カテゴリー: ファクタリング
でんさいファクタリングとは?でんさい割引との違いからメリット・デメリットまで詳しく解説
事業者の資金調達と決済の円滑化を目的として創設された「でんさい」。
知名度の割には普及率が低く、2022年6月時点の中小企業の導入率は8.5%となっています。
特に、利用者登録数が40万社を超えたあたりから普及が鈍化しており、2015年1月から2023年8月までの8年8ヶ月間では8万5487社の増加(40万2202社→48万7689社)に過ぎません。
年あたり2%程度の増加率ですから、普及にはまだまだ時間がかかることでしょう。
とはいえ、でんさいを導入する会社が増えていることは事実であり、でんさいによる資金調達も徐々に発達しています。
この記事では、でんさいを用いた資金調達方法のひとつである「でんさいファクタリング」について詳しく解説します。
でんさいとファクタリングの基礎知識
でんさいファクタリングは、決済手段である「でんさい」と、金融サービスである「ファクタリング」を組み合わせた資金調達方法です。
でんさいファクタリングを理解するためにも、まずはでんさいとファクタリングの基礎知識について解説します。
でんさいとは?
でんさいファクタリングを理解する上でややこしいのが「でんさい」です。
でんさいとは何か、電子記録債権とどう違うのか、でんさいとでんさい割引はどう違うのか…
まずは、これらを紐解いていきましょう。
電子記録債権とは
でんさいは電子記録債権の一種です。
したがって、でんさいを理解するには電子記録債権について知る必要があります。
企業間の信用取引によって債権が発生したり、あるいは債権を譲渡したりした場合、従来は債権の管理になにかと問題がありました。
例えば、手形債権を受け取った会社は、手形の現物を保管する必要があります。
支払企業は手形の振出にコストがかかり、受取企業も手形の紛失・盗難リスクに対処しなければなりません。
また、手形割引によって早期資金化したり、裏書譲渡によって決済に用いたりする場合には分割ができず、額面金額すべてが対象となります。
売掛債権(売掛金)にも様々な問題があります。
売掛債権(売掛金)の譲渡には、架空債権や二重譲渡のリスクがつきものです。
対抗要件を備えるために、債務者への債権譲渡通知を行ったり、登記所で債権譲渡登記を行ったりと、何かと手間がかかります。
これらの問題を解消するために創設されたのが電子記録債権です。
電子記録債権は、債権に関するあらゆる情報を電子的に記録することによって、債権の権利内容を確定します。
債権の発生・譲渡を電子データの送受信によって行い、記録機関の記録原簿で管理するため、従来の手形に比べてコストが安く、分割も可能です。
また、電子記録によって債権の情報を可視化することにより、架空債権詐欺や二重譲渡のリスクも回避でき、対抗要件も具備されます。
でんさい≒電子記録債権
ネット上には、「でんさいは電子記録債権の略称」とする情報もみられますが、これは誤りです。
冒頭で述べた通り、でんさいは「電子記録債権の略称」ではなく「電子記録債権の一種」と考えてください。
全国銀行協会が設立した電子債権記録機関の通称を「でんさいネット」、でんさいネットが取り扱う電子記録債権を「でんさい」といいます。
電子債権記録機関は複数存在し、でんさいネットはその中のひとつです。
したがって、でんさいは「でんさいネットが取り扱う電子記録債権」に限られ、「でんさい≠電子記録債権」というわけではありません。
しかしながら、現時点において最もメジャーな電子記録債権はでんさいですから「でんさい≒電子記録債権」と考えて差し支えないでしょう。
でんさいは早期資金化できる
でんさいファクタリングを理解する上で、もうひとつ押さえておきたいのが「でんさい割引」です。
銀行や手形割引業者に依頼し、約束手形を早期資金化することを手形割引といいます。
簡単にいえば、でんさい割引はでんさいに手形割引の仕組みを応用したものです。
これにより、でんさいを資金調達に活用できます。
ファクタリングとは?
