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カテゴリー: ファクタリング

POファイナンスとは何?ファクタリングとは何が違うの?ポイントを絞って解説します

資金調達方法が多様化しています。従来の融資(銀行や消費者金融)や株式発行に加えて、手形割引、クラウドファンディングなど多種多様な資金調達を上手に使いこなせる事業者が厳しい経営の中で生き残りを図れます。

融資や手形割引の場合、法規制が厳しいのですが新しい資金調達方法は、そうした法規制がない中で比較的自由な判断ができます。

もちろん、規制がない場合身を守るのも個人の責任になりますので、しっかり資金調達方法について知っておく必要があります。

今回紹介する「POファイナンス」も新しい資金調達方法の1つです。わかりやすく説明するため、POファイナンスを最近流行りのファクタリングと比較いたしました。

POファイナンスとは何?

POファイナンス((purchase order=受発注)finance)とは、発注企業、納入企業、金融機関をインターネット上で連結し、受発注書を電子記録債権化することで、受発注時点からの担保融資を可能としたサービスです。

受発注書、注文書自体を担保に融資を行います。

これまでは難しかった金融機関による受発注段階での融資を可能にする画期的な資金調達方法になります。

動産担保融資の場合、売掛金の請求書を担保にして融資を受けますが、Poファイナンスの場合は仕事が完了していない注文書を担保にしてお金を融資します。

納入企業は、実際の業務完了前に資金繰りの悩みが軽減され、安心して事業を進めることができます。

「でんさい」との違い

「電子記録債権」というと手形割引やファクタリングに近い方法で、売掛債権を現金化できる「でんさいネット」が知られています。しかし、Poファイナンスにおける電子記録債権はでんさいとは異なる機関が運営するものです。

POファイナンスを実施しているのは「Tranzax電子債権株式会社」が運営するシステムです。

ファクタリングや手形割引はすでに金額が確定している債権の現金化ですが、Poファイナンスは「将来債権」(金額が確定していない債権)をもとに、それを担保にして貸し出す手法です。

将来債権について2020年の民法(債権法)で明示的に定められたため、契約を行いやすくなりました。それを受けて将来債権を担保にした融資も同時に行いやすくなりました。

将来債権を電子記録債権化できるのは、日本では現在Tranzax電子債権株式会社だけです。POファイナンスはそのTranzax社の電子記録債権のみが対象になります。

POファイナンスのメリットとデメリット

POファイナンスは従来の融資と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか?またデメリットについてもここで押さえておきましょう。

POファイナンスのメリット

まずPOファイナンスのメリットについて考えます。

受発注時に資金調達できる

事業の早い段階で資金調達ができます。受発注の段階で資金調達の必要性があるのは、もはや自転車操業で事業継続が危ないのでは?と思われるかもしれませんが、建設業や運送業など受注時に多額の運転資金が必要な業種があります。

Aという仕事を受注し、Bという仕事も受注したい場合、A受注時にPoファイナンスで資金調達できれば、Bの受注もスムーズに進みます。

手形にもなる前なので、手形割引より早い受発注時点での融資が受けられます。仕事量が急激に増えそうな場合、受注に必要な運転資金調達には通常の(業績重視の)融資は難しいので、Poファイナンスが役立ちます。

手続きが簡単

POファイナンスは電子記録債権に基づく融資なので、データのやり取りが電子化していて実物を印刷したり金融機関に持参したりしなくても実行できます。

受注額の100%の資金調達が可能

後述の注文書ファクタリングの場合、現金化可能な金額は「売掛金(注文書金額)-手数料」になり、注文書の額面よりも少ない金額しか調達できません。しかし、Poファイナンスは担保融資なので担保である注文書の金額100%まで融資可能です。

金利が低くなることも

発注企業(クライアント)の信用度が高ければ、無担保融資よりも低い金利で借りられます。担保として確実に回収できる見込みの信用度を持つクライアントであれば、契約通り仕事すれば100%入金されるのが明らかだからです。

POファイナンスのデメリット

一方でPOファイナンスのデメリットについても理解しておきましょう。

100万円以上の受発注書・注文書のみ対応

POファイナンスは額面100万円以上の受発注書、注文書しか担保にできません。少額の注文書の場合はPOファイナンスの利用ができないので注意してください。

金利が高くなるケースもある

POファイナンスは注文書の段階で融資するので、実際に仕事が終わり入金が確定するまでに時間がかかります。時間がかかるということはそれだけリスクも高くなるので、上述の優良顧客(信頼度が高いクライアント)でない、よく知らない取引先の場合、金利が逆に高くなる可能性もあります。

対応している金融機関が少ない

POファイナンスできる金融機関が非常に少なく、既存の取引先金融機関ではできない可能性があります。

また、POファイナンスを行うためにはTranzax社のシステム加入が不可欠になります。

POファイナンスの流れ

実際のPOファイナンスの手続きは以下になります。

    1. 発注企業から仕事を受注(注文書依頼)
    2. 受注企業は、TranzaxにPOファイナンスの申し込み
    3. Tranzax社が受発注書(注文書)を電子記録債権化
    4. Tranzax社と提携する金融機関の融資審査
    5. 審査通過で注文書を担保にした融資の実行
    6. 融資をもとに受注企業が仕事を行う
    7. 業務完了。発注企業は指定の信託口座に仕事代金を入金
    8. 信託口座から融資代金を受注企業が返済
    9. 仕事代金>融資額の場合、残金を発注企業が受注企業に振り込み

これらを電子記録債権のシステムを使って原則オンラインで進行します。

POファイナンスと注文書ファクタリングの違い

POファイナンスのようにこれまでの融資と違った資金調達にファクタリングがあります。ファクタリングは基本的に請求書の買い取りですが、最近では注文書、受発注契約の段階で、契約完了時の代金を買い取る「注文書ファクタリング」というものが登場しています。

注文書ファクタリングは2020年の民法(債権法)改正によって「将来債権」の買い取りが可能になったことで登場した新しいファクタリングですが、注文書の段階での資金調達ということでPOファイナンスと似ています。

しかし両者には大きな違いがあります。各項目についてPOファイナンスと注文書ファクタリングを比較してみました。どちらが優れているのでしょうか?

