちらでは社内預金制度の導入にはどんなことが必要なのか、また導入によるメリット・デメリットを明らかにしていきます。

社内預金制度とは

 
社内預金制度とは、企業が従業員からお金を預かる預金制度のことです。
福利厚生の一環として提供されています。
社内預金制度は、従業員の給与の一部を貯蓄し、積み立てるものです。
勤めている企業が社内預金制度を導入したからといって、その利用は従業員の自由に任されます。
法律では、従業員に社内預金を強制することを禁じているためです。
仕組みが自動化されていること、利率が良いことから、従業員は社内預金制度を利用することで、資産形成に役立てることができます。

社内預金制度の導入に必要なこととは?

 
では、社内預金制度を導入するには、どのようなことが必要なのでしょうか。
ここからは、社内預金制度を導入するための要件を解説します。

最初にすること|労使交渉を締結する

 
そもそも労働者が納得しなければ社内預金制度は利用できません。

会社側と労働者側の労使交渉をして締結をすることが導入の大前提になってくるのです。

そして労使協定が締結できたら、所轄の労働基準監督署へ届け出を行います。

勝手に社内預金制度を利用することはできないので、その点はあらかじめ理解しておきましょう。

では労使協定ではどのようなことが決められるのでしょうか?

・制度の対象者
・預金の限度額
・預金の利率(金利)
・利率の計算方法
・預金の保証方法
・制度の手続方法

以上のことを決めます。

よって前もってどのように社内預金制度を導入するかを決めておかなければなりません。

ちなみに預金の金利については何%でも良いわけではありません。

下限金利が設定されているので、その利率以上でなければならないのです。

社内に周知徹底を図ること

 
そもそも社内預金制度は社員全員が関わることでもあります。

社員の末端まで理解しておかなければなりません。

何も知らずに勝手に給与から天引きされていたらびっくりしますよね。

そういった状況を作り出さないようにしなければならないのです。

たとえば会社の掲示板などに社内預金制度の張り紙を出すなどをしましょう。

社内報などにも記載しておくことが肝心ですし、直接社員一人ひとりに説明するようなことも必要になります。

社内の周知徹底を図ることでやっと導入の土台ができあがる感じです。

制度の導入開始|金利を付与しなければならない

 
社内預金制度と呼ばれているので、要は預金です。

預金であるということは金利が発生するはずですよね。

よって会社は預金をしている労働者に対して金利を支払わなければなりません。

下限金利に関しては厚生労働省令にて定められており、その金利を下回ってはなりません。

下限金利は0.5%(年利)となっており、一般的な預金の金利よりも高くなっています。

下限金利を下回るような利率を労使協定で定めた場合はどうなるのか気になる方もいるでしょう。

下限金利は定められたものであるので絶対に守らなければなりません。

下限金利を下回っている労使協定に関しては無効となるので注意してくださいね。

導入後の預金の返還について

 
社内預金制度は社員の預金なので、返還を求められることも当然あります。

銀行預金に関しても自由に引き出しを行いますよね。

社内預金制度に関しても預金の返還に関しては会社側が応じなければなりません。

遅れることは認められていません。

会社としてはいつ返還を求められてもいいように資金を準備しておくことが肝心ですよ。

預金は保証しなければならない

 
お金を使い切って倒産してしまう、ということもあるかもしれません。

そんなケースでも何らかの方法で預金を保全する必要があります。

金融機関と保証契約の締結、さらには信託会社との信託契約などが必須となっています。

預金の状況を労基署に報告

 
年に1回ほど預金の状況を労基署に届け出なければなりません。

報告義務、というものが課せられているわけです。

労基署への報告で特に重要なのが

・労使協定の内容
・預金の保全措置

の2点です。

社内預金制度を導入するメリット

 
さて、社内預金制度を導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
ここからは、社内預金制度の導入によって得られるメリットを、企業側・従業員側に分けてみていきましょう。

企業のメリット

 
社内預金制度を導入することで、企業が得られるメリットは以下の通りです。

福利厚生につながる

 
社内預金制度は、従業員に対する福利厚生として導入するものです。
これは、従業員だけではなく企業のメリットにもなります。
そもそも、なぜ社内預金制度の導入は福利厚生につながるのでしょうか。
それは、社内預金制度は一般的な銀行預金に比べて金利が高く、資産形成に役立つためです。
社内預金制度を導入し、福利厚生が充実すれば、従業員は「良い会社」と感じるようになります。
これは、帰属意識・愛社精神の向上にほかならず、延いては離職率の低下・人材不足の緩和にもつながります。
また、社内預金制度は、長期的な資産形成を前提とするものです。
会社に長く勤め、社内預金制度の利用期間も長くなるにつれて、資産は確実に形成されていきます。
勤続年数が長い従業員は、企業にとって大きな戦力です。
社内預金制度を導入したことで、熟練の社員がいつまでも働いてくれるようになれば、それが企業の底力になることでしょう。

