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債権譲渡禁止特約付きの売掛金もファクタリング可能?法的根拠を徹底解説

ファクタリングについては売掛金があれば利用できると考えられています。

確かに売掛金を持っていれば、創業間もない企業であったとしてもファクタリングは利用可能です。

しかしすべての売掛金がファクタリングに利用できるわけではありません。

実は債権譲渡禁止特約というものがついているものもあるのです。

売掛金に債権譲渡禁止特約が付いている場合には、業者によってはファクタリングの利用はできません。

こちらでは、そもそも債権譲渡禁止特約とは何なのか?

債権譲渡禁止特約は解除できるのか?

債権譲渡禁止特約付きの売掛金でも法改正でファクタリング可能に?

債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングするメリットは?注意点は?

以上のテーマを解説します。

ファクタリングとは?

 
債権譲渡禁止特約とファクタリングの関係を理解するためにも、まずはファクタリングの基本的な仕組みを簡単にみていきましょう。

ファクタリングは債権譲渡取引

 
信用取引を行っている会社は、売掛先に請求することで売掛金を計上します。
売掛金は売掛債権の一種であり、いわば「支払期日に代金を受け取る権利」です。
見方を変えると、「支払期日まで代金の受け取りを待つ義務」であり、さらには「支払期日までの間、売掛先が支払うべき代金を自社が立て替えておく義務」ともいえます。
このように、売掛金には立替金としての性質があるため、資金繰りを圧迫します。
ファクタリングは、売掛金を売却する資金調達方法です。
厳密には、自社が保有する売掛金をファクタリング会社に有償譲渡し、その対価として現金を受け取り、結果的に早期資金化できる仕組みをファクタリングといいます。
このことは、金融庁の定義からも明らかです。

一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。

出典:出典:金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」
金融庁の定義によれば、ファクタリングは「売掛金の売却」というよりも「債権譲渡取引」といったほうが正確です。
手元の売掛金から資金調達することにより、資金繰りの安定性と柔軟性が高まります。
ファクタリングは、企業にとってメリットが多いため政府も推奨しており、近年急速に普及している資金調達方法です。

ファクタリングの法的根拠

 
ファクタリングを利用する際、気になるのが法的根拠です。
結論からいえば、ファクタリングは合法的な資金調達方法であり、違法性は全くありません。
金融庁の定義にもある通り、ファクタリングは債権譲渡取引です。
債権譲渡取引は法律で認められており、ファクタリングの法的根拠もここにあります。
民法第466条をみてみましょう。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

出典:出典:e-Gov法令検索「第四節 債権の譲渡」
この通り、債権譲渡は明らかに認められています。
ファクタリングを含むあらゆる債権譲渡取引は、この法律によって合法です。

ファクタリング業界の現状

 
ファクタリングに対して違法なイメージを抱く人がいる理由はいくつか考えられます。
ひとつは、ファクタリングを装う違法業者の存在です。
ファクタリングが急速に普及している昨今、市場拡大と利用者の増加に比べて、法整備が追い付いていない状況となっています。
例えば、ファクタリングを新規開業する際、登録や免許などは一切不要です。
ここに違法業者が紛れ込む余地があります。
実際に、ファクタリングを装う違法業者が摘発されるケースがしばしばです。
そのような摘発の事例から、「ファクタリング=違法」というイメージを抱く人が少なくありません。
また近年、ファクタリングに関する法律が改正されたことにより、従来の認識が通用しなくなっています。
詳しくは後述しますが、従来は法律で認められていなかった「債権譲渡禁止特約付きの売掛金のファクタリング」が、改正後は合法となりました。
とはいえ、法改正について詳しく知らない人は、未だに「債権譲渡禁止特約付きの売掛金は譲渡できない(違法である)」と考えているケースが多いです。
これも、「ファクタリング=違法(グレー)」というイメージが根強い原因となっています。
しかしながら、ファクタリングは法律で認められており、債権譲渡禁止特約付きの売掛金も譲渡は有効です。
ファクタリングを初めて利用する方も、安心してご利用いただけます。

債権譲渡禁止特約とは?

 
ここからは、ファクタリングと債権譲渡禁止特約の関係について解説します。

売掛金の債権譲渡禁止特約ってなんだ?

簡単に言ってしまえば「この売掛金は第三者に譲渡してはダメ」ということです。

債権譲渡禁止特約とは、債権譲渡における債権の譲渡人と債務者との間で交わされる特約であり、債権譲渡を禁止にするための契約です。

債権譲渡は企業間で行われるのが一般的です。

たとえば、取引先の会社に(譲渡人)に対して未回収の債権(売掛金・貸金)等がある場合、その会社が倒産する前に未回収の債権の代わりに譲渡人が持っている債権を譲渡してもらいます。

当然、譲受人からすると譲渡人から債権を無事に譲受したいと思うはずですが、譲渡人と譲受する債権の債務者との間で債権譲渡禁止特約が交わされている場合、債務者に対して債権の効力を発揮することができません。

ファクタリングも売掛金の売却による譲渡に該当するので、債権譲渡禁止特約が付いている売掛金はファクタリングに利用できない場合があります。

利用しようとしてもファクタリング業者から拒否されてしまうことが多いです。

債権譲渡禁止特約が付いている理由も知りたくはありませんか?

「どのみち支払うのは一緒なのになんで譲渡してはいけないの?」と思ってしまいますよね。

債権譲渡禁止特約は債務管理(買掛金)の管理の手間やコンプライアンスを厳守するうえで、非常に使い勝手のいいものなのです。

大企業になると、支払先はすべてデータベース化されています。

そして、支払はシステム化されています。

それなのに、今まで取引のなかったところに債権が譲渡されていたとなれば、支払先の変更手続きをしなければなりません。

また、債権譲渡を承諾しましたという、債権譲渡承諾書にも印鑑を押印しなければならないケースも出てくるでしょう。

そうなると経理にかかる事務負担がどんどん膨らんでいってしまうのです。

一方で債権の譲受人が反社会的な組織であることを恐れているのです。

ファクタリング業者に関してはヤミ金とほとんど変わりのないような業者も圧倒的に少数ですが紛れ込んでいることは事実です。

これは実際にあった話ですが、ある企業が反社会的勢力に売掛金を売却した上で倒産したことがありました。

そしてその反社会的勢力が売掛金の取り立てに売掛先の会社に来てしまったことがあるのです。

取引先としては寝耳に水の状況であり、大きな問題に発展してしまったことがあったのです。

あとは、支払のミスを防ぐという目的もあります。

売掛債権が譲渡されているのに、間違えて元の債権者に支払をしてしまったら二重支払のリスクが発生します。

そうなれば当然、経理責任者の責任が問われてしまいます。

そのようなことがないようにするためにも債権譲渡禁止特約があるわけです。

ただし債権譲渡禁止特約がつけられている売掛金に関してはそれほど多いわけではありません。

一部の企業が利用しているに過ぎません。

では債権譲渡禁止特約が付いている売掛金をファクタリングするために債権譲渡禁止特約を解除してもらうことは可能なのでしょうか?