  POファイナンス 注文書ファクタリング
取引形態 融資 債権売買
利息制限法 適用される 適用されない
発注者(クライアントの同意) 必要 不要(2社間ファクタリング)
審査難易度 難しい、厳しい 比較的やさしい
審査期間 長い 短い(迅速)
償還請求権 あり なし
信用情報照会 あり なし
金融ブラックの方 利用できない 利用できる

以上の違いと優劣について、詳しくみていきましょう。

法的根拠の違い

 
表で示した通り、POファイナンスと注文書ファクタリングは取引形態が違います。
POファイナンスは融資の一種ですが、注文書ファクタリングは債権譲渡の一種です。
これにより、法的根拠が異なります。
以下に、POファイナンスと注文書ファクタリングの違いを様々な角度から比較しますが、それらの違いは全て法的根拠によるものと考えてください。

POファイナンスの法的根拠

 
POファイナンスは、将来債権を担保とした融資です。
確定債権を担保とする融資を売掛債権担保融資といいますが、POファイナンスはこれに近いといえます。
融資は、法的には消費貸借に分類されます。
民法の規定は以下の通りです。
(消費貸借)
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

出典:出典:e-Gov法令検索「第五節 消費貸借」
POファイナンスも融資の一種である以上、民法第587条が適用されます。
上記の通り、「種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をする」ことが前提です。
これは、POファイナンスに返済義務があることを意味します。
融資の一種であり、返済義務があるところから、下記に詳述する様々な違いが生じるのです。

注文書ファクタリングの法的根拠

 
注文書ファクタリングは、売掛債権を売却するファクタリングが派生したものです。
原則として、ファクタリングは確定債権を買取対象とし、将来債権は対象外となります。
あえて将来債権に対象を絞ったファクタリングが注文書ファクタリングというわけです。
ファクタリングは、法的には債権譲渡に分類されます。
このことは、金融庁の定義から明らかです。

一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。

出典:出典:金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」
ファクタリングが法的に債権譲渡であれば、注文書ファクタリングもやはり債権譲渡です。
融資ではないため、注文書ファクタリングには返済義務もありません。
債権譲渡について、民法第466条では以下のように述べています。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

出典:出典:e-Gov法令検索「第四節 債権の譲渡」
現在、ファクタリングは法整備が不十分であり、違法リスクを指摘する声も少なくありません。
しかし、ファクタリングは債権譲渡であり、100%合法の仕組みです。
「違法リスクがある」というのは、あくまでも合法を装う悪質業者のリスクであって、ファクタリングそのものに違法性があるわけではありません。
注文書ファクタリングも同様に考えてください。

どちらも合法

 
POファイナンスと注文書ファクタリングは、法的根拠がまるで異なります。
しかし、どちらも将来債権を活用する点は同じです。
借入れによって資金を調達したい場合にはPOファイナンスを、債権譲渡によって資金を調達したい場合には注文書ファクタリングを選べば良いでしょう。
法的根拠だけを比較した場合、どちらが特に優れているとはいえません。

売掛先の関与の違い

 
POファイナンスと注文書ファクタリングは、取引の当事者が異なります。
特に気を付けるべきは、売掛先(発注者・クライアント)の関与です。
この点を比較してみましょう。

POファイナンスは売掛先が関与

 
上記の表でも示した通り、POファイナンスは売掛先の同意が必須です。
資金を調達する自社・融資を行う銀行・売掛先の3社間取引となります。
これは、POファイナンスの利用に一定のハードルをもたらします。
というのも、「売掛先の同意が必須」ということは、「売掛先の同意を得られなければ利用できない」ということです。
実際に、売掛先がPOファイナンスに同意せず、資金を調達できないケースは珍しくありません。
例えば、契約書の中で、将来債権の譲渡や担保活用が禁止される場合があります。
このような契約であれば、売掛先がPOファイナンスに同意するとは考えにくく、利用は不可能と考えるべきでしょう。
また、このような取り決めがなくとも、信用リスクに注意が必要です。
POファイナンスは新しい資金調達方法であり、それほど広く認知されていません。
POファイナンスへの同意を求められた際、売掛先によっては「よくわからない(怪しげな)方法で資金調達している」をいう印象を受けます。
これが、ネガティブなイメージに発展することも。
「経営が悪化し、まともな方法では調達できないのでは?」
「悪質業者に騙されているのでは?」
「違法な資金調達に手を染めているのでは?」
POファイナンスは銀行も取り扱っており、安全で合法な仕組みです。
しかし、売掛先がそれを知らず、悪印象を持ってしまえば取り返しがつきません。
説明して誤解を解いても、一度抱いた悪印象を拭い去るのは難しいのです。

注文書ファクタリングは売掛先が関与しない

 
注文書ファクタリングは、取引の方式によって売掛先の関与が変わります。
注文書ファクタリングの方式を大別すると、以下の通りです。

  • 2社間ファクタリング:注文書ファクタリングの利用会社とファクタリング会社の2社間で取引する方式
  • 3社間ファクタリング:利用会社、ファクタリング会社、売掛先の3社間で取引する方式

3社間ファクタリングには、売掛先が必ず関与します。
債権譲渡通知・承諾手続きが必須となり、売掛先抜きでは成り立ちません。
したがって、POファイナンスと同じように、売掛先の同意がなければ利用できません。
もちろん、注文書ファクタリングを利用したことで、売掛先の信用が悪化する危険もあります。
しかし、2社間ファクタリングは売掛先が一切関与しません。
申し込みから契約まで、全て利用会社とファクタリング会社の2社間で取引します。
したがって、売掛先が注文書ファクタリングに同意しなくても利用可能です。
契約の中で、将来債権の譲渡を明確に禁止している(譲渡禁止特約がついている)場合でさえ、注文書ファクタリングは使えます。
民法第466条には以下のように明記されています。

当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

出典:出典:e-Gov法令検索「第四節 債権の譲渡」
つまり、売掛先が将来債権の譲渡(注文書ファクタリングの利用)を禁止した場合も、将来債権の譲渡は法的に有効ということです。
さらに、2社間取引である限り、注文書ファクタリングに信用リスクはありません。
売掛先が関与せず、注文書ファクタリングの利用を知り得ないのですから、信用が悪化するはずがないのです。

注文書ファクタリングのほうが利用しやすく安全

 
POファイナンスは売掛先の同意が必須であることから、利用には一定のハードルがあり、信用リスクを伴います。
売掛先がPOファイナンスに好意的であれば、スムーズに利用できるはずです。
売掛先の関与が問題になる場合、注文書ファクタリングをおすすめします。
注文書ファクタリングは2社間取引を選ぶことで、売掛先の関与を避けることができます。
売掛先が関与しない注文書ファクタリングは、売掛先の同意の有無によって利用できなくなったり、信用が悪化したりするリスクがありません。

