カテゴリー: ファクタリング
許認可不要で開業できるファクタリング会社!だからこそ利用者が注意しなければならない理由は?
新しい資金調達方法としてファクタリングが注目されています。ファクタリングによる資金調達と融資による資金調達を比較したいという方も多いはずです。
そもそもファクタリング会社はどのようにして開業するのでしょうか?開業は銀行や消費者金融(ノンバンク)と違う流れなのでしょうか?
開業にあたり資格や許認可が必要なのか、それとも不要なのか、後者の場合さまざまな会社が参入し、玉石混交になっていることが予想されます。
今回はファクタリングの許認可について解説していきます。
銀行や消費者金融は法律で厳格に縛られていることはよく知られています。一方、ファクタリングはそうしたものが緩いようです。ファクタリングに許認可は必要なのか、今回は考えていきましょう。
ファクタリング会社の開業に許認可は不要!その理由は?
結論から申し上げますと、ファクタリング会社を開業するにあたって許認可は不要です。ファクタリング会社は誰でもすぐに開業できます。
それには理由があるのですが、ここではそれがなぜなのか解説していきます。
ファクタリング業者は銀行や貸金業ではないから
ファクタリングに免許や許認可が不要な最大の理由は、ファクタリングは銀行や貸金業法に該当しないからです。
ファクタリングは売買契約に基づく指名債権(売掛債権)の譲渡であり、金銭の貸し借りではありません。金銭貸借=融資を行うわけではないので、融資を行う貸金業や銀行の登録は必要ありません。
銀行はそうそう許可が出るものではないので(銀行の少なさから明らかです)、一般的な金融業の開業であれば「貸金業登録」という免許が必要となり、金融庁の許認可が必要です。これによって貸金業=消費者金融を開業できます。
2000年代前半の都市銀行の再編以降、新規開業の許認可を得られた銀行は、楽天銀行、ソニー銀行、じぶん銀行などネット系のわずかな銀行にとどまります。通常の銀行の開業はもはや割に合わず、大手都銀の実店舗がどんどん統廃合されている中で、まったく現実的ではありません。
よほどの事情がなければ銀行の開業について、金融庁の許認可は出ないと思ってください。銀行で今営業しているは、歴史と伝統ある銀行か、ネット専業系の大資本の会社のみです。
比較的新規に開業の許認可が出やすいのが、ノンバンク系の消費者金融ですが、消費者金融も過当競争の中で廃業なども相次いでいます。
新規参入は銀行ほどではないものの厳しく、そうした会社の一部はファクタリング事業も始めています。
しかし、ファクタリングはあくまでも売掛債権の(有償)譲渡契約であり、金銭を貸し借りする金銭消費貸借契約には該当しません。銀行や貸金業(消費者金融)がファクタリングを行うことは問題ありませんが、それは許認可とは別のサービスです。
ファクタリングは、売掛債権の有償譲渡であり、金銭消費貸借契=融資に該当しません。銀行や消費者金融を規制する銀行法や貸金業法はファクタリングには適用されないため。当該法に規定された免許、許認可は必要ないのです。
ファクタリングを規制する法律がない
もう1つの理由として、ファクタリングそのものを取り締まる、規制する法律が無いからです。ファクタリングに許認可を与える根拠もありませんが、加えてファクタリング自体を規制したり利用者を保護したりする法律もありません。
完全自由競争、当事者間の合意(民法の一般原則)が優先される世界になっています。
規制する、取り締まる、というとファクタリングが悪いことのように思えてしまいますが、金融業のように様々な規制を法律で制定し、上限金利などを設定しているわけではありません。
ファクタリングについては、2000年代に入ってから(2005年前後)広がった比較的新しい資金調達手法で、法律が現実に追い付いていないということもあります。ファクタリング業について、専門的な法律がないので、必要な免許も特に決められていません。
開業資金(売掛金の買い取り資金)さえあれば誰でも開業できます。
とはいえ、まったく法律に関係なく事業ができるかというとそうではなく、民法や商法の一般原則、一般条項は適用されます。
信義則に従ったファクタリング契約は当然であり、権利濫用をしてはいけないのも当たり前です。契約に当たり詐欺や脅迫、心裡留保などがあってもそのファクタリング契約は無効、取消になります。
許認可は必要ありませんが、通常の契約行為、商行為であり、ファクタリング会社は最低限のルールを守らなければなりません。
債権譲渡については民法の規定が適用されるのみであり、「ファクタリング法」のようなものはありません。法律がないので、許認可を規定する方法がないのです。