債権譲渡禁止特約を解除する方法とは?

解除自体は可能です。

しかしそれは交渉次第なので、必ず解除されるとは限りません。

理解してくれる取引先であれば問題ありませんが、譲渡を絶対に拒否してくる企業もあるのです。

後述の通り、債権譲渡禁止特約付きの売掛金でも法的に譲渡は認められていますが、売掛先が債権譲渡禁止特約の解除を禁止している場合、3社間ファクタリングは諦めるほかありません。

債権譲渡禁止特約を確実に解除していきたいと思うのであれば、取引先を説得しなければなりません。

取引先としては「資金繰りが悪化しているので」という理由だけではうなずきません。

まずは信用を構築することから始めましょう。

信用を構築すると言っても難しいとは思いますが、たとえば長期間取引を継続するのです。

長期間取引している取引先であれば信用できますよね。

1年間や2年間でも十分ですが、それ以上の期間取引をしていれば交渉もしやすくなります。

また交渉の時には自社の経営の健全性をアピールすることも忘れないでください。

損益計算書や貸借対照表などを提出することもおすすめです。

たとえば貸借対照表で負債が少ないということがわかれば、健全な経営をしている、と理解してもらえます。

損益計算書で利益が出ていることが分かれば、経営的にうまくいっている、といことがわかるわけです。

債権譲渡禁止特約の具体例

 
売掛金に対して債権譲渡禁止特約がつけられる場合、売掛先との売買契約やその他の規約などにおいて、債権譲渡禁止特約付きである旨が明記されます。
もちろん、契約の形態、あるいは当事者の関係によって記載内容は異なりますが、「債権譲渡禁止特約付きの契約である」という点では同じです。
ひとつ具体例をみてみましょう。
クレジットカード決済を導入する場合、クレジットカード会社と契約しなければなりません。
このとき、加盟店規約に同意する必要があります。
ほとんどのクレジットカード会社は、加盟店に対して売掛金(クレジットカード債権)の譲渡を禁止しています。
つまり、加盟店規約に債権譲渡禁止特約が含まれているのです。
例えば、クレディセゾンの加盟店規約には以下ように記載されています。

第 14 条(その他遵守事項)
1.加盟店は、以下各号に定める事項を遵守します。
(3)本規約上の地位及び本規約に基づく債権を第三者に譲渡又は担保に供しないこと。

出典:出典:クレディセゾン「セゾンカード加盟店規約」
この規約にある通り、売掛金の譲渡(ファクタリング)や担保利用を一切認めていません。
したがって、クレジットカード債権をファクタリングする際には、債権譲渡禁止特約付きであることを前提として、ファクタリング方式やファクタリング会社を選ぶ必要があります。

ファクタリングの方式

 
ファクタリングには、大きく分けて二つの方式があります。
以下のように、売掛先が関与するかどうかによって、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分かれるのです。

  • 2社間ファクタリング:ファクタリングの利用会社(以下、利用会社)とファクタリング会社の2社間で取引する方式
  • 3社間ファクタリング:利用会社、ファクタリング会社、売掛先の3社間で取引する方式

ファクタリングを利用する際には、いずれかの方式を選ぶ必要があります。
中でも、債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする場合、方式の選び方に注意が必要です。

2社間ファクタリング

 
2社間ファクタリングは、売掛先が一切関与しない方式です。
申し込みから契約・入金まで、全て利用会社とファクタリング会社の2社間で取引します。
売掛先が関与しないことから、手続きが簡単である、スピーディに資金調達できる、売掛先に知られず資金調達できるといったメリットがあります。
特に大きいのは、「売掛先に知られない」というメリットです。
上記の通り、ファクタリングに違法なイメージを抱く人が少なくありません。
売掛先の経営者がファクタリングに悪い印象を抱いている場合、ファクタリングの利用を知られることによって、信用が悪化する恐れがあります。
特に、売買契約に債権譲渡禁止特約が含まれているならば、売掛先から契約違反を問われ、関係悪化する可能性が高いです。
最悪の場合、取引の縮小や停止に至ることも考えられます。
売掛先は、ファクタリングを違法と捉えており、「ファクタリング会社=違法業者」とみなしているのです。
違法業者に売掛金を譲渡するのですから、取引を見直すのも無理からぬことでしょう。
だからこそ、債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする場合、2社間ファクタリングを選ぶのが一般的です。

3社間ファクタリング

 
3社間ファクタリングは、売掛先が必ず関与します。
申し込み前の段階で売掛先の内諾が必要になることも多いです。
また、3社間ファクタリングの手続きでは、売掛金の譲渡後に債権譲渡通知・承諾手続きが必須となります。
もし売掛先の協力が得られなければ、3社間取引が成立せず、資金調達することもできません。
基本的に、売掛金に債権譲渡禁止特約がついている場合、3社間ファクタリングの利用には制限がかかると考えてください。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金でも、法的には譲渡が認められています。
しかし、「法的に譲渡が認められていること」と「売掛先が譲渡に承諾すること」は別問題です。
ファクタリングした売掛金は、債権者と支払先が利用会社からファクタリング会社へと変わります。
売掛金に債権譲渡禁止特約がついていれば、売掛先はファクタリング会社への支払いを拒否することも可能です。
実際に、民法でも債権譲渡禁止特約について以下のように規定しています。

(債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングした場合において)譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。

出典:出典:e-Gov法令検索「第四節 債権の譲渡」
ここに明記されている通り、売掛先は債権譲渡禁止特約があることを理由に、ファクタリング会社への支払いを拒否できるのです。
ファクタリング会社としては、そのような支払トラブルは避けなければなりません。
だからこそ、債権譲渡禁止特約付きの売掛金は3社間ファクタリングに利用できない場合があるのです。
したがって、債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングするならば、2社間ファクタリングを選ぶのが基本となります。