資金調達に役立つ

 
社内預金制度の導入によって、企業が得られる大きなメリットに「資金調達の安定」があります。
資金を安定的に調達することは、企業経営に欠かせないことです。
資金調達が途切れてしまうと、企業は倒産します。
倒産とは、赤字や債務超過そのものではなく、資金繰りが続かなくなることを指します。
いくら赤字が続いても、資金繰りが回る以上は倒産しません。
しかし、いくら業績が良くても、資金繰りが回らなくなればその時点で倒産です(いわゆる黒字倒産)。
だからこそ、必要な資金を的確に調達し、資金繰りを回し続けることが重要となります。
ところが、実際には、多くの企業が資金調達に悩んでいます。
銀行や貸金業者などの外部機関から調達する場合、審査に通らなければ調達できません。
銀行融資の審査が厳しいことは、皆さんもすでにご存じのことでしょう。
実際、融資を受けられずに困っている企業は多いものです。
そのような企業は、社内預金制度を導入することで、資金調達の安定が期待できます。
社内預金は資金繰りに活用できます。
この場合、社内留保(社内に留保している預金)から調達するのであって、内部資金調達の一種です。
社内預金制度を導入し、運用しているのは自社ですから、審査は必要ありません。
審査に通る・通らないではなく、無審査で確実に調達できます。
これが、社内預金制度を導入する大きなメリットです。

労使関係の改善につながる

 
社内預金制度の導入の要件でも述べた通り、社内預金制度を導入するには、労使協定を結ばなければなりません。
また、社内預金制度を導入した後も、社内預金をしっかり管理し、従業員に不安を与えないことが大切です。
つまり、社内預金制度の導入と運用を通して、労使間で対話の機会が生まれ、信頼関係の構築にもつながります。
会社に信頼がなければ、社内預金制度を導入したところで、従業員は預金しません。
信頼があるからこそ、従業員は会社にお金を預けるのです。
労使関係を改善したいと考えているものの、その糸口を掴めない企業が少なくありません。
そのような企業は、社内預金制度の導入をきっかけにしてみてはどうでしょうか。

人材確保に役立つ

 
前述の通り、社内預金制度を導入することで離職率の低下・定着率の向上が期待できます。
しかし、これはあくまでも、社内預金制度の導入によって既存の従業員の意識が変わるためです。
深刻な人材不足に陥っている企業ならば、それだけでは不十分、新規雇用を積極化したいと考えていることでしょう。
新規雇用の際にも、社内預金制度の導入が役立ちます。
既存の従業員にメリットのある福利厚生は、新規の従業員にとっても魅力的です。
「社内預金制度を導入していない企業」と「社内預金制度を導入している企業」を選ぶ場合、他の条件に大きな差がなければ、後者に魅力を感じる人は少なくありません。
つまり、社内預金制度の導入し、長期的に運用していくことは、長期にわたって人材確保に役立つのです。
もちろん、求職者の中には社内預金制度の導入にこだわらない人もいることでしょう。
とはいえ、人材不足が社会問題になっている昨今、求職者が魅力を感じる要素はできるだけ増やしたいものです。
社内預金制度の導入は、他社との差別化につながります。
社内預金制度はあまり普及しておらず、導入企業は約8%に過ぎません。
90%以上が社内預金制度を導入していない中、自社が社内預金制度を導入すれば、人材雇用に役立つはずです。

従業員のメリット

 
社内預金制度を導入することで、従業員にもメリットがあります。

資産形成につながる

 
社内預金制度は福利厚生の一種であり、従業員の資産形成を目的としています。
既に述べた通り、社内預金制度を導入すれば、利息を支払わなければなりません。
社内預金制度の下限金利は年0.5%ですから、一般的な銀行預金よりも魅力的です。
最近は銀行の預金金利も徐々に上がっており、年0.5%程度に設定するプランもみられます。
しかしながら、多くの銀行では依然として低い水準で、例えば2025年9月現在、三菱UFJ銀行の普通預金の金利は年0.2%です。
銀行預金の平均的な金利と比べて、社内預金制度の方が金利は高く、資産形成に効果的といえます。
老後の不安が高まる中、資産形成に関心を抱く従業員も増えていることでしょう。
そんな従業員にとって、社内預金制度の導入は魅力的です。