ファクタリングの多くが「古物商」にも該当しない
本やCD、ゲーム、貴金属などを買取る場合、古物商許可が必要です。有名な中古ゲームショップは古物商許可を取っています。
しかし、ファクタリングは物ではなく債権、つまり実態のないものの買取なので、古物商許可も必要ありません。
ただし、在庫商品を現金化する「在庫商品ファクタリング」というものを行う業者は、古物商の許可(許認可)が必要になります。一般的な売掛債権の買取だけなら古物商許可(許認可)も不要です。多くのファクタリング業者は「在庫商品ファクタリング」を行っていないので、実質的に古物商許可も不要なのです。
ファクタリングに免許が不要な理由のまとめ
以上、ファクタリングには許認可が不要な理由を述べました。以下それらをまとめました。
- 1.融資ではないので。銀行法や貸金業法の適用対象外で、銀行行許可や貸金業許可が要らない
- 2.ファクタリングを規制する法律がそもそも存在しない。民法や商法にはファクタリング免許の記述はない
- 3.一部の「在庫商品ファクタリング」を行う業者のみ古物商許可が必要。それをしないなら古物商許可も不要。実際に在庫ファクタリングを行うファクタリング会社は非常に少ない
ファクタリング会社と貸金業の違い
このようにファクタリングは融資ではないので、許認可が不要だということがわかりました。しかし、ファクタリング会社と特に貸金業(ノンバンク、消費者金融)はイメージとして似ています。
ファクタリングと金融業、特に消費者金融の貸金業の違いについてまとめてみました。これだけ違うので、両者はまったく別物であり、貸金業の許認可はファクタリングには意味がないことがわかります。
ファクタリング | ノンバンク、消費者金融 | |
---|---|---|
資金調達方法 | 売掛債権の売却 | 融資(利息あり) |
規制する法律 | なし(民法の一般原則のみ) | 貸金業法、利息制限法など |
許認可 | 不要(一部の「在庫ファクタリング」を行う場合古物商許可(許認可)が必要) | 金融庁による貸金業の許認可が必要 |
金利(利息)の制限 | なし(何百%でも合法) | 利息制限法の範囲内(上限20%) |
行政の監視 | 緩い | 非常に厳しい |
反社会的勢力、ヤミ金融 | いる、跳梁跋扈している | 許認可業者ならありえない、いない |
償還請求権 | 基本的にない | ある |
このように、ファクタリングと消費者金融では、大きく異なります。そして、違う部分については許認可の有無によるところも大きいのです。法律や行政にがんじがらめにされている消費者金融は、イメージと比較してもかなり厳格に規制されています。
一方、ファクタリングは規制が緩いため、反社会的勢力を含むさまざまな勢力のフロント企業が紛れ込む可能性があります。
もちろん、まっとうにまじめに営業しているファクタリング会社がほとんどなのですが、許認可がないことで、悪徳業者を完全に排除できないデメリットもあります。
ファクタリング会社が貸金業登録の許認可を求められる例
ファクタリング会社は貸金業の許認可は不要ですが(在庫ファクタリングする場合古物商許可(許認可)が必要)、例外的に貸金業許可を求められることがあります。銀行は実質新規参入できないので、銀行の許認可についてはここでは取り上げません。
例外的な場合とは以下になります。
- 償還請求権がある契約の場合、実質「融資」とみなされることがあり貸金業登録が必要になる
- いわゆる「給与ファクタリング」「給料ファクタリング」は貸金業の許可が必要
- 貸金業登録(許認可)のあるファクタリング会社のほうがリスクが低く(ヤミ金融などは登録しない)対外的な信用を得やすくなる
償還請求権付きファクタリングは融資であり貸金業の許認可が必要
ファクタリングと言いながら、実質的には、売掛債権(売掛金)を担保に、債権の買取をせずにお金を渡しているケースがあります。これはファクタリングではなく「融資」とみなされることがあります。償還請求権付きのファクタリングは、売掛金の回収ができなかった場合、債権者が代わりに返済します。
つまり、そうなると、売掛金を担保にお金を借りるのと同じ建て付けになります。償還請求権のあるファクタリングは、債権譲渡担保契約付きの融資であり、この場合金融関係の法律が適用されますし、貸金業許可も必要になります。利息制限法も適用されるので、ファクタリング手数料を年利換算した場合、最大でも20%以内にしなければ違法です。
実質融資のケースの場合、償還請求権付きの契約になっていて、債権譲渡担保設定契約書も一緒に取り交わすことが多いです。