償還請求権の有無の違い

 
POファイナンスと注文書ファクタリングを比較する上で重要となるのが、償還請求権の有無です。
償還請求権とは、取引に用いた売掛債権が回収できなくなった場合、譲受人が譲渡人に買い戻しを求める権利のことです。
この違いについてみていきましょう。

POファイナンスは償還請求権あり

 
POファイナンスには償還請求権があります。
したがって、POファイナンスで資金を調達した場合、何等かの影響によって売掛金が回収できなくなれば、自社が買い戻さなければなりません。
つまり、POファイナンスで資金を調達した後も、売掛金の回収不能リスクは自社が背負います。
これはPOファイナンスに限らず、売掛債権を用いた融資に共通する特徴です。
例えば、確定債権を担保とする売掛債権担保融資や、受取手形を担保とする手形割引などは償還請求権付きの取引です。
ただし、売掛債権担保融資や手形割引に比べて、POファイナンスのほうが償還請求権の影響は大きいといえます。
なぜならば、売掛債権担保融資や手形割引が確定債権を担保とするのに対し、POファイナンスは将来債権を担保にするためです。
そもそも確定債権とは、請求済みの売掛債権のことです。
商品の納入や役務の提供を完了した後、請求書を発行し、売掛先が受理することで請求が確定します。
請求済みの売掛金や、振出済みの手形は請求内容が確定しており、支払いを待つだけの状態です。
したがって、買い戻しを請求されるのは、売掛先の経営悪化や倒産などによって売掛金や手形が回収できなった場合です。
一方、POファイナンスは注文書や発注書などを根拠として、将来債権を担保とします。
商品の納入や役務の提供は完了しておらず、当然ながら請求もしていない状態です。
銀行は、注文書や発注書の内容から、支払人や請求金額、支払期日などを把握して融資します。
つまり、まだ請求内容は確定していません。
その後の取引の流れの中で、金額が減少したり、支払期日が延びたりすることもあり得ます。
自社と売掛先とのトラブルによって、発注そのものがなくなることも考えられます。
その場合、POファイナンスに利用した将来債権が回収不能となるため、買い戻しを求められる可能性が高いです。
もちろん、売掛先の経営悪化や倒産による回収不能も同様です。
POファイナンスは二重の意味で(売掛先を原因とする回収トラブル、自社を原因とする回収トラブル)償還請求権のリスクがあります。
POファイナンスで資金調達するならば、償還請求権があること、買い戻しを請求されるリスクが高いことに注意してください。

注文書ファクタリングは償還請求権なし

 
注文書ファクタリングには償還請求権がありません。
これは、注文書ファクタリングだけではなく、ファクタリング全般に共通する特徴です。
ファクタリングのメリットは、法的に債権譲渡であることに由来します。
ファクタリング会社が合法的に売掛金を買い取り、メリットを提供するためには、あくまでも債権譲渡でなければなりません。
ところが、注文書ファクタリングの際に「償還請求権あり」で契約すると、法的には債権譲渡ではなく融資とみなされる可能性が高いです。
金融庁は、売掛金を買い取る側のリスクが著しく低くなる契約形態(償還請求権有り、担保・保証有りなど)を、債権譲渡として認めていません。
ファクタリングではなく融資とみなされた場合、ファクタリング業者には貸金業者としての規制が適用されます。
注文書ファクタリングを償還請求権有りで契約し、なおかつ合法であるためには、金融庁の貸金業登録を受け、ファクタリング手数料の年利換算が利息制限(年18%)以下でなければなりません。
実際のところ、これらの要件を満たすファクタリング業者はほぼ皆無です。
つまり、注文書ファクタリングなどを取り扱っているファクタリング業者は、貸金業者として規制されないよう、償還請求権を意図的に避けているのです。
正規のファクタリング会社であれば、ほぼ例外なく「償還請求権なし」で注文書ファクタリングを利用できます。
したがって、注文書ファクタリングに利用した売掛金が回収不能になっても、買い戻しを求められることはありません。
これは、注文書ファクタリングが回収不能リスクの回避に役立つということです。
将来債権を手元に置いておけば、何らかの理由で回収不能になった場合、損失は全て自社の負担です。
しかし、注文書ファクタリングであらかじめ現金化しておけば、その後回収不能になっても自社が損失を被ることはありません。
回収不能による一切の損失はファクタリング会社が負担します。
このように、償還請求権がない注文書ファクタリングは、回収不能リスクの軽減・回避に効果的です。

償還請求権がない注文書ファクタリングがおすすめ

 
POファイナンスには償還請求権があり、回収不能リスクが残ります。
せっかくPOファイナンスで資金を調達しても、結果的に返還することになれば何の意味もありません。
それどころか、買い戻すための資金が手元になく、資金繰りが行き詰まる恐れもあるのです。
将来債権を担保にするため、POファイナンスはこのリスクが高いといえます。
これに対し、注文書ファクタリングには償還請求権がなく、回収不能リスクの回避に役立ちます。
買い戻しのリスクを避けるため、また回収不能による損失を避けるためにも、償還請求権がない注文書ファクタリングのほうがおすすめです。

審査難易度の違い

 
POファイナンスと注文書ファクタリングは、審査難易度が大きく異なります。
これは、法的根拠と償還請求権の違いによるものです。
それぞれの審査難易度を比較してみましょう。

POファイナンスの審査難易度

 
POファイナンスの取引形態は「融資」であり、法的には消費貸借です。将来債権という担保があるだけに、一般的な銀行融資よりも審査難易度は低いといえます。
しかし、簡単に資金調達できるわけではありません。
まず、信用情報照会があり、金融ブラック、信用情報ブラックの方は利用できません。
過去に銀行とトラブルになり、信用を失っている会社も同じです。
このほか、経営に問題がある会社も、POファイナンスの審査に落ちる可能性があります。
上記の通り、POファイナンスには償還請求権があります。
回収不能時には買い戻しの義務が生じるわけですが、これは融資先に償還能力があってのことです。
銀行がいくら償還請求権を行使したところで、融資先に償還能力がなければ応じることはできません。
結局は銀行が損失を負担することとなり、償還請求権が意味を為さないのです。
POファイナンスに「償還請求権がある」ということは、「自社に償還能力があることが前提」ということです。
したがって、償還能力に問題がある会社は、POファイナンスの審査に落ちます。
償還能力を問題視され、POファイナンスを利用できないケースをいくつか挙げてみましょう。