法改正で債権譲渡禁止特約付きでもファクタリング可能に

 
政府は売掛債権の活用を推奨しており、法整備に取り組んでいます。
実際に、2020年4月1日に改正民法が施行され、債権譲渡禁止特約付きの売掛金のファクタリングも合法となりました。
債権法が改正されるのは実に120年ぶりのことです。
政府がファクタリングの普及に力を入れていることがよくわかります。
この法改正について、詳しくみていきましょう。

債権譲渡禁止特約に関する従来の法律

 
改正法が施行される以前も、売掛金の譲渡は法的に認められていました。
ただし、債権譲渡禁止特約がついている場合は例外です。
改正前、民法第466条には以下のように記載されていました。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

出典:出典:法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について 新旧対照条文」
注目すべきは第2項です。
売掛金に債権譲渡禁止特約がついていることは、当事者(売掛先)が反対の意思を表示していることにほかなりません。
改正前の条文では、売掛金の譲受人が「善意の第三者(事情を知らず、事情を知らないことについて落ち度が無い第三者)」である場合を除き、債権譲渡禁止特約付きの売掛金は譲渡できないとしています。
これにより、ファクタリングも認められません。
なぜならば、譲受人であるファクタリング会社は善意の第三者ではないからです。
ファクタリングというビジネスを行っている以上、ファクタリング会社は利用会社と売掛先の関係を正確に把握すべきです。
仮に、利用会社が債権譲渡禁止特約について申告していなかったとしても、「事情を知らないことについて落ち度がない第三者」とはいえません。
以上の理由により、法改正以前は債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングできなかったのです。

改正後の債権譲渡禁止特約の取り扱い

 
法改正によって、どのように変化したのでしょうか。
改正後の条文をみてみましょう。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

出典:出典:e-Gov法令検索「第四節 債権の譲渡」
以下の通り、改正前と改正後では第2項の記載が大きく異なります。

  • 改正前・・・当事者が反対の意思を表示した場合(債権譲渡禁止特約付きの場合)には、債権譲渡(ファクタリング)は認められない。
  • 改正後・・・当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたとき(債権譲渡禁止特約付きの場合)でも、債権譲渡(ファクタリング)は認められる。

つまり、この改正によって債権譲渡禁止特約付きの売掛金でも譲渡可能となり、ファクタリングできるようになったということです。

改正後も売掛先への配慮は必要

 
ただし、法改正後も売掛先への配慮は欠かせません。
3社間ファクタリングの解説でも述べた通り、「債権譲渡禁止特約付きでも譲渡できること」と「売掛先が譲渡を認めること」は別問題です。
法改正によって、債権譲渡禁止特約による制限が緩和されたとはいえ、問題が完全に解消されたわけではありません。
今回の改正は、債権譲渡禁止特約の制限を緩和し、債権者側の債権活用を促すと同時に、債務者側の権利にも配慮した内容となっています。
現在でも、債権譲渡禁止特約付きの売掛金を譲渡する場合、「債権譲渡禁止特約の制限を受けずにファクタリングしたい利用会社」と「債権譲渡禁止特約を理由にファクタリングを認めたくない売掛先」の間でトラブルになる可能性はあります。
だからこそ、「債権譲渡禁止特約付きでも合法だから」と安易に考えるのではなく、売掛先にも配慮したうえで、ファクタリングの方式や業者を選ぶことが大切です。

債権譲渡禁止特約付きの売掛金を活用するなら融資?ファクタリング?

 
法改正によって債権譲渡禁止特約の制限が緩和された背景には、政府の方針があります。
この点を意識することで、ファクタリング普及の流れを知るだけではなく、今後の流れを予測することにもつながります。

政府の方針

 
日本国憲法では、国会の地位を以下のように定めています。

第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

出典:出典:衆議院「国会関係法規-日本国憲法」
つまり、法律を作っているのは国会ということです。
具体的には、内閣または議員が法律案や改正案を作成・提出し、国会で審議したのちに制定されます。
もちろん、債権法を改正し、債権譲渡禁止特約の制限を緩和したのも国会です。
ここに、「債権譲渡禁止特約の制限を緩和し、企業の債権活用を促す」という政府の方針が表れています。
日本の企業の99.7%を占めるのは中小企業であり、中小企業こそが日本経済を支えているといっても過言ではありません。
中小企業経営の安定は日本経済の安定に直結するため、政府は中小企業の経営環境の改善を目指し、様々な取り組みを実施しています。
日本の中小企業において、特に問題視されているのが銀行融資への依存です。
特に、バブル期に形成された「不動産担保ありき」の融資形態は未だに根強く、中小企業の資金調達に大きな禍根を残しています。
銀行融資に依存している会社の資金繰りは、常に危険と隣り合わせです。
経営や景気の悪化によって銀行から融資を受けられなくなった場合、資金繰りに行き詰まり、倒産する危険があります。
銀行融資への依存を緩和するための方策として、政府が打ち出したのが「売掛債権の利用促進」です。
これについて、経済産業省では以下のように明言しています。

経済産業省中小企業庁では、中小企業者が不動産担保に過度に依存せずに資金調達ができるよう、売掛債権担保融資保証制度を創設し、普及を進めています。
売掛債権の利用促進は国の施策です。本制度の普及、利用促進にご協力下さい。

出典:出典:中小企業庁「売掛債権の利用促進について」

債権譲渡禁止特約と売掛債権担保融資

 
債権譲渡禁止特約付きの売掛金を活用する方法のひとつとして、政府は売掛債権担保融資を推奨しています。
売掛債権担保融資は、売掛金や受取手形などの売掛債権を担保として活用し、融資を受ける仕組みです。
一般的に、担保付融資といえば不動産担保融資を指しますが、担保資産は不動産だけではありません。
そもそも、担保の目的は、融資先が経営悪化などによって債務不履行に陥った場合に、貸倒損失を回避することにあります。
したがって、担保価値がある資産ならば担保付融資は成り立つわけです。
しかしながら、日本の融資制度では不動産担保に頼る状況が続いてきました。
売掛債権を担保とする融資制度が普及すれば、不動産担保融資への依存も徐々に解消されるはずです。
法改正前は債権譲渡禁止特約付きの売掛金の譲渡が認められなかったため、売掛債権担保融資の普及の妨げになっていました。
法改正により、債権譲渡禁止特約に関係なく譲渡が認められるようになり、債権譲渡禁止特約付きの売掛金の担保活用も可能となりました。
政府が法改正に踏み切った背景には、債権譲渡禁止特約に関する制限を緩和し、売掛債権担保融資を普及させる狙いがあります。

