助成金・補助金で資金調達できた事例

助成金・補助金で資金調達できた事例

助成金や補助金、交付金は、国や自治体が定めた一定の条件を満たす必要がある制度であり、対象となる経費の全額が必ずしも賄えるわけではありません。しかし、銀行融資のように返済義務がなく、新株発行のように株主への配当や経営権への影響を心配する必要もないことから、事業者にとっては非常に有利で魅力的な資金調達方法といえます。これらの制度には業界や目的ごとにさまざまな種類があり、助成金・補助金・交付金の違いを正しく理解したうえで、コスト削減や事業づくりにどう活かすかを考えることが重要です。

一方で、助成金や補助金をどのように自社の資金調達に組み入れればよいのかわからない、あるいは手続きが複雑そうで個人や中小事業者には難しいと感じている人も多いのではないでしょうか。申請書類の作成や要件確認に不安を覚え、設備用の機器設置や新たな取り組みに対して、一部業務を代行サービスに任せるか検討するケースも少なくありません。

しかし実際には、制度の特徴や違いを理解し、自社の事業内容や成長フェーズ、業界特性に合った助成金や補助金、交付金を個別に選択することで、初期投資や運営コストを削減しながら事業を継続・拡大させている企業も数多く存在します。個人事業主であっても活用できる制度は多く、設備用機器の導入や設置を含む取り組みにおいても、適切に活用すれば大きな支援となるのが現状です。

それでは、助成金や補助金、交付金をどのような種類やケースで活用し、実際に資金調達や事業成長につなげてきたのか、具体的な事例を通して見ていくことにしましょう。

従業員の労働環境の改善と定着率の向上を行なった事例

いまや人材不足は、多くの企業にとって事業の継続そのものに関わる深刻な課題となっており、その概要を把握するだけでも経営上の重要性がうかがえます。しかしながら、特に中小企業においては、優秀な人材を新たに確保し、昇給や福利厚生の充実といった労働環境の改善を促進するための取組を進めることは、限られた資金の中では容易ではありません。製造業やサービス業など業種を問わず、人材育成への投資が難しいと感じている企業は数多く存在します。

こうした課題の解決に役立つのが、キャリアアップ助成金に代表される雇用関係の助成金です。地域や業種ごとの実情に応じたメニューが用意されており、正社員化や雇用形態の転換といった取組を後押ししてくれます。ある小売店では、これまで有期雇用の契約社員だった10名のうち4名を正社員へと転換し、さらに残る6名を無期雇用の契約社員へと切り替える施策を展開しました。

その結果、4名の正社員化によって228万円、6名の無期雇用転換によって171万円、合計で399万円もの助成金を受給することができました。このように、キャリアアップ助成金は申請して承認を得られれば比較的早い段階で受給できるため、人件費をはじめとした資金繰りや職場環境の改善に活用しやすく、近年では特に人気の高い制度となっています。

また、人件費に関する助成金の活用はキャリアアップ助成金だけに限られません。社会経験の少ない若者や未経験者を対象としたトライアル雇用奨励金、高齢者や障害者を雇用する際に利用できる特定求職者雇用開発助成金や障害者初回雇用奨励金、さらには女性の活躍や仕事と育児・介護の両立を支援する両立支援等助成金など、さまざまな制度が公式ページで公開されています。これらの制度では、研修用ツールの購入や電子化を進めるための環境整備など、専門性の高い取組も支援対象となるケースがあります。

これらの助成金を業種や地域、自社の状況に合わせて新たに組み合わせて活用することで、労働環境の改善を進めながら人材育成と定着率の向上を図ることが可能となります。結果として、製造業・サービス業を問わず、専門人材の確保と持続的な事業展開につなげていくことができるのです。