  • 連続赤字が続いており、赤字補填のために手元資金の流出が続いている(償還能力の低下が続いている)
  • 債務超過に陥っており、財務的に極めて危険な状態にある(償還能力が見込めない)
  • 税金を滞納している(納税義務を果たせない会社に償還能力は期待できない)

このほか、リスケジュール中もPOファイナンスの利用は困難です。
リスケジュール中は銀行融資を一切断たれるため、銀行系のPOファイナンスは審査さえ受けることができません。
ノンバンク系のPOファイナンスであれば、利用自体は可能です。
しかし、経営悪化が深刻なためにリスケジュールに踏み切ったのですから、償還能力も低くみられるのが普通であり、POファイナンスの審査に通るのは難しいでしょう。

注文書ファクタリングの審査難易度

 
注文書ファクタリングの審査難易度は低いです。
上記の通り、注文書ファクタリングは法的に債権譲渡であり、借入れではありません。
借入れでなければ返済義務もなく、さらに償還請求権無しの契約です。
注文書ファクタリングの審査基準は、あくまでも「ファクタリングする売掛金を支払期日に回収できるかどうか」に尽きます。
つまり、注文書ファクタリングの審査は、注文書の価値・売掛先の支払い能力だけでほぼ決まるのです。
したがって、注文書ファクタリングの審査では、自社の返済能力や償還能力に関係なく利用できます。
連続赤字や債務超過などの問題を抱えている会社も、注文書ファクタリングならば問題ありません。
税金を滞納している会社や、リスケジュール中の会社でさえ、注文書ファクタリングの審査に通ります。

融資に困ったら注文書ファクタリングを

 
POファイナンスの審査は、それなりにハードルが高いです。
通常の銀行融資で審査に落ちた場合、同じ理由でPOファイナンスの審査にも落ちる可能性があります。
POファイナンスの審査に通らない会社は、経営状況がかなり悪いと考えるべきです。
公的金融機関やノンバンクのビジネスローンでも借入れは難しいでしょう。
POファイナンスの審査に通らない場合、注文書ファクタリングを選ぶのが賢明です。
POファイナンスと注文書ファクタリングでは審査基準が異なり、注文書ファクタリングの方が圧倒的に審査難易度は低いです。
注文書ファクタリングは、経営悪化時の強い味方になるでしょう。

業歴の影響の違い

 
銀行から融資を受ける際、業歴を理由に断られたことがあるかもしれません。
銀行融資のほかにも、資金調達方法によっては業歴を考慮します。
開業後間もない会社が資金調達に困るのもこのためです。
POファイナンスと注文書ファクタリングも、それぞれ業歴の影響度が異なります。

POファイナンスは業歴が影響する

 
POファイナンスは、業歴の影響を受けます。
ここまでの解説にもある通り、POファイナンスは融資の一種です。
通常の融資に比べると審査が易しいものの、審査基準そのものは変わりません。
融資審査で業歴は必ず考慮され、POファイナンスも同様です。
なぜPOファイナンスの審査に業歴が影響するのかといえば、業歴が信用や返済能力の裏付けになるためです。
このことは、業歴が長い会社と、開業したばかりの会社を比べるとよくわかります。
業歴が長い会社は、色々な変化がある中で経営を続けてきたということです。
これだけでも、会社の基礎体力・経営基盤が評価され、POファイナンスの審査にも有利に働きます。
さらに、業歴が長い会社は、取引先と強い結びつきがあります。
長年にわたって取引を続けてきた売掛先もあるでしょう。
これは、売掛先が長きにわたって支払いトラブルを起こすことなく、安定した取引を続けてきたということです。
このことは、POファイナンスに大きなプラスとなります。
そのような売掛先の発注書・注文書をPOファイナンスに用いれば、銀行も安心して融資できるのです。
したがって、業歴が長い会社ほどPOファイナンスの審査に通りやすくなります。
逆に、業歴が短い会社はPOファイナンスの審査に落ちやすいです。
業歴が短い会社は、業績が安定せず、財務も脆弱です。
このため、業歴が短い会社は「償還能力に問題あり」とみなされ、POファイナンスを利用できないことがあります。
さらに、開業後間もない会社は、これから顧客を開拓していかなければなりません。
取引先の注文書・発注書が評価され、POファイナンスの審査にプラスになるのはまだまだ先のことです。
この意味でも、業歴が短い会社はPOファイナンスの審査に不利といえます。
特に問題なのが、創業1年未満の会社です。
POファイナンスの必要書類については後述しますが、直近または数期分の決算書が必須となります。
創業1年未満の会社は決算期を迎えておらず、手元に決算書がありません。
POファイナンスを利用したくとも、必要書類が揃わず申し込めない状況です。
以上のように、POファイナンスでは業歴が様々な形で影響します。

注文書ファクタリングは業歴不問

 
基本的に、注文書ファクタリングは業歴不問です。
開業後間もない会社でも利用できます。
注文書ファクタリングが「業歴不問」というのは、「業歴がほとんど(あるいは全く)影響しない」ということです。
業歴によって審査の難易度が変化したり、注文書ファクタリングの条件が変わったりすることはありません。
このことは、注文書ファクタリングの審査基準を考えるとよくわかります。
上記の通り、注文書ファクタリングの審査基準は、利用会社ではなく売掛先です。
利用会社の償還能力は不問ですから、「業歴が短い→償還能力が低い→審査落ち」ということがありません。
売掛先が発行した注文書にどれだけの信用があるか、そして売掛先の支払い能力がどうかを重視します。
この点に問題があれば、業歴がどれだけ長い会社でも注文書ファクタリングの審査に落ちます。
逆に、この点に問題がなければ、業歴が短い会社でも注文書ファクタリングの審査に落ちることはありません。
このように考えると、注文書ファクタリングが業歴不問である理由がよくわかるでしょう。
さらに後述の通り、注文書ファクタリングは必要書類が簡素です。
注文書ファクタリングも、基本書類に決算書を含みます。
しかしながら、POファイナンスが数期分の決算書を求めるのに対し、注文書ファクタリングは直近の決算書だけで利用できることが多いです。
また、ファクタリング会社によっては、創業1年未満でも受け付けています。
その場合、決算書が手元にないため、他の書類で代替することで対応します。
以上のように、注文書ファクタリングは業歴不問であると同時に、創業1年未満など、業歴が極めて短い会社でも利用可能です。