債権譲渡禁止特約とファクタリング

 
経済産業省は、特に売掛債権担保融資について述べていますが、売掛債権担保融資に限ったことではありません。
政府が目指しているのは、「銀行融資依存の緩和」であり、「売掛債権担保融資の普及」は方策のひとつに過ぎないのです。
確かに、売掛債権担保融資が普及することで、不動産担保融資や信用保証協会保証付融資の割合は減少するでしょう。
しかし、銀行融資依存の根本的な解決にはつながりません。
なぜならば、売掛債権担保融資も結局は融資の一種であり、銀行から資金調達しているという点では不動産担保融資と変わらないからです。
企業の資金調達方法のうち、銀行融資そのものの割合を減らすならば、銀行に依存した金融システムからの脱却が不可欠です。
だからこそ、政府はファクタリングの普及促進にも取り組んでいます。
ファクタリングで売却する売掛金は内部資産であり、内部資産によって資金を調達することを「内部資金調達」といいます。
これに対し、不動産や売掛債権を担保とする融資は、銀行などの外部機関から調達する「外部資金調達」です。
銀行融資への依存を緩和するという意味では、外部資金調達である売掛債権担保融資よりも、内部資金調達であるファクタリングのほうが目的に適っています。
政府は、売掛債権担保融資とファクタリングの二本柱で売掛債権の活用促進に取り組んでおり、法改正によって債権譲渡禁止特約の制限も取り除きました。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金を担保利用したり、売却したりすることによって資金を調達できるようになったわけです。
しかし、両者の普及の様子を比較すると、ファクタリングが急速に普及しているのに対し、売掛債権担保融資の普及は遅々として進みません。
これは、銀行が保守的な組織であり、伝統的な不動産担保へのこだわりが強いためです。
法改正による債権譲渡禁止特約の制限の緩和、売掛債権担保融資の促進といった流れは銀行にとって革新的であるため、普及には時間を要するでしょう。
一方、ファクタリング会社の大多数は、銀行やノンバンクの系列に属さない独立系のファクタリング会社です。
「ファクタリング」という新しい仕組みを以て開業した業者がほとんどですから、銀行のように保守的な気質がなく、社会の変化にも柔軟に対応できます。
実際に、法改正以降、債権譲渡禁止特約付きの売掛金に対応するファクタリング会社は着実に増えています。
現時点では、債権譲渡禁止特約付きの売掛金に非対応のファクタリング会社も少なくありません。
しかし、ファクタリング業界のトレンドとしては、債権譲渡禁止特約への柔軟性・対応力は高まる一方です。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金を活用する場合、売掛債権担保融資よりもファクタリングの方が資金調達しやすいことは間違いないでしょう。

債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングするメリット

 
債権法が改正され、債権譲渡禁止特約付きの売掛金でも譲渡できるようになった今、ファクタリングによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。
ここでは、債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングするメリットを紹介します。

銀行融資よりも審査に通りやすい

 
債権譲渡禁止特約付きの売掛金のファクタリングは、資金調達のしやすさ、審査の通りやすさが大きなメリットです。
特に、銀行融資と比較した場合、審査の通りやすさは比較になりません。
プロパー融資はもちろんのこと、売掛債権担保融資と比較しても、ファクタリングのほうが審査に通りやすいといえます。
その理由は、銀行融資とファクタリングの審査基準の違いにあります。

銀行融資の審査基準

 
銀行融資の審査基準は「融資先」です。
決算書その他の書類から融資先の経営状況を把握し、業績の推移から返済力を測ります。
その結果、現状と将来(返済期間中)の返済力に問題がない、つまり貸倒れリスクが低いと判断した場合に限って融資を実行するのです。
したがって、業績や財務に問題がある会社や、信頼できる実績がない会社には融資しません。
例えば、業績が悪化している会社、決算が赤字の会社、債務超過に陥っている会社、業歴が短い会社(過去の推移から安定性を測れない会社)などは審査に落ちます。

ファクタリングの審査基準

 
ファクタリングの審査基準は、利用会社ではなく売掛先です。
債権譲渡禁止特約の有無に関係なく、ファクタリングであれば売掛先を基準に審査します。
このことは、ファクタリングのビジネスモデルを考えるとよくわかります。
ファクタリングは、利用会社の売掛金を額面金額よりも割安に買い取り、支払期日に売掛先から満額回収することで差額を儲けるビジネスです。
利益を得るためには、利用会社の経営状況よりも売掛先の支払い能力のほうがはるかに重要です。
売掛先の支払い能力に問題がなければ、売掛金に債権譲渡禁止特約がついているかどうかはあまり問題になりません。
したがって、利用会社が経営に問題を抱えていても、売掛先の支払い能力に問題がなければ審査に通ります。
「連続赤字」「債務超過」「税金滞納」「業歴1年未満」「リスケ中」といった場合、銀行融資で調達するのはほぼ不可能ですが、ファクタリングならば調達可能です。

債権譲渡禁止特約付きの売掛金は信用が高い

 
債権譲渡禁止特約付きの売掛金は、通常の売掛金よりもファクタリング審査に通りやすいといえます。
というのも、債権譲渡禁止特約を設定する売掛先は、信用に優れている場合が多いためです。
「売掛金の債権譲渡禁止特約ってなんだ?」でも解説したように、債権譲渡禁止特約は「売掛金・支払先の管理の効率化」や「コンプライアンスの厳守」などを目的としています。
基本的に、このような取り組みは余力がある会社が行うものです。
実際、債権譲渡禁止特約を設定する売掛先は経営の健全性が高く、有名企業や大企業ほど債権譲渡禁止特約を求める傾向があります。
つまり、債権譲渡禁止特約付きの売掛金は、支払人である売掛先の信用が高いということです。
上記の通り、ファクタリング審査では売掛金・売掛先の信用を重視します。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金は「優良債権」と判断される場合が多く、審査に通りやすいといえます。
クレジットカード債権は、特に審査に通りやすいです。
クレジットカードの加盟店規約には債権譲渡禁止特約が含まれるため、大抵は「クレジットカード債権=債権譲渡禁止特約付き」となります。
クレジットカード債権の支払人(売掛先)はクレジットカード会社であり、よほどのことがなければ倒産することはありません。
ファクタリング会社にとって、債権譲渡禁止特約付きのクレジットカード債権は、ほぼノーリスクで利益を得られる「超優良債権」といえます。
したがって、債権譲渡禁止特約に対応しているファクタリング会社ならば、審査に落ちる可能性は低いです。