ファクタリングは、会社が所有している売掛債権(売掛金)を売却する資金調達方法です。
売掛金は、信用取引によって発生する金銭債権です。
支払期日には売掛先から代金を回収できるため、売掛債権(売掛金)は額面金額に近い価値を有します。
その価値に応じて、ファクタリング会社に買い取ってもらうのがファクタリングです。
ファクタリング会社は売掛債権(売掛金)・売掛先を審査し、買い取ることによって生じるリスクを測り、額面金額から手数料を差し引いて買い取ります。
手数料の分だけ額面金額が目減りするものの、支払い期日を待たずに回収できるがファクタリングのメリットです。
ファクタリングは、内部資産である売掛金によって調達するため、内部資金調達に含まれます。
銀行融資などの外部資金調達とは審査基準が異なるため、融資を受けられない会社でも、ファクタリングならば資金調達できる可能性が高いです。
このため、銀行融資依存の緩和策として、政府もファクタリングを推奨しています。
でんさいファクタリングとは?
従来、でんさいの早期資金化はでんさい割引、売掛債権(売掛金)の早期資金化はファクタリング、という明確な区別がありました。
しかし最近では、でんさいとファクタリングを組み合わせた「でんさいファクタリング」も登場しています。
でんさいファクタリングは、でんさいを割引によって早期資金化するのではなく、でんさいをファクタリングによって早期資金化するサービスです。
でんさいファクタリングと一般的なファクタリングでは、利用のイメージが大きく異なります。
というのも、早期資金化の際に用いるネットワークが異なるためです。
でんさいネットを用いたファクタリング
でんさいは、でんさいネットの中で流通する電子記録債権です。
でんさいネットに加盟している金融機関は1300を超え、支払企業と受取企業の双方がでんさいネットに登録することで、でんさいの利用が可能となります。
逆に言えば、でんさいはでんさいネットの中だけで流通しており、でんさいファクタリングもでんさいネットの仕組みの一部です。
一般的なファクタリングはネットワークに依存しない
これに対し、一般的なファクタリングはでんさいネットのようなネットワークを持ちません。
ファクタリングは売掛債権(売掛金)の売却であり、売掛債権(売掛金)は信用取引によって発生します。
自社が商品やサービスを提供した後、売掛先に対して請求書を発行し、売掛先がこれを受理することで売掛債権(売掛金)が発生するのです。
このとき、売掛債権(売掛金)は特定のネットワークで発生するわけではありません。
売掛債権(売掛金)を売却する際にも、何らかのネットワークを介するのではなく、ファクタリング会社に申し込むことで売却します。
つまり、でんさいファクタリングと一般的なファクタリングには以下の違いがあります。
- でんさいファクタリング…特定のネットワーク(でんさいネット)に依存した取引
- 一般的なファクタリング…特定のネットワークに依存しない取引
でんさいファクタリングとでんさい割引の共通点と違い
でんさいは、でんさいファクタリングまたはでんさい割引によって早期資金化できます。
ここで問題となるのが、でんさいファクタリングとでんさい割引の違いです。
割引とファクタリングのどちらでも資金化できるというだけでは、優劣が非常に分かりにくいのです。
このため、「でんさい割引=でんさいファクタリング」と考える人も少なくありません。
確かに、でんさいファクタリングとでんさい割引には共通点もありますが、様々な点で異なります。
ここでは、でんさいファクタリングとでんさい割引の共通点と違いを解説します。
でんさいファクタリングとでんさい割引の共通点
でんさいファクタリングとでんさい割引の共通点は、主に二つあります。
どちらも早期資金化
でんさいファクタリングとでんさい割引は、どちらもでんさいの早期資金化です。
でんさい割引は、電子記録債権の一種であるでんさいを割り引き、支払期日を待たずに資金化します。
でんさいファクタリングは、でんさいをファクタリング会社に売却することによって、支払期日を待たずに回収するものです。
割引かファクタリングかという違いはあるものの、どちらも早期資金化である点では変わりません。
どちらも債権譲渡取引
債権譲渡取引という点でも共通しています。
そもそも「割引」とは、手形割引を意味する言葉です。
従来の手形を電子化した「でんさい」に対し、手形割引の仕組みを応用したことにより、これを「でんさい割引」と呼ぶようになりました。
手形割引は、法的には「手形債権の売買」であり、債権譲渡にあたります。