業歴が短い会社は注文書ファクタリングを

 
POファイナンスは、業歴が長いほど有利になります。
しかし、業歴が長くなるにつれて、影響は小さくなっていくものです。
例えば、業歴100年の会社と、業歴120年の会社では、どちらも「業歴が長い」と評価されるだけで大差ありません。
要は、業歴が短くなければ良いのです。
業歴を基準とする場合、使い分けは以下のように考えると良いでしょう。

  • 業歴がある程度長い会社→POファイナンス・注文書ファクタリングのどちらでも良い
  • 業歴が短い会社→POファイナンスよりも注文書ファクタリングの方がおすすめ
  • 開業後間もない会社→POファイナンスは避けて注文書ファクタリングで調達

担保・保証の影響の違い

 
「POファイナンスは融資の一種」ということから、担保・保証が気になった人もいることでしょう。
融資をはじめとする外部資金調達では、担保・保証が影響することが多いです。
POファイナンスと注文書ファクタリングについても、担保・保証の影響を考えていきましょう。

POファイナンスは担保・保証を重視

 
POファイナンスは担保・保証を重視します。
まず、POファイナンスは担保ありきの融資です。
POファイナンスは、将来債権を担保として融資します。
不動産などの担保資産は不要ですから、この意味では一般的な担保付融資よりも調達しやすいです。
しかし、担保となる将来債権がなければPOファイナンスは利用できません。
例えば、現金だけで取引している会社は、そもそも将来債権が発生しないためPOファイナンスの対象外です。
また、受注から納品(請求)までのスパンが短い会社も、POファイナンスには不向きといえます。
将来債権から確定債権へと短期間で変わるため、手元の将来債権は常に乏しい状態です。
それを担保としてPOファイナンスで調達するよりも、確定債権になるのを待って売掛債権担保融資で調達したほうが効率的でしょう。
次に保証ですが、POファイナンスは全くの無保証では利用できません。
銀行のPOファイナンスで調達する際、第三者(連帯保証人や信用保証協会など)の保証は不要であっても、代表者自身の個人保証を必ず求められます。
POファイナンスで調達した資金が返済できなくなった場合、まず担保資産である将来債権を弁済に充てます。
それでも足りない部分は、保証人が弁済しなければなりません。
POファイナンスは有担保・有保証の融資と考えてください。

注文書ファクタリングは無担保・無保証

 
注文書ファクタリングは、原則として無担保・無保証で利用できます。
そもそも、なぜPOファイナンスが担保・保証を重視するのかといえば、POファイナンスそのものが担保付融資であり、融資に保証はつきものだからです。
返済できなくなった場合に備えて、担保・保証を求めます。
返済義務がなければ、「返済できなくなった場合に備えて」という考え方は成り立ちません。
将来債権をファクタリング会社に売却するのが注文書ファクタリングです。
いわば将来債権の譲渡であり、融資ではなく返済義務もありません。
したがって、注文書ファクタリングは無担保で利用できます。
また、信用保証協会や保証会社による保証も、第三者や代表者個人の連帯保証も一切不要です。
仮に、注文書ファクタリングの条件を「担保・保証付き」とした場合、ファクタリング会社は貸金業者として規制を受けることになるでしょう。
「担保・保証付き→返済が前提→実質的に貸付け」とみなされるためです。
それを避けるためにも、正規の注文書ファクタリングはほぼ例外なく「無担保・無保証」としています。

無保証の注文書ファクタリングがおすすめ

 
POファイナンスと注文書ファクタリングは、どちらも将来債権を用います。
将来債権を担保活用したい会社はPOファイナンスを、将来債権を譲渡・売却したい会社は注文書ファクタリングを選びましょう。
手元に将来債権がなければ、どちらも利用できません。
POファイナンスと注文書ファクタリングの使い分けは、保証によって考えるべきです。
POファイナンスは何らかの形で保証を求められます。
例えば代表者個人の連帯保証を求められる場合、代表者の個人信用情報に問題があれば審査に落ちます。
その場合、無保証で利用できる注文書ファクタリングがおすすめです。
代表者が金融ブラックであっても、注文書次第で審査に通ります。

必要書類の違い

 
ここまでの解説でも少し触れましたが、POファイナンスと注文書ファクタリングは必要書類が異なります。
必要書類の違い利便性に直結するため、軽視できません。
必要書類が煩雑であれば、書類の作成や取得に手間がかかり、申し込みのハードルが高くなります。
必要書類が少なければ簡単に申し込み、資金調達もしやすいというわけです。
POファイナンスと注文書ファクタリングの必要書類を比較してみましょう。

POファイナンスの必要書類

 
銀行融資は様々な書類を求められます。
作成に手間がかかる書類も多いです。
同じく融資ではあるものの、POファイナンスは少ない書類で利用できます。
POファイナンスの基本書類は以下の通りです。

  • 代表者の本人確認書類
  • 会社の基本情報(登記簿謄本や印鑑証明書など)
  • 数期分の決算書
  • 試算表
  • 納税証明書
  • 銀行取引状況が分かるもの(法人名義通帳のコピーなど)

ただし、POファイナンスを初めて利用する際には、システム利用登録のために「電子債権記録サービス同意書」「預金口座振替依頼書」「反社会的勢力でないことの表明確約書」なども提出します。
これをみればわかる通り、POファイナンスの必要書類は簡素です。
通常の融資のように、事業計画書や資金使途の裏付け書類の準備に手間取る心配はありません。
強いていえば、決算書と試算表が問題です。
POファイナンスは、直近1期分~数期分の決算書を求めます。
数期分を求められる場合、開業後間もない会社は必要書類が足りず、申し込むことができません。
また、月次試算表を習慣的に作っている会社は少ないものです。
手元に試算表がなければ、POファイナンスの申し込みに合わせて新たに作成する必要があります。

注文書ファクタリングの必要書類

 
注文書ファクタリングの必要書類は、POファイナンスよりも簡単です。
ファクタリング会社ごとに求める書類は異なりますが、基本的な書類は以下の通りです。

  • 直近数ヶ月の取引入金が確認できる書類(入金通帳・当座通帳・当座照合表)
  • 決算書(勘定科目明細付で税務申告済みの捺印のあるもの)
  • 成因資料(発注書・納品書など)
  • 取引先企業との基本契約書

注文書ファクタリングでも、試算表を求める業者があります。
しかし、そのようなケースはごく一部です。
基本的には、新たに書類を作成・取得することなく、手元にある書類だけで簡単に申し込むことができます。