売掛債権担保融資とファクタリングの比較

 
ファクタリングは、売掛債権担保融資と比較しても審査に通りやすいです。
売掛債権担保融資でも、債権譲渡禁止特約付きの売掛金を活用できますが、あくまでも「融資の一種」という点に注意しなければなりません。
売掛債権を担保にするとはいえ、融資である以上は返済義務を伴い、融資先を基準に審査します。
審査の結果、経営や返済力に問題があるとみなされた場合、審査に落ちる可能性が高いです。
特に、すでに借入金の返済に遅れている会社や、リスケジュール中の会社、税金を滞納している会社などは、たとえ売掛債権担保融資でも資金調達はできません。
つまり、債権譲渡禁止特約付きの売掛金の担保活用は、仕組み的には可能であっても、現実的には不可能という場合があるのです。
ファクタリングには、このような問題がありません。
ファクタリングは借り入れではなく、売掛金の譲渡・売却です。
このため、売掛先の支払い能力に問題がなければ審査に通ります。
つまり、債権譲渡禁止特約付きの売掛金のファクタリングは、仕組み的にも、現実的にも、極めて実現性が高い資金調達方法なのです。
通常の銀行融資で審査に落ちた場合、同じ理由によって売掛債権担保融資の審査に落ちる可能性が高いため、ファクタリングでの調達をおすすめします。

無担保・無保証で資金調達できる

 
ファクタリングは、無担保・無保証で利用できます。
これも、債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする大きなメリットです。

売掛債権担保融資は有担保・有保証

 
売掛債権担保融資は、売掛債権を担保として金融機関が融資を行う際、信用保証協会が債務保証を行う制度です。
つまり、債権譲渡禁止特約付きの売掛金を担保利用する場合、有担保・有保証での資金調達となります。
担保付融資のデメリットは、担保評価によって融資可能額が変わることです。
ペパーダイン大学の調査(2011年)によれば、売掛債権の担保掛目中間値は、実行ベース・上限ともに85%となっています。
不動産担保の中間値が、実行ベース55%・上限70%であるのに比べると、かなり良好な水準です。
とはいえ、掛け目によって資金調達効率が下がることは避けられません。
例えば、債権譲渡禁止特約付きの売掛金を担保利用する場合、額面金額1000万円・掛け目85%であれば融資上限額は850万円となります。
85%という数値は上限水準であり、売掛金によってはこれを下回ることも多いです。
実際に、担保掛目が80%以下になるケースも少なくありません。
掛け目率が75%の場合、額面金額1000万円に対して活用できる部分は750万円となり、残る250万円の部分は資金調達に活用できなくなります。
このように、担保評価によって資金調達効率が低下するのが売掛債権担保融資のデメリットです。
もちろん、融資期間中に担保価値が下落することもあり得ます。
例えば、当初は掛け目率85%で売掛債権担保融資を利用したものの、後に売掛先の経営が悪化し、掛け目率が80%、75%と低下することがあるのです。
その結果、担保評価額が融資実行額を割り込んだ場合、追加融資が困難となるだけではなく、追加担保の提供を求められます。
不動産担保であれば、不動産の築年数や市場動向などを材料に、担保価値の変動を予測できます。
しかし、債権譲渡禁止特約付きの売掛金を担保とする場合、将来的な担保価値を予測する材料が少なく、不測の事態によって下落を招くことも多いです。
これも、銀行が売掛債権担保融資に消極的な理由といえます。
いくら債権譲渡禁止特約付きの売掛金を活用できるとはいえ、売掛債権担保融資は実際の資金調達には利用しにくいのが現状です。

ファクタリングは無担保・無保証

 
売掛債権担保融資が有担保・有保証であるのに対し、ファクタリングは無担保・無保証です。
売掛金の性質に限らず「原則的に無担保・無保証」ですから、債権譲渡禁止特約がついていても、担保・保証は一切不要です。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする場合、資金調達効率は手数料率に影響されます。
額面金額に対して10%の手数料を支払う場合、額面金額1000万円のうち、資金調達に活用できるのは900万円です。
もちろん、売掛金によっては手数料率が高くなり、資金調達効率が低下することもあります。
しかし、後述の通り、債権譲渡禁止特約付きの売掛金は低コストでファクタリングできることも多いです。
したがって、売掛債権担保融資よりもファクタリングの方が効率よく資金調達できます。

利便性が高い

 
債権譲渡禁止特約付きの売掛金は、利便性の高さにも優れています。
これは、主に「手続き」「必要書類」「オンライン活用」の二点によるものです。

手続きが簡単

 
ファクタリングは、簡単な手続きで調達できます。
大まかにいえば、ファクタリングの手続きは「申し込み→審査→契約→入金」だけです。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする場合でも、基本的な流れは同じです。
銀行融資ならば、このように簡単にはいきません。
銀行からスムーズに借り入れるには、試算表や決算書などの資料を積極的に提出し、普段から銀行と接触しておくことが重要です。
普段から十分に根回しをしたうえで、いざ融資が必要になれば融資担当者や支店長と面談を行い、様々な手続きを経たうえでようやく融資実行に至ります。
売掛債権担保融資の手続きも同様です。
売掛金が債権譲渡禁止特約付きであれば、手続きが複雑になることも考えられます。
もちろん、複雑な手続きを経て、無事に資金を調達できれば問題ありません。
しかし実際には、複雑な手続きを踏んだ結果、審査に落ちて資金を調達できず、資金繰りがショートする会社も多いのです。
また、手続きが複雑な資金調達方法ほど柔軟性に欠け、機動性を求められるシーンでは役に立ちません。
その点、ファクタリングの手続きは簡単であり、債権譲渡禁止特約付きでもスムーズに資金調達できます。

必要書類が少ない

 
債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする場合、わずかな書類だけで資金調達できます。
銀行から融資を受けるには、企業概要書、決算書、試算表、資金繰り表、事業計画書、銀行取引一覧表、商業登記簿謄本など、たくさんの書類が必要です。
設備資金を借り入れるならば、導入設備に関する書類も作成しなければなりません。
もちろん、債権譲渡禁止特約付きの売掛金を担保活用する場合、売掛金の成因資料のほか、債権譲渡禁止特約について確認するための書類(契約書や規約書など)も求められるでしょう。
銀行融資は、必要書類を揃えるだけでも大変なことです。
これに対し、ファクタリングは手元の書類だけで申し込めるのが基本です。
一例として、債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする場合、No.1では以下の4点をご提出いただきます。