このように考えると、でんさい割引が債権譲渡であることが分かるでしょう。
でんさいファクタリングも、法的には債権譲渡に含まれます。
このことは、金融庁のファクタリングの定義からも明らかです。
一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
でんさいファクタリングとでんさい割引の違い
どちらも早期資金化であり債権譲渡ですから、ほとんど同じようにみえるかもしれません。
しかし、でんさいファクタリングとでんさい割引は複数の点で異なります。
代表的な違いを4つ紹介します。
でんさいの売却先が違う
まず、でんさいの売却先が異なります。
でんさい割引は、でんさいネットで発生したでんさいを、窓口金融機関にでんさい割引を依頼することで売却します。
ポイントは、窓口金融機関に売却する点です。
手形割引を金融機関に依頼するように、でんさい割引も金融機関に依頼して売却するのです。
一方、でんさいファクタリングは、ファクタリング会社に依頼することで早期資金化します。
金融機関ではなく、でんさいネットに加入しているファクタリング会社に売却するのが特徴です。
契約の違い
でんさい割引とでんさいファクタリングでは契約も異なります。
でんさい割引を利用するには、まずはでんさいネットに加入しなければなりません。
金融機関にでんさいの利用を申し込んで審査を受け、問題がなければでんさいの利用契約を結びます。
この時点では、まだでんさい割引はできません。
でんさい割引を利用するには、電子記録債権割引利用契約書を締結する必要があります。
以上の契約を結べば、好きな時にでんさい割引を利用できます。
でんさい割引の度に個別の契約を結ぶこともありません。
でんさいファクタリングの場合、必ずしもでんさいネットの利用契約は不要です。
でんさいネットに加入していない場合にも、SPC(でんさいファクタリングのための特別目的会社)を通してでんさいの発生記録請求を行い、でんさいの早期資金化ができるのです。
ただし、ファクタリングに関する取り決めとしてファクタリング契約を結ぶ必要があります。
償還請求権の違い
償還請求権の違いにも注目してみましょう。
償還請求権とは、譲渡した債権が回収できなくなった場合、譲受人から譲渡人に買い戻しを求める権利のことです。
でんさい割引は「償還請求権あり」ですが、でんさいファクタリングは「償還請求権なし」が原則となります。
でんさい割引や手形割引など、およそ割引という仕組みは「償還請求権あり」が前提です。
でんさいが支払不能(手形でいう不渡り)になった場合、割り引いたでんさいを買い戻さなければなりません。
これに対し、でんさいファクタリングは償還請求権なしで取引します。
ファクタリングした売掛金が回収不能になっても、利用会社は何ら責任を負いません。
貸倒損失は全てファクタリング会社が負担します。
これにより、でんさいファクタリングは貸倒れリスクの回避にも役立ちます。
手数料の違い
でんさい割引やでんさいファクタリングで資金調達する際に気になるのが手数料です。
両者の手数料は、基本的には「でんさい割引<でんさいファクタリング」と考えて良いでしょう。
でんさい割引の手数料(割引料)の相場は、年利換算で1.5~5.5%程度です。
これに対し、でんさいファクタリングには手数料の目安が存在しません。
でんさいファクタリングを取り扱っているファクタリング会社が非常に少なく、軒並み手数料を非公開としています。
しかし、でんさいファクタリングは償還請求権がなく、ファクタリング会社が負うリスクがやや高いです。
このリスク分が手数料に上乗せされると考えてください。
したがって、でんさいファクタリングの手数料は「でんさい割引の手数料よりやや高め」といったイメージです。
でんさいファクタリングのメリット・デメリットとは?
現在電子データで記録できる新しい金銭債権が話題となっています。
でんさいとは「電子記録債権」の略であり、でんさいネットを活用することででんさいの分割であるとか割引さらには譲渡が簡単にできるなどのメリットが有るのです。
多くの企業が導入を検討し始めており、実際に導入をしているところもあります。
そのでんさいを用いたファクタリングが「でんさいファクタリング」です。
「でんさい」をファクタリング業者に売却することで資金を得ることになります。
仕組み自体は通常のファクタリングと同じです。
こちらではでんさいファクタリングにおけるメリットとデメリットをお伝えします。
でんさいファクタリングのメリット4つ!