必要書類は大差なし

 
POファイナンスと注文書ファクタリングは、必要書類が簡単です。
通常の銀行融資によりも、申し込み・調達のハードルはかなり低いといえます。
それなりに書類の整理が行き届いているならば、どちらを選んでも書類提出に困ることはないでしょう。
ただし、開業後間もない、試算表を作っていない、あるいはその他の理由で必要書類が揃わない会社は、注文書ファクタリングをおすすめします。
必要書類が手元にない場合、ファクタリング会社に相談することで、他の書類でカバーできることも多いです。

資金調達スピードの違い

 
資金調達においてはスピードも重要です。
POファイナンスと注文書ファクタリングは、どちらのほうがスピーディに調達できるのでしょうか。

POファイナンスは最短数日

 
POファイナンスは、融資の一種でありながら資金調達スピードに優れています。
最短即日融資を目指すノンバンクもあるようです。
しかしながら、実際にPOファイナンスで即日中に調達するのは、不可能でなくとも難しいと考えるべきでしょう。
何といっても、POファイナンスは融資であり、審査はそれなりに慎重です。
特に、銀行のPOファイナンスに申し込んだ場合、最短数日が現実的でしょう。
最短即日をうたうPOファイナンスも、即日中に融資を実行することはあまり多くありません。
ノンバンクのビジネスローンと同じように考えるとわかります。
ノンバンクのビジネスローンは、即日融資をうたっているものが多いです。
しかし実際には翌日や数日後に融資実行となるケースが一般的で、本当に即日中に借り入れるには多くの条件が整わなければなりません。
POファイナンスも同じです。
POファイナンスは、必要書類が少ないこと、オンラインで手続きできること、担保が明確であることなどから、通常の融資よりは圧倒的にスピーディですが、現実的な資金調達スピードは「最短数日」と考えてください。
業者ごとのばらつきも大きく、そもそも即日対応をしていない業者(例えば「最短4日」などに設定)も少なくありません。
安易に「POファイナンス=即日」と考えてしまうと、資金調達の計画に支障をきたします。

注文書ファクタリングは最短即日

 
注文書ファクタリングは、あらゆる資金調達方法の中でも特にスピーディといってよいでしょう。
注文書ファクタリングの資金調達スピードは、方式によって異なります。
目安は以下の通り。

  • 2社間ファクタリング:最短数時間~即日
  • 3社間ファクタリング: 最短1週間程度

注文書ファクタリングを3社間取引で行う場合、即日中の資金調達は不可能です。
3社間ファクタリングは売掛先を含む3社で行います。
手続きの中で債権譲渡通知・承諾が必須となり、資金調達通知書の郵送には内容証明郵便を用いることから、この手続きだけでも数日を要します。
3社間ファクタリングの仕組み的に、即日中の調達はできないのです。
一方、2社間での注文書ファクタリングはスピードに優れています。
近年、オンラインファクタリング(オンライン完結の2社間ファクタリング)も増えており、それを用いることで最短数時間での資金調達も可能です。
実際に、No.1のオンラインファクタリングサービスでは、最短60分入金の実績が多数ございます。
オンラインを利用しない場合も、2社間ファクタリングならば即日中の資金調達は十分に可能です。

即日調達は注文書ファクタリングで

 
POファイナンスは最短数日、注文書ファクタリングは最短数時間。
いろいろな資金調達方法がある中で、POファイナンスと注文書ファクタリングはどちらも資金調達スピードに優れています。
ただし、数日の差が会社の運命を分けることも少なくありません。
緊急の資金調達方法として注文書を活かしたい場合、POファイナンスではなく注文書ファクタリングの方がメリットがあります。

調達コストの違い

 
調達コストは、POファイナンスと注文書ファクタリングの大きな違いといえます。
簡単なシミュレーションを通して、POファイナンスと注文書ファクタリングの調達コストを比較してみましょう。

POファイナンスの調達コストは安い

 
POファイナンスは融資であり、調達コストの大部分は金利です。
担保を用い、機関保証などは付けずに融資することから、保証料もかかりません。
実際の金利は、POファイナンスを提供する銀行・ノンバンクごとの基本設定と、POファイナンスに用いる将来債権の(売掛先の)信用によって変化します。
銀行のPOファイナンスは年利1~3%、ノンバンクのPOファイナンスは年利2~18%が目安です。
一例として、セゾンファンデックスのPOファイナンスは、固定金利で年3.65~9.9%に設定しています。
考え方としては、「POファイナンスは銀行のプロパー融資より高くノンバンクのビジネスローンより低い」と考えてください。
POファイナンスの調達コストを簡単に試算してみましょう。
例えば、POファイナンスで100万円を借り入れるとして、返済期間が1年、借入金利が年利5%であったとすれば、調達コストは単純計算で5万円にすぎません。
将来債権を担保とするPOファイナンスは、調達可能額が低くなることが多く、加えて金利には上記のような傾向があるため、調達コストを低く抑えることができます。

注文書ファクタリングの調達コストは高い

 
次に、注文書ファクタリングの調達コストを考えてみます。
注文書ファクタリングは融資ではないため、金利という概念がありません。
あくまでも手数料として考えます。
注文書ファクタリングの手数料率は以下の通りです。

  • 2社間ファクタリング:額面金額の10~30%
  • 3社間ファクタリング:額面金額の1~10%

このように、注文書ファクタリングの手数料率は方式によって大きく異なります。
手数料が安いのは3社間ファクタリングですが、売掛先の関与により信用リスク・利便性・資金調達スピードなどに問題を抱えています。
実際に注文書ファクタリングを利用する場合、2社間ファクタリングを選ぶのが現実的です。
したがって、注文書ファクタリングの調達コストはそれなりに高いものと考えてください。
もっとも、「注文書ファクタリングの手数料率が高い」というのは、「手数料率の年利換算が高い」という意味です。
例えば、1ヶ月後に回収予定の将来債権を手数料率15%で資金化する場合、手数料率は年利換算で180%。
利息制限法が定める上限金利(年利15~20%)をはるかに超える水準です。
しかし、手数料率の年利換算と、実際に支払う調達コストは別問題です。
簡単に計算してみましょう。
注文書ファクタリングで100万円を調達するとして、手数料率15%の場合に必要となる将来債権の額面金額は118万円です(118万円×0.85=100.3万円)。
したがって、調達コストは18万円
注文書ファクタリングの調達コストは、POファイナンスよりも高い傾向があります。