  • 直近3ヶ月の取引入金が確認できる書類(入金通帳・当座通帳・当座照合表)
  • 決算書直近2期分(勘定科目明細付で税務申告済みの捺印のあるもの)
  • 成因資料(請求書・発注書・納品書など)
  • 債権譲渡禁止特約に関する確認書類(取引先企業との基本契約書など)

以上の書類は、あらためて作成・取得の必要がなく、すぐに準備できるものばかりです。
No.1をはじめ、優良ファクタリング会社では手元の書類だけで利用できることが多いです。
書類の準備に手間がかからないため、資金を調達したいタイミングで簡単に利用できます。

オンラインで簡単にファクタリング

 
近年、ファクタリング業界でもオンライン化が進んでいます。
ファクタリング会社によって、「手続きの一部をオンライン対応」「すべての手続きをオンライン対応」など、オンライン化の程度は様々です
一部のみではなく、すべての手続きをオンラインで完結できる仕組みを「オンラインファクタリング」といいます。
ただし、オンラインファクタリングは、2社間取引をオンライン化したものであり、2社間ファクタリングの一種です。
申し込み、書類提出、審査、契約など、一貫してオンラインで手続きします。
オンラインファクタリングの登場により、ファクタリングの利便性は大幅に向上しました。
従来の(オンライン非対応の)ファクタリングは、契約時に対面や郵送が必要となります。
このため、移動の負担に耐えられない会社や、郵送手続きに時間をかけられない会社には、決して利便性が高いとはいえません。
オンラインファクタリングではクラウド契約を用いるため、対面・郵送は一切不要です。
例えば、No.1のオンラインファクタリングサービスでは、弁護士ドットコム株式会社のクラウド契約システム「CLOUDSIGN」を利用しています。
これにより、日本全国どこからでも、オンラインで簡単にファクタリングできるようになりました。
もちろん、債権譲渡禁止特約付きの売掛金も、オンラインファクタリングの対象です。
ただし、オンラインファクタリングを導入している業者は一部に限られるほか、債権譲渡禁止特約に対応していないファクタリング会社もまだまだ多いです。
したがって「債権譲渡禁止特約に対応」かつ「オンラインファクタリングに対応」という業者が少ないのが難点といえます。
No.1のオンラインファクタリングは、債権譲渡禁止特約付きの売掛金にも対応しています。
お気軽にご相談ください。

好条件でファクタリングできる

 
債権譲渡禁止特約がついている売掛金は、通常のファクタリングよりも好条件でファクタリングできることが多いです。
コスト面を中心に、ファクタリング条件のメリットをみていきましょう。

ファクタリング手数料の相場

 
一般的に、ファクタリングは他の資金調達方法よりもコストが高いといわれます。
銀行融資の主な調達コストは支払利息であり、目安は年2~3%程度です。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金を担保利用する場合、金利が下がります。
基本的に、銀行の貸付金利は貸倒れリスクに連動します。
売掛金担保によって保全が充足すれば、金利を引き下げてもリスクとリターンのバランスが取れるというわけです。
これに対し、ファクタリングの手数料は、額面金額に対する手数料率で考えます。
方式別の手数料率の相場は以下の通りです。

  • 2社間ファクタリング:額面金額の10~30%
  • 3社間ファクタリング:額面金額の1~10%
  • オンラインファクタリング:額面金額の10%以下

この手数料率を年利に換算すると、銀行融資よりもはるかに高くなります。
債権譲渡禁止特約付き・1ヶ月後回収予定・手数料率10%と仮定した場合、年利換算では120%になります。
これが、「ファクタリングはコストが高い」といわれる理由です。

債権譲渡禁止特約で手数料が安くなる

 
しかし、単なる年利換算だけで判断するのは早計です。
まず、上記の手数料相場はあまり参考になりません。
ファクタリングの歴史が浅い現在、スタンダードなファクタリングの形が確立されておらず、手数料率に関する規制もない状況です。
手数料率を自由に設定できるため、業者によって手数料率に大きな差があり、「10~30%」といった大雑把な数値を、仮に相場としているにすぎません。
実際の手数料率は、審査結果によって変わります。
手数料率を左右するのは、売掛金の内容と売掛先の信用です。
売掛金の内容とは、主に額面金額や支払期日のことであり、これによってファクタリング会社の収益性が変わってきます。
収益性の低い売掛金は手数料率を引き上げ、収益性の高い売掛先は手数料率を引き下げることでバランスを取っているのです。
次に重要なのが売掛先の信用です。
ファクタリングは売掛先を基準に審査し、売掛先に問題があれば手数料率を引き上げ、売掛先に問題がなければ手数料率を引き下げます。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金は、有名企業や大企業が売掛先となるケースが多いです。
債権譲渡禁止特約付きのクレジットカード債権ならば、クレジットカード会社が売掛先となります。
つまり、「債権譲渡禁止特約付き=売掛先の信用力が高い」と判断できる場合が多いのです。
もちろん、ファクタリング会社は手数料率を抑えてでも買い取りたいと考えます。
実際に、債権譲渡禁止特約がついていることにより、通常の売掛金よりも手数料が安くなることが珍しくありません。

ファクタリングは低コスト

 
以上の内容を踏まえて、債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングするコストを具体的に考えてみましょう。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金を手数料率5%でファクタリングする場合、1000万円の資金調達に必要な額面金額は約1053万円です。
1053万円分の売掛金をファクタリング会社に譲渡し、額面金額の5%相当の手数料を差し引いた金額(1000万3500円)が入金されます。
ファクタリングの手数料は入金時の一括払いですから、その後費用が発生することはありません。
したがって、ファクタリングに必要なトータルコストは52万6500円です。
次に、債権譲渡禁止特約付きの売掛金を担保利用する場合のコストをみてみましょう。
売掛債権担保融資には信用保証協会の保証が付くため、保証料を支払わなければなりません。
借入期間を5年間・金利を年2%・保証料率を借入総額の1.5%とした場合、1000万円の資金調達にかかる金額は66万6680円です(借入時に保証料として15万円、5年間の支払利息の総額が51万6680円)。
どちらも、調達額は1000万円であり、債権譲渡禁止特約付きの売掛金を活用している点でも同じです。
しかし、調達コストを比較すると、ファクタリングは52万6500円、売掛債権担保融資は66万6680円となり、ファクタリングの方が安いことが分かります。
実際のコストはケースバイケースで異なりますが、少なくともファクタリングのコストが安いことは分かるでしょう。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金のファクタリングは、銀行融資にも劣らない、低コストの資金調達方法といえます。