事業の発展に必要な設備投資を補助金で実現した事例

事業を持続的に成長させていくためには、革新的なサービスの開発や試作品の製作、生産プロセスの改善など、以下のようなさまざまな設備投資に新規で挑戦していく必要があります。こうした取り組みは製造業だけでなく、建設業やサービス業、販売分野においても重要性が高まっており、機械の導入や業務体制の見直しを通じて効率を高め、顧客の獲得や販路開拓につなげることが、企業の競争力を左右する要素といえるでしょう。

このような中小企業の設備投資を支援する制度として、中小企業庁が実施しているのが「ものづくり補助金」です。ものづくり補助金は、日本経済の基盤を支える中小企業や小規模事業者が、新たな技術開発や生産性向上に向けた取り組みを行う際に、その設備投資等の費用を最大でおおよそ2分の1補助する制度であり、支援額も比較的高い点が特徴です。生産体制の強化や新規事業に向けた設備導入にも活用されています。

ただし、この補助金を活用するためには、公募要領を十分に確認したうえで、事業計画書を作成し、登録・申請を行う必要があります。申請内容は審査によって評価され、採択されなければ補助金を受け取ることはできません。そのため、自社の取り組み内容が制度の趣旨に合致しているかを事前に検索・確認し、機械導入による効率化や販路開拓、顧客獲得への効果を具体的に示すことが重要です。必要に応じて専門家へ相談するのも有効で、多くの場合、初期相談は無料で対応してもらえるケースもあります。

また、ものづくり補助金は、申請が採択された後であっても、実際に設備投資を行い、その実績を報告したうえで支払われる仕組みとなっています。資金は後払いとなるため、自己資金やつなぎ資金の準備が必要になる点には注意が必要です。

実際には、この補助金を活用して、世の中にまだない新しい技術や商品の開発に再挑戦したり、工場に新たな生産ラインや機械を導入したり、建設業において新工法を確立するなど、さまざまな成功事例が生まれています。企業のアイデアや取り組み内容次第で、体制を強化しながら高い付加価値を生み出す設備投資を実現できる点が、ものづくり補助金の大きな魅力といえるでしょう。

創業間もない企業を支援する助成金

創業間もない企業は、実績や信用力が十分でないことから、銀行からの借入れなどによる資金調達が難しいのが現状です。特に製造業や宿泊業のように、加工用の機械や設備、店舗の整備など初期投資や人手を多く必要とする分野では、人手不足や省力化への対応も求められ、組織としての体制づくりを含めた資金面の負担はより大きくなりがちです。こうした課題を背景に、近年では起業家をサポートする助成金制度が注目を集めています。

例えば東京都の創業助成事業では、東京都が委嘱した専門家のサポートを受けながら事業計画を策定し、その内容が認められれば助成金を活用することができます。この制度では、人件費や事務所などの賃借料、広告費に加え、商品制作やサービス提供に必要な準備費用など、幅広い経費が助成対象となっており、産業分野を問わず、新事業の立ち上げや新たな市場への進出を後押ししています。こうした支援内容は自治体や関連機関のページに掲載されていることも多く、事前に確認しておくことが重要です。

このような助成金制度を活用すれば、優れたアイデアや明確な事業構想があれば、スタートアップの段階から資金調達への不安を抑えつつ事業を進めることも可能になります。加工工程の見直しや機器導入、店舗運営の効率化といった取り組みを含めた提案が評価され、具体的な成果につながるケースも少なくありません。

一方で、助成金や補助金は申請準備や審査に一定の時間を要し、原則として事業実施後に支払われる仕組みであるため、短期的な資金調達には向いていません。しかし、返済が不要である点は大きなメリットであり、長期的に見れば資金負担を大きく軽減する効果があります。

助成金や補助金が採択された場合には、支給されるまでの運転資金を短期の借入などで補うことで、資金繰りを安定させることができます。こうした支援制度の活用は、創業期だけでなく、将来的な事業承継や組織の拡大を見据えた経営基盤づくりにも有効であり、多くの企業が次の成長ステージへと進むための足掛かりとして活用しているのです。

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