POファイナンスのほうが安いが・・・

 
POファイナンスは融資なので金利は利息制限法の範囲内です。時間に余裕があり計画的に資金調達する場合はPOファイナンスに利があります。しかし、注文書の段階で資金調達する必要性に迫られているわけで、多少手数料がかかっても迅速な資金調達を可能にするファクタリングも検討する価値はあります。
また、POファイナンスの調達コストが注文書ファクタリングよりも安くなるのは、銀行のPOファイナンスを利用した場合です。
ノンバンクのPOファイナンスは金利が高く、注文書ファクタリングよりも調達コストが高くなることがあります。
したがって、POファイナンスと注文書ファクタリングの調達コストの差は、
「銀行のPOファイナンス≦注文書ファクタリング<ノンバンクのPOファイナンス」
と考えるのがよいでしょう。

資金繰りへの影響の違い

 
資金調達の際には資金繰りにどう影響するかを考えなければなりません。
せっかく資金を調達しても、資金繰りの負担が重ければ後々苦労することになります。
POファイナンスと注文書ファクタリングは、この点にも大きな違いがあります。
POファイナンスと注文書ファクタリングは、どちらも売掛金(将来債権)を活用した資金調達方法です。
売掛金は資金繰りに大きな影響を与えます。
手元の売掛金が増加すれば資金繰りが悪化し、減少すれば資金繰りが改善するのが鉄則です。
この鉄則から考えると、将来債権を担保とするPOファイナンスと、早期資金化する注文書ファクタリングの違いが見えてきます。

POファイナンスは資金繰りの負担になる

 
POファイナンスは、資金繰りの改善にはなりません。
POファイナンスは将来債権の担保利用による融資です。
POファイナンスに用いた将来債権には銀行の抵当権がつきますが、所有権は依然として自社にあります。
つまり、POファイナンスを利用しても、手元の売掛金が減るわけではありません。
手元の売掛金が変わらなければ、資金繰りが悪くなることも、良くなることもないのです。
ただし、POファイナンスによって金利が生じるため、資金繰り負担は避けられません。
POファイナンスは資金繰り改善にならず、調達コストの分だけ負担が増すと考えてください。

注文書ファクタリングは資金繰り改善になる

 
一方、注文書ファクタリングは資金繰り改善につながります。
これは、注文書ファクタリングが法的に債権譲渡のためです。
債権譲渡取引は、債権者(支払期日に将来債権の額面金額を受け取る権利を持つ者)が変化します。
注文書ファクタリングならば、将来債権の譲渡を通して、債権者が自社からファクタリング会社に変わるのです。
これにより、将来債権は完全に自社の手を離れます。
帳簿の上でも、自社の流動資産では「注文書ファクタリングに利用した分の将来債権」が減少し、「注文書ファクタリングで早期資金化した分の現金」が増えます。
つまり、手元の売掛金が減少するわけです。
当然ながら、資金繰り改善につながります。
ただし、それと同時に手数料負担が生じていることを忘れてはなりません。

  • 「ファクタリング手数料による負担>売掛金減少による改善効果」ならば資金繰りは悪化
  • 「ファクタリング手数料による負担<売掛金減少による改善効果」ならば資金繰りは改善

以上のように考え、改善効果を追求することが大切です。

資金繰り改善に注文書ファクタリングを

 
POファイナンスと注文書ファクタリングは、それぞれ資金繰りへの影響が異なります。
POファイナンスは資金繰り改善にはなりませんが、調達コストが安いため資金繰り負担は軽微です。
資金調達の時点で資金繰りが良好であり、特に改善効果を求めていない会社は、POファイナンスを検討してみてもよいでしょう。
資金繰りを改善したい場合には、注文書ファクタリングを選んでください。
注文書ファクタリングは、手数料負担とうまくバランスを取ることにより、短期間で確実に資金繰りを改善できます。

財務への影響の違い

 
資金調達による財務への影響も見逃せません。
資金繰りのためとはいえ、財務が悪化すれば銀行評価の低下にもつながり、資金調達環境が悪くなることもあるのです。
POファイナンスと注文書ファクタリングは、財務にどのような影響を与えるのでしょうか。

POファイナンスは財務悪化に

 
POファイナンスで資金を調達するならば、財務悪化に注意してください。
これは、POファイナンスに限らず、融資全般に共通する特徴です。
会社の総資産は、返済の必要がない自己資本と、返済義務がある他人資本に分けることができます。
総資産における自己資本の割合を自己資本比率といい、自己資本比率は会社の財務健全性を測るうえで重要な指標です。
銀行が融資する際にも自己資本比率を必ずチェックします。
自己資本が多く、自己資本比率が高ければ財務は健全、他人資本が多く、自己資本比率が低ければ財務は不健全とみます。
他人資本が多いということは、返済負担が大きいということにほかならず、その負担に耐えられるだけの余裕(自己資本の厚み)がなければ危険です。
POファイナンスが財務悪化につながる理由はここにあります。
POファイナンスの調達した資金は借入金ですから、他人資本が増加し、自己資本比率が低下するのです。
POファイナンスで資金を調達する際には、財務への影響を事前に織り込み、利用することを心がけましょう。

注文書ファクタリングは財務の維持・改善に

 
注文書ファクタリングは、財務の維持に効果的です。
手数料負担によって資金繰りが悪化することはあっても、財務そのものが悪化することはありません。
これも、資本の変化で考えるとよくわかります。
注文書ファクタリングは債権譲渡取引であり、融資とは根本的に違います。
注文書ファクタリングで調達した資金は借入金ではなく、他人資本が増加することはありません。
自己資本と他人資本が変わらなければ、自己資本比率が低下することもないのです。
これにより、銀行評価の維持につながります。
むしろ銀行はプラスに評価するかもしれません。
注文書ファクタリングによって将来債権を譲渡し、早期資金化するということは、本来の支払期日よりも早く売上を回収するということです。
売掛金の回収がスムーズであることを、銀行は評価するものです。
さらに活用すれば、注文書ファクタリングは財務改善にも役立ちます。
注文書ファクタリングの財務改善は、オフバランス化によるものです。
オフバランス化とは、貸借対照表(バランスシート)の資産を売却・整理する(オフ化)ことをいいます。
基本的に、銀行は貸借対照表が煩雑であることを嫌います。
雑多に計上されている資産の中には、本来価値のない資産(不良債権など)が含まれていることがあるためです。
オフバランス化に取り組めば貸借対照表が簡明になり、銀行の印象もよくなります。
これは、単に見た目だけのことではありません。
将来債権には回収不能リスク(売掛先が支払い不能に陥り、回収できなくなるリスク)があります。
注文書ファクタリングにより将来債権を譲渡し、資産から消すことが、回収不能リスクの軽減、延いては将来的な財務悪化の防止につながるのです。
以上のように、注文書ファクタリングは財務に悪影響がなく、使い方次第で好影響を高めることができます。