スピーディに資金調達できる

 
ファクタリングは、資金調達スピードに優れています。
ファクタリング方式別の目安は以下の通りです。

  • 2社間ファクタリング:最短即日
  • 3社間ファクタリング: 最短1週間程度
  • オンラインファクタリング:最短数時間

債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする場合、3社間ファクタリングの利用は現実的ではありません。
2社間ファクタリングでの売却となるため、資金調達スピードは最短数時間~即日が目安となります。
これは、他の資金調達方法と比較して圧倒的にスピーディです。
銀行融資ならば、融資実行までに最短でも数週間、通常は1ヶ月程度を要します。
公的金融機関から融資を受ける場合、1ヶ月以上を要するケースも珍しくありません。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金を担保利用する売掛債権担保融資も、基本的には数週間~1ヶ月を要すると考えてよいでしょう。
手形割引やビジネスローンはスピーディといわれますが、数日~1週間程度を要するケースが大半です。
このように比較すると、ファクタリングが資金調達スピードに優れていることは明らかです。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングすれば、緊急の資金調達にも役立ちます。
資金ショートが迫っているシーンなどでは、特に力を発揮してくれるでしょう。
No.1でも、債権譲渡禁止特約の有無に関係なく、通常の2社間ファクタリングは最短即日、オンラインファクタリングは最短60分入金の実績が多数ございます。

資金繰りを改善できる

 
ファクタリングは、資金繰り改善にも効果的です。
特に、債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする場合、通常のファクタリングよりも高い資金繰り改善効果が期待できます。

売掛金と資金繰りの関係

 
ファクタリングの資金繰り改善効果を理解するには、資金繰りの原則を知る必要があります。
資金繰りの原則とは、「売掛金が増加すると資金繰りが悪化する」「売掛金が減少すると資金繰りが改善する」というものです。
売掛金には立替金としての側面があるため、「売掛金の増加=立替負担の増加」「売掛金の減少=立替負担の減少」と考えると、資金繰りとの関係がよくわかると思います。
手元の売掛金が100万円から200万円に増加すれば、立替負担も200万円に増加します。
実際の資金繰りでいえば、「代金100万円がなかなか入ってこない」という状況から「代金200万円がなかなか入ってこない」という状況になり、資金繰りは悪化するのです。
もっとも、この場合の資金繰り改善は容易です。
売掛金の増加によって資金繰りが悪化しているならば、売掛金を減らすことによって資金繰りを改善できます。

ファクタリングで資金繰りを改善

 
しかし、売掛金に債権譲渡禁止特約がついている場合、理論的には簡単であっても、現実的には簡単ではありません。
売掛先との関係悪化が悪化するリスクがあるため、売掛金の譲渡によって資金繰りを改善することは何かと難しいのです。
そこで役立つのがファクタリングです。
ファクタリング会社の中には、債権譲渡禁止特約に対応している業者もあります。
2社間ファクタリングならば売掛先が関与しないため、債権譲渡禁止特約がついていても安心してファクタリングできます。
ファクタリングには償還請求権がなく、万が一売掛金が回収できなくなっても、利用会社は何ら責任を負いません。
つまり、債権譲渡禁止特約付きの売掛金を自社から完全に切り離し、手元の売掛金を減らすことができます。
ファクタリングによって減少した売掛金の分だけ、資金繰りが改善するというわけです。

資金繰り改善の具体例

 
債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングした場合の資金繰り改善効果について、具体的にみてみましょう。
債権譲渡禁止特約の中でも、特に厄介なのがクレジットカードの加盟店規約です。
クレジットカード会社にもよりますが、クレジットカード債権は回収サイトが長期化する傾向があります。
クレジットカード債権の一般的な回収サイクルは、以下の2パターンが主流です。

  • 顧客が購入した日の同月末に売上を確定し、翌月末に入金
  • 顧客が購入した日の翌月末に売上を確定し、翌々月末に入金

売上確定日を起点とした場合、回収サイトはどちらも1ヶ月です。
しかし、顧客が購入する日の時点で仕入れその他の経費が掛かっているわけですから、現実的な資金繰りをベースに考えると、売掛金による資金繰りへの負担が「回収サイト2~3ヶ月相当」へ増加することもあります。
債権譲渡禁止特約を忠実に守っていると、資金繰り改善は困難です。
売上が確定し、債権譲渡禁止特約付きのクレジットカード債権が発生した直後にファクタリングすれば、資金繰り負担を大幅に軽減できます。
具体例で考えてみましょう。

    1. 毎月100万円分のクレジットカード決済
    2. 翌月末に債権譲渡禁止特約付きのクレジットカード債権が発生
    3. 翌々月末に入金

この場合、実質的な回収サイトは2ヶ月、月あたりの売掛金平残は200万円となります。
ファクタリングによって、

    1. 毎月100万円分のクレジットカード決済
    2. 翌月末に債権譲渡禁止特約付きのクレジットカード債権が発生
    3. 翌々月初めにファクタリングで早期回収

という流れに変えた場合、実質的な回収サイトを約1ヶ月に短縮でき、月あたりの売掛金平残も100万円に減少します。
債権譲渡禁止特約によって資金繰りが悪化している会社には、ファクタリングが効果的です。

債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする際の注意点

 
基本的に、債権譲渡禁止特約は資金繰りに悪影響を与えます。
ファクタリングによって債権譲渡禁止特約の影響を軽減し、様々なメリットが得られるわけですが、メリットばかりではありません。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする際、特に注意すべきは「手数料負担」と「売掛先への配慮」です。