自動積立のメリット

 
社内預金制度を導入・運用にあたり、企業には様々な負担が伴います。
一方、従業員側には何ら負担がありません。
会社に社内預金制度を申し込みさえすれば、あとは自動で積み立てられていきます。
給与の一部を、社内預金として自動で積み立てていくことは、従業員によっては大きなメリットとなります。
分かりやすいのが、お金の管理が苦手な従業員や、計画的に貯蓄できない従業員です。
このような従業員は、受け取った給与をあまり管理せず、無計画に使い、「気づいたらお金がない」といった状況になりがちです。
急な出費に見舞われると、消費者金融などから高金利で借金をし、全く資産形成ができない人もいます。
その点、社内預金制度は自動積立であり、引き出しには会社を通す必要があるため、手元のお金ほど自由でもありません。
お金の管理や計画的な貯蓄ができない人も、社内預金制度を使うだけで自然と無駄遣いが減り、お金が自動的に溜まっていきます。
緊急時の備えにもおすすめです。

低リスクで資産運用

 
会社が社内預金制度を導入していれば、従業員は低リスクで資産を運用できます。
普通、資産運用といえば株やFX、あるいは不動産、最近では仮想通貨などをイメージしがちです。
確かにそれらは資産運用の代表ですが、リスクが高いことでも知られています。
1日で数%の変動は当たり前ですから、落ち着いて資産を運用したい人には向いていません。
その点、社内預金はリスクが低いです。
株のように大きく変動することはなく、特殊な場合を除いて元本が減ることはなく、利息の分だけ増えていきます。
資産運用のリスクは多面的に考える必要があり、社内預金制度は必ずしも低リスクとはいえません。
しかしながら、価値の下落リスクだけを考えるならば、社内預金は低リスクといえます。
資産運用に関心を抱く従業員が多い会社は、社内預金制度を導入し、ディフェンシブな運用先の一つとして社内預金制度を提供するのが良いでしょう。

社内預金制度を導入するデメリット

 
上記の通り、社内預金制度の導入には多くのメリットがあります。
しかし、メリットの裏には必ずデメリットがあるものです。
社内預金制度のメリットは、一面においてデメリットにもなり得ます。
そこで、社内預金制度の導入に伴うデメリットを、企業側・従業員側の両面からみていきましょう。

企業のデメリット

 
社内預金制度を導入する企業は、以下のデメリットに注意してください。

資金の流動性が下がる

 
まず、資金の流動性が下がることです。
社内預金制度を導入するメリットとして、「資金調達の安定」を挙げました。
資金調達が安定すれば、資金繰りも安定すると考えるのが普通ですが、必ずしもそうとはいえません。
なぜならば、社内預金制度を導入したことで、一定の資金を常に確保しておく必要があるためです。
社内預金制度の導入要件の一つに、「貯蓄金の返還義務」があります。
従業員が社内預金の引き出しを申請した場合、企業は速やかに応じなければなりません。
手元に資金がなければ、従業員の請求に応じることができず、労使間のトラブルは必至でしょう。
また、速やかな対応が義務となっている以上、従業員の請求を一旦留保し、返還資金を調達してから対応することも困難です。
したがって、社内預金制度を導入する企業は、従業員の引き出しにいつでも応えられるよう、一定の資金をプールしておく必要があります。
実際、社内預金制度の導入にあたり、「社内預金の〇%を常に確保」といったルールを設ける企業も多いです。
手元資金の一部が、常に「社内預金の返還資金」として拘束されるのですから、これは流動性の低下にほかなりません。
この返還資金を、表面的には余裕資金(いわゆる見せ金)とし、資金調達に役立てることも可能ですが、流動性低下のデメリットは知っておくべきです。

管理コストの負担

 
社内預金制度の導入後、管理にコストがかかります。
社内預金は元々従業員のお金ですから、保全のために多くの要件が設けられています。
例えば、社内預金制度を導入している企業は、社内預金制度の運用(社内預金の総額、保全措置、管理状況)について、労働基準監督署に毎年報告しなければなりません。
これらの報告には事務コストがかかります。
実際の管理を自社で行わず、信託会社などに委託することも可能です。
その場合には委託コストがかかります。
保全に伴うコストも見逃せません。
保全措置の内容にもよりますが、銀行と保証契約を結んだり、信託会社と信託契約を結んだりする場合、銀行や信託会社に手数料を支払うことになります。
社内預金制度の導入は、これらの管理コストを織り込みつつ、慎重に検討すべきです。