財務が悪い会社は注文書ファクタリングがおすすめ

 
POファイナンスは財務を悪化させ、注文書ファクタリングは財務の維持改善につながります。
したがって、POファイナンスと注文書ファクタリングは、財務の現状によって使い分けるべきです。
財務内容が良く、自己資本比率が高い会社はPOファイナンスで調達しても問題ないでしょう。
自己資本比率が多少低下しても、銀行の「自己資本比率が高く財務健全」という評価は変わりません。
自己資本比率は高ければ高いほどよく、20%以上が理想、最低でも10%は維持したいところ。
POファイナンスによる自己資本比率の低下を事前に計算し、自己資本比率20%・10%といった目安を割り込むならば、注文書ファクタリングを選ぶべきです。
また、すでに自己資本比率が低い会社は、さらなる低下を避けるためにも、POファイナンスではなく注文書ファクタリングを優先し、財務の改善を図りましょう。

悪質業者のリスクの違い

 
POファイナンスと注文書ファクタリングは、どちらも新しい資金調達方法です。
新しい資金調達方法には悪質業者がつきものです。
最後に、悪質業者のリスクを比較してみましょう。

POファイナンスと悪質業者

POファイナンスで資金調達する場合、悪質業者の心配はありません。
POファイナンスは、主に銀行が取り扱っているサービスです。
そのほか、一部の大手ノンバンクがPOファイナンスを提供しています。
単なる貸付けであれば、中小の貸金業者に悪質業者が紛れ込み、ビジネスローンを装って違法行為を働くケースもあるのですが、POファイナンスにはそれがありません。
銀行もノンバンクも、金融庁の監督と規制を受けており、銀行は銀行法、ノンバンクは貸金業法に基づいて営業しています。
また、社会的信用を維持するべく、順法意識も強いです。
およそ「悪質」「違法」といったこととは無縁であり、特に銀行のPOファイナンスを利用する限り、悪質業者のリスクはほぼゼロといってよいでしょう。
 

注文書ファクタリングと悪質業者

 
注文書ファクタリングを利用するならば、悪質業者に注意が必要です。
現在、ファクタリング業界には悪質業者が紛れ込んでおり、被害を受ける会社が後を絶ちません。
悪質業者が摘発され、大きく報道されることもあります。
これは、ファクタリングに関する法整備が不十分なためです。
世界的にみれば長い歴史を持つファクタリングも、日本で普及してきたのは最近のことです。
一般的なファクタリングから派生した注文書ファクタリングは、さらに歴史が短いといえます。
ファクタリングが急速に普及する一方で、法整備は慎重を期さなければなりません。
法整備の遅れにより、悪質業者が紛れ込みやすくなっているのです。
ここでいう悪質業者とは、「ファクタリングを装って違法な貸付けを行う業者」のことです。
悪質業者も、ファクタリングの悪質業者について以下のように注意を促しています。

中小企業の経営者などを狙い、貸金業登録を受けていない者が、ファクタリングを装って、業として、貸付け(債権担保貸付け)を行っている事案が確認されています。

出典:出典:金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」
この注意喚起はファクタリング全般に対するもので、注文書ファクタリングも含みます。
「貸金業登録を受けずに、業として貸付けを行う」というのは、闇営業の貸金、いわゆるヤミ金にほかなりません。
実際に、悪質業者による被害の事例をみても、年利換算で数百~千%超の金利設定、違法な取り立てなどが非常に多く、このことからも「ファクタリングの悪質業者=ヤミ金」ということがわかります。
もっとも、注文書ファクタリングは、通常のファクタリングよりも悪質業者のリスクが小さいです。
注文書ファクタリングはまだ一般的ではなく、利用者が少ないだけに、悪質業者があえて注文書ファクタリングを装うメリットがありません。
しかし、今後注文書ファクタリングが普及すれば、悪質業者のリスクは高まっていくでしょう。

悪質業者を避けるのが大前提

 
POファイナンスと注文書ファクタリングは、どちらも合法的な仕組みです。
しかし、注文書ファクタリングは法整備の遅れから、悪質業者が問題視されています。
法整備が進むまでは、悪質業者のリスクを踏まえて利用しなければなりません。
POファイナンスとの比較を通して、注文書ファクタリングの様々なメリットに触れました。
しかし、悪質業者を利用してしまうと、注文書ファクタリングのメリットは一切得られなくなります。
注文書ファクタリングを活用するならば、悪質業者を避けることが大前提です。
悪質業者のリスクを重視する会社は、POファイナンスを選んだほうが無難でしょう。
もっとも、悪質業者の回避はごく簡単です。
優良ファクタリング会社を選ぶだけで、悪質業者のリスクはほぼゼロになります。

まとめ:POファイナンスより迅速性重視ならばファクタリングのNo.1までお問い合わせを!

POファイナンスは新しい資金調達方法ですが、受発注書、注文書の段階で資金がショートする状況ならば、融資の審査を待っている余裕はないはずです。

注文書を担保にした融資であるPOファイナンスは便利ですが、迅速性に欠けてしまい、「どっちつかず」な内容になります。

迅速な資金調達を求めるなら、POファイナンスだけでなくファクタリング(注文書ファクタリング)もぜひ検討してみましょう。融資ではないので、さまざまな法規制の対象外になります。

「株式会社No.1」は経験と実績があるファクタリング会社です。迅速な資金調達をモットーにしています。

POファイナンスにももちろんメリットがありますので、自社にとってどちらが良いのかしっかり見極めてください。No.1はファクタリング契約を前提とせず、貴社の資金繰り解決へ導きます。

ぜひお問い合わせください。

【監修】株式会社No.1 編集局長
保有資格:貸金業務取扱主任者
20代はノンバンクにて法人融資を中心とした営業に従事。
その後、不動産担保融資の会社でキャリアを重ね金融業界で幅広い経験を積む。
2018年に株式会社No.1へ入社。
これまでの実務経験と専門知識を活かし、中小企業の経営課題解決に向けた支援を行っている。

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