手数料負担に注意

 
債権譲渡禁止特約の有無に関係なく、ファクタリングには必ず手数料がかかります。
支払期日を待って回収すれば満額得られたはずの利益が、手数料の分だけ目減りするのです。
利益率が低い会社では、手数料負担によって利益がほとんどなくなってしまったり、赤字になってしまったりすることがあります。
その結果、却って資金繰りが悪化するケースも少なくありません。
もっとも、メリットでも解説したように、債権譲渡禁止特約付きの売掛金は好条件でファクタリングできることも多いです。
その意味では、他の売掛金よりも手数料の負担は軽微といえます。
注意したいのは、債権譲渡禁止特約付きのクレジットカード債権をファクタリングする場合です。
クレジットカード決済を導入している会社は「クレジットカード会社への決済手数料」と「ファクタリング会社へのファクタリング手数料」を二重に支払うこととなります。
クレジットカード会社に支払う手数料は業種や規模によって異なり、例えばコンビニでは1%程度、飲食店では5%程度と差があります。
決済手数料は、加盟店規約によって価格への転嫁が禁止されているため、必ず加盟店が負担しなければなりません。
仮に、クレジットカード決済の売上が100万円、決済手数料が3%であるとすれば、締め日に確定する債権譲渡禁止特約付きのクレジットカード債権は97万円です。
このクレジットカード債権を手数料率5%でファクタリングした場合、ファクタリング会社から入金される金額は92万1500円となります。
つまり、調達コストの総額は7万8500円となり、売上に対して7.85%のコストがかかるわけです。
同じ債権譲渡禁止特約付きでも、クレジットカード債権でなければ決済手数料がかからず、ファクタリング手数料の5万円だけで調達できます。
債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする際には、調達コストの総額をよく考えて、負担に耐えられない場合には利用を控えるべきです。

売掛先への配慮

 
債権譲渡禁止特約は、本質的に買い手に有利なものです。
売り手が買い手に債権譲渡禁止特約を要求することはありません。
つまり、債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングすることは、買い手の優位性を失わせる行為です。
したがって、ファクタリングの利用会社は、売掛先への配慮が必要となります。

3社間ファクタリングは難しい

 
債権譲渡禁止特約付きの売掛金をファクタリングする場合、3社間ファクタリングは難しいと考えてください。
3社間ファクタリングは、売掛先が必ず関与する方式です。
売掛先の要求で債権譲渡禁止特約を設定している以上、売掛先に債権譲渡の承諾を求めることは難しいでしょう。
ファクタリングするためには、売掛先を説得するところから始めなければならず、調達に多大な手間がかかります。
債権譲渡禁止特約に関する実態調査をみても、債権譲渡禁止特約によって支障を来す例が少なくありません。
一般社団法人流動化・証券化協議会会員(7社)による回答が参考になります。

1.譲渡禁止特約によって,債権譲渡による資金調達に支障が生じているとお考えでしょうか。

(回答)
支障が生じていることを肯定する方向の回答 6社
支障が生じていることを否定する方向の回答 1社

出典:出典:民法(債権関係)部会参考資料
このように、7社中6社が「債権譲渡禁止特約によって資金調達に支障が生じている(ファクタリングなど、売掛金の譲渡による資金調達ができなくなっている)」と回答しています。

売掛先が債権譲渡を拒否するケースも

 
もちろん、「慣例的に債権譲渡禁止特約をつけている」という売掛先であれば、ファクタリングに理解を示してくれることもあります。
その場合、債権譲渡禁止特約の解除を求めたり、あるいは債権譲渡禁止特約付きのままファクタリングを認めてもらったりすることによって、3社間ファクタリングが可能となります。
しかしながら、債権譲渡禁止特約を理由に、譲渡を拒否する売掛先が多いのが現状です。
一般社団法人流動化・証券化協議会会員(7社)の回答は以下の通りです。

3.譲渡禁止特約付き債権を譲渡しようとしたものの,債務者が承諾しなかったために,譲渡禁止特約付き債権を譲渡できなかったという事例はありますか。

(回答)
ある 5社
ない 2社

出典:出典:民法(債権関係)部会参考資料
売掛先に3社間ファクタリングの利用を相談したものの、債権譲渡禁止特約を理由に拒否されてしまうと、事態は深刻です。
資金を調達できず、「売掛先の心証を害する」という悪い結果だけが残ります。
そのリスクを避けるためにも、債権譲渡禁止特約付きの売掛金は2社間ファクタリングを選んだ方が安全です。

クレジットカード加盟店は特に注意

 
クレジットカード債権をファクタリングするならば、2社間ファクタリング一択と考えてください。
クレジットカード会社は、すべての加盟店に対して一律に債権譲渡禁止特約を設定しています。
契約は当事者間の合意によって決まるものですが、規約はサービス提供者から利用者に対して一方的に同意を求めるものです。
したがって、加盟店規約に「債権譲渡禁止特約」と定められている以上、加盟店がクレジットカード会社に対して交渉する余地はありません。
仮に、個々の加盟店の交渉に応じて債権譲渡禁止特約を解除したり、3社間ファクタリングに協力したりすれば、クレジットカード会社は膨大な事務負担を負うこととなります。
このように考えると、債権譲渡禁止特約付きのクレジットカード債権をファクタリングする場合、3社間ファクタリングは100%NGと考えるべきです。
3社間ファクタリングを利用し、債権譲渡禁止特約によって規約違反を問われた場合、加盟店契約を解除される恐れがあります。
実際に、加盟店規約には以下のように記載されています。

第 28 条(解除)
1.加盟店が下記各号の一つにでも該当した場合、セゾンは本規約を直ちに解除できます。なお、これによりセゾンに損害が生じたときには、本条による解除後といえども加盟店は賠償の責めを負います。
(2) 本規約上の地位又は本規約に基づく債権を第三者に譲渡若しくは担保に供したとき。

出典:出典:クレディセゾン「セゾンカード加盟店規約」
つまり、資金調達には失敗し、なおかつ加盟店契約を解除されるという最悪の事態に陥る可能性があるのです。
債権譲渡禁止特約付きのクレジットカード債権をファクタリングするならば、2社間ファクタリング一択と考えてください。

まとめ:債権譲渡禁止特約でお困りの方はNo.1におまかせください

この記事では、債権譲渡禁止特約とファクタリングの関係について詳しく解説しました。
政府はファクタリングの利用を推奨しており、法整備にも積極的に取り組んでいます。
債権法改正により、債権譲渡禁止特約付きの売掛金もファクタリングできるようになりました。
今後も、ファクタリングの利用環境は良くなっていくでしょう。
しかしながら、法改正後も債権譲渡禁止特約に対応できないファクタリング会社が少なくありません。
債権譲渡禁止特約でお困りの方は、No.1までお気軽にご相談ください。
資金調達・資金繰りに精通したスタッフがヒアリングを行い、最適なファクタリングプランをご提案します。

総合フリーダイヤル0120-700-339

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