①早期の資金化が可能
②実質審査が不要である
③ノンリコースである
④ファクタリング手数料が抑えられている
【①短時間で資金調達が可能である】
通常のファクタリングも即日対応できますが、でんさいファクタリングに関しても最短即日の資金化が可能となっています。
でんさいファクタリングはデータ化されているので、売掛金の確認も通常のファクタリングよりも早くなるなど特にスピードに関してはメリットがあります。
早急な資金調達をしなければならない、といった状況にも対応できるのがでんさいファクタリングなのです。
【②審査なしで利用できるケースも】
でんさいを利用するためには「でんさいネット」に加入しなければなりません。
そして加入をするためには、でんさいネットの審査を受けている、ということになります。
要は信用のない会社は利用できません。
よってでんさいファクタリングについては、ファクタリング業者として「リスク」がほとんどない、ということになるので実質的に審査は行われません。
通常のファクタリングと比較すると「審査落ちの確率が格段に低い」といったメリットがあるわけです。
【③償還請求権なし】
でんさいファクタリングでは「償還請求権なし」の設定となっています。
仮に売掛先が支払えなかったとしても変わりに自社が対応する必要はありません。
仮に「償還請求権あり」になってしまうと、売掛先が支払不能に陥ったときには変わりに支払わなければなりません。
そういったリスクを背負わなくてもよいのが「償還請求権なし(ノンリコース)」なのです。
【④ファクタリング手数料が低め】
でんさいを利用するにはそれなりの企業の信用がなければなりません。
よってでんさいを利用している企業であれば信用があるということになるのでファクタリング手数料については低めに抑えられているのです。
少しでも高額の資金調達を行いたい、という方にもでんさいファクタリングは適しています。
でんさいファクタリングのデメリット3つ!
①そもそも普及率が低い
②確実に売掛先にファクタリングがバレてしまう
③対応しているファクタリング業者が少ない
【①でんさいを利用している企業は1%にも満たない現実】
でんさいを利用した取引については導入率が低いのです。
ほとんどの企業は今までどおりの売掛金などを活用しているので、でんさいを利用したファクタリングについてはかなりのハードルがあります。
でんさいを用いた取引を導入していたとしても、取引の一部に過ぎない、という事になってしまうので、複数の企業の売掛金を利用した大規模なファクタリングは難しいのです。
【②売掛先から信用を失ってしまう可能性あり】
でんさいについては、売掛金が現状でどの様になっているかが利用者は確認できます。
よってファクタリング業者に譲渡されたことも売掛先が確認できてしまうのです。
電子記録債権については「ガラス張り」となっているので、ファクタリングの事実を知られずには行えません。
【③ファクタリング業者もでんさいに加入していなければ利用できない】
業者の選択肢が限りなく少ない、といったデメリットにも目を向けなければなりません。
でんさいを導入しているファクタリング業者の数が圧倒的に少ないのです。
現状では銀行の子会社となっているファクタリング業者のみの対応となっているので、選択肢は限られてしまいます。
まとめ:売掛債権(売掛金)のファクタリングはNo.1におまかせください
この記事では、でんさいファクタリングの仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説しました。
従来、でんさいの早期資金化といえばでんさい割引でしたが、でんさいファクタリングを提供する金融機関が少しずつ増えています。
一般的なファクタリングよりも手数料が安く、でんさいを償還請求権なしで資金化できるのが特徴です。
しかしながら、デメリットでもお伝えした通り、でんさいファクタリングの活用は容易ではありません。
資金繰りの維持を考えると、でんさいファクタリングは少々頼りないといえます。
資金調達・資金繰りにお悩みの方には、でんさいファクタリングよりも通常のファクタリングをおすすめします。
ファクタリングなら株式会社No.1 詳細情報
株式会社No.1の各サービスの紹介は下記からご覧ください。
ご不明点やご質問はお気軽にお問い合わせください。
よく見られているファクタリング記事