売掛先から売掛金を回収できなかった場合、依頼主が負担することになります。ファクタリングの特徴である「ノンリコース」がこの契約にはありません。
償還請求権なし(ノンリコース)→ファクタリングの多くのケース
償還請求権あり→ファクタリングではなく融資とみなされる
後者の契約をする場合、貸金業許可が必要になることが多いです。貸金業許可があれば違法ではないですが、なければヤミ金融や反社会的企業の可能性が高いので注意してください。
「給料ファクタリング」も売掛金を担保にした融資であり貸金業許認可が必要
事業者のみなさんには直接関係ないかもしれませんが、ダブルワークで会社員をしている人向けに簡単に説明します。
「毎月〇日に給料をもらう権利」をファクタリングして買い取ってもらうことは、実質給料を担保にした融資(前借り)であるという判決が最高裁で出ています。
令和5年2月20日、最高裁判所第三小法廷は、いわゆる給与ファクタリングと称される取引を貸金業法第2条第1項と出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たると判断しました。
参考:給与ファクタリングを貸金業法等の違反とした最高裁判決を受けての会長声明
よって給料ファクタリング、給与ファクタリングを行うファクタリング会社は、貸金業の許認可が必要になり、なおかつ、手数料を金利換算した場合、利息制限法の上限(20%)以内にしなければなりません。
通常の売掛金の買い取りは給料ファクタリングではありませんので、貸金業の許認可は不要です。万が一、ダブルワークで会社員をしている方が給料ファクタリングで資金調達したい場合ご注意ください。
尤も、この判決以来、多くのファクタリング会社が給料ファクタリングから撤退して、実際には利用できるところは少なくなっています。もし給料ファクタリングできる会社があれば、貸金業の許認可を確認してください。ヤミ金融が破れかぶれで給料ファクタリングをしているかもしれません。
対外的な信用を獲得するため、あえて貸金業の許認可を得る
実際に貸金業に相当する「融資」を行わないファクタリング会社の中でも、あえて貸金業許可(許認可)を得ることがあります。
どこの誰でもファクタリングの開業はできますが、貸金業許認可を得ることで、「どこの誰でもなく行政に認められた業者」であることを証明します。
ファクタリング利用者も、どこの誰かわからないファクタリング会社よりも、貸金業許認可を得ているファクタリング会社の方が信用できます。当然、国がお墨付きを与えているのですから対外的信用度はけた違いに高くなります。
貸金業の許認可を得るためには
- 国家資格である貸金業務取扱主任者の取得、専任
- 純資産5,000万円以上が必要
- 事務所が実在するか、しっかりした店舗があるかチェック
この条件をクリアしなければなりません。怪しい業者がファクタリングしてすぐに証拠を消して逃げる、ということができなくなっています。
ファクタリング利用者は貸金業許認可を得ている会社ならば、最低限の国のお墨付き、審査に通っていると判断できます。誰でも開業できるファクタリングだから、その中で貸金業許認可を得ていることは大きなプラス材料、加点要素になります。
もちろん、この許認可がなくてもしっかりした営業をしているファクタリング会社は多いです。
ひょっとすると、貸金業許認可を得ているファクタリング会社は融資メニューもあり、利用者の都合で使い分けられるかもしれません。ただし、融資ならば、信用情報照会があり、利用歴も信用情報に記載されることは言うまでもありません。
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ファクタリングは融資ではないので、銀行業や貸金業の許認可は不要です。また法制度が追い付いていないため「貸金業許可」のようなものもなく、一部例外(古物商許可が必要)を除いて、許認可不要で誰でも開業できます。
つまり、開業にあたり、歯止めもチェックもないので、ヤミ金融や反社会的勢力、悪徳業者などが紛れ込んでいる可能性は否定できません。
利用者の法的保護も薄いので、ファクタリングを行いたい人は、「自己責任」として、取引するファクタリング会社が信用できるかどうか確認しなければなりません。
手数料が安いからと安易に契約してしまうと、とんでもない条項が入っているかもしれません。しかし、明らかに公序良俗に反するものなど以外は、契約自由の原則が適用され、民法上有効な契約となります。
したがって、評判の良い確かなファクタリング会社を選ぶ必要があります。
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