利払いの負担

 
社内預金制度のコストは、管理コストだけではありません。
利払いの負担もデメリットとなります。
社内預金制度を導入すれば、最低でも年0.5%の利息を支払わなければなりません。
銀行融資の利息よりは格段に安いとはいえ、社内預金制度を導入する前には発生していなかったコストが、新たに発生するわけです。
また、社内預金制度の年0.5%という数値は、あくまでも下限です。
社内預金制度の導入にあたり、労使間で金利を協議します。
この時、企業が「年0.5%」を要求しても、従業員が受け入れなければ労使協定は成立しません。
労使間で落としどころを探った結果、年0.5%超になることも十分にあり得るのです。
さらに、国が下限金利を引き上げた場合、社内預金制度を導入している企業は、否が応でも金利を引き上げることとなります。
利払いの負担が重いと感じるならば、社内預金制度の導入は見送るべきでしょう。

倒産リスクに注意

 
社内預金制度の導入には保全措置がつきものですが、それでも倒産リスクがあります。
社内預金は債務として扱われるため、企業が倒産した場合、従業員は全額を受け取れないこともあるのです。
従業員は、自社の経営状況をよく知っています。
詳しい情報は知らずとも、経営が悪化していれば、それを肌で感じるものです。
自社の経営悪化が進み、「倒産」の二文字が見えてくると、従業員は倒産リスクを避けるために社内預金の引き出しを図るでしょう。
それが引き金となり、社内預金制度を利用している社員の多くが、一斉に引き出そうとするかもしれません。
しかしながら、企業が引き出しに備えて確保しているのは、あくまでも社内預金の一部だけです。
従業員の引き出しが短期間に集中すれば、返還請求に応じることは困難でしょう。
その場合、「社内預金を引き出せない」「社内預金制度が破綻」「いよいよ倒産か」といった憶測・混乱を引き起こす可能性もあります。
悪い噂が広まるのは早いものです。
自社の経営状況が、実際よりも悪いものとして社外に伝わり、取引先や銀行の信用悪化につながり、倒産を早めてしまうことも。
社内預金制度を導入したばかりに、避けられたはずの倒産が現実になってしまうのです。
これも、社内預金制度を導入するデメリットといえます。

労使の対立の引き金に

 
社内預金制度の導入が、労使間の対立を引き起こすリスクがあります。
社内預金制度は、導入後、長期にわたって運用していくものです。
労使関係は、常に一定ではありません。
社内預金制度を導入する際の労使協定も、永久に通用するとは限らないのです。
労使関係が良好であれば、双方が納得できる条件で労使協定を結ぶことができます。
社内預金の金利なども、企業にとって望ましい条件を設定できることも多いです。
しかし、長期にわたって社内預金制度を運用するうちに、従業員が社内預金制度に不満を抱く可能性があります。
従業員側から金利や預金限度額の引き上げを要求され、それに応じなければ労使間の対立の引き金になるでしょう。
そうなってしまうと、社内預金制度の導入メリットは大きく損なわれます。
従業員が不満を抱いている以上、もはや福利厚生としての意味を為さず、帰属意識の向上・離職率の低下といったメリットは期待できません。
従業員としても、「高い預金金利で資産を形成」といったメリットは感じにくくなるはずです。
社内預金制度を導入するデメリットは、長期目線でも考えておくべきです。

従業員のデメリット

 
最後に、社内預金制度の導入によって、従業員に生じるデメリットを解説します。

倒産時のリスクに注意

 
倒産時のリスクは、従業員にとって最大のデメリットといえるでしょう。
社内預金制度の導入する企業は、保全措置を講じることを義務付けられています。
ただし、企業が倒産した際には、社内預金も債務として扱われます。
社内預金は、他の債務よりも優先順位が高いものの、優先順位にしたがって債務を処理した結果、従業員の預金が全額返還されないこともあるのです。
実際、国が保全を義務付けているのは、あくまでも「毎年3月31日現在の社内預金の総額」が対象です。
毎年4月1日~翌年3月30日までに積み立てた部分については、なんら保全を講じていないわけですから、これを考えただけでも全額返還されない可能性がよくわかります。

利便性が低い

 
社内預金制度は、それなりに利便性が高いことで知られています。
銀行の定期預金は引き出しに制約があり、株などで運用している場合も「売却→引き出し」という流れです。
それに比べて、社内預金制度は自動的に積み立てられ、自由に引き出すことができます。
ただし、社内預金制度の利便性が高いといえるのは、あくまでも定期預金や株式などに比べて便利というだけです。
銀行の普通預金と比較すると、社内預金制度は利便性が低いといえます。
銀行の普通預金は、いつでも簡単に引き出すことができ、公共料金の支払口座に設定したり、クレジットカードと紐づけたり、便利な使い方がいくらもあります。
社内預金制度には、このような利便性はありません。
自由に引き出せるというのも、「会社に返還を請求すれば、速やかに受け取ることができる」というだけです。
キャッシュカードでコンビニATMから引き出し、といった引き出しには対応しておらず、支払口座としての利用も不可能です。
利便性を重視する従業員にとって、これはデメリットといえるでしょう。

投資効率が低い

 
「社内預金制度の導入は福利厚生が目的」ということから、投資効率が高いと思い込む人もいます。
実際のところ、社内預金制度の投資効率は低いです。
「銀行の普通預金に比べると金利が高く、投資効率も良い」というだけで、年利0.5%という数値は、むしろ非効率といっていいレベルでしょう。
2025年7月時点で、日本の年間インフレ率は3.1%でした。
物価が上昇すれば、現金の価値は相対的に下がります。
100円の価値は100円のままではなく、インフレが進めば低下するのです。
社内預金制度を導入し、年利0.5%で運用したところで、それを上回るスピードでインフレが進めば、なんら資産運用にはなりません。
また、社内預金制度と同程度、あるいは社内預金制度以上にリスクが低く、なおかつ利率の良い運用方法があります。
分かりやすいのが米国債でしょう。
アメリカがデフォルトに陥るリスクは、自社が倒産するリスクよりもはるかに低いです。
仮にデフォルトになるとすれば、その時点で世界経済は大混乱に陥っていると予想され、もはや社内預金どころの話ではありません。
そして、米国債の利回りは社内預金制度よりも高く設定されています。
社内預金制度の導入メリットである「資産運用に役立つ」というのは、銀行の普通預金と比べたものです。
様々な資産運用と比較すると、社内預金制度は決して優秀とはいえません。

金利が下がるリスク

 
社内預金制度を導入する際、高い金利を設定する企業もあります。
しかし、いずれ金利が下がるかもしれません。
社内預金制度の下限金利は年0.5%です。
導入時に金利を高く設定した企業は、下限の水準まで引き下げの余地があるといえます。
もちろん、社内預金制度の導入時だけではなく、改定にも労使間の合意が必要ですから、一方的に引き下げられることはありません。
とはいえ、金利の引き下げに応じざるを得ないケースがあります。
例えば、当初の設定金利がかなり高く、業績悪化によって利払いが苦しくなった場合。
従業員としても、金利の引き下げに応じず、経営悪化→倒産という流れになっては困ります。
金利が下がれば資産運用としての魅力も小さくなり、メリットは感じにくくなるでしょう。
社内預金制度は、「普通の銀行に預けるよりはマシ」くらいに考えておいた方が良いかもしれません。

まとめ:社内預金制度の導入は慎重に

社内預金制度の導入について、要件・メリット・デメリットを解説しました。
社内預金制度を導入するには、様々な要件を満たす必要があり、また導入後の管理にも大きな負担が伴います。
メリット・デメリットをよく考え、自社に大きなメリットがあれば、社内預金制度を導入してもよいでしょう。
ただし、慎重に検討すべきです。
よくある失敗は、資金調達を目的に社内預金制度を導入したものの、管理の負担に悩むケースです。
単に資金調達が目的であれば、社内預金制度以外にも方法は色々あります。
例えば、最近人気の「売掛金の早期資金化」などは、社内預金制度を導入するよりもはるかに簡単です。
No.1でも、売掛金の買い取りを実施しています。
資金繰り・資金調達でお悩みの方は、No.1までお気軽にご相談ください。

総合フリーダイヤル0120-700-339

名古屋支店直通052-414-4107

福岡支社092-419-2433

受付時間 平日 9:00 ~ 19:00( 土日祝休 )

   

お知らせ

   

お知らせ 一覧へ

DX認定

株式会社No.1は「DXマーク認証付与事業者」として認められました。

to top